インフィニット・オルフェンズ!   作:札切 龍哦

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御待たせしたので初投稿です



番外編

「イチカの家を、張ったからよ・・・」

 

暑い夏、地球っつか、日本特有の暑い夏。でっけぇお日様が照らしてくるこの暑い中、俺・・・オルガ・イツカは鉄華団の見習い・・・いや、もう立派な男になってやがるオリムラ・イチカの家の前で、『オリムラ』と書かれた表札とメンチ切って睨み合ってた

 

「だ、大丈夫かな?約束や連絡もなく来るのって、迷惑じゃないかな・・・?大丈夫だよね?イチカ忙しくないよね・・・?」

 

んで、インターホンの前で指を指したり引っ込めたりしてる、金髪で・・・まぁ、その・・・可愛い女の子はシャルロット・デュノア。フランスから色々としがらみを押し付けられて学園にやってきた、男のふりした女の子だったっつー変な経歴を持ってる鉄華団の一員だ。・・・まぁ、なんつーかその。俺が護ってやりたい女の子、ってやつだな

 

シャルロットと夏休みだからってんで、麦わら帽子やワンピースでも買ってやるかと顔を合わせて歩いてる手前、ふと気がついた表札に『オリムラ』って書いてあったもんだからよ。オリムラっつったらイチカで、オリムラっつったら鉄華団だろってんで。こうして家の前に足を運んで張り込んでたって訳だ。別に不審者って訳じゃあねぇからよ。誤解しねぇでもらいてぇ・・・

 

「お、押すよ。オルガ・・・」

 

「お、おう・・・」

 

軽く顔を見ようと足を運んでインターホンを押そうと思ったんだが、俺もシャルもアポも無しで家に邪魔するなんてマジで邪魔なんじゃねぇのか。こいつぁかなり筋が通らねぇ事をやらかしてるのかもしれねぇ。授業でやってた『親しき仲にも礼儀在り』っつー仁義に反してるのかも知れねぇじゃねぇか。こいつぁかなり、鉄華団の絆に響く一大事なのかもしれねぇと考え、俺もシャルも、インターホンを押せねぇでいる

 

「お、おいシャル。やっぱり俺が押すからよ。ほら、お前は俺が無理矢理連れてきたってんで・・・」

 

「それはダメだよ・・・!団長が冷やかしなんて良くない、ここは、鉄華団フランス代表の僕が、きっちり筋を通さなきゃ・・・!最悪無礼だったら首を跳ねて、イチカの家の前にさらしてくれたっていいから・・・!」

 

全然よくねぇ・・・!待ってくれ、そんな軽い気持ちでこんな事になるとは思わなかったんだ。勘弁してくれよ、なんだよ・・・日本の文化結構シビアじゃねぇか・・・。まさか遊びに来るにも礼儀が必要だなんて正直ピンと来て無かったからよ・・・!

 

「よぉし!お、押すよ!押すからね!オルガ見てて、押すからね!!」

 

「待てって言ってるだろうが!団員を護るのはオレの仕事だ!だからよ、そこは止まれよ・・・!」

 

「やだー!僕が勝手にやったことだから!オルガは悪くないからー!」

 

「ま、待て!慌てるな!待てって言ってるだろうが!」

 

そんなこんなで、家の前で押し合い抑え合いをくそ暑い中で繰り広げてる俺達に──

 

「?なんだお前ら。何家の前でいちゃついてるんだ?暑くないのか?」

 

「へっ!?うぇえぇえぇえっ!?」

 

「は!?ヴゥウァアァアァアァ!?」

 

後ろからの不意討ちで、件のイチカが声をかけてきやがった・・・!こいつはイチカ、日頃カッコいい男を目指して自分を磨き続ける鉄華団期待の新入りで、オレらのマブダチでもある。手にスーパー袋を持ってるってこたぁ、買い物帰りか・・・!?自炊かよ、しっかりしてるじゃねぇか・・・俺はシャルに任せきりだからよ・・・

 

「い、イチカぁ!?こ、これはその、筋が通らない来訪なのは認めるよ!?でもこれはね!?別に冷やかしとかそんなんじゃなくて!」

 

「おはようございます・・・!鉄華団団長ッ・・・!オルガ・イツカだからよ・・・!止まるんじゃねぇぞ・・・」

 

そのまま家に入ってくれりゃ俺達も助かるからよ・・・!そんな風に考えていたら・・・

 

「ははっ。相変わらず仲良しだなぁ。せっかくデートしてるんだ。家で一休みしていけよ。オルガもシャルもさ」

 

「ふぁっ・・・い、いいの?」

 

「断る理由は無いだろ。友達が遊びに来たのに追い返すほど、俺は人間腐ってねぇよ。な、オルガもシャルを休ませてやりたいよな?」

 

「お、あ・・・そうだな・・・!」

 

「決まりだ。じゃあ上がっていけよ。あ、この袋頼む。お前らの分のジュース、一走り買ってくる!」

 

「えぇっ!?お、お気遣いなく・・・!?」

 

「気にすんな、特訓みたいなもんだ!ソファーに座っててくれ!すぐ戻るからさー!」

 

そんな事を言って、さっさと走っていっちまったイチカの後ろ姿を見たあと、シャルと俺は顔を見合わせる。・・・気を遣わせちまったみてぇだな・・・

 

「じゃ、じゃあ・・・オルガ。入ろっか?」

 

「お、おぅ。・・・じゃ、邪魔するぜぇ」

 

家の持ち主が走り去っちまったけど、俺たちは家に入るからよ・・・あんまり待たせるんじゃねぇぞ、イチカ・・・

 

 

~~~

 

「ここがイチカの家かぁ・・・広いね、オルガ」

 

「いいんじゃねぇの?不自由しなさそうでよ」

 

招かれた家のソファーで、シャルの隣に座った俺はイチカのマイホームを見渡してそんな感想を漏らす。なんだよ、めちゃくちゃいい家じゃねぇか。キッチンもあるし広いし、団長の部屋より上等なんじゃねぇか?シャルも興味深そうに見渡してやがる。やっぱり日本建築はフランスとは違うもんなのか?

 

「ねぇイチカ。家のことはイチカがやってるんだっけ?」

 

「あぁ。チフユねぇは忙しいし、中々帰ってこなかったからな。ま、自炊だ自炊。独り身だしな!ははは!」

 

「すげぇよ・・・イチカは」

 

独り立ちや自炊なんて、中々出来ることじゃねぇ。俺はしょっちゅうシャルやミカにやってもらって頼ってばっかだ。出来ることっつったら花咲かせることと、先頭に立って粋がることしかできねぇ。戦争だの命張ってる時はそれでいいのかもしれねぇが、平和な生活でやれることがなんもねぇってのは割りと致命的なんじゃねぇのか・・・?

 

「イチカっていい旦那さんになりそうだよね~・・・はっ!?だ、旦那さんかぁ・・・!」

 

・・・?なんだかシャルがこっちを睨んできやがる。顔も赤いように見えるぞ。どうしたおい、熱中症か!?

 

「大丈夫かよ、暑さでやられたりしてないよな!?大丈夫だよな!?」

 

「だっ、だだだ大丈夫!ただ、ちょっと・・・」

 

?ちょっと・・・どうしたってんだ?

 

「・・・オルガのお嫁さんになるのは、誰かなって・・・考えちゃった、だけだから・・・」

 

「えっ、・・・そ、そりゃお前・・・」

 

「ははっ。目の前にいるんじゃないか?なぁ団長。夏の暑い日に一緒にいても辛くないなら、もう決まったようなもんじゃないか。ほら、麦茶とジュースだ」

 

ばっ、お前なぁ・・・!俺は別に、シャルを護りたいってだけで、結婚とか付き合うとか・・・シャルの隣にいるだけで満足って言うか・・・

 

「・・・僕がオルガのお嫁さんかぁ・・・ふふっ・・・」

 

シャルだって、生き返るしか能がねぇ男は不服っつーか不満だろっていうか・・・ん?今度は何をニヤニヤしてやがんだ、シャル?

 

「ううん。なんでもないよ、オルガ。でも・・・」

 

「あぁん・・・?」

 

「・・・ちょっとだけ、期待しちゃうからね?オルガの隣・・・ね?」

 

・・・隣ってお前、いつでもお前がそこにいるだろうよ・・・熱中症でやっぱりおかしくなってんじゃねぇのか・・・?大丈夫か・・・?

 

いつもよりニヤニヤしながらジュースと麦茶を飲むシャルを不思議に思いながら、俺はイチカが出してくれた麦茶を暖まった身体に染み渡らせるように飲み干しまくった。なんだよ、結構うめぇじゃねぇか・・・──

 




ピンポーン

イチカ「?誰だ?」

シャル「?誰だろ?約束もしてないって随分不躾だね?」

オルガ「お前・・・」

イチカ「セールスか?ちょっと見てくる。ゆっくりしててくれ」

「はーい。ねぇオルガ。そっちのジュース美味しい?」

「ん、おぉ。なんか冷たくて、すげーつめてぇ」


玄関

セシリア「おはようございますわ、イチカさん?たまたま通り掛かったので、飲み物でもご馳走になろうかと思いまして!」

イチカ「悪びれないな・・・まぁセシリアならそうだよな。よし、上がっていけよ。ジュースと麦茶、御馳走するぜ」

「ありがとうございますわ!では早速・・・」

ピンポーン

「「?」」


ホウキ「い、い、イチカ!たまたま通り掛かったので、顔をだしに来たぞ!!元気か!!」

ミカ「おはよ。オルガの匂いがしたから」

ラウラ「夫婦の営み、出掛けの際に貴様に声をかけようと思い至ったミカの優しさを在りがたく思うがいい。まぁ有り体に言えば、あそびに来たわけだが」

リン「・・・なんであんたたちまでここにいるのよ・・・暇なの?」

ミカ「鏡、見れば?」

イチカ「あははははっ!まぁ良いじゃないか。よし!全員上がれ!仲間外れは無しだ!」



シャル「──結局、皆集まっちゃったね。これはやっぱり・・・」

オルガ「俺達は、鉄華団だからな」

ミカ「ただの偶然でしょ」

「ミカお前・・・勘弁してくれよ・・・」

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