やはり俺がダイビングサークルに入るのはまちがっている。   作:筆ノ介

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02.やっぱり北原伊織は追われている。

 訳が分からず追われる身となりどうしようもなくなった俺は、仕方なく北原に付いて行く事にした。

 北原は警備員の目を避けながら先ほど俺が避けていた大通りへと向かう。ひ、人がゴミのようだあぁぁ...ああ、目眩がする、人混み嫌い、マジ無理。

 

 

「な、なぁ北原、ここに用事があるのか?俺、人が多いの嫌いなんだが」

 

 

 心底嫌そうな顔をしながら北原に話しかける。

 屈みながら前を見ていた北原はこちらに顔を向け、何かに気づいたように顔を上下に振った。

 

 

「あー、お前そんな顔だもんな。人との付き合いとかなさそうだし、そもそも喋り掛けられなさそうだもんな!!」

 

「いやまあそうなんだけどさ...もうちょっと柔らかく言えなかったの?」

 

「柔らかく言おうが強く言おうが結局言ってることは一緒なんだから別にいいだろ?」

 

「精神へのダメージ量の問題だからね?」

 

「ははっ、いつも周りから継続ダメージ食らってんだからいいだろ!」

 

「お前今日会ったばっかなのにめっちゃ言うな!?」

 

「いいじゃんか!一緒に警備員に追われた仲だろ?」

 

「それお前の所為...いやでも俺の目の所為も...」

 

 

 なんだか言っているうちに悲しくなってきた俺は出てきそうになった涙をぐっと堪えて前へ進み続けた。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 そうして着いたのはとあるサークルのテーブル裏。

 着いた瞬間、北原はサークルの前で立っていた人にこそっと話しかけた。俺の位置からでは顔が見えない。

 

 

「ちょっといいすか、先輩、奈々華さん」

 

「お、どうした伊織」

 

「伊織くん!?どうしたのそんな格好で!?」

 

「この格好はそこにいる意味わからない服装してる先輩の所為です」

 

「意味わからないとは失礼な。これはウェットスーツの代用品だ。ここはダイビングサークルだぞ?」

 

 

 なるほど、どうやらここはダイビングサークルらしい。

 男の人の声と女の人の声がしたので二人いるのだろう。というかこの男の人の声、 どっかで聞いたことあるような...

 メタメタしいことを考えていると北原がズビシっとそのグレートマックスな彼を指差した。

 

 

「いーや流石にその下についてる白鳥はいらんでしょう!?」

 

「あーこれか?これはファッションだ、可愛いだろう」

 

「そんなのがファッションにみなされるなら変態の皆さんは苦労してませんよ!!」

 

「あ、あの、伊織くん?その格好のことはわかったけどどうしたの?」

 

 

 オロオロした声で女の人が話しかける。

 ていうかこれ、俺の出て行くタイミングなくないすかね?いつも見たくステルス発動してない?北原も忘れてんじゃないこれ。

 

 

「あーそうそう、聞いてくださいお二方!!この格好のせいで俺ら学校の警備員数名に追われてるんです!助けて下さい!!」

 

「「俺ら?」」

 

「はい、俺と一緒に追われてるやつがいるんです。おい、出てこい八幡!」

 

 

 どうやら北原は俺のことを覚えていてくれたようだ。流石にこんな短時間で忘れられるほど影は薄くなっていない。...ないよね?

 俺は立ち上がりテーブルから顔を出した。

 するとそこにいたのは、いつもダイビングショップの前で見かける綺麗な女の人と講堂の前で北原と倒れていた●のお兄さんだった。

 

 

「えっと、ども。比企谷八幡っす」

 

「ほほう?お前が伊織と一緒に追われてるやつか。すごいなその目、半裸の男と対等に扱われるレベルで腐っているぞ」

 

 

 これまで受けた第一声の中でも一二を争うほど辛辣な罵倒が飛んできた。たしかに、半裸の男を追いかけていた警備員が追いかけてくるんだもんね...気付きたくなかった、この事実!!

 気づいてしまった新事実に肩を落としていると、うーんと何か考えるような顔をしていた女の人が声を上げた。

 

 

「あ!君、朝にゴミ出ししてる子だよね?」

 

「え?あ、はい。そうです...」

 

「やっぱり!なんだか良くこっち見てるからダイビングに興味があるのかなって思ってたんだよ!来てくれてありがとう!!」

 

 

 な...に...!?見ているのを気付かれていたのか!?

 まずい、これは非常にまずい。死んでも貴方を見ていたなんて言えないぞ...

 うむ、これはどうするべきなのか...そう考えていると、何かにがしっと肩を組まれた。それはもうもの凄い勢いで。

 

 

「うぉっ!?」

 

「ほーう!?そうかそうか、ダイビングに興味があるのか!!ならうちのサークルに入るんだな!!」

 

「えっ!?いや、ちょっ、違います!俺はどこのサークルにも...」

 

「伊織!新しい仲間を連れてきてくれて感謝する!!」

 

 

 まずい、このままでは俺がサークルに入ることになってしまう!

 それだけは阻止しなければならないと、北原に助けを求める視線を送った。

 その視線に気がついた北原は顔を縦に一度振った。どうやら俺の考えが通じたようだ。

 そう思い安堵したその瞬間、北原は片目を閉じグッドサインをこちらに突きつけた。

 

 

「大丈夫っすよ先輩!!どうぞ仲良くしてやって下さい!」

 

「おう、仲良くしような八幡!!」

 

「裏切ったな北原ぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 盛大に北原に裏切られた。北原はその場でこちらに指を指しながら大爆笑。こいつ、ぜってぇいつか殺す...

 どうにか逃げれないかともがいてみるが、ガッチリホールドされた俺の体はピクリとも動かない。

 

 

「はっはっはっ、そんなに嬉しがるな八幡。俺は寿竜次郎!伊豆大機械工学科の二年だ!もうすぐ三年になるがな」

 

「は、はぁ...って違う違う!!俺は別にサークルに入りたい訳じゃなくて!!」

 

 

 この後も熱心に抗議し続けたのだが全然ダメでした、悲しいです。

 とりあえずホールドを解いて貰った俺は北原の胸ぐらを掴む。

 

 

「北原お前...!なに無理やりサークル入れてくれてんの!?俺が人付き合い苦手なの君知ってるよね!?」

 

「ふっ、俺が服を貰う為には少しでも先輩に媚を売っとかねばならなかった、ただそれだけだ」

 

「俺を媚にして勝手に出荷してんじゃねぇ!!脱出不可能になっちまったじゃねぇかよ!?俺は人と関わらないことをモットーにしてんの、なのになんでサークルに入んなきゃいけないの!?」

 

「まあまあ落ち着け八幡。サークルで人との関わりに慣れていけばいいだろ?な!?」

 

「...そのウィンクやめろ、まじでぶん殴りたくなる...!」

 

「ふ、二人とも、喧嘩はダメだよ?」

 

 

 ニヤニヤと癪にさわる笑みを浮かべながらウィンクをしてきた北原に俺のパンチをぶち込んでやろうと拳を構えたところ、俺たちの間に女の人が割って入ってきた。

 その勢いで俺は北原の胸ぐらを離してしまった。ちぃ、独神に鍛え上げられたファーストブリットをかましてやろうと思ったのに...

 

 

「ふぅ、助かりました奈々華さん」

 

「ちぃ、命拾いしたな。覚えてやがれ北原...」

 

「えっと、比企谷くん...だったよね?私、古手川奈々華っていいます、よろしくね!」

 

「あ、はい。よろしくお願いします」

 

 

 あははと笑いながら自己紹介をしてくれた古手川さんに一礼をした。

 俺たちが自己紹介をしている間に、北原と寿先輩がなにやら話をしていた。

 

 

「誰か新人を一人でも引っ張ってきたら服を貸してやる。ついでに比企谷の腐った目をかき消せそうな眼鏡も。どうだ?」

 

「そうですね...」

 

「飲み会も奢りだ」

 

「それは元々でしょ。うーん、先輩がたならグランブルーの場所も教えてくれるし悪くないかな...どうだ?比企谷」

 

 

 今の断片的な話を聞くに、どうやらもう一人新人を連れてきてくれれば俺たちの欠点を解消してくれる術を与えてくれるらしい。俺の腐った目を眼鏡で帳消しできるのは何時ぞやの由比ヶ浜との買い物の時に確認済みだからな。

 

 

「まあ、いいんじゃないか?」

 

「よし、じゃあ決まりだな!その提案乗ります!!」

 

「交渉成立だな、伊織、八幡」

 

 

 交渉はうまくいったらしい。

 だが、一つ気になる点がある。この大学内にろくな知り合いもいない俺たちに誘う相手がいるのかというところだ。

 

 

「それはいいが北原、誰かアテでもいるのか?」

 

 

 そう質問すると、北原はこちらを向き親指を立ててグッドサインを出した。

 

 

「ああ、任せとけ。とりあえず着いてこい、八幡!!」

 

 

 そう言って北原はまた歩き出し、俺もそれに着いていった。




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