いきなりですが、更識簪に転生しました。 作:こよみ
嬉しいけどこよみは怖くて仕方ないです。良いんですか? 自分で言いますけどこの簪はかなりのクズですよ?
名前だけのアーキタイプ・ブレイカーキャラと実際に一人登場。
全てが原作通り? 否、増えるハーレム要員。
IS学園に入学する前から、簪は微々たる自身の権限を使ってある人物たちを探していた。それは公式外伝『アーキタイプ・ブレイカー』にしか出てこないキャラクター達。彼女らがいるかどうかで恐らくクラス分け等が変わるのだろうと思っていた簪は、その痕跡が一切ないことに安堵していた。
無論、未だ『男性操縦者』が現れていないからであることに簪は気づいていない。彼こそが物語のキーでありスターターなのだから、彼が表舞台に出てきていない限りはそれに関連する人物達が出てくるはずがない。もっとも、最終的に『
少なくとも簪が最初にクラッキングして得た情報の中には、原作キャラは殆どいなかったのだ。どうあがいてもこれから増えると分かっているのに、簪はそこに名前だけ知っている人間がいないことに安堵してしまっていた。
故に。
「……いるんじゃないですかやだーっ」
クラス分けを見たとき、そこにヴィシュヌ・イサ・ギャラクシー、ロランツィーネ・ローランディフィルネィの名があったことに思わず頭を抱えた。二人が三組に固まっているので、日常生活で関わることは無さそうだったが、織斑一夏の周りで暴力ラブコメが繰り広げられるのはもう言うまでもないのだろう。実に憂鬱である。
なお、簪は一夏を映像で見たところ遠い目をするしかなかった。整いすぎた顔面はたまに嫌悪をも引き起こすのである。変に整いすぎていて気持ち悪かったので、近付こうなどとは最初から考えにも入れていなかった。
(近付かないのが吉ですね。織斑を探るのは本音がやっていますし)
他の面子はいなかったが、三年に数人編入生がいたようなのでそこも恐らくそうなのだろう。関わらなければ良い話なのだが、残念ながらそうするという権利は恐らく簪にはない。専用機持ちであるということは、そういう行事には駆り出されるということなのだから。特に簪の所属する四組には他に専用機持ちがいないというのがミソだろう。つまり逃げられない。
簪は、その日のうちに四組代表となった。誰も立候補者がいなかったからだ。そもそも四組には整備科志望の生徒が多いため、誰も操縦には興味がなかっただけなのだが。簪も出来ることなら整備だけをしていたかった。それが許される立場であるかどうかは別にして。
(誰も彼も整備のことしか聞きに来ないってそれはそれで色々とダメだと思うんですけどねぇ)
そして簪は一ヶ月ほどを四組代表として過ごした。といっても操縦者になりたい人材は限りなく少なかったため、少数育成コースで誰もついてこられなくなるまでやってしまったので顰蹙しか買わなかったのだが。最終的に簪に教わりたい希望者がいなくなったことだけは確かだ。
そんなときに飛び込んできたニュースがこれである。
「初めまして、凰乱音です! 飛び級ではありますが、本日転入してきました。台湾代表候補生で、専用機持ちです。よろしくお願いします!」
(な、何ですってぇぇぇ!?)
簪は彼女の登場によって轟沈した。さらば平穏な日々、こんにちは波乱の毎日。是非とも巻き込んでくれなさんな。そう考えつつも挨拶の次に発した言葉に硬直するしかなくなる。
乱音はクラスメイトたちに対してこう断言したのである。
「アタシ、凰乱音は、四組代表さんに挑戦状を叩きつけます!」
「……ふあっ!?」
思わず奇声をあげてしまった簪は、そのせいで自身が四組代表であることを露見してしまっていた。全員の視線が突き刺さっていたから露見したともいう。無論乱音もそれは理解していて、簪に詰め寄る。
そして良い笑顔でこう問うてきた。
「良いわよね?」
「……ぇ、ぁぅ」
「良・い・わ・よ・ねぇ?」
下から覗き込むように見上げてくる形の彼女はとんでもなく恐ろしい。恋する乙女、というよりも何かを信奉している人間は本当に恐ろしい。盲目さは、時に凶悪な武器になるからにして。何かに夢中になって戦う人間は恐ろしいのだ。下手をすれば死すら恐れぬ兵士が出来上がる。
覗き込んでくる乱音に対し、簪は内心で戦慄していた。
(近い近い! どんな変態改造制服なんですか! 脇の下見えてますよこのド変態が! いやそうじゃなくて、近すぎます怖いですぅぅぅ!?)
突っ込みどころは確実にそこではないのだが、敢えて簪はそう評することで平静に戻ろうとした。無論全くもって意味がなかったのだが、努力することが重要なのだ。たとえ結果が伴わなくとも。
乱音の笑顔の威圧に、簪は耐えきれず首を縦に振って彼女の提案を呑むことを伝えた。むしろそれ以外に選択肢はなかったのである。あったとしても乱音がそれを奪い取ったのだろうが。
そしてその結果がこれだ。
「ら、乱!?
訪れた先で原作のキャラクターと出会い。中国代表候補生凰鈴音とイギリス代表候補生セシリア・オルコット、篠ノ之箒、そして織斑一夏だ。そういえばそんなイベントもあったな、程度に考えていた簪は出来るだけ彼女らから離れる。関わりたくないからだ。恋路を邪魔して馬に蹴られたくない。織斑には関わりたくもない簪としては、同じ空間にいることすら嫌だ。
混乱しているらしい鈴音に乱音が冷たく返した。
「
「
鈴音は怒るが、流石に模擬戦を邪魔するわけにもいかないのだろう。流れ弾に当たっては危険であるため、今一度皆のISの搭乗を確認した。ぐるりと見回して、一応全員が搭乗していることを確認してから鈴音は乱音達に向き直る。
(折角の情報収集の機会を逃したくはないわね。乱の実力も、四組代表っぽい彼女の実力もね)
そう思いつつ、鈴音はため息をついて一夏に声を掛けた。
「……訓練してる場合じゃなくなりそうよ、一夏」
「な、何でだよ?」
「アンタねぇ……まあ良いわ、見てなさい。多分どっちかが四組代表だから」
そう言う鈴音の視線の先では、既に二人が剣を合わせていた。『甲龍』からの情報によると乱音の武装は『甲龍・
しかし、鈴音はそれを冷静に見ているどころの話ではなかった。『甲龍』からの情報が信じられなかったのだ。二度、三度確認して文字列に間違いがないと理解してしまうと、今度はその情報の重大さに顔をひきつらせる。
鈴音は乱音が搭乗しているISの名称に驚愕したので、声を漏らした。
「『甲龍・紫煙』ですって……?」
そのあまりにも衝撃を受けたような言葉に、セシリアは情報をむしりとろうと問う。
「知ってますの、凰さん?」
「……言えない。でも、まさかアレに乗ってるのが乱だなんて……」
セシリアの問いに鈴音は呆然と答えた。そもそも『甲龍』は台湾と中国が共同開発したことになっている。しかしその実態は、衝撃砲のノウハウを確立させた台湾から技術を奪い取り、その代わり未完成の機体の情報を渡したという不平等な取引の結果だ。決して対等な関係の上に生まれたものではない。
そこで一夏が口を挟んだ。
「俺にはよく分からないんだけど、鈴。あの乱音って奴、従姉妹か何かか?」
「その通りよ。母方の従妹なの。ただ……飛び級でもしてこない限りここには来れるはずがないのよ。アタシの一個下だし」
「そ、そうなのか……」
一夏は鈴音の険しい顔を見てそれ以上言葉を発するのをやめ、戦闘に目を移した。今度は二人して距離を取り、乱音が衝撃砲《龍砲・単式》を、簪がアサルトライフル《焔備・改》を構えて撃ち合っている。それを見て鈴音は内心で頭を抱えた。
(ちょっ、折角のアタシの奥の手! 乱の奴、勝手に明かすなんて……!)
鈴音の内心の葛藤も知らず、乱音は簪と撃ち合いを続けて、唐突に銃撃戦を止めた。簪の方も同じだ。どちらも譲らぬ攻防を繰り広げていたように見えただけに、皆が訝しげに見ている。
しばらく観察していると、簪がオープン・チャネルで乱音に話し掛けた。
『これ以上は不毛ですね。目的はそちらの方々なのでしょうし、わたしにはそれに固執する意味はありません。ですからどうぞ』
『……そう。ありがと。今度デザートでも作ったげるわ』
ISに搭乗している面々から見れば、乱音は顔を赤らめているようだった。その理由は分からないが、恐らくは『どうぞ』と言われたことに対する照れだろう。もしくはあまりにあっさりと結果が出たので多少怒りを覚えているのか。
しかし、それに対して簪は引いた顔でこう答えた。
『それは暗に太れと……?』
その言葉に一同は顔をひきつらせた。何故そういう発想になるのか、頭をカチ割って見てみたいくらい意味が分からない。普通この場合はお礼としてデザートが差し出されると思われる。
当然乱音も意味が分からなかったので、苛つきながら突っ込んだ。
『そんなわけないでしょ!? ふ、普通に善意ぐらい受け取りなさいよ!』
『えっと……ありがとうございます?』
『何で疑問系なのよ!?
何だこのコントは。一同はそう思いつつBピットから出ていく二人を見送るのだった。そのまま訓練を続ける一夏達であったが、世界の流れには逆らえない。デリカシーを異常なまでに欠いた一夏の発言によって鈴音と一夏が決闘することになるのも当然だった。
そして次の日、四組代表が凰乱音に変更になったことが噂として流れたのだった。それと同時に簪に対する誹謗中傷も。ありとあらゆる罵詈雑言が日本人生徒から浴びせられる日々。そこには台湾への対抗意識もあるのだろうが、一人の人間に対して背負わせて良いものでもない。
そして最終的に簪は日本代表候補生の面汚し、と呼ばれるようになった。
凰乱音→基本的に鈴音と口調は同じ。明るく快活。鈴音に憧れる一途さん。勿論一夏にも惹かれるが、優先順位的にはまだまだ鈴音が一番。好感度が一夏>鈴音となって色々振り切れるのは秋以降。簪と親友になれる唯一の生徒。
みたいな感じのキャラと相成りました。
なお、細かいことですが鈴音が話す中国語は簡字体、乱音が話す中国語は繁字体です。台湾では繁字体の方を使うそうで。どちらもぐーぐる先生に頼りました。