「さあ、目覚めなさい!新たなるケアキュア───ケア・ルキナ!!」
瞬間、網膜を焦がすほど眩い光条が曇天にド派手な風穴をぶち開けた。暗黒の雲を貫いた流星群は空中に尾を引く勢いそのままにアストレアとルキナに衝突し、彼女たちを烈しく包み込む。光の玉は燃え盛る炎のように加速度的に膨れ上がり、イシュタル、バウト、エオスの姿も瞬く間に清らかな白光に溶かし込まれた。悪の闇を拒絶する光のパウダーが一帯に雪のように舞い、世界が母の人肌のような温もりで満ちていく。モノクロだった世界が鮮やかな色を着実に取り戻していく。
「そんな、馬鹿な」
ゲキヤックの皮膚が我知らず鳥肌を立ててざわめく。ヘドロのように重く淀んでいた馴染みのある空気が、あっという間に朝の清冽な森のように澄んでいく。自分にとって有利だった空気が唐突にアウェーに切り替わってしまったような場違い感が背筋を冷たくする。大気が帯電したかのようにパリパリと音を立てるのは、“奇跡”が顕現する前触れに他ならない。彼が望まぬ、
「どうして、
魂がひりつく神々しい光景を前に、ゲキヤックは石のように棒立ちするしかなかった。彼の心臓は今、文字通り止まっていた。本来、決して交わるはずのない至上の天界と現世とのラインが目の前で繋がったのだ。干渉不可能な次元の断層が根性の力でこじ開けられたのだ。彼が気が遠くなるような時間と労力と犠牲を注いでも出来なかったことを、ケアキュアたちは超人的な精神力だけで見事にやってのけたのだ。
怯える幼児のように慄然として全身を強張らせるゲキヤックの眼前で、光の柱が様々な色彩を宿す。燃え立つ炎のような赤色、雄大な海のような青色、烈しい雷のような黄色、吹きすさぶ一陣の風のような緑色、そして───
「どうして君が───
彼の意味深な独白を塗り潰し、5色の輝きが音高く爆発した。
最高にキュートで最強にパワフルな美少女たちがザッと地を踏みしめる音を立てて轡を並べる。彼女たちの力ある眼差しに圧倒され、ゲキヤックは思わず一歩大きく後ずさった。彼女たちの背後に、彼女たちに超常の力を与える女神たちの偉大な姿を明確に幻視したからだ。この世の全てを超越する最高最強の女神たち。かつて2つの世界を救済した不惜身命の
ズドン!とヒールがアスファルトを踏み砕く轟音が鳴り響く。アストレアを筆頭に、各々のイメージカラーの閃光を背にして堂に入った口上を腹底から張り上げる。
「邪悪を燃やすはこの赤き拳!ケア・アストレア!」
遥か尊き次元の彼方から女神アストレアの権能を示す赤い極光の柱が唸りを上げて突き立き、ケア・アストレアを雄々しく包む。
「我が技は変幻自在の激流の如し!ケア・イシュタル!」
蒼い極光の柱が唸りを上げて突き立き、イシュタルを雄々しく包む。
「大地貫く極大雷撃ここにあり!ケア・バウト!」
黄色い極光の柱が唸りを上げて突き立き、バウトを雄々しく包む。
「天空より来たるは我が風刃!ケア・エオス!」
緑色の極光の柱が唸りを上げて突き立き、エオスを雄々しく包む。
「───キャハハハハ!私がケアキュアだなんて、くっだらな〜い!」
そして、
「───
紫陽花色をした切れ長の瞳に真摯な感情が宿る。ケアキュアたち一人ひとりにゆっくりと転じて、最後にアストレアの視線と真っ直ぐに交差する。
「悪くないわ。アンタたちと背中を合わせるってのも」
ルキナの不敵な微笑みに、アストレアもまた力強い笑みと深い首肯で応えた。どちらからともなく突き出した拳と拳がガッチリと密着する。かつてライバルとして対立していた二人が仲間として心を通じ合わせた瞬間だった。敵対関係を乗り越え、お互いの信念を認めあった彼女たちの間には、たしかな
気力を充溢させて晴れ晴れとした笑みを浮かべたルキナが、瞬間的に頭に浮かんだ自らの口上を天に向かって
「闇より転じて悪を打つ!!」
その呼び掛けに、
天空の彼方で、最後の紫陽花色の閃光が閃いた。強烈な尾を刻む極光は彗星の如き勢いで曇天を貫いて雲を残らず吹き散らすと、大地へと真っ直ぐに突き立ち、ルキナの姿を膨大な光に呑み込む。烈風伴う竜巻の如き光が轟々と渦を巻き、やがて中心点のルキナへと収束していく。竜巻の内側でルキナのシルエットが陽炎のように揺らめきながら変化していく。望まれぬ少年として無為に産まれ、愛を知らぬまま育ち、呪われた戦士となり、己を拾ってくれた青年によって恋を知り、その果てに身を賭して愛に殉じようとする少女の
「私は───ケア・ルキナだ!!!」
咆哮一閃、赫灼の竜巻が爆発した。巨大な不可視のシンバルが叩かれたかのような衝撃波が地平線まで突き抜け、一面に横たわっていた暗澹とした空気を消し飛ばす。世界が清浄な大気と完全なる色彩を取り戻す。
艶めくアメジストパープルのツインテールが風に波打ち、瑠璃色に
まさに馥郁たる美の極致。究極的に
絶望感に打ちのめされて生気を失うゲキヤックの前で、勇気をその身に纏う最強の少女たち5人が地を踏みしめてズラリと居並ぶ。
「「「「「私たち、パーフェクト・ケアキュア!!私たちを前にして、悪の栄えた試し無し!!!」」」」」
“ちょうどいい文量”を模索する日々です。次こそ最終回。ところで、ウェディングドレスを着たTSっ娘、いいと思いませんか?