次の話ではアフグロとまりなの絡みをしたいなーと思ってたり
ちなみに題名はグラブルでこんなイベントあったよなって感じで作りました。厨二くさいですね。
「・・・・・・」
「すぅ・・・・・すぅ・・・・・」
彩と久しぶりに会った夜。私がお風呂から上がると、何故かリビングがフルーティーな香りで充満していた。まさかと思い姉さんを探すと、ソファーで穏やかな吐息を立てて寝ている。その近くのテーブルの上には氷の入ったコップと、栓が開き空になっているガラス瓶が。
「アレは私が飲むのを楽しみにしてたヘネシーなんとかかんとか・・・ッ!」
名前はまだ覚えていないけど、以前友達から勧められてハマった高級ブランデーだ。甘みが強いフルーティーなお酒で、これをロックで飲むのが私は大好きなのだが1本5万円ぐらいするから1年に1回しか買えない。なのにこの人半分以上も飲んでやがる。
この酒はアルコール度数が高く、酒に弱い人なら半分も飲めば間違いなく酔う。ちなみに姉さんは並の人よりずっとアルコールに弱い。多分べろべろに酔って寝てしまったんだろう。
「・・・姉さん、起きて。姉さん!」
「ん・・・ヒカリ・・・おはよう」
「おはようじゃないでしょ!これ高級ブランデーよ!私が奮発して買ったやつ!楽しみにしてたのに!」
「これ美味しくなかった。ヒカリの味覚を疑う」
「やかましいわ!もう・・・こんなところで寝て風邪ひきました。なんてことになっても困るし、さっさとベッドに行ってくれない?」
「・・・怒らないの?」
「・・・え?」
酔いが回ったのか、瞳を潤ませ頰を赤くした姉さんは私に顔を近づけてくる。
「ヒカリって私達が変なことした時に注意したり、冗談で怒ったりすることはある」
「まぁ・・・ラプソディーは5人のうち2人しか常識人いないからね・・・」
「でもね」
姉さんは喉まで出かかった言葉を伝えるのを少し躊躇うように俯いてしまう。沈黙が部屋を支配し、今さっき降り出した雨がガラスに叩きつけられる音だけが響く。
グラスに入った氷がカランと音を立てると、姉さんは覚悟を決めたように顔を上げ、私の目を真っ直ぐと見た。
「ーーーヒカリは先生が亡くなってから、一度も自分の感情を人にぶつけたことないよ」
「ーーーーーッ」
「高校でいじめを受けた時も、先輩のダンサーから陰口を言われてた時も、番組のディレクターから理不尽なことを言われた時も、いつも1人で乗り越えてた。私は小さい頃の弱くて、卑屈で、泣き虫なヒカリを見てきたから、強くなってくれて嬉しい・・・ヒカリが目を失うまでそう思ってた」
「・・・・・・」
「でもなんで片目を失っても泣かないの・・・?ダンスができなくなるかもしれなかったのになんでそんなに笑っていられたの・・・?」
「・・・・・」
いつも感情を表に出さない姉さんが体を、声を震わせていた。しかし、私がその問いに答えることはない。
「私って弱音をぶつけられないほど頼りないの・・・?だからヒカリはラプソディーに戻ってきてくれないの・・・?」
「・・・そんなことなーー「じゃあ頼ってよッ!」
私がかろうじて絞り出した言葉は姉の悲痛な叫びによって掻き消され、私はまた沈黙することしか出来なくなる。
「私を頼ってよッ!私のことそんなに信用出来ないの!?1人で背負いこむのやめて、少しでもいいから私にヒカリの弱さを見せてよッ!」
今まで奥にしまいこんでいた感情を溢れさせた姉さんを前に、私は心底今までの自分の行動を後悔した。
迷惑をかけないようにと、心配させないようにと嫌なことも笑って乗り越えてきた私は逆に姉さん達を不安にさせてきたのか。
そんな自己嫌悪に苛まれる私を姉さんの一言がさらに追い詰めていく。
「少しぐらい私にお姉ちゃん面させてよ・・・!」
私は先生が死んで、あいつに怒りをぶつけられてから、全てに耐え続けてきた。何があろうとも自分の弱さを決して見せないと決めたつもりだった。
だけどあの時・・・ライブのリハーサル中にワイヤーが切れて照明が私に落ちてきたあの時には、私は限界を迎えていたのかもしれない。
なぜ私がこんな目にという行き場のない怒り、ダンスが出来なくなるかもしれないという不安・・・そして二度と目は戻らないという絶望。
もう無理だった。
誰でもいいから寄り添える相手が欲しかった。
「・・・姉さん、ごめん、私もう無理だよーーー」
不安を、恐怖を、怒りを、自分の全ての弱さを姉さんにぶつけようとした
その時だった。
どくりと、頭の奥で何かが胎動する。
「・・・・く・・・・・ぁ・・・・・・」
「・・・え?ヒカリ・・・?」
キィーンと耳鳴りがし、私は頭を、体を、何かに内側から食い破られるかのような痛みに襲われる。嫌な汗が身体中から噴き出し、ついに私は片膝をついてしまう。
そんな地獄のような痛みを感じているはずなのに涙は全く出なかった。まるで
「いたイ・・・いタい・・・ア・・・・・ァ・・・・ッ!?」
「ヒカリ・・・!?しっかりしてヒカリ!?」
姉さんの言葉に応じることも出来ない。意識が暗闇へと向かう。完全に私が闇に包まれる本当に少し前、私は瞼の裏に、怨嗟を宿した瞳を私に向ける銀髪の少女を見た。
どうやら私の中のあいつはまだ私を許してはくれないらしい。
ーーーーーーーー
目を開けるとそこには無機質な白い天井があった。どうやらここは病院みたいだ。驚いて身を起こすと横から誰かが抱きついてくる。
「ヒカリ・・・!良かった・・・!」
「姉さん?私に一体何があったの・・・?」
「ヒカリ、家で突然頭を押さえて倒れちゃったの・・・!本当に心配した・・・!」
「・・・そう、だったんだ」
その時の事をよく思い出そうとしていると姉さんは私の顔をおもむろに両手で挟んで自分の方に向ける。
「どうしたの姉さん?私の顔に何か変なものでもーー」
「ヒカリ」
有無を言わさぬ威圧感に満ちた姉さんの言葉に、冗談を言おうとした私は思わず竦んでしまう。
「今から言う内容を落ち着いて聞いてね」
「・・・・・保証はできないけど」
「お医者さんによるとね、ヒカリは心に深い傷を持っているんだって。傷は恐らく先生の事故死で出来たもの。ヒカリは自分の弱さが原因で先生は亡くなったと思ってる。だから自分の傷を開かないためにヒカリは無意識に自分の弱さを外に出さないようになったって」
衝撃が走った。
私は決意などしていなかった。ただ過去のことを忘れるために、罪から逃げるために、つらつらと言い訳を立てていただけだったのだ。
ますます自分が嫌になってくる。
「そんな生活を何年も続けていたってトラウマを克服出来るわけじゃない。むしろトラウマへの耐性はどんどん低くなっていく」
「・・・トラウマを思い出して気絶するほどに?」
「うん、あれは多分『自分の弱さを外に出そうとする』っていう行為によってトラウマが呼び起こされたんだと思う。トラウマの耐性が極限まで下がったヒカリはトラウマに拒絶反応を起こした。これがヒカリが気絶した真相・・・ってお医者さんは言ってた」
「・・・それってつまりさ。私これから一生人に弱さ見せないで生きていかなきゃいけないってこと?」
「・・・・・そう」
私と姉さんの間に嫌な空気が流れる。ここは普通の病室だから、この部屋には他にも何人か人はいるはずだ。だけど今の私にはこのベッドの周りの白いカーテンの向こう側には誰もいない・・・いや、何も存在していない。そんな気がした。
「あーそうなんだ。自分の弱さを人に見せられないし、外に発散することも出来ないんだ。これは生きづらくなっちゃったなぁ」
「・・・・・」
「泣きたくないって言ったら嘘になるけど、泣いたら拒絶反応起こすし、そもそもさっき拒絶反応起きた時も涙出なかったから多分もう出ないんじゃないかな」
「・・・・・」
「あ、でも姉さん達には悪いけどさ。今まで通り、私は人に弱さを見せない。そんな生活でいいってことなら別にそんな気にする必要もないね」
「ヒカーー」
「姉さん、私いつ病院を退院できるの?」
「・・・・・今日1日はここにいなきゃいけないと思う」
「うわぁー・・・まりなにまた迷惑かけちゃったな。あとで連絡しとかないと」
ペラペラとまくし立てるように喋る私の声は自分で聞いてもわかるぐらいに無機質なものだった。
そんな私の声を聞いていた姉さんは悲しげな顔をしていた。今までにないくらい、本当に悲しそうな顔だった。
私が話すのをやめると、辺りに沈黙が生まれる。カーテンの向こう側から誰かが話すような声がした気がしたがそれはとても遠いものに聞こえた。
「ヒカリ」
姉さんが私の手を取り、その名を呼ぶ。私は戸惑ってしまい、さっきまで出ていたはずの声が出せないでいた。
「私は貴女の味方。絶対に貴女を守る」
「ーーー」
「私はヒカリのお姉ちゃんだから、私ができることはなんでもする。トラウマもきっと克服できる」
「・・・うん、ありがとう。
姉さんを『お姉ちゃん』と呼んだのは随分と久しぶりな気がする。姉さんも流石に驚いたようで一瞬目を見開いたが、すぐにくすりと笑った。それにつられて私も笑ってしまう
笑おうとなんてしていないのに
笑うことなんてできるような気持ちじゃなかったのに
ーーーーーーーー
姉さんが病室を出ていくころにはもうテレビで昼のニュースが流れていた。今日は大雨が降るらしい。ちなみに姉さんは私が起きるのを不眠でずっと待っていたそうだ。そんな妹思いで無垢な姉さんにまた負担をかけてしまった。その事実が私の心をナイフのようにえぐる。
窓の外を見るとその空には蒼はなく、ただただ暗い灰色が街の上をすっぽりと覆っている。
『なんで!なんであなたが泣いてるんですか!?泣きたいのは兄さんですッ!貴女のせいで兄さんは死んだんですよ!?貴女さえーー貴女さえいなければ兄さんは・・・ッ!』
なんでこの空を見て先生が亡くなった時のあいつの言葉を思い出したのかわからない。だがこの言葉を思い出したと同時に、私は片目を失った私を見舞いに来た時のあいつの言葉も思い出していた。
『・・・自分の感情を偽っていつでも笑って、まるで
(ピエロか・・・今の私にはちょうどいい皮肉ね。あの子の言う通り、私は何年も周りに嘘を憑き続けてきたんだから)
空から打ち付けるように雨が降り出し、窓の外の景色は大粒の雨雫によって塗りつぶされていった。
主人公ヒカリにはトラウマがあった。それは恩師が自分のせいで死んだこと。その妹から心無い言葉を散々浴びせられたこと。一気に厨二くさくなりましたねこの小説。誰だよこの小説書いてるやつは。
ちなみに妹はRoseliaと絡ませる予定。