いきなりですが、更識簪に転生しました。   作:こよみ

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 毎時投稿はっじまっるよー!

 プール事件の結末。ウォーターワールド終了のお知らせ及びDeランドへは行けなくなったオチ。

 そして、簪達の夏休み終了のお知らせ。


御愁傷様です。他人事じゃないけど。

 結局、セシリアと鈴音はウォーターワールド側に多額の賠償金を支払うことになった。割合はセシリアが7、鈴音が3である。しかし、経営者はそのままウォーターワールドを再建するとは言わなかった。どうせ破壊されるのだろうが、他の施設で同じことをやられると困るだろうからとIS学園生専用の娯楽施設とすることを申し出たのである。その背後には日本政府や数々の大企業からの圧力があったのは言うまでもない。

 セシリアは出し渋ったが、鈴音は代表候補生として貰っている給金をほぼすべてウォーターワールド側に支払った。両親から縁を切られ、次に同じようなことをすれば『処分』される予定だ。殺される方がましなほどの屈辱的な実験体にさせられる可能性があると聞かされれば、鈴音は大人しく支払うしかない。なお鈴音の管理官は監督責任を問われて辞職に追い込まれた。

 勿論そのことで一悶着起きない、などということはない。ウォーターワールド側に対する補償の一貫で忙しい簪を捕まえ、何故か一夏が怒りをぶつけてくる。

「何でお前が普通に出歩いてるんだよ! 鈴もセシリアも謹慎中だっていうのに……!」

 簪はそれに内心で疑問を呟きながら返答した。

(何でそれをあなたが言うんです?)

「は? わたしは彼女らのようにISの無断展開はしていませんし、むしろ迷惑を掛けられた側ですが」

「嘘だな。セシリアが言ってたぞ、更識がもっとちゃんとしていればこんなことにはならなかったって!」

 憤然とそう告げてくる一夏に簪はもはや困惑することしかできないかった。簪がきちんとしていたからといってどうだというのか。そもそもあんな場所でISを展開することの方が間違っているのだ。

「何でちゃんと全部を守らなかったんだよ!」

「全員無傷で避難させたんですけど……ああ、それとも何ですか? オルコットが撃つBT兵器から施設まで完全に守れと? 生身で? 普通に死にますけどそれ。もしかしてわたしに死ねって言ってます?」

「そんなことは言ってない! 普通にISを展開すれば良いじゃねえか!」

 その一夏の言葉に簪はため息をついた。

(この人、やっぱり分かってないじゃないですかやだー)

 内心で悪態を吐きながら一夏に返答する。

「わたしには、外でISを無断展開すれば一生軟禁の上で実験体になる未来が待っています。それでもオルコットのためだけにISを展開しろと? オルコットのために一生を棒に振れと、そういうことですか?」

「そんなの有り得ないだろ!? そんなすぐに分かるような嘘で言い訳して何が楽しいんだよ……! セシリアはかなり追い詰められてるんだぞ、お前のせいで!」

(めんどくさいですね、この人。何なんですか?)

 ヒートアップする一夏とは対照的に簪は冷めていった。一夏が何を言いたいのか分からないのだ。あの場で簪にできたことなどほぼないに等しい。それなのに何故責められなくてはならないのか。それが理解できなくて気持ち悪かった。

 と、そこに一人の女生徒が通りがかった。

「何をやっているのですか?」

 その人物は眼鏡をかけ、髪を三つ編みにしていた。簪は彼女が誰であるのか分かっているため、話がこじれるだろうと判断して彼女を追い払いにかかる。

「何も。あなたに心配されるようなことは一切ありませんよ布仏虚先輩」

「そうですか? とてもそのようには見受けられなかったのですが……」

 それでもそのまま立ち去ってくれそうな気配だったのだが、一夏がそれをすべて台無しにした。

「先輩からも言ってやってくれませんか、更識に! お前のせいでセシリアと鈴が追い詰められてるんだって!」

 一夏の言葉に虚は目を細め、ため息をついた。今の簪の状況をこれ以上なく把握している虚にとって、一夏の言葉は意味不明な事柄でしかない。どう考えても言いがかりであり、過失の割合で言えば確実にセシリアが上回っているのだ。今までその処理に奔走させられていた身としては一言もの申さなければ気が済まない状態になっていた。

 見るものが見れば恐怖を感じるような笑みを浮かべて虚は一夏に告げた。

「いったい誰がその二人の事後処理をやっていると思っているのですか? その二人のせいで私は五徹目です」

「……え?」

「済みません虚さん本当に寝てください代われる処理は代わりますんで」

 よく見れば虚の目の下には化粧でも隠しきれない隈が出来ていた。動きもおぼつかない。これはダメだ。

(というかわたしと姉が奔走してこれですか!?)

 簪は虚が任された仕事内容を知らない。だが、ここまでなる前に回せる仕事ならば回してほしかった。もっとも、半ば当事者である簪には任せられない処理だったからこそ虚がこきつかわれているのだが。

 それでも簪に笑顔を向けられる辺り、虚は人間ができている。

「お気遣いありがとうございます。ですがこの処理は簪様にはお任せできない類いのものですので……」

 その腕に抱えられた書類から見える情報を読みとった簪は思わずその腕をつかんだ。

「虚さん、それは教師の仕事……いえ、動く気がないのですね。本音ももっとこきつかってやってください。本音の分はわたしが請け負いますから、本当に寝てください休んでくださいお願いします」

「いえ、でも……」

「ああ、もうっ……!」

 なおも言いすがろうとする虚から離れ、携帯を取り出して簪は楯無に通話した。

『簪ちゃん!?』

 ワンコールで取るあたり、暇なわけではなさそうだ。すぐにとれる状態にあるということは仕事中だということなのだから。

 故に簪は用件を一息に告げた。

「虚さんに休みをあげますんで本音をこきつかってください。本音の分はわたしが請け負いますから。何なら姉の分も多少は手伝いますから本当に五徹目の人をこきつかうのやめてください」

『……か、簪ちゃあん……悪いけど、虚をお願い……』

(わーい、姉もグロッキーな状態になってるじゃないですかやだー)

 用件の返答を聞いた簪は、楯無もグロッキーな状態になっていることを察して内心で盛大にため息を吐いた。この状態から姉の動きをよくするためにはどうすれば良いのか十分に理解していたからだ。

 面倒だが、背に腹は代えられないのである。

「もう少しの辛抱ですから、頑張ってください、『おねーちゃん』」

『頑張るわ! 私、簪ちゃんのために頑張る!』

 楯無の気合いも十分充電されたところで簪は通話を終え、流れるように虚を気絶させてその場を去った。そこで立ちすくんでいた一夏は、ついに動くことすらできなかったのだった。

 その後、簪は本音の分の仕事を引き受けた。その仕事は残念ながら生徒がして良いものではなかったのだが、他にできる人間がいない。やるしかなかった。

 その仕事とは、IS学園生全員分の外出許可の管理だった。そもそも、元々IS学園生が外部に出るのに許可証がいるのは何故なのか考えたことはあるだろうか。あれは実はビザの代わりであり、許可なくIS学園の敷地から出れば不法入国として送還されてしまうのである。それを防ぐためのワンデービザなのだ。

 それを申請したからといって、IS学園生が外に出て事案を起こさないかと言われると否である。これまでも問題になっていたため、日本政府は議案を提出。夏休み中に織斑一夏を筆頭とする一団がやらかしたことも後押しして満場一致でIS学園生を特定の場所にしか受け入れないことが閣議決定されたのである。

 その特定の場所として選ばれたのが今回破壊されたウォーターワールドだ。そこを大規模改築し、IS学園生がそこにしか行けなくても満足できるような施設案が考えられたのだ。

 元ウォーターワールドにはIS学園から技術者が派遣され、ISで攻撃されても破壊されないような工夫が凝らされた。そこにある全てのものがアリーナと同じ材質で作られ、春夏秋冬全ての娯楽が集められているテーマパークとなる。地下から高層階にわたるその施設には、夏にはプールとなるスケート場、スキー場、遊園地、多くのブランドが集まるショッピングモール、世界各国の料理が食べられる食堂街など様々なものが併設されていた。

 ちなみにホテルまで併設されたその施設には一般の利用客も利用したがった。しかし、安全確保のために、IS学園の生徒が来場するエリアからは確実に離れた場所に誘導されることとなる。更に一般客用の入場誓約書とIS学園関係者用の入場誓約書が作られることとなった。

 そして、実際にその作業に駆り出されることになったのは――

「まだなの簪!」

「済みません後30秒でソフトウェア組み終わりますサラ先輩!」

「ううっ、何で私が駆り出されることになるの~?」

 日本代表候補生のうちIS学園に在籍する簪と本音。イギリス代表候補生のうちセシリア以外の代表候補生であるサラ。そしてIS学園の技師として働いている三組の教師だ。

「絶対、ぜぇったい給料上げて貰うんだから……この私をこきつかうんだからち、織斑先生からも掛け合って貰うんだもんね……」

 かなりグロッキーな状態になっている彼女は、名を品延布兎菜(しなのべのとな)という。更識に属する更級技研所属の技師なのだが、故あってIS学園で教師をやっているのだ。そんな彼女は今回の件には全くもって関係ないのだが、技師としてここでこきつかわれることなってしまっていた。

 愚痴はともかく、実力だけは確かな四人の活躍により、新施設は着実に出来上がりつつあった。

 そして。

「……出来た……?」

 八月末。夏休み最終日にそう呟いたのは、誰だったか。有り得ない早さでブランドの招致も終え、全てが終わった。そのときには夏休みが終わりかけだという残酷な事実を誰もが受け止められないでいた。夏休みの課題は確かに終わらせたのだが、このまま新学期に突入するなどという現実を直視できなかったのである。

 無論、この件に関わったセシリアは一度も手伝いに来なかった。鈴音は罪悪感があるのか何度か肉体労働をしに来たものの、そのうち代表候補生管理官から呼び出されてIS学園内に軟禁されたらしい。その後どうやら何かしらをやらかしてとうとう『死んだ』ようだ。

 簪達は始業式を死んだ目で迎える羽目になったのだった。




 面倒な一夏くんに変身した理由は次回。

 なお、今回出てきた品延せんせーは今後も出てくるのでフルネームです。昔、まだ原作が10巻ぐらいまでしか出てなかった頃の別のSS(未発表)キャラを引っ張ってきました。なおオリキャラの皮を被った原作キャラです(重要)。今後の表記はほぼノトナか布兎菜で。
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