おわかりだとは思いますが儀式素材はダイヤです。
×月Π日
決めた、俺は秘密基地を作る(ドン!)
これは別に突飛な決定という訳でもないのだ。おそらく、今後404小隊から逃げるようにあちこちを転々としていたら水と食料の方が持たん。
肝心の場所だが、住宅街にある地下室のある一軒家を見つけたのでそこを利用する。
地下への入り口は巧妙に隠した(つもり)。地下へ続くハッチの上に底をくりぬいた冷蔵庫を乗せてカモフラージュという寸法よ。まさか冷蔵庫の下にハシゴが続いているとは思うまい。いやーやっぱこういうの憧れるよねぇ。
地下室以外には可能な限り生活感を排除し、この家もありふれた廃屋の一つという体を保つ。
さっそく基地を豊かにするために色々運び込もうとしたのだが、肝心の入り口が狭いので持ち込めるものに制限が掛かるのが悩みどころ。M249も通るときに体のあちこちがひっかかると文句を垂れていた。いや、それは知らんがな。
×月仝
街をこそこそと歩いていたら、懐かしい連中と会った。現役時代に引き連れてた人形たちだ。抜ける直前の時期は同じグリフィンに所属していても顔を合わせる機会が滅多になかったから本当に久しぶりだ。などと気楽に考えて声を掛けたら、血相を変えて追いかけてきたのではちゃめちゃにビックリした。体が反射的に逃走してくれたので捕縛されなかったものの、油断していたので本当に危なかった。
そうだよな、そういえば俺グリフィンから勝手に逃亡した身の上だったわ。別に重要なデータを持ち出したりはしてないけど、捜索されていてもおかしくない。
だが404小隊との鬼ごっこ続きで研ぎ澄まされた俺なら逃走の一つや二つ楽勝ですよ。嘘です傷口開いてつらいです。
しっかり撒いたのを確認してから秘密基地に帰り、M249にくるまって寝た。前までは同じ布団で寝ているだけだったのが、足を絡ませ腕を回しと日に日に拘束してくるようになっているのに不安を覚えないでもないが、この方が暖かいので気にしないことにした。
しかし、AR小隊っていうんだっけ? 今はあのM4が隊長かぁ。立派になったもんだ。
俺の事追いかけてこなければもっと立派だったのに。
◇
「もー歩くのつかれたー……足が棒になっちゃう……」
倒壊した住宅街の一角。足を引きずるようにのたのたと歩いていたG11が、指揮官を探し始めてからもう何度目かもわからない弱音を吐く。
「いいから歩く」
「うぅ……指揮官のとこにかえるぅ……」
とうとう歩くのをやめたG11に対し、416が慣れた様子で引っ張り無理やり歩かせる。これもまた、もう何度も交わされたやりとりだった。
だが、今回は一味違う。
ふにゃふにゃになりながらなおも自分で歩こうとしないG11にとうとうHK416も呆れ返った様子で、繋いでいた手をぱっと放した。
前に進む力を全て416に任せていたG11は、引いてもらっていた手を突然離されてこけそうになる。
「いきなり離さないでよ、こけちゃうじゃん」
非難の声を上げるG11に対して、HK416は無慈悲に告げた。
「そんなに歩きたくないなら、そこで寝てなさい」
「え、いいの? やったぁ。じゃあ指揮官見つけたら起こして……」
「何言ってるの、あなたはここに置いていくのよ。私たちも指揮官も、誰も起こしにこないわよ」
「またまたぁ~、そんなこと言っちゃって」
「あ、そういうことならその寝袋は私がもってくから」
「ナインまで!? あれぇこれ本気のやつ!? っていうか何で寝袋まで!」
世話焼きの416が本当に置いていくわけないとどこか軽く受け止めていたG11だったが、UMP9の要求を聞き、冗談ではないと慌て始める。
「なんでって、その寝袋に染み込んだ指揮官の色々を貴女が堪能しているのは周知の事実よ」
「ぎくっ」
「確かにG11の寝袋の独占は目に余るものがあるわね」
「え、ちょ、45まで」
「……ころしてでもうばいとる」
目の据わったUMP9の言葉を号令に、UMP9と45がG11の寝袋に飛びつく。
「! やめろぉ、ひっぱるなぁ! うぐぐ、これはわたしのたからものなんだ、ぜ、ぜったいに渡してなるものか……!」
突如始まった綱引き。UMP9も45も先ほどまでの冗談めいた口調に反して、寝袋を掴む手は爪を立て手首をひねり全身全霊で寝袋をひったくろうとしていた。対するG11も先ほどまでのくたびれっぷりが嘘のように寝袋にしがみつき、地に足をつけて踏みとどまる。
今までにない気合を見せるG11は、驚くべきことに2対1という数の不利を覆し、綱引きの戦況を拮抗状態にまで抑え込んでいた。
「二人とも。ほどほどにしないとそれ破れるわよ」
「……くっ、仕方ないわね」
「た、たすかった……もうやだ……早く指揮官を見つけて一緒にさなぎになりたい……」
輪をかけてへとへとになったG11がぶつくさ泣き言を零す。が、何かに気づき、呟いた。
「誰か来る」
先ほどまで騒いでいたせいで聞き取れなかったが、確かに慌ただしい足音が近づいてくる。
現れたのは、焦燥しきった表情の女性。黒い髪と眼帯が象徴的だった。
「くそっ、せっかくあと一歩というところまで来たのに……!」
「ってM16じゃない。なにそんなに慌ててんのよ」
警戒して損した、とでも言いたげな表情で416が構えを解いた。
「……HK416か? 悪いが今は構っている場合じゃないんだ」
「ふーん。ずいぶんと余裕がないのね」
「そうだ。頼むから邪魔をしてくれるなよ、今は手加減はできない」
「それ、今じゃなかったら手加減する気だったってワケ? ほんっといちいちムカつくわね……!」
「……」
声を荒げる416に対し、M16もまた剣呑な表情で様子をうかがう。
「……別に邪魔なんてしないわよ。私たちだって暇じゃないんだから」
張り詰めていた空気がふっと元に戻る。M16もまた、事を穏便に済ますことができて安堵していた。
「助かる。人を追っているんだ。情報を提供してくれないか」
「面白そうな話してるじゃない。私も混ぜてよ」
傍観に徹していたUMP45が会話に参加してくる。こういった実務的な交渉事では、必ずUMP45が先頭に立つようになっていた。
「で、追ってる奴は人間と人形どっち? 性別は? 」
「人間の男性だ。丁度416の羽織っているのと同じ──っ!」
416の服装に気づいたM16が途中まで言いかけて言葉を止めた。
その視線は、416が着ている上着に向けられていた。
「? なによ」
「なあ、一つ聞かせてくれ。416の上着。前は着ていなかったよな?」
「まあ、そうだけど」
M16の震えるような声で投げ掛けられた問いに、416は困惑しつつも応える。
「……それは元はお前の物じゃない。合ってるか」
「そうね。これ死体からはぎ取ったやつだし」
M16が息を呑んだ。何を察したか、UMP45はにやにや笑っている。
「次の質問だ。あちこちに血の染みが広がってる理由は?」
「あ、これねぇ。やっぱり着てる奴の心臓吹き飛ばしちゃったから。やっぱり気になるわよね……」
HK416の気楽な返事とは対照的に、M16の顔色は悪い。
「最後に一つ。その服の持ち主と、お前たちの任務に関係は……あるか?」
HK416よりも先に、UMP45が笑みを浮かべて答えた。
「YESと言ったら?」
時系列こわれる
AR小隊がヤンデレじゃないわけないだろいい加減にしろ!
ちなみにこの話ピックアップ最終日の夜にきてから書き始めました