【完結】輝けケアキュア 〜紫陽花の季節〜   作:主(ぬし)

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数話前にも書きましたが、この物語は拙作の『女神が人類を護るためにオーク軍勢の前に立ちはだかるも、実は全員、前世が歴戦の仮面ライダーだったので、「変身!」の掛け声とともに元の姿に戻ってオークをずたずたに蹴散らすお話。』と同じ世界線にあるという設定です。内容はタイトル通りなので、読まなくても「女神の正体ってこれなんだな」と理解してもらえていれば大丈夫です。


いつか彼女が紫陽花になるまで 最終章10話

「さあ、目覚めなさい!新たなるケアキュア───ケア・ルキナ!!」

 

 瞬間、網膜を焦がすほど眩い光条が曇天にド派手な風穴をぶち開けた。暗黒の雲を貫いた流星群は空中に尾を引く勢いそのままにアストレアとルキナに衝突し、彼女たちを烈しく包み込む。光の玉は燃え盛る炎のように加速度的に膨れ上がり、イシュタル、バウト、エオスの姿も瞬く間に清らかな白光に溶かし込まれた。悪の闇を拒絶する光のパウダーが一帯に雪のように舞い、世界が母の人肌のような温もりで満ちていく。モノクロだった世界が鮮やかな色を着実に取り戻していく。

 

「そんな、馬鹿な」

 

 ゲキヤックの皮膚が我知らず鳥肌を立ててざわめく。ヘドロのように重く淀んでいた馴染みのある空気が、あっという間に朝の清冽な森のように澄んでいく。自分にとって有利だった空気が唐突にアウェーに切り替わってしまったような場違い感が背筋を冷たくする。大気が帯電したかのようにパリパリと音を立てるのは、“奇跡”が顕現する前触れに他ならない。彼が望まぬ、彼が愛した女(・・・・・・)による奇跡が。

 

「どうして、君が(・・)

 

 魂がひりつく神々しい光景を前に、ゲキヤックは石のように棒立ちするしかなかった。彼の心臓は今、文字通り止まっていた。本来、決して交わるはずのない至上の天界と現世とのラインが目の前で繋がったのだ。干渉不可能な次元の断層が根性の力でこじ開けられたのだ。彼が気が遠くなるような時間と労力と犠牲を注いでも出来なかったことを、ケアキュアたちは超人的な精神力だけで見事にやってのけたのだ。

 怯える幼児のように慄然として全身を強張らせるゲキヤックの眼前で、光の柱が様々な色彩を宿す。燃え立つ炎のような赤色、雄大な海のような青色、烈しい雷のような黄色、吹きすさぶ一陣の風のような緑色、そして───健気な紫陽花のような紫色(・・・・・・・・・・・・)

 

「どうして君が───ルーキーナ(・・・・・)!」

 

 彼の意味深な独白を塗り潰し、5色の輝きが音高く爆発した。宇宙の始原(ビックバン)の如き熱量と光量が迸り、網膜を焼き付かせる。眼底までくらます怒涛の逆光を背景に、少女のシルエットが一人また一人と進み出る。心身ともに充溢を取り戻したケアキュアたちだ。彼女たちが身に纏うスイートハートネックのAラインウェディングドレスが万物を平伏させる至上の白美に燃えている。威風堂々と歩む彼女たちの強化フォームも傷一つない状態へと復活を遂げ、むしろ神秘的な光沢を何倍にも増していた。

 最高にキュートで最強にパワフルな美少女たちがザッと地を踏みしめる音を立てて轡を並べる。彼女たちの力ある眼差しに圧倒され、ゲキヤックは思わず一歩大きく後ずさった。彼女たちの背後に、彼女たちに超常の力を与える女神たちの偉大な姿を明確に幻視したからだ。この世の全てを超越する最高最強の女神たち。かつて2つの世界を救済した不惜身命の戦士たち(・・・・)。スカーフを風に靡かせて愛機に跨がる仮面の騎馬兵(ライダー)たち。

 ズドン!とヒールがアスファルトを踏み砕く轟音が鳴り響く。アストレアを筆頭に、各々のイメージカラーの閃光を背にして堂に入った口上を腹底から張り上げる。

 

「邪悪を燃やすはこの赤き拳!ケア・アストレア!」

 

 遥か尊き次元の彼方から女神アストレアの権能を示す赤い極光の柱が唸りを上げて突き立き、ケア・アストレアを雄々しく包む。

 

「我が技は変幻自在の激流の如し!ケア・イシュタル!」

 

 蒼い極光の柱が唸りを上げて突き立き、イシュタルを雄々しく包む。

 

「大地貫く極大雷撃ここにあり!ケア・バウト!」

 

 黄色い極光の柱が唸りを上げて突き立き、バウトを雄々しく包む。

 

「天空より来たるは我が風刃!ケア・エオス!」

 

 緑色の極光の柱が唸りを上げて突き立き、エオスを雄々しく包む。

 

 

 

「───キャハハハハ!私がケアキュアだなんて、くっだらな〜い!」

 

 

 

 そして、5人目のケア(・・・・・・)キュ()()が、アメジストパープルのミニスカートを颯爽となびかせて高飛車な笑い声を上げる。生気に満ちたキューティクルは流水のような艶めきを放つ。先ほどまでの疲労が嘘のように取り払われ、折られた肋骨も身体中の痛々しい裂傷も跡形もなく癒えている。満身創痍だった肉体とコスチュームは、天授の光の粒子を浴して瑞々しい生命力を内包する非の打ち所のない姿へと戻っていた。消えかけのロウソクのようだった彼女もまた、ケアキュアたちと同じく女神の奇跡によって完全回復を遂げたのだ。

 

「───でも(・・)、」

 

 紫陽花色をした切れ長の瞳に真摯な感情が宿る。ケアキュアたち一人ひとりにゆっくりと転じて、最後にアストレアの視線と真っ直ぐに交差する。

 

「悪くないわ。アンタたちと背中を合わせるってのも」

 

 ルキナの不敵な微笑みに、アストレアもまた力強い笑みと深い首肯で応えた。どちらからともなく突き出した拳と拳がガッチリと密着する。かつてライバルとして対立していた二人が仲間として心を通じ合わせた瞬間だった。敵対関係を乗り越え、お互いの信念を認めあった彼女たちの間には、たしかな一帯感(きずな)が芽生えていた。

 気力を充溢させて晴れ晴れとした笑みを浮かべたルキナが、瞬間的に頭に浮かんだ自らの口上を天に向かって宣言す(ほえ)る。

 

「闇より転じて悪を打つ!!」

 

 その呼び掛けに、5人目の女神(・・・・・・)(しか)と応えた。

 天空の彼方で、最後の紫陽花色の閃光が閃いた。強烈な尾を刻む極光は彗星の如き勢いで曇天を貫いて雲を残らず吹き散らすと、大地へと真っ直ぐに突き立ち、ルキナの姿を膨大な光に呑み込む。烈風伴う竜巻の如き光が轟々と渦を巻き、やがて中心点のルキナへと収束していく。竜巻の内側でルキナのシルエットが陽炎のように揺らめきながら変化していく。望まれぬ少年として無為に産まれ、愛を知らぬまま育ち、呪われた戦士となり、己を拾ってくれた青年によって恋を知り、その果てに身を賭して愛に殉じようとする少女の生命(いのち)の輝きが、最強の形(・・・・)となって少女に希望を纏わせる。

 

「私は───ケア・ルキナだ!!!」

 

 咆哮一閃、赫灼の竜巻が爆発した。巨大な不可視のシンバルが叩かれたかのような衝撃波が地平線まで突き抜け、一面に横たわっていた暗澹とした空気を消し飛ばす。世界が清浄な大気と完全なる色彩を取り戻す。

 艶めくアメジストパープルのツインテールが風に波打ち、瑠璃色に(かがよ)う無数の粒子が春爛漫の桜吹雪のようにキラキラと舞い散る。その中心でひときわ美しい煌めきを放つ少女は、見目麗しいオフショルダーのウェディングドレスを纏っていた。ビロードのように滑らかな生地は溶けかけた新雪のようで、光の当たり加減によって色とりどりの宝石を散らしたようにキラキラと光を放つ。白い炎のようにふわりと広がる引き裾(ロングトレーン)スカートの表面では神代文字で刻まれた刺繍が紫陽花色のエナジーを帯びて爛々と発光する。ゆったりとしたネックラインの下で揺れるドレープの光沢は最高級の真珠のようで、顕になった繊細な鎖骨と柔らかな曲線の肩の白さを引き立てている。

 まさに馥郁たる美の極致。究極的に可憐(キュート)華麗(エレガント)過激(セクシー)な、愛に全てを捧げる女の最終形態だった。生まれ変わったルキナが───ケア・ルキナが自力で手に入れた、ケアキュアたちと同格の強化フォームだった。伝説通りの5人のケアキュアが揃った瞬間だった。魔王にとって不倶戴天の敵が誕生した瞬間だった。

 絶望感に打ちのめされて生気を失うゲキヤックの前で、勇気をその身に纏う最強の少女たち5人が地を踏みしめてズラリと居並ぶ。

 

「「「「「私たち、パーフェクト・ケアキュア!!私たちを前にして、悪の栄えた試し無し!!!」」」」」




“ちょうどいい文量”を模索する日々です。次こそ最終回。ところで、ウェディングドレスを着たTSっ娘、いいと思いませんか?
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