今回はボーカルの彩が出てきます。このまま1回全バンドのボーカルを1人で主人公に絡ませようかなーって思ってます。ちなみに彩はこの物語の全てのバンドメンバーの中で唯一、前から主人公と親密な関係にある人物です。
(報告)主人公のダンスグループのメンバーが出てくるため、タグに「オリキャラ多数」を追加しました。オリキャラはあと5人は出てきます。めっちゃ多い。
「パステルパレットが今この事務所にいるようだったら、少し会わせて貰えませんか?」
私の頼みを聞いた瞬間、満面の笑みを顔に浮かばせていた高橋さんの顔がみるみるうちに引きつっていく。
「えっ・・・えぇぇぇぇぇーーーーっ!?さ、流石に無理ですって!いくらヒカリさんだからってアポもなしに会わせたりしたら、上司から大目玉食らっちゃいますよ!」
「そうですか・・・やっぱり難しいですよね。すみません無理言っちゃってありがとうございました」
「・・・いえ、やっぱりせっかく来ていただいたのに何のお礼もせず帰らせるわけにはいきません。ちょっと待っててください。私、なんとかできないか上司に相談してみます!」
「え!?そんな大丈夫です高橋さん!高橋さーーん!!」
高橋さんはバッと後ろを振り返ると、私の話も聞かずにそのまま全速力で廊下を走っていった。
私のために動いてくれたのは嬉しいが、アイドルなどの芸能界の人間が、個人との面会のためにスケジュールをズラすというのはまずありえない。私があの子に会うのは難しいだろう。
あの子がどんな風に成長したのか見たかったけど・・・事務所の事情に逆らってまで見に行くことは出来ない。
姉も私と同じ答えに行き着いたようで、私を励ますかのように私の肩に手をポンと置いた。
「残念だったねヒカリ。帰りにクリームパン買ってあげるから泣いたりしないでね」
「やめてよ姉さん。私だってもう子供じゃないんだから。
「・・・・・そう」
さっきもそうだったけど、姉さんは時々こうやって私といる時にとても悲しそうに目を伏せる。何故かは全くわからないけど。
パスパレには会えないだろうけど一応高橋さんには帰りの挨拶ぐらいしないとなという結論になり、廊下の椅子に2人で座っていると、高橋さんがドタドタと大きな足音を立てて戻ってくる。
私がまさかと思いながら椅子から立つなり、高橋さんは興奮したように私の手を握るとブンブンと振って、キラキラと目を輝かせながらとても嬉しそうに言った。
「話してみたら、ヒカリさんには色々とお世話になってるからぜひ演奏も見て頂きたいと仰ってました!今からリハーサルらしいです!行きましょうヒカリさんっ!」
マジですか。
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リハを行う予定だというスタジオに向かう途中、姉さんが訝しげにこちらを見て言った。
「ヒカリってアイドルのストーカー?」
「ンなわけあるか!どうしたのいきなり!?」
「パスパレってどこかで聞いたことあると思ったら人気急上昇中のアイドルバンド。彩はそのボーカル。しかもヒカリ、前からそのバンドのライブの動画見たり、インタビュー雑誌買ってたりした。ついには事務所に押しかけて会わせてくれと言ってスタッフを困らせる。もうこれは誰がどう見てもストーカー」
「事務所のところから完全に話を捏造してるじゃん!彩は私の教え子よ!片目を失う前にダンスを教えてた研修生の一人!」
「あ、そういうことね」
「ふふっ、ヒカリさんは彩さんを研修生の中で一番熱心にコーチしてたんですよ」
「・・・彩は本当は努力家だったから、私はそれに応えただけです。まぁあの子がバンド組んでから会うのはこれが始めてですけどね。バンド結成した直後にトラブったって聞いた時はなんとか助けてやりたいと思ってましたけど、その時の私は全身包帯ぐるぐる巻きで病院にいましたし」
「ヒカリそれ笑えないからほんとやめて」
姉さんの鋭い視線が私に突き刺さる。
事故で入院した時、見舞いに来た人の中で一番動揺していたのは姉さんだった。私の病室に来る時の姉さんの顔は死人のように青白く、怪我をしているこちらが心配するほどだった。まぁ包帯で全身ぐるぐる巻きとまでは行かなくてもリハビリを含めて全治6ヶ月の大怪我だったし、姉さんがそのぐらいの大怪我をしたら私も動揺はするだろう。泣いたりはしないと思うけど。
「着きました。すぐにリハ始まると思うので静かにお願いします」
「「了解です」」
スタジオに入ると軽快なリズムが聴こえてくると同時に、澄み切った歌声がスタジオ中に響き渡った。
(うわぁ・・・ライブも見てたけど、歌も雰囲気も前とは比べものにならないわね・・・)
半年前とは明らかに纏う雰囲気が違う彩を見ながら、私はどう話しかけようかと困っていた。
「高橋さん・・・申し訳ないんですけどもう一つだけお願い、いいですか?」
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「彩さん、あとでレッスンスタジオに来てもらっていいですか?会わせたい人がいるので」
「会わせたい人・・・?はい、わかりました」
高橋さんに彩を呼び出してもらった。バンドメンバーの子達とはなんの面識もない(千聖ちゃんとは一回だけバラエティで共演したことがあったと後々思い出したのだが)上に、イヴちゃんと日菜ちゃんのインタビューを見た限り話のペースをあちらに持っていかれて彩とゆっくり話ができない気がする。あの二人はマジでキャラが濃すぎる。なんだよ「るんっ♪」って。なんだよ「ブシドー」って。ついていけないよ。いやこんなことパスパレファンの前で言ったら晒し首にされるけどさ。
スタジオでしばらく待っていると、ガチャリとドアの開く音がして、彩がスタジオに入ってくる。さっきは遠目に見ていたからわからなかったけど、近くで見たら前よりずっと背が伸びててびっくりした。高校2年生だったかな?成長期だね。
私はその頃から胸育たなくなってたけど。
「ヒカリさん、彩さん来ましたよ」
「どうしたんですか高橋さん・・・ってあれ?」
「久しぶりだね、彩。じゃあここで問題です。私は誰でしょうか?」
彩は、おどけて言う私の顔を見てしばらく考え込んだあとはっとしたかと思うと、大声を出しそうになった自分の口を抑えた。
「ヒ、ヒカリさんですか!?だいぶ感じ変わりましたね!」
「正解。よくわかったね。ちなみにこの片目はコスプレじゃないからね?」
「じゃあ休業の理由って・・・」
「うん。ちょっと事故があってそれで休業せざるを得なくなったって感じかな?まぁ私の話はもういいよ。彩の話をしたいんだけどさ・・・」
「私の話・・・ですか?」
不思議そうにこちらを見る彩に、私は今まで彩に伝えられなかった気持ちを一気に解放する。
「すっっっごいよ彩!私、入院してたから動画でしか歌聞いてなかったんだけどさ!あんな歌を歌えるようになってるなんてホントびっくりだったよ!人気も急上昇中だし私達なんてすぐに追い抜いちゃぐえっ!?」
「ヒカリ落ち着いて。彩さんびっくりしてる」
「あ、あはは・・・」
姉さんがテーブルから身を乗り出していた私の襟首を掴んだことで我に返った。
し、しまった。彩はポカンとしてるし高橋さんは苦笑してるし姉さんに限っては「うわ、引くわー」と言わんばかりの呆れ顔をしている。めっちゃイラッとくる。
「ご、ごめん彩。久々に話すからテンションすごい上がっちゃって・・・」
「ヒカリさん、変わってませんよね。いい意味で」
「うーん・・・性格は変わってなくてもダンスはだいぶ鈍っちゃったよ。彩もアイドル活動頑張ってるんだし、そろそろ練習しなきゃいけないなぁ・・・あ、そういえばさ。彩はまだダンスの練習ってしたい?バンドアイドルだし踊ることはないと思うけど」
「したいです!パスパレが解散したあとは一人で芸能活動をしなきゃいけないですし、持てる技術は全て持っておきたいんです!」
「・・・君も変わってないね。いい意味で」
「へっ?」
彩が何を言ったか聞こえなかったというように気の抜けた声を出すが私はそれ以上詮索されないように話題を元に戻す。
「わかった!じゃあ私の仕事が休みの曜日・・・確か土曜日だった気がするんだけど・・・高橋さん、土曜ってレッスンスタジオは借りても大丈夫ですか?」
「え?は、はい!上に聞かないとわからないですけど土曜日はレッスンの予定はないですし、おそらく大丈夫かと」
「よし!じゃあ土曜日にスタジオ借りてやろうか!これから頑張ろうね。彩」
「はい!よろしくお願いします!」
私と彩が握手をしようとすると、白い手が私の手を遮る。姉さんだった。
「ヒカリ、あなたさっき自分でも言ってたけどダンスの腕すっごい鈍ってる。技術とかを口で教えることは出来ても実践は難しいと思う」
「ぐ・・・痛いところを・・・じゃあそこはリュウにでも頼むよ」
「リュウがやるなら私がやる」
「え?」
呆気にとられている私に対して、姉さんは胸を張りながらドヤ顔をする。
「私が手伝ってあげる。リュウが得意なのは本当はブレイクダンスだし、アイドルが踊るのには向いてない・・・それにヒカリと一緒にいる機会が少しでも欲しいし」
「え?なんで私と?」
「・・・いつか話す。とにかく私もそれに同行する。仕事がなかった時だけになるけど」
「姉さん。ダンスイベントは休日にあるのが普通なの。絶対休みなんてとれない」
「それを言ったら彩さんも同じだと思う。どうなの彩さん」
「あっえっはい!えーっと・・・」
いきなり話題を振られた彩はテンパったように手をジタバタさせるが、一度深呼吸をして落ち着きを取り戻す。
「休日は多分私達もイベントがあると思います。早朝とか夜じゃないと厳しいかもしれないですね」
「だってさヒカリ。ちなみに私は県外にでも行かない限りは早朝から仕事ってことはないよ」
「・・・わかった。じゃあ土曜日の早朝にレッスンスタジオでダンスの練習って感じにしよう。仕事と両立は難しいと思うけど頑張ってね」
「はい!」「もちろん」
「ね え さ ん に は 言 っ て な い !」
高橋さんは終始私達の会話を聞いて苦笑していた。誰が見てもコントかよって言いたくなるような話の流れだったし。
これが私・・・そして姉さんのパスパレのダンスレッスンの始まりである。何故全員のコーチをすることになったのかは、話せばとても長くなるのでまた今度にさせてもらう。
リュウは次出します。キャラがマジで濃いです。何故なら・・・言いたいですけどこれは次のお楽しみに。