片目の道化師   作:オイラの眷属

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気分転換に書き始めた小説です。
正直長続きする気があまりしません(問題発言)


プロローグ

夢を見る。

あの事故の時の光景だろうか。ぼやけて見える紅い視界。くぐもっただれかの悲鳴、叫び。

しばらくすると世界は暗転し、一筋の光が現れる。その中には過去の世界の自分がいた。その私は楽しそうな顔をしてダンスをしている。それはもう、殺したくなるほど笑顔で。

私はわかっている。夢の私は私の歪んだ願いの象徴であることを。きっと私はその歪んだ願いが叶うのを心の奥底では信じ続けていることを。それを肯定するようにその夢は毎日のように現れ、私を蝕んでいく。

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

汗びっしょりで目が覚める。同居している姉はもう仕事に行ってしまったようだ。服を脱ぎ、クローゼットを開けた時にふと何日か前にいきなり家に押しかけてきた親友の言葉を思い出す。

「ヒカリ、退院してから外でてないんでしょ。久しぶりに休み取れたからちょっと出かけない?ガトーショコラが美味しいって有名なカフェに行きたいんだ〜!土曜日の朝の10時からね!」

それだけ言ってあっという間に去っていった親友の姿が目に浮かんだ私は壁に掛けてある時計を見る。

9時過ぎを指していた。

あっ。

 

「いやマジかマジかマジか!ヤバイじゃん!」

 

眼帯をつけ、急いで服を選ぶ。あいつを待たせると後が面倒だし。

 

 

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朝食を代償になんとか待ち時間前に待ち合わせ場所に到着した私。お腹空いた、トホホ・・・。

 

「おまたせー!ごめんね!もうちょっと早く来る予定だったんだけど・・・」

「あ、いいよいいよ。私も今着いたとこだし」

 

私に手を合わせて謝っているのは月島まりな。私の昔からの親友だ。高校生からの付き合いだが本当に変わらないなぁと思う。

 

「じゃあ行こうか。あんまり遅くなると列ができちゃうし」

「うん!楽しみだなぁ!」

 

私とすれ違う人のほとんどは私の顔を横目で見てくる。多分、私が変なデザインの眼帯をつけているからだろう。こんな厨二臭いデザインの眼帯をつけているのには理由があるのだがすれ違う人にいちいち説明するわけにもいかない。だから外へ出ることを避けてたんだが、そろそろ慣れないといけないな。

店に到着し、まりなが注文をしている時も私を見て店員がちょっと驚いていたがすぐに気を取り直して注文を受けていた。コスプレとか思われていなければいいんだけど。

私達は指定された席に座り、しばらく雑談をしていたがしばらくするとまりなは真剣な顔をして私を見つめてくる。

 

「・・・ん?私の顔になんか付いてる?」

「ヒカリさ。これからどうするつもりなの?」

 

まりなが柄にもなく落ち着き払った声で私に問いかける。

これからというのは私の今の状況に関係してくる。

私は元々は、結構有名なダンスグループのリーダーだった。ジャ◯ーズと同じぐらいの知名度はあったと自負できる。しかし、1ヶ月前にある事故に遭い片目を失った。後遺症が残る器官が片目だけで済んだのは不幸中の幸いだったが、しばらく音楽活動は出来なくなり、一応事務所には一時休業ということにしてもらっている。しかしそれは私が望んでいた対処ではなかった。

 

「・・・どういう意味よ?」

「そうだね・・・単刀直入に言えばもうダンスを辞めたいって思ってるとか」

「・・・いや、そんなこと思ってないよ」

「もう、ヒカリって昔から嘘つくのも下手だよね。それに責任感も強い・・・いや、強すぎて空回りしてるのかもね。ヒカリ、今チームの人にも迷惑かけてる。そして復帰しても目のせいで迷惑をかけるのが怖い・・・こんな風に思ってるんじゃない?」

「はぁ・・・あーあ!バレちゃったか。敵わないなぁ、まりなには」

「ふふっ、伊達に何年も親友やってないよ!」

 

本人は胸を張ってそう言ってるが私の心情を彼女が察したのは私が彼女の親友というからだけではないだろう。まりなは人の心の機微を読むのに長けている。その能力はライブハウスでの仕事でも役に立っているようだ。

 

「それでねっ!そんなヒカリに提案があるんだけど・・・私が働いてるCiRCLEで働いてみない?」

「あのライブハウスで?なんでまた私が?」

「前に私がガールズバンドを対象にしたイベントがあるって言ってたの覚えてる?」

「うーん・・・?あっ、あの1つもバンドが応募してくれないって愚痴ってたアレ?」

「その覚え方はちょっとやめて欲しかったけど・・・そうだね。そのイベントなんだけど、新人スタッフの子が頑張ってくれたおかげで5つのガールズバンドが応募してくれてさ!イベントも大成功!すっごく良かったんだよ!本当に良かったの!」

「う、うん・・・凄いのはわかったから」

 

頰を紅潮させながらまくし立てるように喋るまりな。彼女がこんなに興奮して喋るのは珍しい。だがこのままでは話が脱線しそうなので本題に戻す。

 

「ところで私の将来とガールズバンド、なんの関係があるの?共通点が全く見えないんだけど」

「あっ、ごめんごめん。話がズレちゃったね。そのガールズバンドの子達なんだけどね。技術的にはまだちょっと荒削りだけど、皆音楽にかける情熱はアマチュアレベルじゃないんだ。そんな子達を見てればヒカリも自分がこれからダンスと向き合うか、わかるんじゃないかなーって思ったんだけど、どうかな?」

 

確かに音楽に真っ直ぐ向き合う子達の演奏を見れば、これから音楽とどう向き合うべきかわかるかもしれない。

しかしそんな簡単にスタッフになれるのだろうか?

 

「ちなみにオーナーからはOK貰ってるから、ヒカリがスタッフになりたい時になれるよ」

「まりなどういう特権使ったの!?」

「え?元プロダンスグループのリーダーって説明しただけだよ?」

 

そういう風に説明しちゃったかー・・・。まぁライブハウスでしそうな仕事は大体出来るけどさ・・・仕方がない。

 

「じゃあそこで働いてみようかな・・・そろそろ働かないと姉さんに怒られるし」

「やったー!じゃあ明日にでもオーナーに挨拶に・・・」

「ただし!私の前の仕事はバンドの子達にもスタッフさんにも言わないこと!私が働いてることバレるとライブハウスに迷惑かかっちゃうから」

「了解!私とオーナー、ヒカリだけの秘密だねっ!」

 

私は退院してから髪をバッサリ切り、染めて金髪にしていた髪も地毛に戻した。一度姉に誰?って言われたし多分外見でバレることはないだろう。

こうして私はCiRCLEでスタッフとして働くことになったのだった・・・・・

 

 

 

 

ちなみにガトーショコラはとても美味しかった。この時の私は知るよしもないが、二人は後にこのカフェの常連になる。




いかがだったでしょうか?
タグ通りこの小説は気まぐれ更新。気分次第で投稿が早かったり遅かったりします。あまり早い更新は期待しないで下さいませ。

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