鈴木悟の異世界支配録   作:ぐれんひゅーず

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ギルメン殺害!!



1話 人間

「おわぁぁぁぁぁ」

 

ナザリック地下大墳墓のアインズの寝室で悲鳴が響き渡る。

 

 アインズは呼吸の必要のない体で息を荒らげ幾度かの精神沈静化を繰り返しながら自身の骨のみの手を見る。

 

「夢?・・・か・・・・・・」

 

 今日のアインズ様当番のメイドは扉の外に控えているはずで、エイトエッジアサシンも就寝にあたって下がらせており、今ここにはアインズしかいない。

 

 ため息を吐きながら、なぜ睡眠不要なアインズがベッドの上で眠っていたのかを思い出す。

 

 リザードマンをナザリックの支配下に置いてしばらく、アインズは以前守護者達に提案した休日を皆に納得させる方法はないものかと思案していた。至高の御方の為に働く事こそが生き甲斐であり全てだと豪語され、そのあんまりな社畜精神にかなり引いてしまったが、デミウルゴスの提案により、まず試験的に守護者が交代で休みを取りローテーションを組む事となった。

 

 リアルでの過酷な労働環境を思い、慣れない支配者を演じてはいるが、今は自分がナザリックの最高支配者なのだ。自分が組織のトップになったからにはナザリックをブラック会社にはしない、健全なホワイト企業にしたかった。

 

 自分自身が食事、睡眠不要なアンデッドな事もあり、転移してからずっと休む事なく働いている為(たいした事ないのもあるが)、上の者が働いている中下の者が休みにくいであろうと、休暇を取ってみたのだ。

 

 ただ、アインズ自身休みをどう過ごしたら良いかわからなかった。ナザリック内を散歩しても誰かに会ってしまえば気を使われてしまう、部屋で本を読もうにも内容は良い上司になる為のハウツー本等が殆どだ(内容的にも仕事の範囲内と言えそう)。

 

 そこでアインズは寝てしまおうと考えたのだ。幸い?にも以前ナザリックで一騒動起こしたが、<完全なる狂騒>のアイテム効果でアンデットの種族特性を打ち消し自身に<スリープ>を使い眠ることができることがわかった。そういうことでしばし睡眠をとると一般メイドに伝えて、部屋に一人になったのだ。

 

「それがまさかあんな悪夢を見るなんて」

 夢の内容をはっきりと思い出せてしまい、背筋に寒気を感じ、体が震える、これは恐怖か。アイテムの効果が切れたのか、沈静化されるがすぐにまた恐怖が襲う。

 

 しばらくしてようやく落ち着きを取り戻したが、沈静化の効果はこういう時厄介だと以前から思っていた。激しい怒りに見舞われて沈静化されてもすぐにMAXまで怒りのボルテージが満たされまた沈静化。その繰り返しに精神が磨り減ってしまいそうなのだ。

 

 夢の内容は現在よりかなり先の未来の出来事のように思えたが、どうやら自身が長い時を経てアンデッドの身体に精神を引っ張られ完全に人間性を無くしてしまったようだ。最高の友人だと今でも思っている相手を殺し、おそらくはナザリックの者達もその手にかけたのかもしれない。生者を憎むただのアンデットに成り果て一人ボッチの自分。その事実に悲しみも寂しさも、なんの感情も抱かなかった夢の中の自分。

 

 また恐怖が沸き起こってきた。(あんなのは俺じゃあない。俺はあんな結末を望んでなんかいない)

 

 しかしアインズは認めたくはないが、その可能性も完全に否定しきることは出来なかった。この異世界に転移した時から鈴木悟の人間の感情というべき心は残滓と呼べるぐらいに薄くなっており、それもほんの僅かずつだがアンデッドの身体にすり減らされているような気がしているのだ。

 

「どうすればいいんだ」

 一人つぶやき悲観にくれるが、今のアインズにはかつての仲間のような相談出来る相手はいない。NPC達にも打ち明けづらかった。

 

 アインズは自身の気持ちを確認する為、扉の外に控えていたシクススを部屋の中に呼んだ。

 

「失礼します。アインズ様」

 

「・・・あぁ、うむ、私の近くに来なさい」

 

 今日のアインズ様当番のシクススを近くに呼び、その美しい顔やメイドとして完璧な振る舞いを見せるその全身を見つめた。

 

 (う、やっぱりうちのメイドはかわいいなぁ。胸の大きさはそれぞれ違うけど全員スタイルが良いし、ヘロヘロさんやホワイトプリムさんがメイドは俺の至高と言っていたのも分かってしまうなぁ)骨の右手をシクススの頬に添えやさしく撫でる。「ひゃ、ア、ア、アインズ様?」シクススが耳まで真っ赤に染めながら困惑した声をあげるが、アインズは気にせずさらに左手を頭に乗せそのやわらかい金色の髪を撫でる。「んゆぅぅぅ・・・」

 

 (やはり俺の中でこの子達は大切だ、絶対に失いたくない)と変わっていない自分の心に安堵しつつ手を離し顔を見ると、メイドは両手を胸の前で組みつつ息も絶え絶えに顔を赤くし、恍惚とした表情のまま上目遣いで自分を見つめていた。(わぁ、し、しまった。つい考えに夢中で変化に気づかなかった。ていうか少し頭を撫でたぐらいで興奮しすぎだろ。さっきもなんか変な声聞こえてたし、俺を慕ってくれているって事なんだろうけど、少し気をつけなきゃな)

 

「す、すまない、少し確かめたい事があってな。不躾が過ぎたようだ、もう確認したい事は済んだので仕事にもどってくれ」

 

「は、はい。畏まりました。アインズ様」

 

 シクススは名残惜しそうにしながらも少しふらついた足取りで扉の外に向かう。

 

 再び一人になった部屋の中でアインズは一つの決心をした。それに伴い守護者やナザリックの僕達に愛想を尽かされるかもしれなかったが、あのおぞましい夢で見た結末を迎えるぐらいなら死んだ方がましだ。

 

 アルベドに<伝言>(メッセージ)で現在外で活動している者達の状況を確認し、ナザリック内の転移関連を担当している(オーレオール・オメガ)、ナザリック最強の個(ルベド)、監視任務に就いている(ニグレド)を除く友人達が直接創造したNPCを1時間後に9階層の第1会議室に集まるよう指示した。一番遠い王都で活動しているセバス、ソリュシャンにはアインズ自身で連絡すると伝えた上で。

 

 通信役のソリュシャンに状況を聞いたところ、商人と称して活動した甲斐があり、王国側の商人や貴族と、晩餐会や会談に参加する運びとなったようだ。アインズとしては重要な話をする為参加してほしかったが、部下が自ら取った価値あるかもしれない情報を得るチャンスを自身の都合で潰してしまうのは上に立つ者として失格だと思い、会議がある事は伝えず二人の働きを労うだけにして<伝言>(メッセージ)を切る。もし会議があると言えば商人貴族との約束をほっぽり出してこちらに来る事が容易に想像出来た。

 

 会議まではまだ時間がある。その間に話す内容をしっかりと復習しておかなくては。

 

 

 ナザリック地下大墳墓9階層『第1会議室』。守護者達だけで集まったりする時などに使用する、複数ある会議室の一つだ。本来会議等を行うなら円卓の間を使用するのがユグドラシル時代では常であったが、以前守護者達を集めて会議を行った時は皆席に座ろうとしなかった。曰く「至高の御方々が座っていた椅子に座るなど恐れ多い」と口を揃えて言うのだ。

 

 玉座の間を選ばなかったのも今から自身が行う事を思えば支配者として失格と思われるかもしれないし、威厳ある態度など出来ないと思ったからだ。

 

「アインズ様。御命令に従い各員揃いました」

 アルベドの言葉に合わせ皆が平伏しようとするのを軽く右手を上げ止める。

 

「皆、緊急の呼びかけによく集まってくれた」

 

「御身ノ御命令トアラバ即座ニ」

「コキュートスの言う通りでありんす」

 

「あぁ・・・デミウルゴスには特に言っておかなければな。度々呼び戻してすまないな」

 

「我々は至高の御方に尽くす身、アインズ様は感謝などされずに存分に御命令していただければ」

 

「うむ。さて、今回皆に集まってもらったのは重要な話があるからだ。先に言っておくがセバスとソリュシャンは任務を優先してもらい今回の集まり自体伝えていないからそのつもりでいてくれ」

 

 二人が来ない事を伝えていたアルベド以外の幾人かが納得したような顔をし、重要な話と聞いて一様に真剣な顔つきになる。

 

「ナザリックがこの地に転移して以降皆の働きに喜びと共に感謝している」

 

 アルベドがなにか言おうとしていたので手で制しつつ言葉を続ける。

 

「ただな、聞いておきたいのだ。お前達が忠誠を誓っているのは私だからなのか、”オーバーロード”だからなのか?とな」

 

「そ、それはどういう事でしょうか?」

 

 アルベドの問いに他の者も同様理解していないように首を傾げている。

 

「つまりだ・・・私がもしオーバーロードではなく他の種族だったら、もしくはLv1のような弱い存在だったとしてもお前達の気持ちは変わらないのか?」

  

 アインズの問いかけに皆目を見開き、思考停止したかのように固まっている中。

「なにも変わりません」

 

 アインズの斜め後ろに控えていたアインズ自身の手で唯一創造したパンドラズ・アクターが静かに、強い言葉で発した。

 

「なにも変わりませんとも。アインズ様がたとえどのような姿でも、たとえ弱かったとしても私の忠誠は微塵も揺るぎません」

 

「そ、その通りですわ」

「ア、アインズ様がどのような姿でも、ぼ、僕はアインズ様がす、好きです」

「あんたなにドサクサに言ってんのよ。ア、アインズ様。あたしも同じ気持ちです」

「チビの言う通りでありんすぇ。わたしのアインズ様への愛はどのようなことがあろうとも変わりませんえ」

「ソノヨウナ事ガアレバコノ身ヲ剣トシ御守リスルマデ」

「唯一人我々を見捨てず最後まで残って下さった慈悲深き至高の御方。我々の忠誠心はなにがあろうと揺るがないでしょう」

「アインズ様はアインズ様。私の愛しい君です」

 

 パンドラを皮切りに、守護者達が熱の篭もった声で訴えてくる。プレアデスや一般メイド、領域守護者までも同じ思いだと声に出し、頷き、中には涙を流している者もいる。

 

 アインズは無い胸が熱くなるような感覚を覚えた。(何を言ってるんだろうなぁ俺、皆を疑っていた訳でも、信じていなかった訳でもないのに。覚悟を決めたつもりでいたけど心のどこかで怯えていたのかもしれないな)自嘲した後、アインズは今度こそ覚悟を決め、自らの秘密と決意を話す事にした。

 

 

「皆の気持ちはよくわかった。私は心から感謝している。お前達の忠誠に応える為にも私の秘密を話そうと思う」

 

 アインズの宣言にその場に居る全員が息を飲む音が聞こえた。NPCにとって神をも超える至高の存在の秘密と聞いて緊張しない者などここに居るはずもなかった。

 

 

 

「・・・私は元々は人間なのだ」

 

 

 時が止まる。・・・・・・本当に止まってしまったかのように部屋の中の空気が凍りついたような静寂が包む。

 

 (この反応は予想はしてたけどそりゃ当然困惑するよなぁ。ナザリックの者は基本人間を下等で脆弱な存在とみてるし。・・・しかし、ここで止まる事は出来ない。このまま一気にいかなきゃ)

 

「証拠を見せよう」

 

 アインズはインベントリからあるアイテムを取り出す為、虚空に開いた空間から一つの指輪を取り出した。・・・<流れ星の指輪/シューティングスター>。超位魔法<星に願いを/ウィッシュ・アポン・ア・スター>を経験値消費なしで3回発動可能。 ユグドラシルでは超位魔法版より有効な効果が出やすく、同時に出現する選択肢は最大数の10個、かつ発動に掛かる時間もゼロという超々希少課金アイテムである。ただ、この異世界では選択肢が出現せず、使用者の願いをかなえてくれるという破格の性能に変わっていた。アインズはシャルティア戦前にこのアイテムを使用した時にその変化に気が付いていた。

 

「「そ、そのアイテムは!」」

 

 以前このアイテムを直に見ていたアルベドと、アイテムマニアという設定をアインズから与えられていたパンドラズ・アクターが驚愕の声をあげる。

 

アインズはその指輪を自分の指に装備し天を指すように腕を上げ...唱える。

 

「指輪よ・・・・・・I WISH(我は願う)

 

「私を人間の姿にかえよ」

 

 指輪がキラリと輝いた後、光の粒子が舞い、アインズの体を包み込み......やがて粒子の放つ光が膨れ上がり膨大な光が爆発したかのように部屋を照らし出す。・・・あまりの光量に大半の者は目を開けていられないほどだった。

 

 光が収まりアインズの居た位置には・・・いつもの漆黒のローブを纏った人間がいた。

 

 

 誰もが声も出せない中、アインズは自分の手を見る。・・・少しやせ細っている手の感触を確かめるように開閉し。インベントリから手ごろな鏡を取り出しフードを取った顔を見る。

 

 (俺だ・・・間違いなくこれは俺だ)鏡には黒髪黒目に目の下には隈があり、頬は少しこけ、顔色が若干悪い、パッと見冴えない中年にさしかかろうかという人の姿があった。・・・・・・さらに自身の中にある魔力や魔法が使える感覚を自覚し、魔法がうまく作用したことに安堵の溜息を漏らす。

 人間になると願ったとともに心の中で願っていたものがあった。

 

 自身で育てたオーバーロードの力。そして友人達が残してくれた子供のような存在であるナザリックの皆と共に在りたい・・・である。

 リアルの鈴木悟になるという事はおそらくLV1。モンスターが闊歩し、プレイヤーの影も見えるこの異世界では危険すぎる為である。

 周りを見ると、未だ呆然とし声も出せないナザリックの面々の姿があった。

 

「ああ・・・突然のことですまない。理解が追いつかないかもしれないが、これが本当の私だ・・・・・・冴えない姿だとも思う」

 

「そのような事は御座いません!・・・ただあまりの展開に少し呆然としてしまい。お見苦しい姿を晒してしまい申し訳ありません」

 

 いち早く正気を取り戻したデミウルゴスの言葉に続き、全員が同意とばかりに頷く。・・・なにやら腰の羽をパタパタと震わせていたり、太もものあたりをモジモジとすり合わせている者がいる気がするが、アインズは見ない振りをしたところでデミウルゴスがアインズの顔を窺ってくる。

 

「アインズ様。差し出がましいようですがお顔の色があまり良くないように見受けられますが・・・は!そういえば」

 

 デミウルゴスが心配そうに話していた中、なにかを思い出したように懐から一つのアイテムを取り出す。

「それ「それはワァァァールドアイテム!世界を変えるぅぅ。その名も<ヒュギエイアの杯>健康の維持と衛生を意味しその効果は」

「パンドラ!ちょっと黙ってて」

「えぇ・・・」

 

 ワールドアイテムを見た瞬間テンションダダ上がりのパンドラをあまり喋らすと羞恥心から顔を覆いたくなる衝動を抑えつつ少し乱暴に静止させた。

 デミウルゴスの手にある金色の杯にヘビが巻きつき、神聖で不思議な輝きを放つワールドアイテムを見てなぜここでこのアイテムを出したのか考え・・・・・・(あ、そうか。今の俺結構顔色良くないし体調不良かなにかだと思われてるのか。なるほど、それで心配して)

 デミウルゴスの気遣いに感謝を述べつつヒュギエイアの杯を受け取る。先ほどパンドラズ・アクターが説明しかけていたようにヒュギエイアには健康を象徴している部分がある。

 悪い結果にはなりそうもなく、ならば今実験がてら自分に使ってみるのも良いんじゃないかと杯を使用する

 

 するとなにも無かった器の中から透明な液体が満たされてきた。無味無臭で透明な水をゆっくりと飲み込んでいく。異世界に転移してから初めて口にした飲食という行為に感動しながら全て飲み干し、感嘆の息を吐く。

 

 淡い緑の光が体を覆いアインズの全身が軽く熱をもったように温まってゆく。心地良い温もりを感じていると...痩せ気味だった体は徐々にボリュームを増し、目の隈は薄れ無くなり、顔色も肌艶が良くなっていく。

 

 ナザリックの者が固唾を呑んで見守っていると、そこには年は20代前半程で、その目はどこまでも優しそうで強い意志を持っているかのような健康的な支配者がいた。

 その姿に「おおぉ」と感嘆の声が響く。女性型の者は頬を染め煽情的な瞳で支配者を見つめていた。

 

 皆の反応に疑問を感じながらアインズがもう一度鏡を取り出し自分の顔を確認する。・・・・・・驚いた。目も鼻も輪郭も全て整っている普通に二枚目と言える顔が鏡に写っていた。

 少し唖然としつつも鏡のなかの顔は他人ではなく、間違いなく鈴木悟本人だといえた。リアルと比べ整った造形をしているが鈴木悟の特徴がありありと出ていた。

 これがワールドアイテムの効果か、やたら美形の多いこの世界の補正かは分からないが、リアルでの環境を思えば健全に生活していればこれぐらい整っていても不思議じゃあないかもしれない。睡眠時間は極僅か、徹夜も普通にあり、食事は完全栄養と謳っていたチューブ食。美容にも無頓着な悲惨な生活を繰り返していればそりゃ醜くなる。・・・かもしれない。

 

「まさに至高の存在に相応しい御姿。このデミウルゴス感嘆致しました。・・・ところで、なぜ人間の姿になろうと思われたのでしょうか?...差し障りなければ無知な我々にもそのお考えを教えて頂けませんでしょうか?」

 こういう時、頭の良いデミウルゴスが皆の気持ちを代弁するように率先して声に出してくる。それに伴い他の者が相槌を打つのが今までもよくあった流れだ。

 

「ああ勿論だとも。少し長くなるがちゃんと皆に説明しよう」

 

 アインズは会議前に吟味していた伝えるべき事を話した。

 

 自分とギルドメンバー、ユグドラシルでプレイヤーと呼ばれていた者達は全て『現実世界(リアル)』という世界に人間として産まれた。

 リアルは文明の発達と愚かな行いにより環境汚染が進み地表は荒れ空には常にスモッグがかかっており、治安は最悪であり集団窃盗やテロが蔓延し、外での活動には専用のマスクが必要なほど大気汚染が進んでいる。

 そんな中人間は『ユグドラシル』という一つの世界を創った。

 ユグドラシルへは肉体をもって行く事が出来ず。『アバター』と呼ぶ種族や外見等を好きに弄れる器に意識だけを移して冒険していた。その中でギルドメンバー達と出会い共にナザリックを攻略し拠点としNPCを創った。

 ユグドラシルの世界が終わる日、全てがなくなってしまうはずの瞬間、ナザリックと共に今の異世界へ転移した。

 ユグドラシルでは完全に人間の心を持って活動していたが異世界に来た時からそれは残滓と呼ぶぐらい薄くなり、大切だと思っているナザリック以外の者にはなにも感じなくなりその事実にショックを受けたがそれさえもどうでもいいと思えた。

 そして先ほど見た夢。未来でアンデットの種族特性に引っ張られとうとう感情が無くなりナザリックの者達を大切に思う気持ちも無くなり生者を憎むだけの存在になっていた。夢とはいえ実際転移してから人間の心の残滓が磨り減ってきていると感じる。と・・・・・・

 

 さすがにユグドラシルがただのゲームでありNPCがデータのみの存在だったとは伝えられなかったが、伝えたい事を話し終えたアインズは反応を窺うと、皆以前と変わらぬ、今まで以上の忠誠を捧げるとの返答に涙が零れそうになるのを耐え感謝した。

 

 ここでふと自身の変化に違和感を覚えた。自分の心が完全に鈴木悟にはなっていないという事に。

 

 守護者達の訝しむような視線に「少し待て」と静止させアインズは今までこの異世界で自身が行ってきた出来事を振り返る。

 

 

 やはりおかしい。鈴木悟ならば人を殺す事など出来るとは思えないし、死体を思い出すだけでも恐怖を感じるはずだ。

 虐殺を受けていたカルネ村の人達を半数程とはいえ救えたのは良かったと思う。

 平気で虐殺していた法国の騎士は死んで当然と感じ。自身の手に掛けたのにも僅かの後悔も抱かない。

 リザードマンに関しても酷い事をしてしまったと思いつつ、あのままほうっておけば食料事情による部族間戦争が起こっていたらしいし、コキュートスの願いによりナザリックの傘下に加わり忠誠を誓う以上平和な繁栄を約束するつもりだし、結果良かったと思っている。

 ナザリックの利益を理由に、敵対していない者や特に罪の無い一般の民に残酷な仕打ちはしたくないと感じる。

 

 考えていて少し混乱してきたが、憶測だが結論として今の自分は人間の心に異形の精神が混じっている感じだ。

 これからはナザリックに明確に敵対した者、法国の騎士や盗賊のような自分勝手な都合で悪さをする者、ニニャの日記、セバスの報告にあった腐った貴族等には容赦する気はないが、それ以外の罪無き者には残酷な仕打ちは厳禁としていきたい。・・・・・・

 これからの活動方針を皆に伝えた所。

 

「世界征服はどのように進めるのでしょうか?」

 

 アルベドの発言に言葉を失ってしまう。・・・訳が分からないまま取り乱すのは不味いと、声が震えないようにしながらどういう事か聞くも動揺がアリアリと出てしまう。もはや表情もあるし沈静化も働かないようで皆が望む絶対支配者の振りなど演じ切れなくなってしまった。人間諦めが肝心というがまさにここが諦め時だろうか。・・・・・・

 

 世界征服の経緯は転移してまもなく、デミウルゴスと夜空を見た時口にした「世界征服なんて面白い」と冗談で呟いたのを真に受けたらしい。迂闊なことを言ってしまったと後悔したが、人間になったことによる感情の変化を理由に計画を一時凍結、必要があれば世界征服に乗り出すかもしれない。と修正しておく。(世界征服なんてしたい訳じゃあないし)

 

 ふとデミウルゴスが身を震わせて青褪めているのに気が付く。

「どうした?デミウルゴス」

 

「・・・も、申し訳ありませんアインズ様。・・・・・・私はすでにアインズ様の方針に逆らっております」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・え?」

 




と、言う訳で当然とばかりの夢オチ。
漫画版のリアル鈴木悟を見てそんな三枚目かな?と想い世界級で男前にしてみました。

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