前線日記   作:へか帝

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夜戦1-4初クリアで春田さん専用弾ドロップしておったまげました。



五冊目

Ψ月З日

 

 全員で同じ部屋で寝ようという提案を話してみると、非常にすんなりと受け入れられた。相談してすぐに「じゃあベッド移そっか」とそのまま家具の運び出しを始めたので流石に面食らった。なんだその行動力。

 次々とソファや大柄な座椅子、ハンモックなどが運び込まれあっという間に広々としていた俺の寝室が手狭になってしまった。

 というか君たちそんな贅沢な環境で今まで寝てたんだね。俺が紙やダンボールで作った粗末な布団を最高級呼ばわりしてのはなんだったんだよチクショウ。恨むぞ、おい。

 でもどうしてソファのような充実した就寝環境を捨ててまで毎晩俺の所に来るんだろうか。あれかな、衝撃緩衝材のぷちぷちが出荷前を思い出してノスタルジーな気分に浸れるとかかもしれない。実家の布団だといつもより安眠できる的な。今や俺の実家は放射能に埋もれた焦土だけどな! ギブミー帰る家。

 でも常連のUMP45は「こっちの布団で寝よー?」などと手招きしてきたからやっぱり違うかもしれない。ちなみにその誘いは蹴った。だって編みこまれたハンモックが獲物を待ち受ける蜘蛛の巣に見えたんだもん。絶対に一度絡まったらもがけばもがくほど深みにハマる類のアレ。

 あと許せないことになんとG11が寝袋を持ちだした。本当に許さない。あまりに許せなかったので復讐としてG11の入った寝袋に俺も入って寝ることにした。どう見ても二人も入れる設計ではなかったが強引に押し入った。凄まじく窮屈だったがG11のぬくもりでとても安らかに眠ることができたし、何より寝袋のおかげでUMPサンドを恐れずに済んだというのも大きい。G11の抗議の声は聞こえないふりをした。

 訓練は昨日と同じ鬼ごっこだ。鬼は俺と404小隊で日替わりにしようと思っていたのだが、今日はUMP姉妹の強い希望で連日俺が逃げる側となった。有無を言わさぬ勢いだったので思わず頷いてしまったのが運の尽き。

 たった一日で恐ろしく上達したUMP姉妹に日が暮れるまで追い回された。ほんとにギリギリ。一応日没をタイムリミットに設定しておいてマジで良かった。一体何が彼女らをそれほど駆り立てたのか。

 今日はG11の調子がいつもより悪かったのだが、それが無かったら本当にヤバかったかもしれない。HK416はUMP姉妹のガッツに少し引いてた。

 今夜ももちろんG11と一緒の寝袋で寝る。速攻でG11を抱えたまま寝袋に滑り込んでファスナーを閉め一瞬で眠りにつく作戦だ。

 

 

Ψ月Л日

 

 朝、目を開けたら視界に山吹色が広がっていた。寝袋を完全に閉め切っていても、前面に開けられた無数ののぞき穴から外を確認できるのだ。綺麗だなぁとのんきにしばらく眺めたあと、それがUMP45の瞳の色によく似ていることに気づいて俺は寝袋ごと転がってから寝袋から脱出し、その場を離れた。

 真相はわからない。単純に何かオレンジ色の布が覗き穴に被さっていただけかもしれないし、朝日がこう、上手く屈折して俺の目に入りそういう風に見えただけかもしれない。

 ……なお、一番有力な説はUMP45が至近距離でじっとのぞき穴からこちら側をおっと怖いのでこれ以上考えないことにする。

 今日の鬼ごっこは俺が鬼だ。連中もさすがに工場を走り慣れてきたようで、前回のようにひょいひょい捕まえられなかった。結局午前中には全員を捕まえきることができなかったな。密かな目標だったのに。

 マジで飲み込みが早い。やっぱそこらの民生品上がりとは格が違うんだな。

 思っていたよりも研修がすぐ終わりそうだ。ていうか今更だけどこれ報酬とかあんの? 現状完全なるボランティアやないか。とはいえこいつらの依頼主がどこの誰かもわからんし、一通り教え終えたらこいつらを通してなんか請求してみるしかないわな。

 そもそもこいつらなんなん? グリフィンに伝手があるのはわかるんだが、違法パーツといい民生品上がりとは思えない超性能といい、なんかヤバそうだよな。念のためトンズラする算段くらいはつけておくか。

 

 

Ψ月ヾ日

 

 奇妙な揺れを感じて朝目が覚めた。なんとなく嫌な予感を感じて身をよじると、何か高いところから落ちた。G11よ下敷きにしてしまってすまん。

 寝袋から這い出てみると、どうやらUMP姉妹が二人で俺とG11の入った寝袋を担ぎだしてどこかへ運搬していたようだ。理由と目的を訪ねてもばつが悪そうに目をそらすだけで、結局何もわからなかった。

 寝袋が運ばれた先には食料と水を貯蓄している地下室くらいしかないんだけどな。

 あそこの重厚な鉄扉は外からしか鍵を開けられないから、うっかり誰かを閉じ込めてしまわないように厳重注意したばかりなんだが、一体俺をあそこに連れて行って何をするつもりだったのだろうか。

 UMP9が「縄を探してからやればよかった」と言い残していたのが気がかりだ。ちなみその縄だが、昨夜HK416がかき集めてどこかに隠していた。理由は分からないが俺はHK416に救われた気がする。拝んでおこう。

 鬼ごっこは404小隊が鬼。鬼をやらせるのは今日が最後にした。

 それを伝えるとはちゃめちゃにやる気を出した。最後だから全力を出す為に気張っているのだろう。HK416は指示がいつもより冴えていたし、G11もセントリーガンもかくやという索敵能力を発揮した。UMP姉妹は鬼気迫るレベルで追いすがってきたので、なんだかんだ言いつつも手加減していた一昨日と違い俺も久々にマジになって走った。

 危ない場面もかなりあったが、幸運と偶然が重なりないなんとか逃げ延びた。次まともにやったら絶対に捕まる。そう確信できた。まあ次なんてないんだけどな!

 ふと思い立ち、地下室の鍵をHK416に預けた。なんとなくそうした方がいい気がしたのだ。野生の勘ってやつだな。寝袋も使うのはやめた。今晩はひさびさの高級ロイヤル寝具の出番だ。全然暖かくない。泣きそう。

 

 




いつのまにかヤンデレの人形との駆け引きを綴る日記になってしまったぞ

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