金田一少女の事件簿~元祖高校生探偵と小さくなった名探偵~   作:ミカヅキ

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たいへんお待たせしました…!
金田一少女更新です。
10月頃まで不定期更新が続くと思われます。どうかご了承くださいませ。



私事ですが、最近購入して10年目のノートパソコンの調子がずっと悪く、そろそろ買い替え時か?と思っていたんですが、勝手にパソコンに入っていた正体不明のアイコンがマイクロソフトのエッジというインターネットのアプリと知り、処理が速いと勧められて使ってみたところ、アレ?調子良いな…?となり。
さらに、これまでクリックしてもなかなか画面が切り替わらなかったのが、実はパソコン本体でなくマウスの故障である事に気付きました。
そこで、インターネットをエクスプローラーからエッジに切り替え、マウスを新しく購入したところ、今までのは何だったんだ?という程処理能力が向上しまして……。
結果的に執筆も進む進む……。
これまで執筆にも変換と画面切り替えにめちゃめちゃ時間がかかっていたんですが、一気にそれが解消されました(汗)
相変わらず執筆時間はなかなか取れませんが、纏まった時間さえあれば一気に執筆出来るようになりました……!

だから何だよって話ですよね、すいません………。


血の制裁

 ────────客間に通され、コーヒーを振る舞われた後に、一旦退室していた執事の古賀が、再び客間に顔を出した。

「申し訳ありません、金田一様。旦那様はまだお目覚めになっていないようでして…。やはり、夕食までお待ちいただきたく……。」

「そうですか…。わかりました。」

「申し訳ございません。夕食の支度(したく)が整うまで、後40分少々お時間いただきますので、それまでどうかお(くつろ)ぎになってお待ちくださいませ。」

 前半ははじめに、後半は客間の全ての人間に向かって断った古賀が丁寧に一礼して再び退室した。

(さて、それまで暇だな……。)

 大人は大人で何やら地酒の話で盛り上がっているし、JK2人は邸が豪華だの客間の調度品が高価そうだだのとりとめのない話で盛り上がっている。大阪の高校生探偵と、チビッコ探偵も2人で額を突き合わせてコソコソと小声で何やら言い合っていた。

 集団の中に1人放っておかれた時程、手持ち無沙汰な事は無い。

 某俵型ぬいぐるみのゲームでもしようか、とスマホを取り出したはじめに、チビッコ探偵ことコナンが思い出したように声をかけた。

「そう言えば、はじめ姉ちゃんってこのお邸の旦那様に呼ばれたの?」

「ああ、たぶんね…。」

「たぶんってどういうこっちゃ?」

 はじめの曖昧(あいまい)な言葉に、平次が疑問の声を上げる。

「さっきも言ったと思うけど、今日この場所に呼び出されはしたけど、それが誰からなのかは、ここに来て初めて知ったからね。」

「どういう事?」

 コナンの疑問にはじめが静かに目を()らす。

「……詳しくは言えない。」

「言えないってなんやねん。」

()()()()んじゃなくて()()()()。私がギリギリ言えるのはそこまで……。」

 はじめのその言葉に、2人が(いぶか)()な顔をしたが、仮にも探偵を名乗っている以上、守秘義務については重々承知している。そんな事もあるだろう、と深くは気に留めなかった。

 ────────その数時間後、コナンと服部ははじめに詳しい話を聞いていなかった事を後悔する事になる。

 

 

 ────────約1時間後、大広間の長テーブルに夕食の支度(したく)が整えられた。

 まるで映画に出てくるような素晴らしい調度品に囲まれた大広間と、そこに整えられたコース料理の支度(したく)に、蘭と和葉はすっかりはしゃいでいる。

「すごいね────!こーゆうのって映画やドラマで良くあるけど、実際に体験出来るなんて…!」

「ホンマ…!あたしらも貴族になった気分やわァ♡」

 きゃいきゃいとはしゃぐ2人を、不意に不審そうな声が制した。

「誰よ?あんたら……。」

「え?」

「あ…。」

 その刺々しい声に、蘭と和葉がハッと入口を振り返り、はじめたちもまた視線を移した。

「どこの馬の骨だって聞いてんのよ!?まさかアンタ、お義兄(にい)様の隠し子とかじゃないでしょうね!?」

 胸元の大きく開いた服を着た、メイクの派手な女性が(まく)し立てる。

「そんなわけないだろ?もしそうなら、兄さんが僕たちをここへ呼ぶ訳無いし…。」

 その後ろから、人の好さそうな眼鏡の男性が宥めていた。

(夫婦…?)

 2人が揃いのマリッジリングを嵌めているのを見て、はじめが内心で呟く。

 恐らく40代には届いていないだろう女性と、既に50歳は超えているだろう男性では(いささ)か年齢が離れているが、昨今では年の差カップルなど珍しく無い。

 ────────はじめが本当に驚いたのはその後だった。

「そうね…。もし本当に隠し子なら…、迫弥(はくや)の遺産は私たち兄弟じゃなく、子どもに全額相続されちゃうんだから……。」

 続いて大広間に入り、皮肉気に語るのは、恐らく60代は超えているだろう女性。派手なメイクと大きく胸の開いたドレスを着ているが、年不相応な服装とメイクのせいか、どことなく品が無いように見える。

「でもわかんないっスよォ?何年か前に急に連れてきたじゃんよ!年の離れた子連れで美人の婚約者を…。隠し子が2、3人いてもおかしくないんじゃね?」

 一緒に入ってきた、恐らく20代後半と思われる喋り方の軽い、チャラい茶髪の男。

 親子にしては容姿に共通点が無いが、夫婦にしては年が離れ過ぎている。先程の夫婦の比ではない。

 この2人の関係性がいまいち分からない、と内心首を傾げていたはじめだったが、全員が揃い、紹介された夕食の席でそのドレスの女性と、チャラい茶髪の男が恋人同士だと知った時の衝撃は凄かった。

(……マジか…。)

 言っちゃなんだが、純粋に想い合っているというより、若い男をアクセサリー感覚で連れ回すおばさんと、完全に財産目当てのチャラ()にしか見えない。

(通りでギスギスした空気だと……。)

 そりゃ、こんな空気にもなるわ、とそれを知った時ははじめも思わず頬を引き()らせた。

 

 閑話休題(かんわきゅうだい)

 

 ──────時間を少し戻す。

 隠し子が2、3人いてもおかしくない、と発言したチャラ男‐羽川(はがわ)条平(じょうへい)が肩を(すく)めながら続けた言葉に、大広間の空気が一気に殺伐としたものとなった。

「でも、その婚約者、運悪くすぐに死んじまったけど…。あ、そっか、あんたらにとっては運良くか?」

「お、おい君!?」

 ニヤニヤと品の無い笑みを浮かべながら遺産について揶揄(やゆ)する羽川(はがわ)に、眼鏡の男性‐寅倉(とらくら)家次男であり、現当主寅倉(とらくら)迫弥(はくや)の弟、寅倉(とらくら)麻信(あさのぶ)‐が(たしな)めるような声を上げたが、それよりも厳しく釘を刺した者がいた。

「テメェ…。今度そんな口叩きやがったらただじゃおかねぇぞ!!」

 ガッと羽川(はがわ)の襟元を掴み上げ、ドスの効いた声で脅し付けたのは、厳つい髭面(ひげづら)の男‐寅倉(とらくら)家の三男、寅倉(とらくら)岸治(きしはる)だった。

「な、何だよ!?あんただってホントはラッキーだって思ってんだろ?あのまま結婚されて今も生きてたら遺産もらえねぇし…。」

 取りなすように引き()った笑みを浮かべながら言い(つく)ろう羽川(はがわ)が、その軽薄(けいはく)さを明らかにしていく。

(やっぱ財産目当てか、コイツ………。)

 はじめが思わず頬を引き()らせる。

「あ、何?もしかしてあんた…。あの子連れの愛人にガチで横恋慕(よこれんぼ)してたとか?」

「き、貴様……!!」

 ヘラヘラと岸治(きしはる)の神経を逆撫でする羽川(はがわ)の言葉を止めたのは、新たに登場した眼鏡の女性だった。

「愛人の話は止めてくれる?私も父が愛人に生ませた子どもだし…。」

(どーりで若いと…。)

 他の兄弟たちが40~60代なのに対し、新たに登場した女性‐寅倉(とらくら)家次女の寅倉(とらくら)実那(みな)‐だけがまだ20代半ばとヤケに若い。

「まぁ、法律的には被相続人に兄弟しかいなかったら、相続金はそれぞれ同額なんだから仲良くしましょ…。あの兄さんが今夜の話し合いで誰かを贔屓(ひいき)するなら話は別だけど…。」

 含みのある発言をする実那(みな)に、兄弟たちが反応するよりも早く、その後ろから遠慮がちな声がかかる。

「あのー…、そろそろ料理をお出ししていいか聞いてきてくれとシェフが………。あ、でもお話がお済みでないなら…、もう少し後でも……。」

 殺伐とした空気を察知し、廊下から恐る恐るといった様子で進言するメイドに、羽川(はがわ)とその恋人‐寅倉(とらくら)家長女、寅倉(とらくら)守与(かみよ)‐が底意地の悪い笑みを浮かべながら口を開いた。

「話は食いながらでも出来っから、とっとと持ってきちゃってよ!」

「まぁ、あの奥さんのただの連れ子のあなたには関係の無い話だけどねぇ……。」

「あ、はい…。」

 ニヤニヤと立場を揶揄(やゆ)するような恋人たちに戸惑ったような様子を見せつつ、メイドの女性‐桧原(ひのはら)ひかる‐が一礼して下がった。

(つまり義理の娘になってた人をメイドに………。)

 何て複雑な家だ。

「……こら、絵に描いたような遺産相続争いやわ…。」

「だな…。」

 思わず、といったように呟いた平次と小五郎だけでなく、コナンや大滝らの顔もうっかり引き()始末(しまつ)である。

 

 

 

 ────────それから、館の主人である寅倉(とらくら)迫弥(はくや)が姿を現さないまま、晩餐(ばんさん)は始まった。

 寅倉(とらくら)迫弥(はくや)が遅れて来るのは珍しい事ではないらしく、自分が席に着かずとも先に始めているように、と執事の古賀も(あらかじ)め言いつかっているらしい。

 はじめら客人の紹介も寅倉(とらくら)迫弥(はくや)が来てから行う、との事で先に料理が運ばれ、酒が振る舞われた。

 決して穏やかとは言い難かったものの、それでも腹が満たされるにつれて、徐々に先程までの緊迫した空気が徐々に緩んでいく。

 そんな中話題となったのは、今回一族が一同に会す事となった遺産相続の話し合いについてだった。

「え?!不治の病?この家の主の寅倉(とらくら)迫弥(はくや)さんが!?」

「ええ…。もって後、半年とか……。」

 小五郎が上げた驚愕の声に、寅倉(とらくら)家次男の麻信(あさのぶ)が頷く。

「あら、後3ヵ月じゃなかった?」

 それに首を傾げたのが、麻信(あさのぶ)の妻、瑠莉(るり)である。

「だから、この晩餐(ばんさん)会に来たんですのよ?」

「まぁ、招待状に"欠席者に遺産は無し"なんて書かれちゃねぇ…。」

 相変わらずニヤニヤと品の無い笑みを浮かべた守与(かみよ)羽川(はがわ)が続けた。

「…にしても、遅くねぇか?兄貴……。」

 ふと、三男の岸治(きしはる)が顔を上げて未だ空席となっている上座を見た。

「確かに…。いつもなら料理にケチを付けてる頃なのに……。」

 それに同意するのは、岸治(きしはる)の正面に座した次女の実那(みな)

「んじゃ、悪いけど娘さんたち…、ちょっと起こして来てくれね?」

 そう、羽川(はがわ)が声をかけたのは、ちょうど彼の正面に座していた蘭と和葉の2人と、自身の隣に座っていたはじめだった。

「え?」

「アタシらが?」

「廊下を右に曲がって、一番奥の部屋だからさ…。」

 蘭と和葉の疑問を流し、羽川(はがわ)が続ける。

「寝起きに赤の他人に起こされるのって、嫌じゃありません?」

 少なくとも自分は絶対嫌だ。

 はじめの反論は、守与(かみよ)の含みのある笑顔によって否定された。

「いえ、迫弥(はくや)も若い娘さんが起こしに来てくれた方が喜ぶと思うわ。」

「はぁ、そういうものですかね…?」

 ニヤニヤと何かを含んだ笑みが気になるが、そこまで言われては拒否もし辛い。

「じゃ、ちょっと行ってきます。」

「あ、じゃあ私たちも…。」

「ちょっと行ってくるわ。」

 ガタリ、と立ち上がったはじめに釣られ、蘭と和葉も立ち上がる。

 パタム、と軽い音を立てて閉まった大広間の扉を背に、廊下を右に進む。

(に、してもデカい邸………。)

「な、なぁ…!」

「何?」

 後ろを付いて来ていた和葉が、意を決したようにはじめに話しかけた。

「き、金田一さんは何でこの家に来たん?旦那様に呼ばれて来たんやろ?」

 沈黙が辛かったのか、チラッと振り返ったはじめに世間話のノリで尋ねる。

「…それが、あたしにも良く分かんないんだよね。詳しい話はその"旦那様"がしてくれるだろうけど……。」

 前に向き直り、歩みを進めながら答えるはじめに、蘭が不思議そうに尋ねた。

「良く分からないって、それじゃどうやってここに?」

「今日の日時と住所を記した手紙が送られて来たんだよ…。詳細は(はぶ)くけど、無視するにはいかない理由があってね………。」

「無視するにはいかない理由……?」

 はじめの意味深な言葉に、蘭が更に疑問の声を上げるが、「あ、ここちゃう?」という和葉の声に遮られた。

 話を進めているうちに、一番奥の部屋、即ち邸の主である寅倉(とらくら)迫弥(はくや)の部屋の前に辿(たど)り着いていたらしい。

 コンコンコンッ…!

 はじめが扉をノックする後ろで、和葉が怪訝(けげん)そうな声を上げた。

「けど何かおかしない?普通、こないな事お客さんにやらせるかなァ?」

「確かに、ちょっと変だよね?」

 コンコンッ…!

寅倉(とらくら)迫弥(はくや)さーん!もう晩餐(ばんさん)会始まってますけどー!」

 扉越しにはじめが声をかけるが、全く応答が無い。

「返事無いね…?」

「まだ寝とんのちゃう?」

 ガチャリ…

「開いてるな……。」

 何気無くドアノブに手をかけると、容易く開いた。

 ────────フワリ…

 同時に部屋からの空気が廊下に流れ出るが、その直後、はじめが異変を感じ取った。

(!これは……。)

「……大滝警部を呼んだ方が良いみたいだ…。」

「え?」

「大滝ハンを?何で?」

 はじめの低い呟きに、後ろにいた2人が目を瞬かせる。

 微かに鼻に付くこの臭い…。

「……わずかだけど死臭がする…。……人の体が徐々に腐っていく時の臭いだ。」

「えっ!?」

「ア、アタシ大滝ハン呼んでくるわ!!」

 振り返ったはじめの、強い光を宿した紅茶色の瞳に、蘭が息を呑み、和葉は事の重大さを察して大広間へと(きびす)を返した。

 

 

 そして、それから数分と経たずに、大広間にいた人間が寅倉(とらくら)迫弥(はくや)の部屋の前へと駆け付けた。

「金田一ハン!死臭って一体……?!」

「そうよ!洒落(しゃれ)にならない冗談は止めてくれる!?まるでお義兄(にい)様が死んだみたいじゃない!!」

 はじめに事の次第を尋ねようとする大滝を遮り、瑠莉(るり)がはじめにがなり立てる。

「……本当に寅倉(とらくら)迫弥(はくや)さんかどうかは分かりませんが、少なくともこの部屋で、誰かが亡くなっているのは事実かと………。」

「何でそんな事が分かるのよ!?」

「経験、ですかね………。微かですけど、この部屋の中から死臭がします。恐らくは、亡くなってから数時間と経過していない、体が徐々に腐り始めた時の、嫌な臭いが………。」

「な?!」

 強い光を(たた)えたはじめの双眸(そうぼう)に、瑠莉(るり)がわずかに気圧される。

 そして、大滝もまた、それを見て気を引き締めた。

「ほな、ワシが代表して確かめさせてもらいますわ…。毛利さんもそれでええですか?」

「ええ、お任せします。」

 先日の一件を受け、"民間人"を現場に踏み入れさせないように配慮した大滝の言葉に、色々と思う事があったらしい小五郎もまた深く頷く。

 そして、こんな時にこれまでだったら名乗り出たであろう平次もまた、黙ってその様子を見守った。

 コナンでさえ、多少そわそわした様子を見せたものの、その場を動こうとしない。彼もまた、2度に渡るはじめとの邂逅(かいこう)で何か感じ入るものがあったようだ。

 キイィ………

 懐から取り出した手袋を嵌めた大滝がそっと扉を押すと、微かな音を立ててゆっくりと部屋の様子が露わになる。

 フワッ…

「「「「!?」」」」

 先程よりも扉が大きく開いた事で、部屋の中の空気が廊下へとゆっくり流れ出る。

 そして、現役警察官と3人の探偵は、先程のはじめ同様にはっきりとその臭いを感じ取っていた。

「こりゃあ……、」

「間違い無いようですな……。」

 微かに息を詰めた大滝に、小五郎もまた鼻を押さえて頷く。

「まさか……?」

「嘘でしょ?ホントに………?」

 その様子に、それまで半信半疑だった麻信(あさのぶ)夫妻が不安気な顔を見せる。他の兄弟たちもまた、お互いに顔を見合わせていた。

 そんな中部屋に足を踏み入れた大滝は、異様な物を見付けていた。

「これは、棺桶(かんおけ)…?何でこないなモンがこんなトコに?」

 何故か入口近くに置かれた棺桶(かんおけ)に、大滝が怪訝(けげん)な顔をする。

「最近の兄さんの寝床なんです、その棺桶(かんおけ)…。どーせその内入るからって……。」

「かなり悪趣味だけど……。」

「そらまた、けったいな。」

 麻信(あさのぶ)実那(みな)の説明に大滝が理解出来ない、とばかりに呟くが、すぐに死臭の発生源が、目の前の棺桶(かんおけ)である事に気付く。

 すっ、と表情を引き締めた大滝が、棺桶(かんおけ)の蓋に手をかける。

 ガコッ…

 蓋が完全に開いた瞬間、ブワリと部屋に流れ込んだのは、明らかな血臭。

「「っ」」

 わずかに息を呑むような沈黙の後、

「「キャアアアアアア──────────―ッ!!!!」」

 蘭と和葉の悲鳴が邸中に響き渡った。

 

 棺桶(かんおけ)に横たわっていたのは、無残にも胸を太い杭で打たれた、この邸の主‐寅倉(とらくら)迫弥(はくや)の遺体。

 黒い外套(がいとう)を纏い、片眼鏡(モノクル)を身に付け、断末魔の声を上げるように大きく口を開き顔を歪ませたその姿は、(まさ)しく(いにしえ)の怪物を思わせた………。

 そして、棺桶(かんおけ)の蓋に生々しく血で記された文字が、凄惨(せいさん)な殺人劇の幕開けを物々しく演出していた。

 "我が怒りは未だ収まらず

 同じ罪を繰り返す堕落しきった我が末に血の制裁を……

 寅倉(とらくら)迫仁(はくひと)"

 

 

 




因みに、某俵型ぬいぐるみのゲームは、半年程前に友人に勧められて始めました。アーマー着て戦う系の社長がお気に入りです。次点で発明家のネズミ(リス?)。

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