夕焼けに灰の怪物を   作:たぴぃ

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6話

 蘭達5人組はライブハウス【CIRCLE】に来ていた。先に4人はあてがわれた部屋に入り、蘭は何となく喉が乾いたのでロビーで飲み物を買い、飲もうとした時だった。

 

 「取り敢えず木場君には研修として入って貰うね。それで大丈夫?」

 「はい、それで大丈夫ですよ」

 「ッ!!ゲホッ、ゲホッ!」

 

 蘭は聞き覚えのある声と名前に慌て、つい噎せてしまう。コーヒーが変な所に入り、咳き込む蘭の元に1人の女性が駆け寄ってくる。

 

 「だ、大丈夫?」

 「ケホッ…まりなさん!なんで木場が居るんですか!?」

 

 この女性は月島まりな。CIRCLEで働く従業員で、大抵の事は出来る万能人だ。しかし出会いが何故か訪れないという難儀な女性である。

 

 「え?バイトしたいって電話が来て、今日からぶっつけ本番で入れるって話だったからだけど…どうかしたの?」

 「いや、何でも無いです。練習に行くので、じゃあ」

 「月島さん、ここ良いですか?」

 「はーいちょっと待ってて〜!じゃ、練習頑張ってね!」

 

 木場はエプロンを着用し、真面目に仕事に取り組んでいる。蘭が居ることにはまだ気付いてないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (はぁ…焦ったぁ。心臓に悪いよ、全く)

 「蘭、どうかしたのか?」

 「何でも無い。よし、じゃあ始めよっか」

 

 巴の握るスティックが3度打ち鳴らされ、直後全員が楽器を掻き鳴らす。その音は決して乱雑ではなく、むしろ高校生というカテゴリから考えればとても均整が取れていて、そして若者らしい活気に溢れていた。

 蘭は高校に入学し、ある意味での悲劇に遭った。今まで一緒のクラスだった4人とただ1人クラスが離れてしまい、クラスでは孤立しがちになってしまった。そんな蘭を励まし、そして繋がりを強く意識させる為にガールズバンド【After glow】を結成、部活や用事が無い放課後にこうして練習をしている。今日はその練習の日だった。そんな時に限って、木場が居るのだが。

 少しして演奏が止まる。曲が終わったのだ。真っ先に口を開いたのはつぐみだった。

 

 「――蘭ちゃん、どうかした?」

 「え?」

 「いや、1回だけキーが外れてたから…何かあったのかなって」

 「別に、何でも無い――」

 「ダウト〜。絶対に何か有ったでしょ、蘭〜」

 「蘭の『何でも無い』は大抵何か有った時だしね!」

 「………」

 「じゃ、白状してもらおうかな〜?」

 「……今日の朝、木場に――」

 

 大人しく蘭はみんなに白状した。朝自分達の曲を木場に聴いて貰い、好きだと言って貰った事。だが照れ臭くて自分達が歌ったとは言えず、若干気まずい時にロビーで働いている所を見てしまい、何故か動揺してしまった事を。

 

 「…惚気?」

 「違うから!」

 「でも、なんで私達が歌ったって言わなかったの?」

 「なんか…恥ずかしいし」

 「ライブしてるのに、今更だとモカちゃんは思うけど」

 「うっ」

 「確かに蘭の性格じゃあ木場さんに私達の事は言えなさそうだよね。多分、歌か好きって言われた時点で照れてるだろうし」

 

 ひまりの言う事は正鵠を射ている。事実、蘭はその時点で照れと嬉しさで頭の中がいっぱいで、その状態で自分達のバンドだと答えられる訳が無い。まぁ、素面の状態であったとしても怪しい所だが。

 

 「じゃあ今から木場さんを呼んでみるか」

 「はぁ!?」

 「蘭、お前が木場さんを呼ばないのは勝手だ。けどそうなった場合、誰が木場さんを呼ぶと思う?」

 「………」

 「ひまりだ。ひまりはAfter glowのリーダーとしてお前と木場さんの仲を――」

 「――あ、まりなさんですか?ちょっと来て貰って良いですか?」

 

 一瞬巴が誰かに乗り移られた気がしたが、つぐみがまりなを呼んだ事で正気に戻る。

 

 「ん、どうかしたの?」

 「新しいバイトの木場さんの事で、かくかくしかじか――」

 「――ほうほう、大体わかったよ。つまり蘭ちゃんは木場君に自分達の歌を聴いて欲しいんだね。なら考えがあるよ!」

 「ホントですか!?」

 「うん、こうすれば良いと思う」

 

 こうして、蘭の気まずさをどうにかする企みが始まったのだった。当の木場は気まずさなど感じておらず、別に変わった所は無いのだが。




 本作は作者が苦手な日常パートと戦闘パートのメリハリを練習する為に書いている面もあります。至らない点は見逃してください。
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