昨日の買い出しは結局、服とウェザリングに必要なものを用意するので時間がいっぱいだった。
荷物は羽丘の演劇部室に置いてあり、それを使って実際に作業をするのが今日以降の予定となっている。
「失礼します」
羽丘の部室に来るのも慣れたもので、特に緊張もなく部室の扉を開く。
みんなで部室に入ると、すぐに葛西さんが僕の方に手を振ってくる。
「あ、山科君、こっちこっち!」
「早いね、葛西さん」
「まあ、今日は麻弥ちゃんいないしね」
「そうなの?」
そういえば、大和さんの姿は見えない。
「病欠?」
「ううん。パスパレの練習。今日から三日はそうらしくて、麻弥ちゃんはお休みだよ」
「あ、そういえば」
確かに二週間後にはパスパレのライブがあるそうなので、それに向けた練習をしておかないといけないのだろう。そういえば、僕がプロの方にお会いするときも練習の予定があると言っていた記憶がある。
考えれば、舞台にライブと忙しい人だ。
「だから、今日は私と二人だね」
「うん、よろしく」
最近は僕と大和さんで動いていたので、葛西さんと二人で動くのは久しぶりな感覚がする。
というか、ほとんど初めてかもしれない。
「結局、昨日教えてもらっただけだったけど、ウェザリングっていうのをしたいんだよね?」
「そうそう。こういう感じの」
僕は履歴から昨日見ていたウェブページを出して葛西さんに見せる。
「公園のベンチとかを、少し年代を感じさせるようにデザインしたいんだ。今は色を塗りなおして新品みたいになってるでしょう?」
「うんうん、こんな感じって言ってたね。じゃあ、ちょっとやってみようか。……裏方集合してー!」
声をかけてメンバーを集める。
「みんな、今日はベンチの加工作業をするね。必要なものは昨日、麻弥ちゃんと山科君が買ってきてくれたから、それを使って。公園の、ちょっと錆びたベンチを作るから、そういうイメージでお願い。詳しいやり方は調べてきたから、これをみんなで共有して」
葛西さんはファイルからルーズリーフのメモを取り出して、それを一人に渡した。
ちらりと見えたが、テキトーに作ったメモではなく丁寧に手順や道具類についてまとめられたものだった。詳しいことについては聞かれたので僕や大和さんで調べて説明はしたけれど、まさかこうしてまとめられているとは。
「……どうかした?」
「いや、何でも」
凄いな、と思っただけだ。
大和さんも技術力が高くて凄いと思っていたけれど、葛西さんも気遣いや段取りのまとめ方がうまい。技術の方についてはまだ見る機会がないけれど、少なくとも段取りの上手さはこの短い間でよく理解している。
大和さんはアイドルとしての活動もあるから、基本的にこの部の裏方は葛西さんによって回っているのだろう。
「やることは一通り書いてあると思うけど、分かりにくいところとか問題があったら教えて」
葛西さんが指示を出している間に、僕は買ってきたものを用途別に仕分けて置いていく。
大和さんと葛西さんには助けてもらってばかりだから、僕も負けないように頑張るしかない。
「やぁ、二人とも、ちょっといいかな?」
「薫ちゃん? どうしたの?」
「少し尋ねたいことがあってね。構わないかな?」
「大丈夫だよ」
裏方の方に顔を出してきたのは瀬田さんだった。
役者の方を見ると、全員でどこかに移動しようとしているのが見えた。どこで練習するんだろう。
「実は、今日は体育館が開いているようでね。未だに台本をもって練習してはいるが、一度ステージで練習しようという話になったんだ」
「なるほど。それで、私達も必要?」
「ああ。音響や照明も既に決まっているのだろう? なら、それに合わせて動きたくてね」
瀬田さんは少し裏方の顔を眺めた。
「麻弥がいないようだが」
「今日はパスパレの練習でお休み。だから、照明しか揃ってないけど、大丈夫?」
「いないのならば仕方ない。音響は次の機会にしよう」
「じゃあ、私達が行こうか。……ごめん、みんな。何かあったら電話して」
葛西さんが電話のジェスチャーをしながら、部屋の隅からインカムを四つ取り出した。一つを受け取る。
インカムを装着し、自分の荷物をまとめる。葛西さんの方を見れば、養生テープから他のインカムまで雑多な荷物を裸で抱えている。
「持つよ」
「ごめん、ありがと」
インカムや台本、筆箱、養生テープ等、慌てて抱え込んでいた荷物を預かる。
「みんな先に行っている。急ごう」
体育館に到着すると、先に来ていたみんなが準備をしていた。
「お、裏方も来たか」
「待たせてごめん。これ、インカム」
「おお、ありがと」
体育館の中央で指示出ししていた高橋と新藤さんにインカムを渡す。葛西さんは照明卓の操作をするために下手の方に移動していた。
ステージの方では赤と青のカラーフィルムを入れている途中らしく、ボーダーが下の方まで下ろされている。
そして、窓際の方に目を向ければ、みんながカーテンを閉めようとしている。見たところ明かりが漏れていて、養生テープを使っていないのが分かった。
「養生あるー?」
「ない! 持ってる?」
「ある! 行くよ!」
「頼むー」
二階席に養生テープを投げる。二階席でカーテンを閉めていたメンバーのところまでテープが届く。
「二階でそれ回して!」
「おー、分かったー」
上がテープを張りだすのを確認してから、一階の方でカーテンを閉めていたメンバーのところに近づく。
「これ、養生テープ」
「ありがとう。えっと……」
「山科です。裏方で、スポットライトの方をやると思うから、よろしく」
「う、うん」
「じゃあ、これ、渡すから一階の方で回してね」
ステージに立って練習できる時間は限られている。あまり長々とお喋りをしているような時間はない。
手短に自己紹介と用件だけを言い残して、舞台袖に移動する。
「葛西さん、鍵ある?」
「鍵? ……あ、上のね。これだよ」
「ありがと」
「準備できたら教えてね?」
「うん、了解」
葛西さんは上の鍵をこちらに渡すと、つけているインカムをとんとん叩いた。……そういえば、インカムを着けていなかった。
慌ててインカムを装着して電源を入れると、急いで上階へ急いだ。
全体照明とスポットライトの準備が終わったところで、インカムマイクをオンに切り替える。
「
『
『了解』
準備完了を伝えると、葛西さんや監督側からも答えが返ってくる。客席のところにはこちらを見上げている高橋と新藤さんの姿も見え、僕はスポットライトを天井辺りで軽く動かすことで返事をした。
裏の方の準備が完了し、役者もすでに配置についた。これでいつでも始められる。
「それじゃ、始めるよ!」
新藤さんの声がインカムではなく、普通に地声で聞こえてくる。別の誰かが喋っているわけではないけれど、ここまでしっかりと声が届いてくるのは簡単なことじゃない。
とりあえず、全体照明の前に移動してスイッチを手に取った。
『開幕、よろしく』
『はーい』
葛西さんの返事と共に、暗幕がゆっくりと開き始めた。
幕が決めた場所まで開くのをきっかけに、全体照明をカットインした。
下手から台本片手に――本番では自転車を押しながら――高校生役の柴田が入ってくる。自転車のペースを考えて少しゆっくりと歩きながら、舞台の奥の方に自転車を止めるようなそぶりを見せて中央のベンチ――今はパイプ椅子が三つだけど――に座った。
「あー……疲れた」
ボーダーに赤いフィルムを入れているので、舞台全体が赤く彩られている。
「もう動けねぇ。足ガクガクだし……」
柴田が座り込んだところで、下手から女子大生役の瀬田さんが駆け足で入ってきた。
「はぁ、はぁ……きゃっ!」
瀬田さんが舞台の中央で転ぶ。柴田の視線が瀬田さんに向いた。
「え、嘘、ヒール折れてる? あー、もう最悪」
「あの、大丈夫ですか?」
「え? ……あ。ご、ごめんなさい」
「いえ、気にしないでください。……座りますか?」
「ありがとう。ちょうど足が痛くて。ヒールで走るもんじゃないわね」
柴田が瀬田さんを助け起こし、さらに言葉を交わしながらベンチに案内する。
時刻変化を感じさせる演出のために、全体照明を数パーセントほど落とした。意識しても認識できるか分からないほど微小な変化だ。
今回は場転がない予定なので、夕焼けから夜へと移り変わる空模様を意識させるような照明演出が採用された。
僕が全体的な明るさを調整しつつ、色は葛西さんが赤から青へと変化させていく予定だ。
「えっと……大丈夫ですか?」
「大丈夫。ヒール折れたのと、ちょっとすりむいちゃったくらいで」
「大変じゃないですか! ちょっと待っててください」
柴田がリュックを漁る演技をしているところを見ながら、ページをめくる。
ここまでは台本の通りに進んでいる。さすがの記憶力というかなんというか。
「テニス部? 準備がいいのね?」
「よくケガするんで、いっつも持ってるんですよ」
「へぇ……私も大学でテニスしてるけど、そういう人いないけどなぁ」
瀬田さんと柴田の会話がしばらく続く場面に来たところで、僕はインカムをオンにした。
「あの、客席から見て夕焼けの赤ってどう?」
『うーん……赤みがちょっと強すぎるかな。夕焼けっていうよりは、火事?』
『やっぱりかー……単色の赤じゃ厳しいよね』
「それはそうだと思う」
全体照明を数パーセント落とす。
「オレンジのフィルムってある?」
『ないよ。三原色だけかな』
「混ぜる?」
『それしかないと思うよ』
いつの間にか、客席で見ている監督二人をそっちのけにして葛西さんと言葉を交わす。
三原色で夕焼けのオレンジを作り出すのは、至難の業というか、なかなか難しいのではないだろうか。前に試行錯誤したことがあるけれど、納得のいく色を出なかったことを思い出す。
『でも、仕方ないからね。オレンジって、どうやって作ればいいの?』
「緑と赤の比率をどうにかいじってたらできるんじゃなかったっけ?」
普段からフィルムを入れて色を作ることが多いわけではないので、光の三原色に関する記憶に自信がない。
頭をひねりながら、どうすればいいかを思い出す。
「緑のフィルムって入れた?」
『一応、全部のフィルムは入れてたはずだよ。…………うん、袖からも入れてるのは見えた』
「分かった。じゃあ、少し緑足してみようか」
『全体照明は一度落とす?』
「いや、つけた状態で夕焼けの色を出したいんだから、普通に入れてていいんじゃない?」
『そうだね。ちょっと足してみる』
その返事が聞こえ、少しすると赤みが少しずつオレンジに変化していく。
『どう?』
「……夕焼け、とは言いにくいかも。最初よりも近くはなったと思うんだけど」
『確かに。もう少し……暗く?』
「青足してみる?」
『青?』
「夜の空って青と赤を足したり、光量を落として作るよね?」
『うん、そのつもりだけど』
本当は明るさを落として普通に暗くしたいとは思うけれど、光量を落とすと役者の表情や動きが見えなくなってしまう。
それは決して許されないので、青を使って夕暮れから夜の空を表現していきたいところである。
「赤を基本的にずっとつけておいて、最初は黄色を足している感じ。そこから、徐々に青を足すことで夜にグラデーションさせていくのがいいかなって」
『ふむふむ……ちょっとメモする』
葛西さんの方からペンで何かを書くような音が聞こえてくる。
台本を確認して、全体照明を数パーセント落とした。
『……それで? 結局、どうすることになったんだ?』
「えっと、ボーダーの色については今後も練習しながら調整していく方向かな」
『一応、黄色と青をいじりながら夕焼けの赤から夜の黒に近づけていく予定だよね』
「うん。客席からの印象を大事にしたいから、監督二人の意見を取り入れていきたいかな」
『私達の? うーん……修平君はどう?』
『俺? そうだな……もうちょっと落ち着いた感じが欲しいよな。今の赤は刺激が強いっていうか』
客席にいる、新藤さんと高橋が話をしている。
確かに、上のここから見ても夕焼けの赤というにはいささか赤みが強すぎる。一番最初よりは確かに柔らかくなっているものの、それでも微妙であることは変わっていない。
『落ち着きって言ってるし、緑とか青を足す感じかな?』
「そうだと思う。赤を少し落としてみるのもありじゃないかな?」
『確かに。ちょっと落としてみる』
もともとの方針である、夜に近づくにつれて夜の色に移り変えていく演出は忘れないまま、色の調整を続ける。
光量を落とし続けている全体照明も、そろそろ10パーセント近くを削ろうとしていた。
『これの調整は、今日明日で済みそうか?』
「うーん……ずっと体育館を使って作業できるなら、だけど……」
僕達がずっとここで作業していては、部室で作業しているみんなへの指示出しができなくなる。
それに、そもそも体育館は運動部も使うことになっているのだから、むやみやたらに作業をするわけにもいかない。
『難しいだろうね』
「その辺りはいろいろ勉強したり調べたりしながらやってみるよ」
『よろしく頼む』
高橋の言葉にうなずきながら、僕は再びステージに視線を向けた。
「……みなさん、ちょっといいですか?」
事務所の一室。
練習の合間の休憩時間でジブン――大和麻弥――は、パスパレのメンバーに声をかけた。
「麻弥ちゃん、どうかしたの?」
みんながジブンの方を見つめる中、代表して彩さんが代表して質問をする。
その返事に答える代わりに、手に持っていた紙袋からあるものを取り出した。
「……色紙?」
「実は、皆さんのサインをいただけないかと思いまして。一応、事務所の方には許可をもらってます」
「えっと、これは誰に渡されるものなのでしょう?」
「ジブンの友人の、お兄さん、ですかね」
イメージするのは、少しだけ背の伸びた山科君。
お兄さんにあったことがないので、山科君のイメージしか出てこないのだ。
「実は今、演劇部が他校と合同公演をすることになりまして」
「……それで、その別の高校の友人のお兄さんがパスパレのファンだった、ってことかしら?」
「そうです! 流石、千聖さん!」
千聖さんの理解が早くてとても助かる。
持っていた色紙とペンをみんなが座っているテーブルの中央に置いた。
「色紙一つに五人分のサインを収める感じで、よろしくお願いします」
「りょうか~い! ちょちょいっと、書いちゃうから!」
日菜さんがすぐさま飛びついて、勢いよくサインを書き始めた。後は、時計回りに色紙が渡されていく。
「そういえばマヤさん、合同公演をする高校とは、どこでしょう?」
「青蘭高校です。実は、今日も八月末の合同公演に向けて準備してる最中なんですよ」
思い浮かぶのは、昨日用意したウェザリングのパーツのこと。
きっと、山科君や涼さんがしっかりと指示出しをして作業を進めてくれているだろう。ジブンは今日参加できない分、後日しっかりと手伝わないといけない。
「そういえば、青蘭高校って男子校だよね? 男子と一緒に舞台をしてるの?」
「はい。いつもは女子だけですから、舞台の幅も広がって楽しみなんです」
役者側の人とはあまり話せていないが、みんな真剣に演技に向き合っている人達ばかりなのでいい人達だと思う。山科君が自信を持っているのだから、きっとそうだろう。
と、一人で考えていると、
「ねえ、麻弥ちゃん」
千聖さんが冷たい声音でジブンの名前を呼んだ。
「それって、男の子と仲良くなってるということかしら?」
「え? そうですね」
ジブンに似て、機材を見ると少し……いや、かなりテンションが上がってしまう彼の姿を思い浮かべる。
出会ってまだ二週間も経っていないというのに、彼のことをかなり信用しているジブンがいた。今まで、男の人と友人になったことはないけれど、彼に関しては親友と呼べる仲になるだろうという確信がある。
「麻弥ちゃん。貴方はアイドルなのよ? あんまり、男の子と仲良くなるのは危ないんじゃないかしら?」
「いや、でもジブンと彼に関してはそういう感じじゃないですし……」
昨日の買い出しだって、議論を交わしてどうすれば舞台をよくすることができるかしか考えていなかった。
千聖さんが考えているような、男女交際とか、恋愛とか、そういった要素はジブン達には不要な要素としか思えない。
「当人同士がどう思っていようと、それを信じるかどうかは受け取る人次第よ。別に、私だってむやみに人間関係に口を出したいわけじゃないけど……」
「ち、千聖さんが気にすることはないですよ! ジブンが考えてなかったわけで……」
千聖さんの懸念は理解できた。
確かに、ジブンと山科君の関係がどうであろうと、それをどう受け取るかはファンの方やメディア次第だ。ジブンにはまだ他人事のような気持ではあるが、その意図するところは分かる。
「まあ、部活で会っているだけなら、そうそう問題になることもないと思うわ。……でも、くれぐれもプライベートでは気を付けてね?」
「は、はい……。気を付けます」
強めの念押しに頷く。
ジブンが批判されるのはともかく、その矛先が山科君にまで影響してしまっては申し訳ない。
みんなが書いてくれた色紙の空いたスペースに、ジブンのサインを書き込んで紙袋の中にしまう。紙袋はいったん席の方に置いた。
席に座ると、日菜さんがこちらに近寄ってきた。
「それで? 麻弥ちゃんが仲良くなった男の子ってどんな人なの? 面白い人?」
「ちょっと、日菜ちゃん! ……で、でも、私も気になるかも」
「彩さんまで……」
とはいえ、パスパレのみんなは女子高で男子と関わる機会は少ない。
男子の友人というのが気になるという気持ちはよくわかる。
「そうですね……男子になったジブン、というと近いでしょうか」
「それは、マヤさんのように、機材が好きということでしょうか?」
「そうです! 彼……山科君は青蘭の専属の裏方をやってる人なんですけど、照明機材がすごく好きな人でして!」
青蘭演劇部との活動の思い出は、すなわち山科君との活動の思い出だ。
「実際、ライトワークも上手なんですよ。止まる時や切り返す時の動きが高校生としては滑らかで綺麗で」
ジブンはあまり高いところが得意ではないので、上からのライトワークを経験はほとんどない。だからこそ、彼のスポットライトの技術には尊敬の念を抱いている。
「確か、明後日辺りに、宮川タカユキさんの舞台に見学に行くことになってるそうで」
「それって、前に千聖ちゃんが舞台をやった時の演出家の人だよね?」
「ええ……確かに、来月舞台があって近くで練習をしていると伺ったことがあるわ」
「あ、きっとそれですね。プロの舞台機材を見せてもらうという話でした」
……ということは、明日は涼さん一人で裏方を回すことになる、ということだろうか。練習が終わった後、二人に状況を確認しておく必要があるかもしれない。
今日はウェザリングを実際にやってみるという話だったけれど、どんな風になるのか、どの程度の時間が必要なのかが全く分からない。だから、進捗は早く聞きたいところ。
「……麻弥ちゃん、考え事?」
「え? あ、すみません。舞台について考えてて」
声をかけられたので意識を戻す。
そうだ、今はライブに向けて練習がある。
次のライブには山科君も来ることになっている。バンドを知らない彼が初めて見るライブなのだから、これが基準になるはずで、だからこそカッコ悪いところを見せるわけにはいかない。
「じゃあ、そろそろ練習を再開しましょうか」
席から立ちあがる。
アイドルとは言えないジブンだけど、彼がサインを欲しいと言ってくれたから。
ジブンをアイドルと認めてくれた人だからこそ、その相手に恥じるような舞台を見せたくはなかった。
今回は10話記念……というわけではないですが、大和さん視点のエピソードを挟んでみました。好評というか、反応が悪くなさそうなら今後も入れることがあるかもしれないです。まあ、入れても1,2回くらいですけど。
さて「ジブン、アイディアル」という大和さんのイベントがあります。
アイドルとして不適なのではと悩む彼女と、そんな彼女の背中を押すパスパレのメンバーのお話です。
とても素敵なお話ですので、良ければぜひぜひ。