いきなりですが、更識簪に転生しました。   作:こよみ

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 ISの鉄則ですよ。


恋する乙女の聖戦。迫り来る嵐。

 恋する乙女達は、それぞれが好きな人との同室の権利を求めて駆けていく。それを阻むかのように障害物が姿を表した。それもいちいち羞恥心を煽るようなネタが散りばめられている。

 最初に出てきたのはハードルだ。ただしそのコーナーに突入する前に指示されたことをやらなくてはならない。そしてそれに一番最初に突入したのは、一番に着替え終えたロランツィーネだった。

 ロランツィーネはその指示に目を通す。

「……っ、私は君だけを永遠に愛している!」

『はいロランちゃんおっけー』

 その指示は、紙に書かれた言葉を読み上げることで。ただでさえいつもクールなロランツィーネにそう言われて会場が沸かないわけがなかった。そして次にたどり着いたスズネは有名な夏の歌のサビの一節を歌ってから駆け抜ける。なお、スズネに抜かされたダリルは浮き輪を両手持ちから肩掛けに変えるだけというある意味楽な指示だった。

 ダリルに続いてたどり着いたシャルロットはというと。

「……何これ? サンダーレイジ……?」

 当たってしまった衣装が衣装なだけに、魔法少女の詠唱をしなくてはならないという羞恥プレイをさせられるはめになった。なお彼女は絵は知っていても内容は知らなかったので普通に言い切っている。代わりに会場の極一部が沸いていた。

 次いでさりげなくモップで進路妨害をしていたグリフィンが追い付く。

「……お、お掃除しちゃうぞ☆」

 赤面しながら読み上げ、いかにも邪魔そうにモップを水平に持ったままハードルを越えていった。勿論進路妨害をする意味もあるが、単にそれ以外の持ち方をするのが効率が悪いからでもある。

 そのグリフィンに進路妨害されていた箒とフォルテがようやくたどり着く。

「だ、だだだだだ旦那様ッ! こここ紅茶はいかがですか!」

「皆様ごきげんよう……っス」

 箒は紅茶をカップに注いで飲み干し、フォルテはカーテシーで皆に挨拶をして去っていく。ついでにラウラはお題を無視してすり抜けようとしたので30秒のペナルティを受けた上でボーカロイドの和風曲の一節をヤケクソで歌い、抜けていった。

 なお、セシリアは羞恥心で動けなくなったため、ここでリタイアとなった。

「い、一夏さぁん……」

『セシリア……』

 涙目で自身を見てくるセシリアに、一夏は了解を得てから上着を貸して退場させる。勿論点数は得られないが、それはそれで役得だったようだ。

 それに嫉妬の目を向けつつ次に一同がたどり着いたのは平均台である。そこに一番に突入したのは、ダリルだった。お題は浮き輪を持ったまま屈伸20回だ。その隣では、屈伸の途中で追い付いたスズネが線香花火が終わるまで待機させられていた。

 その二人を更にすり抜け、お題のセリフを吐き捨てたシャルロットがトップに立つ。

(この衣装、当たりかも……杖は重いけどそれだけだしね!)

 グリフィンを真似て進路妨害をしつつ進むシャルロット。杖が邪魔で追い掛けてくる面々が追い越せないのを良いことに、その先まで進んでいく。

 そこに花をばらまいてしまったロランツィーネが追い付いた。口の回りにクリームが付いているのはご愛敬だ。まさかのケーキ六分の一カットを食べるというお題だったらしい。若干顔色は悪いのだが、それでも必死である。

 シャルロットと横並びになったロランツィーネが声を絞り出す。

「流石に卑怯じゃないかいシャルロット嬢……!」

「勝てば良いんだよ、勝てばね!」

 どや顔でそう宣言するシャルロット。と、そこに箒が追い付いて持っていたトレーを振りかぶった。

「なるほど……つまりは、こういうことだな!」

 そして、紅茶がまだ入ったままのポットを投擲した。それは過たずシャルロットとロランツィーネの間の足元に着弾し、熱い液体をぶちまける。

「ちょっ、何するの箒!」

 抗議の声をあげるシャルロットを追い抜き、高笑いをしながら走り去る箒。

「悪いがこれは勝負なのでな!」

(そこで足止めされるが良い!)

『はい箒ちゃんアウトー。危険行為で一発退場ね』

 笑顔のまま、楯無は非情にそう告げる。それに箒はその場で凍りついた。何故ならやっていることはシャルロットともグリフィンともほとんど変わらないと思っていたからだ。

 当然、シャルロット達も地面と水平に持つのではなく振り回していれば一発退場だっただろう。それは進路妨害ではなく既に危害を加える意図があると見なされるからだ。

 真横をシャルロット、スズネ、ロランツィーネにすり抜けられた箒は楯無に食って掛かる。

「何でですか楯無さん!」

『その紅茶、熱湯よね。それにポットって陶器製だから割れたのを踏んじゃうと怪我するわよ』

 冷静になれば箒もそれに思い至れたのだが、それでもなお彼女は言い募る。

「じゃ、じゃあシャルロットは!」

『ああ持つのが効率的だと思ったんじゃない? あんまり誉められた戦法ではないけどね』

 肩を竦めた楯無は、そのまま箒を失格にする。次いでラウラが番傘を振り回し始めたので彼女も失格となった。これで残りは先頭から順にダリル、スズネ、グリフィン、シャルロット、ロランツィーネ、フォルテだ。

 そこからあとは皆自重し、楯無からの羞恥心を煽る課題を何とかクリアしながら進んでいった。それぞれの衣装に相応しい羞恥プレイをそれぞれがこなしたのだ。

 その結果は――

「一位スズネちゃん! 二位はロランちゃんで、三位はシャルロットちゃんね! いやー、良いものが見れたわ」

「オッサンですか楯無さん……」

 呆れる一夏。しかし、楯無はそれを気にすることはなかった。こうやって派手に羞恥プレイをさせることで精神力を削いだと思えば良いのだ。いつだってイベントは中断されてきた。なら、今回も何かしらやらかされてもおかしくないのだから。

 そしてその楯無の狙いはある意味当たっていた。

(くっ……さ、流石に水着は恥ずかしいぜ……)

(水、水ぅ……っス……楯無め、ロリータ服は基本的に暑いって教えとけっス……)

 死んだ目で半笑いを浮かべたまま体操服に着替え直したダリル。それと、全身汗だくになって自動販売機の水を買い占める勢いで水分摂取をするフォルテ。

 それに死んだ目でタオルを差し出すシャルロットは、本音からこっそりその衣装のキャラクターの概要を聞かされて実に複雑な顔をしている。

(楯無さん……この衣装がラウラに当たってたらどうするつもりだったのかな? まあ、僕にはもう関係ないけど……)

 一瞬遠くを見たシャルロットは、この先に待つ未来を思って胸を押さえた。今から彼女達がすることは正しいことだ。それをスコールからも、オータムからも、『彼女』からも聞かされている。そして事実それはシャルロットにとっても正しいことだと分かっていた。

 だからこそ、少しでも心残りをなくしたかった。

(言わないと、いけないよね……一夏に。僕が嘘をついてるってこと……)

 それはシャルロットに関わる全てにおいて言えることだった。全てが嘘なのだ。そう、一夏のおかげで助かったと思っていることも、もう自由なんだと彼に告げたことも。

 それでも、シャルロットはどうしても言えなかった。

 

 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

 

 IS騎馬戦も終わり、教員達のバトルロワイヤルが始まろうとしていた。今回出場する教員の内訳は、整備科担当教員と千冬を除いた九名だ。

 箒のチームに榊原菜月が。セシリアのチームにエドワース・フランシィが。シャルロットのチームに三年三組担任の鎬音無が。ラウラのチームに二年四組担任のアーデルハイト・ハルフォーフが。スズネのチームに二年二組担任のフェリーシャ・ジョセスターフが。ロランツィーネのチームに布兎菜が。フォルテのチームに一年四組担任の篝火カワルノが。ダリルのチームに二年一組担任の布仏真実が。そしてグリフィンのチームに真耶が割り振られた。

 そして彼女らが訓練機を用意している間に、それぞれが動き出す。最後のうねりへ向けて、すべてを収束させるために。

 

 そこにあるのは、最早残骸のような感情のなれの果てだった。

 

 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

 

 真っ先にそれに気付いたのは、仕掛けた者達だった。頭上から舞い降りてくる鉄の色のIS。それに次いで気づいた楯無が治りきらない身体をおして『ミステリアス・レイディ』を展開する。

「いきなりはちょっと、おねーさん感心しないなぁ」

 返答があるとも思っていない発言。しかし、そのISの主は楯無に向けて労るように声をかけた。

「無理しないで、辛いんでしょ? お姉ちゃん」

「……え?」

 その言葉に凍りつく楯無。その声が、その所作が、そのシルエットが目の前のISの主を自身の妹だと断定させる。そんなはずはないのに、目の前の少女が紛れもなく妹であることを確信していたのだ。

 凍りついた楯無を庇うように、一夏が少女の前に出る。そんな彼にすら、少女は優しい声をかけた。

「大丈夫……あなたにも、誰にも、これ以上手は出させない……」

 いっそ場違いなまでにそう告げた彼女の狙いはただ一人。そのために、乱入してきた彼女に狙いを定めようとする者達を阻む協力者がいる。ラウラとロランツィーネにはシャルロットが。グリフィンにはダリルが。セシリアにはフォルテが。そして、箒にはスズネが。それぞれ動けないように凶器を突きつけている。

 この日、彼女らの世界は三分割される。彼とそのそばにいることを許されたもの達。彼のそばにいることを許されなかった者達。そして、どこにもいられなくなった無法者達に。

 そのトリガーを引いたのは――

 

「ねえ、そこ……私の場所だから。返して? 偽者さん」

 

 そう発言した銀色の髪の少女。それが一体誰であるのかを知ったとき、簪の理性は崩壊した。否――自分から全てを壊すことを、決意した。

 故に。

「どうぞお好きに、更識簪。あなたが本当にそうだと信じているのなら、わたしが偽者なんだろうしね」

「……当然。でも、私の場所を、滅茶苦茶にした報いは……受けてもらうから」

 そう言って、『更識簪』は語り始めた。




得点表
 第一チーム『紅き大和撫子』:77点
  リーダー:篠ノ之箒
   夜竹さゆか
 第二チーム『ブルー・ノーブル』:67点
  リーダー:セシリア・オルコット
   布仏虚
 第三チーム『コスモス・フルール』:84点
  リーダー:シャルロット・デュノア
 第四チーム『シュヴァルツェ・シュヴェルト』:75点
  リーダー:ラウラ・ボーデヴィッヒ
   オニール・コメット、ファニール・コメット
 第五チーム『ロンフー』:108点
  リーダー:布仏スズネ
   鎬空音
 第六チーム『オーランディ』:72点
  リーダー:ロランツィーネ・ローランディフィルネィ
 第七チーム『グレイシアス』:75点
  リーダー:フォルテ・サファイア
 第八チーム『バーニング・フレイム』:112点
  リーダー:ダリル・ケイシー
   布仏ランネ
 第九チーム『グリ姉と愉快な仲間たち』:140点
  リーダー:グリフィン・レッドラム
   布仏本音

 教員でフルネーム出したのいっぱいいますが、残念ながら喋りません。また出てきますけどね。名前だけ。
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