エボルトみてーな戦兎はデザインは素敵だと思います。性格?ま、まぁ・・・エボルトだから
また最新話まで見返していかなきゃ・・・!
よければ、お楽しみください!
朝にて
『引っ張ってください』
イチカ「ふぁーあ、おはよう、ミカ」
「おはよう・・・ん?」
ホウキ「・・・」
「モップ。おはよう」
「あ、あぁ・・・おはよう」
「何これ?」
イチカ「なぁ、これってもしかして・・・」
「知らん。私に聞くな」
「・・・ふーん」
「お、おい。ほっといていいのか?」
セシリア「三日月さんおはようございます!何してらっしゃいますの?」
三日月「地面に耳が生えてる」
「・・・二人とも、離れてろ。──えいっ!!」
スポンッ
「うおっ!?」
「大丈夫?」
オルガ「どした!どっか痛めたのか!?」
ヒュウゥウゥウゥゥゥ
三日月「・・・!」
空から飛来する物体。オルガに迫るそのニンジンロケットを・・・三日月はバルバトスを纏い、力づくで叩き返す
『ぎゃわんっ!!もー、ひっどいことするなぁ!』
「あ・・・あぶねぇ・・・」
「生きてる?」
そして、ロケットが割れ現れたのは・・・
「まぁそれはともかく!お久しぶりだねいっきゅん!ところで、ホウキちゃんはどこかな?」
イチカ「・・・あっちです」
「ありがとー!じゃあまたね!いっきゅん!またあとでねー!」
スタタタタタ
「イチカ、なにこれ」
「い、イチカさん・・・今のは一体・・・」
オルガ「こんくれぇ何てことはねぇ・・・!!」
イチカ「・・・シノノノ・タバネ。ホウキの姉さんだ」
セシリア「・・・はえっ!?」
三日月「ふーん・・・」
・・・その時、三日月の持つ端末に、一件のメッセージが届く。
其処には・・・
『調子乗んな タバネ』
三日月「・・・なにこれ?」
先程の女性からの、不可解なメッセージが届いていた──
激動と波乱を感じさせる邂逅より数刻後、各専用機持ちの代表候補生、鉄華団のメインメンバーは担任のチフユに呼び出され、岩肌が露出した人気のない川辺へと呼び出されていた。これから行われることがなんなのか、詳しくどころか何故集められたのかすらも解らないため、一同は顔を見合わせる
「オルガ、招集ご苦労だった。よし、専用機持ちは全員揃ったな」
専用機持ち、という言葉を聞き、ホウキの顔が曇るのをイチカは見逃さなかった。その矛盾を素早く彼が指摘する
「何言ってるんだよチフユねぇ、ホウキは専用機持ちじゃないだろ?」
「そうよ、ウチガネでひーこら戦ってただけじゃない」
「それは・・・」
そう、ホウキはピカ一なセンスを持っていながら、それを活かせる専用機、ISを所持していない。それなのに、この面子と肩を並べている違和感と気後れが、ホウキの顔を曇らせる。そのいたたまれない姿を見て、イチカはキッパリと告げる
「何で集まらせたのか、理由を教えてくれ。筋が通らない真似じゃないなら納得する。でも──」
「それはぁ!お待ちかねのホウキちゃんのパワーアップイベントだからでーす!!」
やーっほー!と叫びながら岩肌を生身で滑り降りてくるそのでたらめな身体能力を発揮しながら、こちらに向かってくるキテレツにしてこの世界の台風の目。大幅に全力ジャンプし、一同の視線を集め、一直線にこちらにやってくるその人物の狙いは──
「ちーーーーいちゃーーーん!!」
「ヴァアァアァアァアァアァ!!?」
そのあまりの加速に、様々な事象が一瞬にて巻き起こる。華麗に向かってきたウサミミの女性──シノノノ・タバネの突撃。それを華麗に捌きアイアンクローで制することにより処理するチフユ。突進はなんとか捌けたものの足を滑らせ転倒し、河に直接ダイブインするオルガ。一同はその状況に、ただただ硬直し──
「やぁやぁ会いたかったよちーちゃん!さぁイチャイチャしよう!愛を確かめ合おう!」
「五月蝿いぞタバネ」
「相変わらず容赦のないアイアンクローだねー!」
「オルガ!オルガ!しっかりー!!」
「止まるんじゃねぇぞ・・・・・・」
そしてそのハイテンションの矛先は即座に変えられ、岩場に隠れるホウキへと向けられる。オルガはワンオフアビリティを発動したものの、シャルの懸命な蘇生措置で無事に復活を果たし起き上がる
「・・・ラウラ、何これ」
「わ、解らん・・・全くもって理解不能だ、なんなんだ、あの妙な女は・・・」
「オルガ、大丈夫・・・!?」
「こんくれぇなんてこたぁねぇ!」
「じゃじゃーん!ホウキちゃん、久し振り~!元気そうだね~!」
「・・・どうも・・・」
親しげなタバネに対し、ホウキの態度は浮かないものだった。バツが悪そうに視線を合わせず、奇怪なものに、腫れ物に触るような煮え切らない態度。そんな彼女に構わず、タバネはひたすらにまくしたてる。自らのテンションで辺りを台風のように巻き込んでいく
「こうしてあうのは何年ぶりかな~?大きくなったねーホウキちゃーん!特に、おっぱいが・・・!」
「同感だ」
「えぇっ!?お、オルガのエッチ!」
「ぐぅぅうぅっ!!」
瞬間、ホウキの木刀が、シャルの言葉がそれぞれを打ち据え、心を貫く。吹き飛ばされるタバネ、安らかに逝くオルガ。カオスな空間に全くついていけない三日月は、無言でラウラに背中を擦られている
「殴りますよ」
「殴ってから言った~!ねー、いっくん酷いよね~!?」
「タバネさん。自分の世界を展開するのはそれくらいにして、状況説明と本題に入ってくれませんか。皆が困ってる。筋の通らない暴走は、貴女でも認めるわけにはいかない」
ピシャリとタバネを諌めるイチカ。皆の前に一歩、特にラウラを庇うように油断なくタバネを見つめる三日月。やや不穏な雰囲気、イチカを微笑ましげに見つめる視線、そして三日月には──
「ねぇイチカ。なにこれ」
「ごめんな、ミカ。・・・まずは自己紹介からお願いします。する気がないのなら、ロケットに乗っけて返品しますよ」
「ん~、めんどくさいけどいっくんがそう言うなら・・・私が天才の!タバネさんだよ!ハローォ♪」
(!オルガ!)
「解ってる!・・・俺はぁ、鉄華団団長ォ・・・!オルガ・イツカだぞぉ・・・!!」
自己紹介には自己紹介。隙あらば名乗り存在をアピールする。ぶれないオルガに拍手を送るシャル。イチカに好影響を与えた団長には、キラリと光る目線を送り返しサムズアップを送り──
「さぁ!大空を御覧あれー!!」
「・・・?」
タバネに指されながら、大空を見上げる一同。遥か突き抜ける青空から、白く銀色に煌めく菱形のクリスタルのような塊が空を切り裂き一直線に一同の目の前に──
「ヴァアァアァアァアァアァ・・・!ぁ?」
「咲くと思ったー?残念咲きませーん!ビックリドッキリだいせいこー!ぶいぶーい!!」
「なんだよ・・・」
ハラハラさせやがっ──そう感じたオルガに襲い掛かる遥か強烈な加速と衝撃と質量。油断していた、気が緩んでいたその瞬間に、もう一つのクリスタルがオルガに突き刺さり──
「ぐぅぅうぅっ!!!!」
「はい、隙を生じぬ二段構えでしたー☆タバネさんは芸風改良にも余念がないんだよー☆」
「オルガーっ!」
「だからよ・・・ふざけんじゃねぇぞ・・・」
挨拶がわりに抹殺されたオルガの何度目かの最期の言葉を華麗にスルーし、タバネはその飛来した鈍色のクリスタルをリモコン操作にて開封する。其処に納められ、現れたのは──真紅の、そして日本風のIS。ブレードを装備し、イチカの白式と対を為すカラーリングの、待機状態の甲冑とも言うべきフォルムを持つ・・・
「じゃじゃーん!これこそホウキちゃん専用機こと『紅椿』!全スペックが、現行ISを上回るお手製だよー!・・・勿論、君のIS『ガンダム・バルバトス』もね?」
「・・・貴様。何故そこでミカが出てくる。なんの当て付けだ」
「うっさい失敗作。どう?どう?ビックリした?驚いた?ガックリきた?」
「良かったね、モップ。やっとこれで、皆と一緒に戦える」
「あ、あぁ・・・そうだ、そうだな・・・」
「無視されたぁ・・・!タバネちゃんショックでしょぼぼーん・・・」
一瞬だけ、その冷淡な一面を垣間見せるもスルーを行われたタバネはガックリとオーバーリアクションを行う。だが、それはそれ、これはこれとばかりに立ち直り即座に自慢げに胸を張り、高らかに自らが手掛けた傑作をアピールし、その腕前を誇示し声を上げる
「なんたって紅椿は、この天才タバネさんが作った第四世代型ISなんだよぉ?・・・あ!」
「此処にいたのか、タバネ殿」
そんな中、タバネに、歩み寄る優雅な影が一つある。場亜流と書かれた法被を着、その存在感を誇示する長身の男性・・・
「マクギリスじゃねぇか・・・」
「やっほーマッキー!お仕事ご苦労様ー!ご褒美はちゃんと、用意してあるよーん!」
「チョコレートの人・・・?もしかして・・・」
「あぁ・・・私も欲しくなったのだよ。象徴の枠を越え、新たに息吹を上げるアグニカ・カイエルの魂がね」
その言葉に応えるように、じゃじゃーん!とオルガに突き刺さったクリスタルをリモコン展開する。そして現れしは──
「フッ、フフッ──」
マクギリスが転生した際に選んだ剣。ギャラルホルンの正義にして、アグニカ・カイエルの魂
「ククッ──ははははははははっ・・・!ははははははははっ・・・!!」
最古にして原初のガンダムフレーム。けして折れぬ剣と魂、革命の象徴となりし、誇り高きガンダム。白きフレーム、ブルーカラー。紅き双眼を光らせる、人類の希望を背負って戦い抜いた誇り高き魂の具現
ガンダム・バエル──タバネの回収を受け、最新技術によって生まれ変わった、最古にして最新のガンダムフレーム・ISである──
「さぁマッキー!ゴーゴー!」
「ありがとう・・・さぁ、目覚めの時だ・・・!!」
颯爽と法被を脱ぎ捨て上半身の裸体を晒し、ISバエルに乗り込み起動を行う。目に映らぬ程の速さにて空中に飛翔し、両手を広げ粒子を散らし、両手を広げスピーカーをMAXにし、島に響き渡るような声音でバエルの健在を高らかに叫ぶ
「マクギリス・ファリドの下に!バエルは蘇った!!」
「上機嫌だな・・・しかし、俺らのISはちっと規格が違うもんなのにあっさりと変えちまうとはよ」
「そこはほら、天才のタバネちゃんだから!」
「すげぇよ・・・」
あっさりと世界の壁を乗り越える目の前の人間の存在に、オルガは驚嘆を隠せない。そしてバエルに続く新たなるISのフィッティングの為に、紅椿を展開する
「さぁホウキちゃん!パーソナライズを始めよっか!バエルに負けるな負けるな頑張れ~!」
「ホウキ・・・」
「・・・心配するな、イチカ。彼女は腕『だけ』は確かだ」
「だけ!?」
タバネの抗議を無視し、そして感謝の一礼を送り、ゆっくりと紅椿を纏うホウキ。一同が見守るなか、タバネがさらに右指を鳴らし・・・
「では、パーソナライズの助手カモーン!お願いね~!キラきゅーん!」
移動式ラボにて、とある人物が転送されてくる。それはかつて、タバネが行き倒れていたものを気紛れで拾い、試しに遺伝子パターンを見た瞬間にいい拾い物をしたと歓喜した、助手と呼ぶ少年・・・
「は、はい。分かりました。皆さん、キラ・ヤマトと言います。どうか、よろしくお願いいたします」
丁寧に挨拶を返すキラと名乗る少年に、自分達と同じ匂いを感じた三日月は、静かに告げる
「・・・あんたも?」
「・・・うん。君の思っている通りだよ。でも、その話は、またいつか」
「俺はぁ・・・鉄華団団長・・・!オルガ・イツカだぞぉ・・・!」
「よろしくお願いいたします、オルガ団長。では、失礼して・・・」
「ホウキちゃんのデータは予めある程度入れてあるから、後は更新よろしく、キラきゅん!」
「は、はい!・・・では」
そう言って行われた彼のタイピング速度、そしてアジャストの速さは目を見張るものであった。忙しなく指と視線が動き、そして一寸のミスもなく、ISを、紅椿をホウキへフィッティングさせていく。
「キャリブレーション取りつつ、ゼロ・モーメント・ポイント及びCPGを再設定…、チッ!なら疑似皮質の分子イオンポンプに制御モジュール直結!ニュートラルリンケージ・ネットワーク、再構築!メタ運動野パラメータ更新!フィードフォワード制御再起動、伝達関数!コリオリ偏差修正!運動ルーチン接続!システム、オンライン!ブートストラップ起動!IS紅椿、作動!行けます!」
「すごぉい・・・信じられないスピードだわ・・・」
「ふふん、彼はスペシャル、タバネさんの一の助手なのだ!ねー、キラきゅーん!」
「は、はい。自分にできること、望むことをするだけです。・・・どうぞ、シノノノさん!」
「はい!」
「はーい!」
「・・・ホウキさん!お願いいたします!」
悪乗りするタバネをなんとかスルーし、ホウキの紅椿は操縦者のホウキの意志を受け、飛翔し飛び立つ。
「なにこれ、速い!」
「これが、第四世代の加速・・・!凄い・・・!」
何者の追従を許さぬ、徹底したチューン。瞬きすれば、消え去ってしまいそうな。その速さ。圧倒的な性能、そして機動性に。一同は目を奪われてしまう
その速度はまさに尋常ではなく、地上にいるオルガたちが点に見えるほどの高度に即座に到達する。──ガンダム・バエルも、一切譲ることなく高速にてピッタリと追従を行い、その性能をまざまざと見せ付ける。第三世代すらも寄せ付けぬ高機動にして──運動性
「よぉし、チャンバラいってみよー!二人とも刀でガキンガキンやっちゃってー!」
「りょ、了解!」
「ははははははははっ!ははははははははっ!!」
狂喜と緊張のまま、紅と白のISがぶつかり合い、そして火花を散らす。すれ違い、斬り合うその姿は・・・空に浮かぶ灯火、閃光のごとくに目まぐるしく交差するばかりで、目に追うことすらも困難である
「どうどう?バエルも紅椿も、ホウキちゃんやマッキーが思った以上に動くでしょ!?」
「上機嫌だな・・・」
「嬉しいんでしょ。バエル大好きだし」
「じゃ、刀使ってみてよ!右側が「バエル!」左側が「バエル!」だから!」
「は、はい!?」
狂喜乱舞するマクギリスが、右手左手を交互に上げる奇怪かつ変態的な機動を執り行い通信を遮るほどに騒ぐので聞き取れなかったホウキ。慌てて助手のキラがフォローし通信を送る
「すみません、右が『
「バエル!バエル!バエル!バエル!バエル!」
「うるさいなぁマッキー・・・さぁ、行くよー!」
「はい。・・・『雨月』、行くぞ!」
右手の刀を、水平に前方へ指し示す。瞬間、紅椿の右腕部分より一直線に四束の紅き光線が怒濤の勢いで放たれ、真っ直ぐ駆け抜ける。そのエネルギー収束量は尋常ではなく、白き雲が吹き張らされ吹き飛ばされていく程の威力を、視覚的に示す
「おぉ・・・!」
「いいねいいね~。つぎはこれ打ち落として見てねー!はーいっと!」
機動性に満足した後、タバネは即座に次なる兵器を転送し、ホウキに向ける。それは軍用追尾ミサイルランチャー。追尾を行うそれが、複雑な機動を描き紅椿に襲い来る
「──はぁっ!!」
その複雑奇怪にして多様なミサイルを、ホウキは左手の刀、『空裂』の一閃より放たれしエネルギー刃にて切り払う。遥か上空にて爆発し、空を彩る大輪の華
「はははっ、見事なものだ。タバネ殿の強化は素晴らしいもの、凄まじいものと断言できよう」
「マクギリスさん・・・」
「いいだろう。次は私の番だ。受けて立つ」
自信と自負のまま、バエルソードを高々と掲げ誇示するマクギリス。それを見ていたタバネは、待っていたとばかりに・・・
「じゃあマッキー行くよー!ガンダムフレーム対抗兵器・・・」
「これは・・・!!」
息を呑むオルガに三日月。それは・・・前世にて条約にて禁じられ、鉄華団を、そして三日月の息の根を止めたに等しい禁止兵器。この世界に、あの世界にあってはならない──
「『ダインスレイヴ』!!いっけーっ!!」
『今すぐ中断してほし──』
「はーいっと!☆」
──漂う空の、何処か遠く
「「「「「・・・・・・・・・」」」」」
空を彩る、星のような光。それは朝に輝くには、眩しすぎるほどに鮮烈な輝き。
「チョコレートの人・・・」
「禁止なのがよーく解るな・・・」
革命の象徴となり、正義を示す最古にして最新のガンダムフレーム・ISバエルは、禁止されし兵器。蘇りしダインスレイヴに、打ち貫かれ爆散する。それは、儚き打ち上げ花火にも似て、人の心を打つ。全ての視線を、集める中・・・
「・・・あんまり調子に乗ってるとぉ、君もマッキーみたいになっちゃうかもだからぁ」
「・・・?」
「気を付けてね!☆『三日月』くん!」
タバネだけが、三日月に笑顔を向ける。──その目に、無機質な敵意と、冷徹な殺意を乗せて・・・
・・・マクギリス・ファリドは・・・バエルと運命を共にしたのだった──
クラス別対抗戦、開催日・・・
タバネ「・・・なにあれ。天才のタバネさんが、かっこよく白式に倒してもらう筈だった敵を、気付かれるまえに・・・」
(・・・・・・三日月・オーガス・・・大体、なんでいっきゅん以外にIS動かせてるの・・・?タバネさんが知らないこと、イレギュラーが起こるとか・・・何アレ・・・何アレ・・・何アレ)
「・・・?」
『通信』
「・・・タバネさんに、直接・・・?」
『不躾な通信、申し訳無い。君がこの世界のISを製作した張本人だね』
「・・・誰」
『私は・・・この世界を変える力を持つものだ。彼等・・・三日月・オーガス、オルガ・イツカの同類だよ』
「・・・!」
~
「・・・大量の無人機で出迎えとは。礼儀を弁えた方のようだ」
「用があるのはその胸のエンブレムだけ。身ぐるみ剥がしてやるから。ISだけ、置いていって」
「おやおや。それは手厳しい。ならば──手荒になろうとも文句は無かろうな」
「・・・!」
その男は、あらゆる無人機、最低でも第三世代クラスにチューンされたものを、半壊したIS、折れた双剣にて蹂躙した。タバネの予想を、二重に裏切り、優雅に火の粉を振り払う
「私の要望は単純だ。この世界にて私は身寄りがいない。戸籍もなくてはまともに過ごせなくてね。身柄を保証してほしいのだ」
「──はぁ?どこから来たっていうの・・・?」
「遠い場所。混乱と混迷が絶えぬ混沌だよ。私の力、いや、バエルの力は理解できただろう?天災、シノノノ・タバネ」
「・・・嫌だといったら?」
「ふむ、そうだな。IS・・・君の発明の優位性を世界から消し去る。この世界に、私の持つIS・・・いや、『モビルスーツ』の技術を配布、公表しよう。女性優位の社会に警鐘と新風を吹き込む革命を、即座に巻き起こしてみせよう」
「──・・・・・・」
「女性に虐げられた男性の無念と義憤は、このバエルを火種として燃え上がる。君が目論む、都合のよい世界を私は変えてしまうことになる。・・・構わないかね」
「何が目的なの・・・」
「言っただろう。私はこの世界にて成すべき事を成す。その為に、君を利用したいんだ」
「・・・名前は?」
「マクギリス・ファリド。アグニカ・カイエルの魂、その理念を追い続けるものだ」
・・・半信半疑であったタバネの予測を、マクギリスは次々と打ち貫き覆す
『第一世代に乗って第四世代のテストプレイに付き合って』と言えば、易々とそれをこなし
悪ふざけに『臨海学校に使う宿』を売り上げ一位にしてと言えば、『場亜流』として生まれ変わらせ有数の旅館とする。実力、人柄ともにまさに非凡、天才的だった
何より──
「アグニカ・カイエルとは。誇り高き意志と、決意をもって、人間達を守護し立ち上がった者であり、私の世界において──」
24時間のバエル教育を否応なしに受け、またそれを弁舌にて表したマクギリスの評価は、タバネの中で遥かに振り切れた
「あはははははははは!!面白い面白すぎー!あなたバエルを手にいれてから何も考えてなかったんじゃん!」
「そうだ。バエルを手にするものこそが総てを手にするがゆえに」
その狂信、その清らかな狂気に、鮮烈に彼女は魅せられた。信仰者のような清廉さ、狂信者のような支離滅裂さ。それでいて──バエルを語るときの、彼の子供のような顔
(あぁ、解った。やべーやつで馬鹿なんだ)
なんと、なんと面白い逸材なのか。これを逃してはいけない。極めて、極めて興味深い観察対象だ。それに何より──
「法被が似合いすぎて笑えるー!あははっ、いいよ!面倒見てあげる!タバネさんに任せなさい!」
「ありがとう、感謝しよう」
彼が持つデータを使えば、あの風紀委員に釘を刺せるだろうと彼女は直感した。彼こそが、異物を排除する鍵であると
ならば・・・ここは飼い慣らしておくのが正解だ
「じゃあ、よろしくね!・・・んーと・・・」
まだ、ここは仲良くしておこう
「マッキー!よろしくねー!じゃ、助手のキラきゅんを紹介するよー!」
余計な事をされるより、手に届く場所で管理しておくのが一番なのだから。そう・・・狡猾な羊は笑うのだった・・・