夕焼けに灰の怪物を   作:たぴぃ

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12話

 「巴ちゃん、ちょっと良いかな?」

 「木場さん…」

 

 土曜日の休日、ショッピングモールで待ち合わせをしていた木場と巴は対称的な表情をしていた。木場は至って普通の表情であり、巴は沈んだ表情で、出掛ける事すら億劫になりそうだ。

 

 「今日はありがとね。取り敢えず、買い物に付き合って貰って良いかな?」

 「良いですけど…でも、なんでアタシなんですか?別にひまりとかつぐとか、そっちの方がアタシは…」

 「まぁ、そうだよね。After glowのメンバーは弦楽器が多いし、蘭ちゃんにモカちゃん、ひまりちゃんの方が良いかも知れない。でも、あの3人って自分で弦変えられるからさ。そうなると、俺がどう手を付ければ良いのか分からない楽器…ドラムの巴ちゃんに着いてきて貰うのが良いなって思ったからさ。駄目かな?」

 「…理由は分かりました。でも、そんなに良いアドバイスは期待しないで下さいよ」

 「完全に素人の俺だけよりは何倍も良い事は解ってるし、文句なんて言わないよ」

 

 そう言って彼はショッピングモール内の楽器店に足を運ぶ。CDショップとは違い、中は案外静かな事に驚く。彼は本棚を見つけるとそこに進み、楽器の整備に関わる本を片っ端から開いて少し読み、ある程度の物をカゴに入れる。巴にはその基準は全く分からなかったが、放り投げる様に入れる本の1冊を開いて読むと分かりやすく楽器の解説が載っていて、木場の有能さに少し驚いた。

 

 「バチ…じゃなくてスティックってこんなにあるんだね」

 「えぇ、まぁ。有名人のモデルとか、他にも色々」

 「何か欲しいのはある?」

 「え?」

 「だから、どれか欲しいスティックを選んでくれないかなって。お礼に奢るよ」

 「そんな事しなくても!アタシも暇でしたし…」

 「行き過ぎた遠慮は逆に失礼になるんだよ、巴ちゃん。ある程度遠慮する素振りを見せてから、そこまで言うなら…って感じで買って貰ったりするのが1番良い。コレ、地味に大事だよ?」

 「…じゃあ、コレでお願いします」

 「了解、買ってくるね」

 

 木場はレジに向かう。ふと外を見た巴は、見覚えのある顔を見つけ、話し掛ける。

 

 「よっ、こんにちは、沙綾」

 「あ、巴!こんにちは。珍しいね、1人でモールに居るなんて」

 「いや、付き添いだよ」

 「え?じゃあ探しに行かなくて良いの?モカとか、どこかに行ってそうだし…」

 「ん、今日来てるのは――」

 「――お待たせ、巴ちゃん。ん、この人は?」

 「【やまぶきベーカリー】の看板娘、山吹沙綾だよ、木場さん。もしかしたらオマケしてくれるかも知れないぜ?」

 「ちょ、巴!」

 「ハハハ、冗談だって!」

 「もう…えっと、改めまして山吹沙綾です。よろしくお願いします」

 「俺は木場勇治。まぁ、そうだな…Afterglow全員の保護者ってとこかな 。今日は楽器関係の事を教えて貰う為に付き合ってもらったんだ」

 「へぇ〜。楽器、始めるんですか?」」

 「や、ライブハウスでバイトする事になってね。戦力になる為には楽器を一通り弄れないと、少しね」

 

 そう言って片手にぶら下げる紙袋の口を開き、中身を紗綾に見せる。そこまでしたのは単に勘違いされたくなかったからだ。女子校生はやたらと色恋沙汰が好きな事を知っている木場は勘違いされた結果、巴に悪影響が及ばない様にしたのだ。ショッピングモールで女子高生が付き合いの浅い成人男性と買い物、字面だけで見れば犯罪だ。

 

 「さてと。俺の買い物は終わったし、巴ちゃん、どこか行きたい所ある?」

 「き、木場さん…アレ…」

 「オルフェノク、こんな白昼堂々と…!巴ちゃん、これ持って隠れてて!」

 

 ショッピングモールの駐車場に現れたのは灰色と白の化け物。つまりはオルフェノクだ。こんな人目に付く場所に現れたソレに不可解な思いを抱きつつ、木場は『従業員以外立ち入り禁止』と書かれた扉まで行くと、周りに人が居ない事を確認してコードを入力する。

 

 『STANDING BY』

 「変身」

 『COMPLETE』

 

 金色のオメガストリームが黒き鎧を形成し、木場はオーガと成る。文字通り人間離れした膂力で飛び出すと、突っ立っているフロッグオルフェノクに飛び蹴りを仕掛ける。複数あるライダーズギアの中でも最も力に優れるオーガの一撃を喰らったオルフェノクはもんどり打って吹き飛び、既にグロッキーとなっていた。

 容赦はしない。木場はミッションメモリーをオーガストランザーの柄に挿入。短剣から長剣へと姿を変えるが、その刃を振るう前にフロッグオルフェノクの背中に針が突き刺さり、更に背中に3本もの傷が刻まれた。既に限界が近かったのだろう。フロッグオルフェノクは蒼い焔を上げて灰になり、消えた。

 

 「あちゃ〜、見つかっちまった。オイオイ、どうするよサソリ」

 「いい加減英名で呼んでくれませんかね。あと、どうするかですがね、逃げますよ当然。オーガを、そしてオーガに変身できる者を相手には――っと、危ないですね」

 「…何なんだ、お前達は。何故同族を殺した?」

 「彼はルール違反を犯した。それだけですよ。我々も最低限のルールすら守れないオルフェノクを隠し通せる程、甘くはないのでね」

 「ッ…!」

 『EXCEED CHARGE』

 

 オーガストランザーにフォトンブラッドを送り込み、刀身を巨大化させて薙ぎ払う。サソリの様な姿をしたオルフェノクは隣のオルフェノクを掴むとそのオルフェノクを盾にする。木場はそのまま刃を振り抜くが、少しすると一気に手応えが軽くなる。その場には灰すら残っておらず、木場は違和感を抱かずにはいられなかった。

 

 「…おかしいな」

 

 だが、そう言っていても結局は推測の域を出ない。少なくともオルフェノクを1体は倒した。そう思う事にして、木場は巴に預けた荷物を取りに戻るのだった。




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