いきなりですが、更識簪に転生しました。   作:こよみ

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 毎時投稿中です。一度目次に戻り、未読がないか確認してください。

 前回は空気が凍りついたまま終わりましたので解凍されるまで二話ほどお待ちあれ。


貴方が欲しい。そのためにここまで来た。

 一夏は混乱していた。今目の前で起きている物事全ての意味が分からなかった。視界に広がるのはある意味では同じ色であり、ある意味では全く別の色だった。

(肌色パラダイス……いや俺は何を考えてるんだ!?)

 それに対して一夏が言えるのは――

 

「その、三人とも……服、着ないと風邪引くぞ?」

 

 などという彼女らの意思を全く尊重しないもので。彼の視界にある肌は、次第に迫ってきていた。意外なことに一番遠くで見守っているのは鈴だ。その腕には何故か赤子を抱いている。

 それでも鈴が一番冷静だと判断した一夏は、彼女に声をかけた。

「お、おい鈴! 二人を止めてくれって!」

(明らかにおかしいだろ、この状況!)

 しかし鈴は張り付けたような笑みを浮かべたままこう返答する。

「何で? あーんなこというなんて、本当に無自覚タラシなぱぱでちゅねぇ、一音(かずと)

(こんなんだからあたしも強硬手段に出るしかなかったのよ)

「あぶぅー」

 そこにいたのは最早一夏の知る鈴ではなかった。彼の知らない顔で、見覚えのないはずの赤子をあやしている。それが似合わない、などということはない。いつまでも子供っぽいと思っていた鈴は、いつの間にか母親の顔が似合う女にまで成長していたのだ。

(鈴……っ、それよりも二人は!)

 鈴の言葉を半ば意識しないようにして彼女から視線を移した。最初に迫ってきたのはシャルロットだ。

「一夏……ごめんね、僕……嘘、吐いてたんだ」

「……え?」

(何を、言って……っ)

 その目には涙が浮かんでいる。それが無性に胸に響いて一夏はなにも言えなかった。むしろ彼に何かを言う権利などどこにもなかったのだ。彼の言葉を信じたがゆえに、彼女は全てを亡国機業に捧げなければならなくなったのだから。

 それを涙ながらに告白する。

「校則の特記事項なんて何の役にも立たなかったよ……デュノア社は乗っ取られて、僕が第三世代機に乗り換えて協力しないとお父さんも義母さんも殺されるんだ。全然今まで幸せにも、安全にも、なれなかったんだよ……!」

 心が砕けてしまいそうになりながらもここまできてしまったのは、一夏に恋するがゆえだ。彼以外なにも要らない。

「シャル、それは――」

「それにチャンスもあるんだ。今から僕と一夏で交わって、鈴みたいに子供を孕む。そうしたら皆自由になれるんだ。だから、だから――っ!」

 だから抱いて、とシャルロットは一夏に訴えた。それの意味を理解できず、一夏はシャルロットを抱き締める。それ以上のことをすることはどうしてもできなくて、慰めるように背を叩くだけだ。

(シャル、済まん……っ!)

 そんな二人に、ラウラに似た少女が近付いた。泣き腫らした顔は痛々しく、とてもではないが平静を保っているとは思えない。その弱々しい表情が、一夏に彼女がラウラではないと誤認させる。事実として、そこにいたのはラウラ・ボーデヴィッヒに間違いはないのだが。

 憔悴しきったラウラが掠れた声で一夏に告げる。

「……どうした、シャルロットを慰めてやらないのか……男なのだろう?」

(慰めてやれ……そうすればシャルロットも救われるのだ)

「……ラウラ、なのか?」

 一夏の口から出るのはその言葉だった。ラウラの望む言葉でも、行動でもない。ラウラは一夏に知って欲しいのだ。自らの呪われた生まれを。そして――一夏の呪われた生まれをも。そうすれば救われる気がした。

 だからこそ、ラウラはその呪いを吐き散らす。

「他の誰に見えるのだ……むしろお前に見間違えられるとは思いたくなかったぞ、()()

「……え?」

(今……ラウラ、『父様』って言ったか?)

 一夏は凍りついた。それが何を意味するのか分からなかったから、というわけではない。むしろ壮絶に嫌な予感しかしないのだ。これを知れば恐らく知らなかった頃には戻れない。

(何で、ラウラは確か試験管ベイビーだって……)

 だが、ラウラの顔を見ていると聞かなければならない気もしていた。だから、一夏はシャルロットを抱き締めながら問うた。

「ラウラ、父様、って……」

「教えてやる。だが……先に、情けをくれ。いや、こんな言い方では通じんのだったな……子作りするぞ一夏。何、怖がることはない。全て私達に任せろ」

(まあ、私は結ばれようが禁断の関係に間違いはないがな)

 そう淡々と返すと、ラウラは抱き締められている形のシャルロットと共に一夏に奉仕を始めようとする。その唇がどこへ向かおうとしているのかを見て取った一夏はぎょっとして二人の頭を引き離そうとした。

「えっ、いや、ちょっとまっ――」

「嫌なのか? シャルロットも私も、お前が好きなのに……それとも、お前にとってはシャルロットも私もそんな価値のない女だということか?」

「……そうなの、一夏?」

(くっ……)

 潤んだ目でシャルロットとラウラの二人に見つめられてしまえば、もう一夏に抵抗することなどできなかった。だからこそこれは罰なのだと信じた。

(俺が気付けなかったから、二人ともこんなに追い詰められて……っ!)

「いや、シャルもラウラも、魅力的な女の子だよ。嫌いなわけないじゃないか」

 その言葉をトリガーに、二人は一夏を貪り始めた。彼を残さず搾り取るまで交わる間、鈴は次の行動について思案するのだった。

 

 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

 

 その頃、別の部屋ではレインとフォルテ、そしてスコールが話し合っていた。

「……それで、あいつらは戦力にするのかよ、叔母さん」

「叔母さんはやめなさいレイン。でも、そうね。戦力にしなくても何ら問題はないわよ?」

「何でだよ、スコールおば……スコール」

 途中で睨まれたのでレインは呼び方を変えた。しかし今のままでは戦力が足りないのは確かだ、とレインは思っている。

(オータムを助け出すにしろ、脱出するにしろ、戦力はいるだろ?)

 そのレインの考えを、フォルテは部分的に否定した。

「ちょっと勿体ないけど、人質交換すれば良いっスよ」

「いえ、それすらも必要ないわ。今隣の部屋で起きていることは分かっているわね?」

 スコールの言葉に、二人は顔を赤らめて首肯した。今でも微かに聞こえるのだ。シャルロットとラウラのあられもない声が。一度快楽に堕ちた一夏は、二人に種付けすること以外考えられなくなっているのではと思えるほどに盛っていた。

 事実としてスコールも知らないことであるが、一夏は元々究極の人類を作り出すためのつがいの片割れなのだ。子を孕ませるための知識とテクニックが脳内に刷り込まれている。彼はそうとは知らないだけで、実は相当なテクニシャンなのである。

 それはさておき、スコールは近くのモニターをつけた。そこには一夏がラウラを抱えあげ、シャルロットとキスをしながら交わっている様子が映し出されている。それが意味することは、つまり。

 がたん、と音を立ててフォルテが立ち上がった。

「まさか、録画してるっスか!?」

(スコール、エロビデオでも売って資金源にする気なんっスか!?)

「うふふ、これを見たら織斑千冬以外は動けなくなるでしょうね。ブリュンヒルデだけは生身で襲い掛かってくるでしょうけど、呆けた専用機持ち達とオータムを守りながら私達を全滅させるのは不可能でしょう」

 悪い顔で笑いながらスコールはそう告げる。この場所の守りは鈴に任せ、三人で出る予定だ。そうすればオータムも救えて一夏も確保できる。その後は後ろ楯のあるルクーゼンブルクへと逃げ込めば問題ないのだ。

 そして――静かな余生を過ごす。ISなど知ったことか。オータムと二人で、呪われた運命から逃げて。そして幸せになるのだ。そのための対価は手にいれた。少しばかり不自由でも良い。残り少ない余生を静かに過ごせれば、スコールはそれで満足なのだ。

 スコールは僅かに微笑みを浮かべ、すぐに消し去った。ISから警告が届いたのだ。

「とはいえ、ここに専用機持ち達が攻めてきたっていうのは笑えないわ。私はオータムを。貴女達は限界までここを守って撤退なさい」

「わかったっス」

「任せろ」

 すぐに三人は行動を始め、レインとフォルテを置いてスコールはオータムを救うために飛び出した。オータムを見張っているはずの楯無と話をするために。そこにはアリーシャと真耶、そして簪が残されているが問題ない。その他の専用機持ち達と千冬はこちらに向かっているようだ。

 最高速度で向かったからか、目的地へはすぐにたどり着いた。

「……っ、スコール……」

「考えてくれた? 今後のこと……どうあがいたって貴女には暗い未来しか待っていないってこと、分かったでしょう?」

 武装を向ける楯無にスコールは甘い言葉を囁いた。スコールは楯無に会うたびに、彼女には思っているほど後がないことを教え込んでいた。実際、楯無はいつ暗殺されてもおかしくない立場におかれているのである。

 スコールが伝えたのはロシア代表になった時点で日本からほぼ切り離されていること。IS学園に入学し、一年で轡木と接触して協力体制を築いた時点でロシアからも微妙に距離をおかれ始めたこと。そして一夏と接触して名前で呼び合うようになった時点で各国からハニートラップを疑われ、轡木からも見放されようとしていることだ。

 勿論ここで嘘をつく意味がないため、全て真実を伝えていた。その上で彼女個人の幸せのためにはどうすれば良いのかということを少しずつ示唆していたのである。

 そして今、その行動が実を結んだ。

「……ゎ」

「何ですって、更識楯無?」

「良いわ、連れていきなさい。その代わり――」

 楯無は堕ちた。全てに見放されるその前に、自分から全てを捨てようと思ったのだ。そうすれば幸せになれる。スコールのいうとおりにすれば、自分の望みは叶うのだ。

 そして楯無はオータムの枷を外し、スコールに引き渡した。隙を見せているにも関わらず襲いかかってこないのはそれだけ追い詰められている証左だ。

 因みにここに残されていたアリーシャとはすでに話がついており、千冬への当て馬にする目的で引き抜いてあるので手を出しては来なかった。真耶はオペレーターの指示で全く別の方向を警備しているため何も知ることができない。

 そうしてオータムを連れ、拠点に戻ったスコールは想定外の事態にぶち当たることになる。

「聞いてないわよこんなの!」

 そう毒づくのも無理はない。しかし、それでも愛するものを取り戻したスコールはそれに立ち向かうことなく撤退し始めるのだった。

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