多々良小傘もまた、孤独な世界を見てきた妖怪。
古典妖怪の中でも唐笠お化けは、物から妖怪になった。
付喪神になり損ねたその妖怪は、成仏することも出来ないまま人間から忘れ去られた。
「私も、同じだよ。こいしちゃんの辛い記憶と同じ。」
こいしに自身の過去にあった記憶を呼び起こそうとすると、自然と涙があふれて来る。
あれからどのくらいの月日が経ったのかさえ忘れてしまっても可笑しくない。
霊夢でさえも多々良小傘のことを気にしてくれるようになったのは、宗教異変の後だった。
「霊夢さんがね、時々だけど針の供養をしたいって話があったんだ。」
こいしは、小傘の異変の後の話をし出したので聞く事にした。
だが、こいしは分かっていた。
小傘の顔が、その語っている眼が…どこか、寂しそうな表情をしているのを始めて見たのだ。
「小傘ちゃん…大丈夫?無理しないで良いよ。話したくないのなら、話さなくても良いから。」
こいしは、小傘の肩を優しく撫でる。
どこか寂しそうで悲しそうな表情をしている小傘は、こいしに優しい微笑みを見せる。
ちょっとでも、こいしに自身の話をして今まで抱えていた重荷を下ろそうと話を続ける。
「大丈夫だよ。でも、こいしちゃんには、聞いて欲しいことなんだ。聞いて、くれる?」
こいしは、小傘の青く刹那な瞳から涙をこぼすのを見る。
だが、もう片方の赤く灯火に似た瞳からは、相手に伝えたいと思いが募っている様に見える。
小傘もまた、辛い過去を背負って妖怪として生きて来た生きざまを聞く事になった。
「私はね。最初は、人間の手によって作られた傘じゃなかったんだ。」
唐笠お化けという古典妖怪は、元は、傘から生まれた妖怪ではなかった。
元々、幼い少女が大事に持っていた傘に魂が宿って生まれた妖怪が根源なのだ。
「一人の少女が私を大事に扱ってくれた傘。その少女が、私なんだぁ。」
「え、そ、そうなの!?は、初めて聞いたよ。」
小傘は、過去の話を親しい人でも語らなかった。
それには、深い闇を抱えて居たからではなく話そうにも話せない理由があるからだった。
「その少女は、寺子屋の子たちから苛められてたんだ。ただ、目の色が違うってだけで。」
今の小傘の眼を見るに、赤色と青色のオッドアイと言われている人間は珍しいだろう。
もちろん、苛められる理由のほとんどは、生まれて来た人間だとしても障害を持っていた。
“色盲目”と呼ばれている病気は、今で言うと“失明”する可能性がある症状。
「当時の私は、失明するかもしれない病気を患っていたんだ。」
目が見えなくなるのは、成人してからがほとんど発症するのだが幼少期に患うのは珍しいのだ。
当然、他の子どもたちからしたら化け物として呼ばれてしまって苛められるのは…分かる事。
「それでも、私には、いつも雨が降っていればそんな目を隠せられる傘を持っていたの。」
「もしかして、人間の時って…お嬢様が持っていそうな日傘を持っていたの?」
小傘は、頷いた。
だが、人間だった当時の小傘にとっては、貴族だとかお姫様だとかが流行ってた時代。
日本で言うところ、古くから平安時代からも日傘は存在していたのを知っているだろうか。
「だけど、私は…寺子屋の帰り道で、意地悪していた子たちに…ヤられちゃったんだ。」
子供は、刀を持つことは許されてなかった。
では、どうやって子供たちは小傘をヤることが出来たのだろうか。
「ま、まさか…小傘!?」
そのまさかだ。
小傘が人間だった当時からしたら、子供でも簡単にヤれる方法だとしたら…“首吊り”。
荒縄ぐらいなら、子供たちでも扱い方を知れば悪知恵を働いて作るのも造作もなかった。
「…当時、好きだった男の子がいたんだ。でも、私の前には現れなかった。」
小傘にだって、人間だった時の記憶があるのも当然だった。
だが、その生きていた時までの記憶だけが鮮明に残っていると思ってはいなかった。
こいしは、そんな小傘を優しくそっと抱き寄せてくれた。
「…私が覚えているのは、木の下で待っていた…あの時、木の上まで吊るされる瞬間まで。」
子供一人の力では持ち上がるはずもない。
当然だろう、子供が何人かいれば持ち上がる滑車の原理。
当時の子供たちは、いけないことだと分かっていないまま木の上でもがく少女を…見ていたのだから。
「意識が遠のく中、好きな男の子が…皆の後ろで、眺めてた…涙を浮かべて、私に…手を伸ばして。」
小傘の覚えている記憶は、そこまでだった。
だけど、あの時に彼に声をかけた言葉は、今でも残っていた。
過去では言えなかったあの言葉を、今でも心の奥底に刻まれているのだから。
「…小傘、もう…話さなくていいよ…もう、良いから…私が、居るから!!」
こいしは、大事な友達のために涙を流しながら泣き続けて抱きしめている。
ずっと、孤独に耐えて自分の目が見えなくなるのならいっそのこと…苦しみから解放させて欲しい。
生きていた当時の少女である小傘は、あの頃に置いて来た首を吊った木の近くの傘に願った。
「“生きるぐらいなら…もう一度、しっかりと見える目で…君に、告白を…するね。”」
小傘もこいしも、しばらくはお互いに泣き続けていた。
その話を遠くで盗み聞きしていた八雲紫と博麗霊夢は、涙腺を崩壊していた。
「あの子は、望んでこの幻想郷に来たんじゃないの…あの記憶を忘れるために来たわけじゃないの。」
「知っているわよ。少女の魂が浮かばれないから…助けたいと思った…のよね?紫。」
紫と霊夢は、泣き声交じりの会話をしていた。
こいしとは違った小傘の過去の話は、射命丸文の文々。新聞の記事に掲載された。
こいしの記事を書かなかった文は、その姉である古明地さとりからあることを言われていたのだ。
『文さん。小傘さんの話を記事のネタにしたみたいですね。命蓮寺の皆さまからお礼がしたいそうですよ。』
あれから射命丸文を見たという話が聞かなくなったのは、言うまでもないだろう。
そして、こいしと小傘もまたあれ以来からお互いの幻想郷での苦労話が絶えることは無かったという。
ということで、小傘編をお送りしました。
平安時代から日傘が流通していたのをご存知でしたか?歴史上では、女性のほとんどが傘を持っているのが貴族の御令嬢か姫様ぐらいが所有していたと諸説に書かれているようですよ。私も今回は、歴史の勉強をしていて文献でも書かれていなかったので資料を探したらなんと、江戸時代にまた日傘ブームがあったというではありませんか!?なんということでしょう!!歴史的な大発見の中でも、小傘ってどっちの方から幻想入りをしたんでしょうね?江戸時代となると小傘の時代風景がちょっと古い感じなんですよね。でも、平安時代となると服装がそれっぽくない気がするって思う次第でして。
という、雑談を挟んでからの今作はいかがだったでしょうか?感動作品は、これっきりにしたいと思っている作者でございまーす。何故なら…投稿期間が長くなるんですよね!!構想上、キャラクターの感動できる表現が難しいんだよ!!と言いながらも書き続けている私、凄いって自分でも思わないとやってられないんですよねー。
ではでは、私の雑談トークはこれで終わるとしまーすね。
それでは、アディオス!!(またね!!)