【完結】The elder scrolls V’ skyrim ハウリングソウル 作:cadet
キャンドルハースホールの近くにあるタロス神殿。
そこの前で、先ほど騒動を起こしたロルフは憤懣やるかたない様子で、石床に積もった残雪を蹴り散らしていた。
「くそ、くそ、くそ! あの余所者め!」
つい先ほどまで、彼は酒場で騒動を起こしたことを、衛兵からこっぴどく怒られていた。
自分は悪くない。あの余所者に礼儀を教えていただけだと言い張ったが、今まで相当な数の騒ぎを起こしてきただけに、今回はさすがに見過ごしてもらえなかった。
ついでに言えば、リディアの存在も、衛兵がロルフ達を見過ごさなかった理由である。
リディアはウィンドヘルム滞在中に、多数の盗賊退治の依頼をこなした。
中には衛兵達と共に行った任務もあり、リディアの腕や仁義に厚い人柄は衛兵達のよく知るところである。
実のところ、彼女は衛兵達の間では隠れた人気者であり、同時に背中を預けるに足る人物として、尊敬もされている。
そんな人物の探し人に喧嘩を売ったものだから、衛兵たちのロルフ達の印象は最悪である。
さすがに首長の右腕の弟を牢屋に入れることは難しかったが、担当した衛兵はロルフ達をこれ以上ないほど厳しい口調で嗜めていた。
目立つような怪我人も発生しなかったためにすぐに解放されたものの、一時とはいえ衛兵に拘束された事実は、ロルフのプライドを酷く傷つけていた。
「あいつはサルモールのスパイに決まっている! なんで俺が捕まって、あのチビは自由に街をウロついているんだよ! そっちを捕まえるべきだろうが!」
追い詰められたロルフは、もはや根幹たる理由が存在しない主張すら口にし、それを自己肯定し始める有様だった。
この手の類の思考が凝り固まった人間は、自分を冷静に客観視できない。
あらゆる事を勝手に自分の都合のいいように解釈し、世の中がその通りに回っていないと気が済まず、さらには自分の都合のいい妄想を持ち出して肯定し始める。
彼の後ろでは取り巻きだったチンピラがいるが、彼らもまた捕まった事が不満げな様子だった。
この手の類のチンピラもまた、反省というものをしていない様子だった。
「おい、サルモールのスパイを探してこい。他の奴らは武器を持ってこい。衛兵が役に立たないなら、俺達でネズミ退治をするしかねえ」
だからこそ、全てが自分の思い通りにいかなかった時、彼らはタガの外れた行動を取り始める。
ノルド至上主義がまかり通るこの街で、権力を持つ家柄だった彼を諫める人物がいなかったことが、彼らの転落への始まりだった。
市場で食材を買い揃えた後、健人はソフィに彼女の寝床まで案内してもらっていた。
時刻は既に夕方近く。
ソフィに案内された場所は、キャンドルハースホールと灰色地区を繋ぐ通路の端にある、小さな路地だった。
周囲の三方を壁に囲まれた、数人が入れるかどうかというスペース。
そこにある屋外の石床の上が、彼女の寝床だった。
よくもまあ、こんな小さな子供がこんな場所で一か月生きてこられたものである。
一か月前に父親が死んだことを知ったと考えれば、父と一緒に住んでいた家に案内されるのではと思っていたが、何らかの理由で家を追い出されたのかもしれない。
予想以上に彼女を取り巻く環境は悪かったようだ。
「じゃあ、用意をするから、少し待っていてくれ」
「う、うん……」
リディアに薪を集めるよう頼み、健人はとりあえず、近くにあった民家の戸を叩く。
「すみません! 誰かいらっしゃいますか!」
「何だ、余所者……」
出てきたのは、これまた気難しそうなノルドの男性。
おそらくこの家の主人と思われるその男は、鎧を纏った健人を明らかに警戒心に満ちた目で睨み付けている。
「突然すみません、実は、鍋や食器を貸していただけないかと」
「……そんなもの、どうする気だ」
「あそこで少し炊き出しをしようと思いまして。貸していただけるなら、とびっきりのシチューをごちそうできますけど、どうです? もちろん、お金はいりません」
「…………」
民家の主人は健人と、彼が指差した場所にいるリディア、そしてソフィの順に視線を動かすと、黙り込んだまま家の奥へと消えていった。
そしてしばらくした後、健人の注文通り、その手に一抱えもする大きな鍋を持ってきた。
大きさは、直径と深さが50センチほど。
十数人分は余裕で作れそうなほどの大きさの鍋であり、鍋の中にはもう一つ、小さな鍋が入っていた。
ここに、渡す分のシチューを入れろという事だろう。
他にも木製の器や皿、匙なども入っている。
「ありがとうございます。それほど時間がかからずできると思いますので、しばらくお待ちください」
「ふん……」
健人が礼を言っても、鍋を貸してくれた男性は何も言わず、家の中へと来ていった。
とりあえず、目的のものは借りられたので、健人はソフィの元に戻る。
リディアが既に薪を集めておいてくれていたので、あとは調理するだけだった。
「何、作るの?」
「とりあえず、体の温まるものだな」
健人はおもむろに火をおこし、借りてきた鍋に水を入れ、近くにあった平たい石と一緒に火にかける。
湯が沸くまでに市場で買ってきた食材を一口大に切り、鍋の中へ投入する。
ニンジン、ジャガイモ、玉ねぎ。
それから、市場で買ってきた牛肉も細かく切り分けて加熱した石の上で一度よく火を通し、鍋に入れる。
出てきた灰汁を取りながら、さらに小麦粉を自前のフライパンで炒め、そこに牛乳を投入してホワイトソースもどきを作る。
鍋に入れた具が煮えて火が通ったところで、フライパンで作っていたホワイトソースもどきを投入。
コトコトと煮立つ白濁したシチューが、食欲を刺激してくる。
さらにここで健人は、荷物の中から瓶詰めの粉末を取り出した。
「お兄さん、それは何?」
「ん? 魔法の調味料、かな?」
焦げ付かないようにかき混ぜながら、ここで持ち出した粉末を軽く振りかけてひと煮たちさせる。
途端に、芳醇な香りが鍋から湧き立ってきた。
「ふあぁああ……」
傍で健人の料理を見ていたソフィが、湧き立つシチューの香りに感嘆の声を漏らす。
匂いに釣られたのか、鍋を貸してくれたノルドの家主もドアの影から健人達の様子を盗み見ていた。
健人が鍋に入れたのは、野菜や海藻、香草、塩、香辛料などを乾燥させ、細かく粉末にして瓶詰めにしたものである。
いわゆる万能調味料モドキ。
日本でも手作りコンソメ等で紹介されており、肉や魚の臭みを消し、スープなどにまろやかさを出してくれる物だった。
さらに健人は、小麦粉に瓶詰めの万能調味料モドキを混ぜてサケの切り身に塗し、パン、ベーコンと一緒に焼き始める。
ベーコンとサケの油が跳ね、その油をパンが吸い込んでいく。
そのパンの上に薄く切ったチーズを乗せてやれば、油を吸ったパンの上でチーズがトロリと溶けていく。
「コク……」
ソフィが待ちきれないというように、唾を飲み込んでいる。
その時、健人には聞きなれた声が、三人がたむろする路地裏に響いた。
「あ~! 何かいい匂いがすると思ったら、やっぱりケントが料理してる!」
「カシト? お前、灰色地区の酒場に行ったんじゃないのか?」
声を掛けてきたのは、街に入ってすぐに別れたカシトだった。
「いやね、ちょっと酒場で一緒になったウッドエルフと飲んでいたんだけど、少しトイレに行きたくなっちゃってね。
外に出て用を足そうとしたら、健人の料理の匂いが漂って来たからこっちに来たんだ!」
「お前、ここから灰色地区までそれなりの距離があるんだぞ。なんで気付けるんだ?」
「ヘン! おいら達カジートは鼻も利くんだぜ!」
ピスピスと鼻を鳴らしながら、カシトは得意げに胸を張る。
健人達が今いる裏路地は、ウィンドヘルムの中でも灰色地区には近い方にあるが、それでも強い風が吹き荒れる中、健人の料理の匂いを嗅ぎつける辺り、このカジートの嗅覚は本当に優れているのだろう。
もっとも、単に食い意地が張っているだけなのかもしれないが。
「というわけで、オイラにも健人のご飯を頂戴! ちょうどメシ時だし!」
「悪いけど、この料理はこの娘用だ。残りはこの鍋を貸してくれた人用。お前に出せる量はそんなにないぞ」
荷物の中から取り出した木の皿に焼いたパンやサケを乗せ、木の器に出来たクリームシチューを取り、ソフィに手渡す。
「さあ、どうぞ」
「えっと、うんと……」
しかし、ソフィは目の前の料理を前に、逡巡したように視線を右往左往させている。
食べていいよと言われているのに、中々踏ん切りつかないらしい。
だが空腹には勝てなかったのか、おずおずと器を手にとって、匙を入れる。
そして、健人特製のクリームシチューを口に入れた時、ソフィの瞳が大きく見開かれた。
「はあぁぁぁ……」
口に広がる肉の旨味と、ホロホロに煮えた野菜の甘味。
とろみのあるシチューは寒い外気に晒されても、内側にしっかりと熱を保ち、冷えきった体を内側から温めてくれる。
本当に久しぶりの、まともな食事。
何より、空腹という最高のスパイスが、ソフィに健人のクリームシチューをより一層美味しいものに感じさせていた。
「美味しい! 美味しいよ!」
「そうか、良かった。一杯あるから、好きなだけ食べてくれ。リディアさんも、どうぞ。ついでにカシトも」
「ありがとうございます。久しぶりのケント様の食事!」
「へっへ~ん。全部食い尽くしてやる!」
メインキャストが食べ始めたことから、健人はリディアとカシトにもシチューをよそって手渡した。
二人はさっそく、ワインと一緒に健人の料理を堪能し始める。
リディアとしても、久しぶりのケントの食事にありつけたからか、ただでさえ高いテンションが二割増しになっていた。
「コラカジート! それは私のサケです! 返しなさい!」
「早い者勝ちだもんね~! って、ああ、おいらのチーズパン!」
「横から人の物を取った貴方が悪い!」
「あ、あははは……」
酒の魔力と相まって大人気ない喧嘩を始める二人の大人。
そんな二人を前に、ソフィは苦笑を浮かべている。
温かい食事と飾らないカシトとリディアの空気に、ソフィも少しずつ緊張がほどけているようだった。
健人はようやく笑顔になってくれたソフィの姿に安堵すると、鍋の中のシチューを小鍋に分け、鍋を貸してくれた家に向かった。
玄関から出てきた男に、出来たばかりのシチューを入れた小鍋を手渡す。
「鍋、ありがとうございました。どうぞ」
「あ、ああ。ところでアンタ。あのシチューはまだ作れるのか?」
「ええ。調味料がまだあれば、ですが」
そう言いながら、健人は懐からシチューにつかった万能調味料モドキを取り出して見せる。
「そいつは?」
「野菜、海藻、キノコ、香草とかを乾燥させて粉砕したものです。あのシチューやサケのムニエルに使ったものですね」
「なるほど、随分と贅沢な物だな……」
贅沢な物。
その言葉に、健人は何とも言えない気持ちになる。
この調味料は元々、野菜くずや錬金術で薬を作る過程で余った素材を再利用したものだ。
エルフイヤーリーフやフロストミリアム、食用に出来る各種キノコなどがそうだ。
とはいえ、一般人がこれだけ多種多様な香草や調味料を、一回の料理に使う事はあまりない。
厳しい環境のスカイリムでは、料理の美味しさを楽しみたくとも、エネルギー摂取を最優先しなければならない時も多い。
特に、今は戦時。
作られた作物は兵士達に優先的に回されるため、市場に出回るのは質の落ちた品が多い。
実際、健人も市場で見ているときは、傷んだ野菜が目についた。
この家主の話を聞く限り、冬が明けたばかりというのもあるのだろうが、今のウィンドヘルムの食糧事情が芳しくないのは、間違いないだろう。
「お前、あの子をどうするんだ?」
おもむろに家主が向けてきた質問に、健人は一瞬言葉に迷う。
「……この街に誰か養ってあげられる人は」
「いないな。もしそうなら、俺だってどうにかしてる。分からねえか?」
どこか苛立ちの混じった家主の言葉は健人に対してというよりも、無力な自分に対する憤りに聞こえた。
この家主も、家の前で寒さに震える幼子に思うところがなかった訳ではないのだ。
「俺達ノルドは、常に冬の厳しさの中で生きている。俺もその厳しさの中で家族を守るには、こうするしかねえのさ」
ただ、彼の家に、他人を助けてやれるだけの余力がないのだ。
吐き捨てるような言葉を言い放った後、主は家の中へと戻っていく。
男性の背中を見送った健人は、何とも言えない感情を抱きながら、カシト達の元に戻った。
「ケント、長かったね。何か言われていたの?」
「いや、ちょっと世間話をしていただけさ」
戻ってきた健人が火の傍に腰を下ろすと、ソフィがシチューをよそって健人に差し出してくれた。
「……はい」
緊張した様子で器を差し出すソフィ。
健人は初々しい彼女の様子に笑みを浮かべながら、差し出された器を受け取る。
「ありがとう」
「あっ……うん!」
健人がよそった器を取ってくれたことに、ソフィは満面の笑みを浮かべると、ストン……と健人の隣に座り込み、再び食事の続きを始めた。
その距離は、市場で買い物をしていた時より、幾分か近づいている。
健人は隣で笑顔を浮かべたまま食事を続けるソフィを眺めながら、彼女がよそってくれたシチューに口をつける。
妹がいたら、こんな感じだったのかもしれない。
そんな考えを脳裏に浮かべながら、健人は先ほどノルドの家主に言われた言葉を思い返していた。
「さて、どうするかな……」
健人自身、この世界に一人放り出され、訳が分からないまま命の危機に晒された経験がある。
孤独である事がいかに辛く、心が凍り付いていくことであるかも実感している。
できることなら、この娘が身を寄せられる場所を見つけてあげたいと思っているが、生憎と健人は旅の途中であり、この街に長くはいられない。
どうすればいいだろうか?
自分が作ったシチューを食べながら、健人は思考の海の中へと潜っていった。
ウィンドヘルムの西、ペイルホールドの南東にあるヨルグリム湖。
その近くの墳墓の上空で、アルドゥインは配下であるドラゴンを蘇らせようとしていた。
“ヴィントゥルース! ジール、グロ、ドヴァー、ウルセ!”
ここに眠るドラゴンは、アルドゥインをして、一目を置く存在。
名を、ヴィントゥルース。
太古の昔の竜戦争の最中に、古代ノルドの英雄達によって討ち取られ、ここに葬られた伝説のドラゴン。
墳墓自体は既に風化していても、この世界で最も強大なドラゴンたるアルドゥインには墳墓の下で未だに猛り狂う兄弟の憎悪が、はっきりと感じ取れていた。
“スレン、ティード、ヴォ!”
アルドゥインがシャウトを墳墓に放つ。
脈打つ波動が墳墓の中へと消えていくと、突如として地面が爆発。
墳墓の下から、ドラゴンの骨が姿を現す。
アルドゥインのシャウトによって再び息を吹き返したヴィントゥルースは、光と共に、その身に肉の体を纏い始める。
広げた翼骨に皮膜が蘇り、アルドゥインの鱗と比べても薄い、淡黒色の竜鱗が全身を覆う。
復活したヴィントゥルースは、徐に自らを蘇らせた長兄を見上げた。
“アルドゥイン。パーロック、ゼイマー。コス、ヒン、ダール゛”(アルドゥイン、傲慢な兄よ、戻ってきていたのか)
“ゲ、ヴィントゥルース。ガロード、ティード、リングラー。ヌツ、ヒン、ズー、ダール゛、フェン、ドレ、ムツ、ナークリーン。”
(その通りだ、ヴィントゥルース。時間がかかったがな。だが、我が帰還した以上、再びこの世界は我らの物となった)
アルドゥインとしては、この強大な力を持つ弟を蘇らせることには、少し不安も抱いていた。
ヴィントゥルースは、傲慢なアルドゥインも認める程の力を持つドラゴンである。
ドラゴンですら使い手の少ない上位のシャウトを使いこなし、その名に相応しいだけの魂と意思の強さを持つ。
だが、強大な力を持つこの兄弟は、その力に反し、非常に激高しやすいドラゴンだった。
その名前に“激怒”の言葉を持つためだろうか。
生前もその怒りの炎は人間達だけでなく、時には同族であるドラゴンにも向けられた事がある。
アルドゥインとしても復活させることには躊躇するような者。
しかし、それでもアルドゥインは、今は少しでも力が必要だと感じていた。
(時が震えた。ここではない、遠いどこかで。何が起こったのかは分かるが、誰がやったのかは分からん……。だが、何だ、この胸騒ぎは……)
理由は、このタムリエルより遥かに離れた地で起きた何か。
まるで、世界そのものを震わせんと響いた、強大な声の波動。
世界の外側で起きた出来事であるが故に他のドラゴン達は気付かなかったようだが、アカトシュの長子として、支配するために生まれた種の最上位に座すドラゴンは、その“震え”を敏感に感じ取っていた。
同時に、その震えが己の内に潜む何かを呼び起こしているようにも感じていた。
己の深奥から込み上げる存在。それが何かはアルドゥインにも分からない。
まるで霞がかかったように、その存在はぼやけて輪郭すらはっきりしなかった。
だが、己の持つ竜の血が、切実に訴えていた。
力を蓄えろと。
その為には、この扱い辛いドラゴンも蘇らせておく事が必要だと。
“アルドゥイン?”
突然黙り込んだアルドゥインに、ヴィントゥルースが声を掛ける。
“ニ、ドレ、ダーマーン。ルー、ログ、ヴィーング、クリィ、ダー、ジョーレ、ファー、ドィロク、ゼィル゛、ラゴール゛、トール、スゥーム”
(お前が気にする必要はない。今はその翼で空を駆け、魂に刻まれた怒りのスゥームを、裏切りの定命の者達に存分に振るうがいい)
ただそれだけを言うと、アルドゥインは再び翼をはためかせ、空を覆う雲の中へと消えていく。
ヴィントゥルースも、アルドゥインの様子は気にはなった。
常に傲慢で、周囲に何が起ころうと己の態度を変えなかったアルドゥインが見せた、一瞬の逡巡。
だが、その逡巡も、己の内に渦巻く怒りの炎に飲み込まれる。
彼は竜戦争の際に殺されたドラゴン。
今まで支配してきた人間が裏切り、互いに凄惨な報復を繰り返してきた。
その時の光景は、数千年経っても、彼の瞼に焼き付いている。
ヴィントゥルースは去っていくアルドゥインを見送ると、蘇ったばかりの翼を広げた。
“エヴェナール、ジョール! オンド、ズー、ラゴール゛、スゥーム、サドン、クロ゛!”
(人間に滅びを! 我が怒りの吐息で、その魂すら灰に還るがいい!)
彼の名は、ヴィントゥルース。
輝く、槌、激怒の名を持つ、強大な伝説のドラゴン。
彼は“激怒”の名に相応しい咆哮を上げると、数千年ぶりに己の翼で空へと舞い上がる。
ヴィントゥルースの激烈な声に反応したのか、空は一気に曇り、強風が吹き荒れはじめる。
そして、かのドラゴンは己の記憶に従い、一路、東へ向けて飛び去った。
向かう先はウィンドヘルム。
彼の記憶の中で、最も人間が蔓延っていた場所。古からの、ノルドの街である。
というわけで、今回は前回の続き。
以下、登場人物紹介
ヴィントゥルース
輝く、槌、激怒の名を持つ伝説のドラゴン。
非常に強大な力を持つ竜で、竜戦争の折に古代ノルドの英雄たちによって倒され、ヨルグリム湖付近(ペイルホールド南東の端)に葬られた。
非常に気性が荒く、人間だけでなく同族にもその怒りの矛先を向けたことがある。
その性格から、アルドゥインも復活させることを躊躇していた。