ところで少しでも油断すると内容がシリアスに引っ張られるので油断ならない。
Ψ月∮日
昨夜、どういう風の吹き回しかG11が広くなった寝袋を独り占めすることなく俺のスーパーハイグレード寝具で寝ることを所望したので歓迎して布団に入れてやった。G11のぬくもり好き。安眠のお供。
朝になると昨日まで使っていた寝袋からご満悦の表情をしたUMP9がホクホクしながら出てきた。寝る前に随分と白熱したじゃんけん勝負をしているなとは思ったが、寝袋の使用権を賭けて争っていたらしい。
一方のUMP45は俺の上着にくるまってソファでしぶしぶと夜を過ごしたようだ。あの上着はHK416の服の修繕に使ったやつだな。大胆に引き裂いて材料にしてしまったのでもう服としては使えないが、貴重な上質の布なのでとっておいたのだ。いつの間に45は確保していたのだろう。
なんかもう教えることないし訓練考えるのもだるいので実戦することにした。食糧も減ってきたことだし渡りに船ってことよ。
しかし本当に戦闘マシーンと化したG11は凄まじいな。今のところ敵に回したくない度No.1だ。ちなみに二番はHK416。丁寧かつ徹底的で容赦がない。UMP姉妹はもとから実質敵みたいなもんなのでランキング外です。
手ごたえのない戦場を散歩していてもしょうがないのでちょいと深入りしてみた。全員かすり傷程度にはダメージを負っていた。ちなみに俺が一番傷だらけなのは最前線で弾避けしていたからね、仕方ないね。
丁度いいので404小隊は全員一度依頼主の元に帰るそうだ。たぶん定期メンテとかそういうんだろう。明日の朝には合流ポイントへの移動を始めるそうだ。この工場も静かになるな。
実をいうと都合がいい。実は今日、腑に落ちないことがあったのだ。それを確かめに、明日はもう一つの廃工場を漁ってみようと思う。
さて今夜は一人で寝袋で寝ることにした。愛しのG11離れをするためのリハビリである。早く慣れなくては。
Ψ月Ι日
とてつもなく窮屈に感じる寝袋の中で目が覚めた。G11はいないから窮屈に感じるはずはないのに、どうしてこんなに俺の臓腑と骨々が悲鳴を上げているのだろう。そう、身に覚えのある感触だった。
嫌な予感をひしひしと感じながらも目を開けると、UMP45と目が合った。寝袋の中で。耳元からはおはようと囁くUMP9の声が聞こえた。
ありえないと思った。入りきるはずがない。小柄なG11でさえギリギリだったのに。あとで聞いてみると、俺が寝ている最中に寝袋を裁断し、内側に入り込んだうえでHK416に外から縫ってもらったらしい。そこまでするか普通。
その時の俺の絶望感は筆舌に尽くしがたい。なにせ通常ですらまず脱出できないUMPサンドだというのに、今回は寝袋という閉鎖空間。圧迫力もマシマシだった。脳裏をよぎったのは脱出不可能と絶体絶命という二つの言葉。
三途の河が見えてきたあたりで俺もいよいよここまでか感もあったのだが、なんとここでG11が寝袋の酷使に立腹し救助してくれた。あのG11が自発的に、だ。信じられん。でもこの寝袋もってきたのG11だからな、そう考えると納得できる。寝袋がはちきれるのも時間の問題だったからな、よく一晩持ったものだ。もし45のバストサイズがこれより僅かでも大きく設計されていたらぜった(インクが滲んていてこれ以上読めない)
δ月Л日
俺はとうとう学習した。奴があずかり知らぬ場所であろうとなかろうと、絶対に胸の話はタブーだ。殺意が形を伴って飛んでくる。
そんなことより、今日は404小隊出立の日だ。途中までは同伴してやった。これだけ一緒に暮らしたりあれこれ教えてれば流石に情も湧くってもんよ。機密漏洩的問題で合流地点までは一緒に行けなかったが、まあ十分だな。別にこれが最後の別れってわけでもなし。俺が命を預けた愛銃を引っ提げてるので、大切にするように言い含めておいた。まあ粗末にするわけないか。よもや手のひらに銃を立てて倒さないように遊んだりせんだろう。俺はよくやるけど。
奴らを見送ったあとは例の倒壊した鉄血人形工場に足を運んだ。予想通り、目的のものは見つかった。
万が一を考えて日記に詳細は残さないが、完全にクロだな。どいつもこいつも腹に一物抱えてて嫌になっちゃうわ。
δ月ц日
404小隊が帰ってきた。はえぇよ。一泊しかしてないじゃん。俺はてっきり一週間強はあると思ってたよ。最低でも三日くらい。
しかも編成拡大まで済ませちゃって。どうすんだよこんな大所帯。
だが連中にとっても予想外だったらしく、なにか突発的な問題が発生して急遽送り返されたらしい。それにしては外装まできっちり新品同然じゃん。416の服装も俺の上着の布をあてがった不格好な奴じゃなくて新調済み。と、思いきや前のはまだとっておいてあるらしい。あれは勝負に出る時の一張羅だそうだ。しかしあんなボロくなったのでいいのか? 完璧を好む416らしくもないが、まあ本人なりのこだわりがなんかあるのかもしれないので余計な口は挟まなかった。
しっかしどいつもこいつも装備まで質のいいやつ揃えちゃってまあ。雇用主の期待の反映ってことかい? でもさっそくグダグダに着崩してるG11には安心した。やっぱお前はぶれないよ。
あと、依頼主から研修の報酬として荷物が一緒に運ばれてきた。中身はようわからん機材。ごちゃごちゃコイルが巻かれててアンテナが伸びてる。これ開封してから人形たちの様子がおかしいんだが毒電波とか出てない? 大丈夫?
у月π日
マジ404小隊のバックについてる奴の性格悪すぎでしょほんまぶっころ。 あの毒電波装置はたぶん人形のAIに干渉して親愛度だか好感度だかの値を逆転させる装置だ。
愛を謳いながら発砲してくる404小隊から死に物狂いで逃げてきたわ。あいつら頭の中で何がどうなってんの? 反転どころじゃなくない?
あの装置だが十中八九死んだ方の天才の遺物だろう。I.O.PのAIにちょっかい掛けられるようなやつがゴロゴロいてたまるか。妙に作りがずさんだったのは蝶事件でまともな状態の残ってなかったから突貫工事の修理品ってとこか。
俺が廃工場でヤバ目の証拠掴んだのが向こうにバレて、慌てて何も知らない404小隊を武装させて俺を始末させる気だったようだ。
でもお前そのやり口ほんま。良心のブレーキついてる? 記憶処理とかもっと穏便に済ませる選択肢なかったの?
とはいっても、そもそも大層な機密部隊の教育に俺のような根無し草を選択してる時点で最初から処分する気マンマンだったんだろうな。
それが分かっていたから俺もトンズラこく準備をせっせとしてたわけだしな。
しかし完全に追跡の教育を施したのが裏目に出たぞ。何発かおいしい鉛玉をもらってしまった。おじさん久々に流血しちゃったぞ。
しかしそれなりの生活基盤が整ってたあの廃工場ともおさらばかぁ。
はー、明日からどうしよ。
逃げきれなかったシリアス(バニラ味)
一度はやってみたかったヤンデレ加速装置こと好感度反転(一日で効果が切れる上に記憶は残る)。
404小隊の心情やいかに。
その筋の者にとってはおなじみの劇薬ですね
ちなみに雇用主側の考えは
「あかん! あいつやばい情報掴みよった! どうにかせんとあかん!」
「でも戦闘能力の高さは404小隊の成長ぶりが証明していて迂闊に手をだせんな……」
「いくらなんでも殺すのは忍びないし……。せや! 404小隊を使って油断させて拘束したろ!おあつらえ向きに丁度いいガラクタもあったやろ!」
なお実際は好感度が振り切りすぎてて逆転のはずが3週くらい行き過ぎて憎しみの向こう側の殺し愛に達してしてしまった模様。あるいはACVの主任みたいになってるとおもう