ヒカリの姉の呼称を姉から姉さんにしました。
ちなみに姉の名前はまだ決まってないです。
CiRCLEのスタッフになった当日。私は早速ある女性と掃除をしていた。そこで私は思った。
ライブハウス広すぎない?????
ライブステージはもちろん、スタジオとかロビーとかもう部屋が多すぎる。カフェテリアとかもうダメ。暑い、炭になる。
正直に言うと、ライブハウス舐めてた。
掃除を終わらせた時に背伸びをすると、腰から変な音がした。入院していたとはいえさすがに運動しなさ過ぎたようだ。明日は筋肉痛を覚悟しないといけない。
「はるさん・・・ここのライブハウス広いですね・・・掃除だけでも結構疲れる・・・」
「お疲れ様です。今日はこれぐらいにしときましょうか。それと、掃除は慣れればあんまり疲れなくなります。頑張りましょう!」
そう言いながら私に笑いかけてくる黒髪ショートの女性。この人の名前は矢野はる。私の少し前に入ったいわゆる先輩だ・・・年下だけど。まりなが私の指導役として紹介してくれたんだけど、年上として接するべきなのか後輩として接するべきなのかイマイチわからない。
「こんにちはっ!」
「うわっ!いや誰君!?」
驚いた私が慌てて後ろを振り返ると、猫耳のような特徴的な髪をしている女の子がいた。さっきの元気な挨拶といい、この輝くような笑顔といい多分この子天真爛漫の権化なんじゃないかな?
ん?何か背負っているけど・・・これってギター・・・だよね?
ってことはまさかこの子って・・・。
「あ、香澄ちゃん。今日も練習?」
「はいっ!って皆まだ来てないんですか?」
「他のメンバーの子は・・・まだみたいだね。ちなみに集合時間って何時?」
「5時半です」
「え!?今4時半だよ!?まだ1時間あるじゃん!?」
「あ、あはは・・・早とちりしちゃいましたね・・・」
「えーと・・・はるさん?この子もしかしてガールズバンドをしてたりとかは・・・」
「そうですよ。ぽーー」
「Poppin'Partyのリーダーをしている戸山香澄です!はじめましてっ!」
「・・・途中で遮らないで欲しかったなぁ・・・」
え!?この子がリーダー!?大丈夫なのそのバンド!?
口に出しそうになったけどなんとか押し込む。
こちらも自己紹介をしておこうかな。ボロが出ないようになるべく要点だけ。
「私は野田光。ここで今日から働くスタッフよ。よろしくね香澄ちゃん」
「よろしくお願いしますっ!ところでその眼帯は・・・」
「ちょっと事故があってその時に・・・ね。多分外せる日は来ないと思う。変だと思うけど気にしないでくれればありがたいな」
「えっ・・・す、すみません変なこと聞いて」
「謝らなくていいよ。よく聞かれることだから」
口ではそう言ったが、内心は複雑だった。
眼帯のことを説明した時、謝られるのはあまり好きではない。だからといってその眼帯かっこいいよとか無責任なことを言われた時は相手を殴りとばしたくなる。本当に殴ることはないが。
多分、私は眼帯のことに関しては相手から何を言われても腹を立ててしまうのだろう。だが相手に怒りは決して見せない。私の弱い
「ーーーリさん?ヒカリさーん?」
「ぁーーーご、ごめんごめん。ちょっと考え事しちゃってた」
まずい、二人が心配そうな顔をしている。心配させちゃったのはマズかったかもな。どうしようか。そんなことを考えていると、まりなが書類を抱えながらこちらに向かってくる。
「ヒカリー!掃除終わったー?」
「うん、今日のぶんはもう終わったよ。はるさんの説明もわかりやすかったし、掃除はもう一人でやっても大丈夫だと思う。他に何かやることある?」
「うーん・・・初日だし、今日はもうこのぐらいにしとこうかな。じゃあまた明日からもよろしく!」
「ふふっ、わかった。明日からも頑張る!」
まりなが親指を立てる。これが何を意味するのかわかった私も渋々まりなに向かって親指を立てる。これは私達が高校生の頃に流行っていたバンドのメンバーがよくやっていた仕草で、あの頃の私達は何かあるたびにこれをしていた。
今でも別れ際に冗談ですることがあるのだが・・・今しなくてもいいじゃん。ほら、はるさん苦笑してるし。ところが香澄ちゃんはそんな私達の様子を見て目をキラキラさせていた。嘘でしょ香澄ちゃん。
「ヒカリさんっ!まりなさんとは知り合いなんですかっ!?」
「え?ええ・・・まりなとは高校生からの付き合いだよ。今のも高校生の頃によくしてた仕草なんだけど・・・恥ずかしくないのかなぁ・・・?」
「恥ずかしくないですっ!かっこいいと思います!」
「そ、そうかな・・・?」
かっこいいって言われたらそれはそれで恥ずかしい。なんと反応すればいいのかわからなくなってタジタジになってしまった。でも香澄ちゃんがいい子なのはわかった。
その時、私の携帯から着信音が鳴る。見てみると姉さんからだった。最悪のタイミングだけど出ないわけにもいかない。少し席を離れて出てみると、電話から聞こえてきたのは謝罪の言葉だった。
『ーーーごめん』
「もう、今番組の収録中でしょ?どうしたのいきなり?何か変なことでもした?」
『・・・』
「・・・姉さん?」
私の姉さんは私がリーダーだったダンスグループのメンバーだ。
グループには過激なファンも(ほんの一部だが)いたことは確か。姉さんがそういう輩によって危険に晒されているのではないかと私が本気で心配していると
『ーーー6時』
「え?」
『あの約束。私がヒカリに伝えた集合時間、7時だったけど私が記録してたスケジュール、ズレてた。6時だった』
あの約束とは、今日の夜に退院祝いと就職祝いを兼ねてダンスユニットのメンバーで食事に行くというものだ。嫌な予感がして時計と見てみると、針は5時を指していた。ちなみにここから集合場所までは最低でも1時間はかかる。そして私は今さっき掃除が終わったばかりのため帰る準備は全くしていない。
やってくれたな姉さん。
「ええぇぇぇぇぇぇーーーー!?」
『ーーーホントにごめん』
「いや、集合時間までに到着とか絶対無理だよ!?私職場にいるんだよ!?いっつも時間厳守とか言ってる姉さんが時間間違えてどうするの!?」
『じゃあヒカリ、頑張って』
「あっこら逃げるなーー」
私が言い終わる前に携帯からはツーツーと機械音が聞こえてきた。ホントやってくれたな。私は急いではるさんと香澄ちゃんの所へと行った。色々な感情が混ざって身体の震えが止まらなかったけど。
「ごめん、急用が出来ちゃった。少し話とか聞きたかったんだけど、それはまた君のバンド・・・ぽっぴんぱーてぃー・・・だったよね?そのメンバー全員が集まった時にでも聞こうかな。よかったらその時に演奏も聞かせてね」
「はいっ!私もヒカリさんに聞いてもらうのを楽しみにしてます!」
「ふふっ、ありがと。じゃあはるさん、私上がりますね。お疲れ様でした」
「えっ、あ、はい!お疲れ様です!」
私は二人に挨拶だけしてロッカールームに向かう。あそこまでの最短ルート、急いで調べないとなぁ・・・。
ヒカリの眼帯はFGOのオフェリアみたいに頭に直接巻き付けるものと思って貰えればいいです。わかりにくいですけど。
ちなみに理由はちゃんとありますので。