いきなりですが、更識簪に転生しました。   作:こよみ

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 一夏はハーレムの主になるんじゃないかな(目逸らし)。ほら、定番のイベントは今からこなすわけですし。


残留思念。彼女の願いはどこに。

 セシリア、箒、万十夏、本音、ランネ、千冬の六人は一夏を取り戻すためにとある場所へと向かっていた。京都市街にほどよく近く、しかしながら人目につきにくい亡国機業の拠点だ。そこに『白式』の反応があったのである。

 そこで六人が見たのは、我を忘れたようにシャルロットとラウラを抱く一夏だった。それを見た瞬間に頭が真っ白になり、瞳を紅く染めて箒が《雨月》で一夏を貫く。

 それを見てセシリアが悲鳴をあげた。

「箒さんっ!?」

(何をなさっていますの!?)

「一夏っ……篠ノ之ぉ!」

 次いで放たれた千冬の怒号で我に返った箒は、自らのしでかしたことを直視した。

「え? あ……ああ、私は、 私は何てことを……っ!」

(私のものにならないなら死ねば良いのよ)

 悲鳴をあげる箒の頭に、そんな声が響いていた。しかしそれが彼女に聞こえることはない。そしてその声の主の目的もまた果たされることはないのだ。

 

 何故なら彼は――究極の人外なのだから。

 

 彼女らの見ている前で一夏の姿が変わる。『白式』が勝手に展開され、そしてそれぞれのISに表示されているその文字が歪んで崩れた。

 そのあとに表示された文字を見て、ランネが呻くような悲鳴をあげた。

「『白騎士』、ですって!?」

「落ち着いてらんらん、それよりも今は――っ、わぁ~、レイン・ミューゼルとふぉるふぉる先輩だぁ~」

 ランネを制するように一言告げた本音は、タイミング悪く出現した二人を見て苛立つほどにゆっくりとした声をあげた。今はそれどころではないのだ。その二人に構っている暇などない。目の前の『白騎士』は明らかにこちらを狙っているのだから。

 瞬時加速ではあり得ない速度でランネと本音に迫る『白騎士』。それを万十夏が装甲で受け止めた。

「くっ……重い……っ!」

「まどっち!」

「っ、優先順位を入れ替えろ! こいつは押さえられるだけ押さえるから、先に羽虫を落とせ!」

 万十夏の叫びに、自分達では受け止めることすらできないことを悟った。本音もランネも本家から聞かされているのだ。万十夏の力の強さを。故に二人はレインとフォルテへと向かった。箒とセシリアもそれに次いで二人を追う。

 それを見届けたのかそうでないのか、万十夏にだけ聞こえるタイミングで『白騎士』が漏らす。

「貴女に、力の資格は、ない」

「知るか。資格など与えてもらう必要はない!」

(それをお前が言うのか、『白騎士』っ!)

 万十夏が即座に反駁したのは、その言葉に傷ついたからでもある。彼女にとっての力の象徴は千冬だ。既に過去の簪によってその固執からは解き放たれてはいるものの、過去は消えないのだ。『力が強すぎる』『千冬ではない』『千冬にはなれない』その言葉が、時折万十夏を苛む。それを見せないように振る舞っていても、その言葉は消えないのだ。

 このときほど、万十夏は自身のISから武装が消え去ったことを呪ったことはなかった。『白騎士』の手が伸び、彼女の首に手をかけて瞬時加速する。それに抵抗すれば、恐らく他の人を狙ってくるだろう。それが分かってしまうから万十夏は抵抗できない。そのまま地面に叩きつけられようとしたところをシステム『シュレディンガーの猫は箱の中』を発動させ、衝撃を殺す。

 いぶかしむように触れている感覚の消えた手を見つめ、『白騎士』は再び声を発した。

「資格のない、モノに、力は、不要」

「随分と……っ、上から目線だな。お前に力の資格の有無を断じる権利があるとでも?」

(そんなこと、認めてたまるものか!)

 しかし『白騎士』は万十夏の言葉には答えない。今の攻防を見て万十夏と戦う無意味さを理解したのだ。倒せないのなら放置する。『白騎士』にとって力の資格を持つものは、彼女に挑む価値のある人間は他にもたくさんいるのだ。彼女の判断基準ではニンゲンではない万十夏にかかずらっている暇はない。

 故に彼女は傲慢な言葉を発する。

「力の資格が、ある、者たちよ……私に、挑め」

 そして近くにいた箒に襲いかかる。しかしそれを止めたのは万十夏だった。認めるわけにはいかなかった。自身のアイデンティティーを破壊されないために。資格など要らないと言ってくれた簪のために。

 武装はない。だからどうした。万十夏はその程度で敗北を喫するほど惰弱な存在ではないのだ。今度はブレードを受け止めず避け、蹴りを入れる。

 それと同時に攻撃を加えた人物を見て万十夏は怒号をあげた。

「死にたいのかねえさん!」

「黙れ万十夏、そんなことを言っている場合か!」

 そう言う千冬は生身のまま刀を振るって自らの影へと挑む。この二人はラウラのVTシステムと直接対峙したわけではないが、その手強さは誰よりも知っていた。千冬は自分と戦うことを想定していないが、万十夏はいつか越えるべき壁だと認識していて何度もシミュレーションを繰り返している。

 それでも、二人がかりでやっと止められるレベルだ。長引けばその分千冬達に不利になる。故に命運はレイン達を止めにかかっている本音達にかかっているわけだが――

「ああもうっ、何でこんなに合わないのよ!」

 あまりに息の合わない連携に悲鳴をあげるランネ。その理由は皆が焦っているからだ。箒もセシリアも、一刻も早く一夏のもとへと向かいたいのだ。故に単調な攻撃になり、コンビネーションに優れたレインとフォルテの二人にあしらわれるだけとなる。

 そしてその絶望的な連携に、二人は目配せした。

『ここは隠れて『白騎士』に倒してもらおうぜフォルテ』

『そうっスね。で、残った奴らを美味しくいただけば完璧っス』

 プライベート・チャネルでそう会話し合った二人は氷を急激に熱して霧を作り出し、一度姿を隠した。するとすぐに『白騎士』が箒達に襲いかかる。レインたちにとっては、楽をして勝てるのならばそれが一番良いのだ。

 そしてその二人が逃げたと現実逃避気味に判断してしまった一同は『白騎士』へと挑む。『力の資格がある』者達への挑戦は『白騎士』の望みなのだから、その狙いが外れることはあり得ないのだ。

 絶望的な連携を繰り返しながら戦うしかない一同は次第に追い詰められていく。なおシャルロットとラウラは、一夏に抱き潰されてとっくに鈴によって避難させられていた。その鈴も一夏とは戦う気がないため、不利な状況は変わらない。

 荷電粒子砲が空を駆け、セシリアを撃ち抜く。

「ぁっ、あああああっ!」

「セシリアっ!」

(申し訳ありません、一夏さん……っ!)

 まずはセシリアが堕ちた。『白騎士』に対して決定打のない彼女にはそれに抗うすべはなかったのだ。それを庇うようにしてランネが動きを制限される。いくら特殊武装《黒の水》を使いたい放題とはいえ、使う本人の脳が着いてこられないのでは全く意味がないのだ。

 そしてランネが堕ち、箒を庇って本音が堕ちた。武装もなく戦い続けていた万十夏も限界が近い。千冬はいまだに動きが堕ちていないという人外っぷりを発揮しているが、それも時間の問題だ。庇うべき人間が増えていく現状では、いかな同一人物とはいえ生身の千冬が負ける。

(どうする……このままでは全滅か……っ!)

 歯が砕けそうになるほど食いしばって、千冬は方策を考えざるを得ない。どうすれば勝てるのか、どうすれば一夏を取り戻せるのか。それを思い付かない限りはこの状況は打破できない。

 しかし、ここで箒が吠えた。

 

「いい加減にっ……一夏を返せぇっ!」

 

 空気が震えるほどの怒号。箒の瞳に灯る紅の光。そして、それにつられるように現れる無数の――

「なっ……何をしている篠ノ之!」

 それを視認した千冬は驚愕の声をあげた。まるで気配を感じられなかったそれは、どう見てもISだ。しかもそこに人間など乗っていない。完全な無人機なのだ。それが意味することを、千冬は認識することを放棄した。

 そして、無数の無人機が『白騎士』を撃滅しようと襲いかかる。それを『白騎士』はまるで室温のバターを切るように斬り伏せていく。『白騎士』にとって力の資格があるのはあくまで箒であって無人機ではないのだ。故に簡単に始末できる。

 ただ、その隙をつくものがいる。

「全く……束の仕業か?」

 千冬が無人機を盾にして『白騎士』に痛打を浴びせ、それを追うように万十夏が一撃を浴びせて堕ちた。それでやっと『白騎士』が動きを止め――そして千冬も動きを止めた。

 その理由は、新たに現れた二人組にある。

「クーちゃん、今のうちだよ」

「はい、束様」

 束に従順なクーちゃん――クロエ・クロニクルがISを展開して生身の千冬に幻覚を見せる。勿論一瞬の停滞しか生まないが、それで良いのだ。ここにいるのは天災なのだから。

 彼女らが行ったのは千冬達の足止めだ。そして、その隙に『白騎士』に痛打を与えたレインとフォルテによって変身が解けた一夏が連れ去られる。

 それを黙ってみている箒ではない。

「やめろ……返せ、一夏は……一夏は私のだ!」

 その声と共に無人機がレイン達に襲いかかろうとするが、何故か束がそれを妨害した。

「はいはい箒ちゃん、落ち着いて?」

「何で邪魔をするんですか、姉さん!」

 箒の今にも殺すと言わんばかりのその勢いに、束はだらしない笑みを浮かべる。束にとって箒はヒーローなのだ。ヒーローは絶対に負けてはならない。だが、連れ去られるヒロイン(一夏)に歯噛みするのもまたヒーローだ。

 あとは一夏を劇的に助け出せば箒の望みは叶う。そして世界で最初の代行者となるのだ。そうすれば世界中の誰もが認めるだろう――箒こそが最強の人類に相応しく、最強の人外のつがいに相応しいのだと。束や千冬が例外で、その一段下に並び立つ王と女王になれるのだと。

 無論王と女王を超える人類として、束も、ついでに千冬も崇め奉られるに違いないのだ。

(これでもう誰も束さんをバカにしたりしない。誰も出来損ないだなんて言わない。誰もが――私を認めてくれるから)

 そのある意味では幼稚な願いを。隣で静かにクロエが嗤っていたことに気付くものはどこにもいなかった。




 一夏は刺されました。そりゃ(箒にとって)浮気してたら是非もないですね。南無三。


※閲覧注意、単語の言い換えについて



原作マドカ「織斑千冬の残留無意識だとでもいうのか!?」
→そんな単語ないよぉ……
→じゃあ残留思念で。略して残念。

 しかし残念さんに今後出番は……ないな。残念さんはどこまで行っても残念さんでした。
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