やはり俺がダイビングサークルに入るのはまちがっている。 作:筆ノ介
面白くないかもしれません、八幡が八幡じゃ無くなるかもしれません、でもそれは全てお酒のせいっていうことで!
それではどうぞ!!
総武高を卒業して早二ヶ月。
俺は伊豆にある伊豆大に進学することになった。学科は機械工学科。
なぜ文系だったお前が工学科とか言ってんだよとか思う人もいるかもしれないが、一つ言い訳させてほしい。
俺も最初は思いっきり私立文系を目指していた。ほんと、そこだけは変わらないって思ってた。
だけど、うちの親父がどうしても機械工の方に進んでほしいと、土下座してまで頼んできた。もう靴舐めでもするんじゃないかって勢いで。もうその勢いで押し切られてしまった。
受験を決めた後に聞いたのだが、どうやら親父は自分の会社に自分よりも地位の低いものを引き込みたかったらしい。うん、ただのクズでした。
てか何で何年も働いてんのにずっと下っ端のままなんだよ親父...さすが俺の親。
まあこういうことがあり、親父が卒業した大学と同じ伊豆大に受験をした。ちなみに伊豆大は俺の理系の学力でも受かるレベルの偏差値だと思ってくれ。
流石に千葉から伊豆まで通うのはキツイので伊豆の少し良いマンションに住むことにした。
俺を伊豆に飛ばした親父には、毎月しっかり仕送りを送ってもらえるように話を通した。
そのおかげで実家にいるのと同等の生活ができる。
だが、この生活を始めて一ヶ月。この生活においてとてつもなく足りない何かに気がついてしまったのだ。
「う、うぅ...小町ぃぃ...お兄ちゃん、小町がいないと家にいても楽しくないよぅ...」
『...何言ってんのごみいちゃん。小町が今何歳になったか分かってる?』
俺の泣きそうなまでにか弱い声を電話口の先で聞いていた小町は心底鬱陶しそうにそう返す。
そう、俺のこの生活に足りないのは小町である。もうほんと、足りなさすぎて怖い。どんくらい足りないかっていうと、焼きそばパンに焼きそばが入って無いくらい足りてない。もはやパンである。
「千葉の兄妹に歳なんて関係ありません!!お兄ちゃんは小町が何歳になろうと小町のお兄ちゃんです!!」
『はぁ...お兄ちゃんってば妙なところで気合が入るから困るんだよなぁ...全く、もう小町高二だよ?いい加減シスコンも卒業してもらわないと』
「うぅっ、小町が辛辣だよぅ...お兄ちゃん立ち直れない...」
『な、なんかかなり弱ってるねお兄ちゃん...うぅ、それはそれで反応に困るっていうか、だけどそんなお兄ちゃんを守ってあげたくなるっていうか、今の小町的にポイント高いっていうか』
「あ、おっけー、立ち直った。そのいつもみたいな対応を待ってたんだ俺は。よし、これで今日の初日のガイダンスも他の奴らと上手くやれそうだわ」
まあ、上手くやるっつってもいつも通りぼっちだけどね!!
そのあと少しの間小町と電話で話していて、気づいたらガイダンスのために家を出る時間になっていた。
「お、小町、お兄ちゃんそろそろ大学行ってくるわ」
『んー?あ、もうそんな時間か、それじゃあ頑張ってねお兄ちゃん!大学でもずっとぼっちとかやめてね!!』
「ばっか、お前、いくら大学のガイダンスに行くからって俺の今までのスタンスは変わらん」
『はいはい上手い上手い。そんじゃ、小町も学校だから切るねー』
「頑張れよー」
そう一言づつ交わしてお互いが電話を切った。
少しばかり、いやかなりの寂しさを胸にしまいこみ、私服に着替えて家を出た。
うちのマンションは海の目の前にあり、玄関から出た瞬間に気持ちの良い潮風が身体中に当たる。
住宅街などでは味わえない新鮮さにふぅっと心が落ち着く。
家の鍵を閉め、エレベーターで一階まで降り、エントランスを抜け公道を歩き始める。
大学へ行く方角とは逆だが、マンションを出てすぐのところにダイビングショップがある。
ここ一ヶ月の間、ちょくちょくゴミを出しに近くまで行くのだが、あそこの従業員だと思わしきとても綺麗な女性がいる。
俺の知り合いの歳上には独神の域に達した女教師とゆるゆるふわふわめぐりん先輩と大魔王くらいだが、この御三方の誰とも違うような雰囲気を醸し出す歳上の女性だ。
本当に、目の保養になる、癒される、光になる。
たまにむさ苦しい屈強な男たちが出てくることがあるが見ないことにしている、だってなんか下半身に●が見えるんだもん、あれは見ちゃダメな気がするんだもん。
イヤホンを耳につけながら公道を歩いて数分、今日からお世話になる伊豆大に着いた。
「確かガイダンスは講堂で行われるんだったか...ん?」
講堂の場所を確認してそっちの方に向かうと、なんだか異様なまでの人が集まっていた。
何事かと思い少し寄って皆が視線を向ける方を見てみると、そこには超謎な光景が広がっていた。
なんとそこには、大量の酒の瓶やビールの缶と共に横たわる裸の男三人がいた。あ、一人はパンツ履いてる。
あ、てかこの屈強な二人、いつもダイビングショップにいる人や...やっぱ彼らの下半身には●がある。見てない、俺は何も見てない...
集まった人たちはそんな彼らをパシャパシャと撮りまくっている。
え、まさかその写真SNSにアップしたりしないよね?『大学の前に酔っ払いいるんだけどウケるw』とか書き込まないよね?彼らが終わるよ?社会的に。
そんな哀れみの視線を向けながら俺は講堂へと向かった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
学科のガイダンスが始まった。
大学内の説明や学部の説明など、これからの大学生活に必要なことを教員が話す。
だが、そんな話を聞く学生の中、一人だけ異様な姿の人物が俺の隣にいる。
先程講堂の前で酔いつぶれていたあいつだ。
あいつは一人、窓の外を眺めながら黄昏ているようだった。な、なんか哀れだなまじで...しかも教員はこの状況をスルーかよ。え、なに見慣れてんの?この大学じゃ日常茶飯事なの?
色々と疑問に思いながらも、教員の説明が終わった。
俺は荷物をしまって帰りの身支度をする。どうせサークルとかも入らないしいいだろう。
他の奴らは近くに座った人と仲良くなりたいのか積極的に話しかけていた。
まあ、そんな奴らも俺には全く話しかけてこないのだが。やっぱ目?目なの?もう慣れたし良いけどさ...
そう思いながら立ち上がろうとした時、前にいた女子たちがこちらを向きながらヒソヒソと何かを話している。
「ねぇねぇあの人...」
「うわ、ちよっとカッコ良くない?」
「えー?で、でも...」
ん?俺のことかな?そんな訳あるか。
どうやら彼女らは俺の右にいる人物に視線を向けているらしい。
俺もつい釣られて右をチラッと見た。
そこにいたのは、あの葉山にも引けを取らないほどの美形の男。サラサラとした長い金髪にキリッとした目つき。まさに女子の理想のような男だ。ちっ、気に食わん。
睨むような目つきになりながら、ふと視線を彼の下に向けた。
するとそこには、かの有名な『溶解!魔法少女ららこ』の画像がプリントアウトされていた。いや、その外見でアニオタですか!?まじビビったぞ!?そのギャップは誰も萌えれないよ!?
うっ...!!アニオタ...アニメ...厨二病...材木座...うぅ、頭痛が痛い。
けっ、もうあんなやつみたいなのと関わるのは二度とごめんだ。俺はそう強く決心して彼を視界に入れないよう反対側に顔を向けた。
するとそこにはこちらを向いている半裸の男が。なんでこっち見てんだよ怖ぇよ。
俺はスッと立ち上がりトートバッグを肩にかけて心に強く誓った。
『こいつらとだけは関わるまい』と。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あのあと、スタスタと足早に講堂を出て帰ろうとしたのだが、急な腹痛に襲われてトイレに駆け込んだ。
あー、まじで危なかった。なんか変なもん食べたかな?いや、最近ろくなもの食ってねぇしそれはないだろ。
なにはともあれ腹痛が治ったので、帰ろうと講堂から外に出た。
するとそこには行きには気づかなかったサークル勧誘の看板がズラリと並んでいた。この道は行きよりも人で溢れかえっていた。
うへぇ...人混み嫌いなんだってば...仕方ない裏から行くか。
俺は大通りを行かず、裏に回り裏の道から帰ることにした。
トボトボと裏道を歩いていると、なにやら警備員が数人聞き込みをしていた。何かあったのか?まあ俺にゃ関係ないが。
あそこを通って俺も聞き込みされるのも面倒なので、警備員に接触しないように手前の道を右に曲がった。
そしてもう一度曲がろうとしたその時、曲がり角に人影があった。
「うぉっ!?」
「うひゃぁぁ!?俺は悪くないです何もしてないです!!!」
急な出来事に思わず声を上げて驚いてしまった。
その声に驚いてか、角に座って隠れていた人影は俺に土下座しながら許しを請うていた。いや土下座って...
あ、てかこいつ。
「あ、お前半裸の変態...」
...いやほんと、第一声がこんなのでごめんね?
土下座していた男は、講堂でパンイチで酔いつぶれていた半裸の変態。
俺のこの一言を聞いてか、変態は顔を上げ俺の顔を確認した。
「ん?あ、お前はゾンビ」
「第一声からひでぇなおい...」
「それお前が言う!?ってやべ、とりあえずお前しゃがめ!」
「お?おう、わかった」
慌てた変態は俺の手を掴み下に引っ張った。俺はそれに抵抗せずに屈む。
なにやら警備員を警戒している変態だが、どうしたのだろうか。
「なに、半裸お前どうしたの?」
「半裸じゃねぇ!北原伊織だ!なんか知らないが千紗とアニオタ野郎のせいで警備員に追われてんだよ!!」
「千紗ってやつはだれか知らんが、アニオタ野郎ならガイダンスの時見たな。それで、なにやらかしたんだ?」
「聞いてくれよゾンビ!あいつらひでぇんだぜ!?」
「ゾンビじゃねぇ、比企谷八幡だ」
いやほんと失礼だな、お前も俺も。普通初対面のやつに半裸だのゾンビだの言うか?まあ俺は言われ慣れてるけど。あの氷の女王なんて初対面の呼び方ぬぼーっとした人だったからな。
「そうか、聞いてくれ八幡!千紗とアニオタ、俺が服脱いでくれって言っただけで警備員呼びやがったんだぜ!?アニオタに至っては顔面に右ストレートかましやがったしよ!?」
見た目どころか中身もただの変態だったようだ。
俺はフッと微笑み立ち上がって警備員に手を振った。
「あ、すいませーん警備員さーん」
「ちょぉぉっとまてぇぇい!?もう一度チャンスを下さいぃぃぃ!!」
「いやチャンスって...お前それ犯罪だろ、つかそもそもお前が公然わいせつ罪の塊だろ?」
「これには訳があんだよ!!くっ、仕方ねぇ!!とりあえず八幡!!服を脱いでくれ!!」
「警備員さぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」
「やめろばかぁぁぁぁぁ!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「はぁっ、はぁっ、はぁっ...!」
俺は先ほどの北原の変態発言に対して耐えられなくなり、警備員を呼んだ。
ここはまだわかる。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ...!」
その声に気づいてこちらに警備員が寄ってきた。
これもまだわかる。
「「はぁっ、はぁっ、はぁっ...!」」
だけどなんで俺まで警備員に追われてんの!?いやほんとまじで訳わかんないんだけど!!
こちらに寄ってきた警備員は、あろうことか俺の顔を見て一発で不審者扱いしやがった。
しかも隣に半裸の男がいたから更に怪しまれて追いかけ回される羽目になった。俺の目、すげぇ影響力だな...
「おい!なんで俺まで追われてんだよ!?意味わかんねぇぞ!?」
「ふっ、自業自得だな。人を警備員につき出そうとした罰だ。ま、追われる身同士仲良くやろうぜ八幡!」
「ちっ...まじでお前と関わらんければ良かったわ...」
大学生活早々濃い体験をした俺はどうしたものかと思考を巡らせた。
うーん...
...あれ、これ詰んでね?俺顔だけで追われてるんだもんね?どうしようもねぇ...
はぁっと深くため息をつき自分の目を呪っていると、隣でうーんと唸っていた北原が渋々といった感じに口を開いた。
「うーん、服がねぇと俺はどうしようもないし、だからといってあんま知り合いがいるわけでも無いんだよなぁ。はぁ...もう関わりたくなかったが背に腹は代えられないか...よし!八幡、ちょっと付いてきてくれ!!」
「...面倒ごとはごめんだぞ?」
「あ、うーん...ま、おけ、大丈夫だ!!」
「信用ならねぇよその返事...」
まあ兎にも角にもなんとかしなくてはならないのだから、渋々北原に付いて行くことにした。
好評だったら続きを書こうかな?って思ってます。