いきなりですが、更識簪に転生しました。 作:こよみ
まあ、そういう二人はもう持ってないんですけどね。
セレストサイドで。後半は絵本風語りでお送りします。絵本風語りが読みにくい方は一気にあとがきまでどうぞ。必要な情報を付け加えた上で要約しておきます。
ルクーゼンブルク上の軍事衛星型IS『デイジー』の中で、最早普通の人間として生きられるようになったエクシアとチェルシーが抱き合っていた。もう呪われた運命に関わることはないのだ。自由に生きられる。それを噛み締めていた。
しかし、その感動的な状況に水を差すものがいる。
「あの、これはどういう状況なのでしょうか?」
「あー、れ……いやデイジー。見ての通りだよ? 言われた通り、エクスを助けた。それで良いじゃん」
(だからこの感動の場面で口挟まないほうが良いと思うんだけどなぁ)
レティの言葉にそう返答したセレストは、二人が落ち着くまで放置する方針だ。下手に声をかけて面倒なことになるくらいなら、放置することを選ぶ。セレストはそういう人間だ。
しかしその言葉をきっかけとして二人は感動から現実へと帰ってきた。チェルシーは何となくここがどこでどういう状況なのか察しているが、エクシアは全く分かっていない。世界情勢を知る前に『エクスカリバー』に乗った代償とも言えよう。
自身に向き直った二人に向けてレティは声をかけた。
「このような格好でおもてなしも出来ず申し訳ございません。わたくしはレティと申します。以後お見知りおき下されば幸いですわ」
コードで衛星に接続している関係上、ほとんど身動きのとれないレティはそのまま頭を下げた。それに対してチェルシーはようやく彼女が誰なのか特定できたようだった。
故に彼女は居住まいをただして問う。
「公女殿下、とお呼びした方がよろしいですか?」
「気付いていらしたのですか、エクスのお姉様。いえ、わたくしは廃嫡された身故、どうかレティとお呼びくださいませ」
「ではレティ様と。私のことはどうかチェルシーとお呼び捨てください。エクシアに救いの手を差しのべてくださってありがとうございました。私めに出来ることがございましたら何なりとお申し付けくださいませ」
流れるようにそう言い切ったチェルシーは優雅に礼をした。その姉の所作に、エクシアは慌てて真似をして礼をする。それにレティは顔を歪めた。友達に敬われるのは堪えるのだ。対等ではないと思い知らされているようで、孤独なのだと思わされるから。
だからこそ、レティは自虐の言葉を繰り返す。
「やめて……わたくしは、もう、公女ではないのてす……跡継ぎも産めない……長くも生きられない……だから、そんなの、やめてください……」
「それは……失礼致しました」
チェルシーは己の失策を悟り、頭を下げたまま謝罪する。しかしレティはそれが聞こえていないように言葉を続けた。
「ここだけがわたくしに許された場所なのです。全ての
それに対してサラが問うた。
「……解放されたいって願えば良いんじゃないの? 貴女のISに」
(多分、ISは願いを叶えるための願望器みたいなもんなんでしょ? チェルシー達を見る限りでは)
それは至極当然の言葉で。しかしその願いが引き起こすのが何であるのかを理解できてしまっているレティには到底選べない選択肢でもあるのだ。今の世界情勢でISがなくなればどうなるかなど、考えればわかることなのだから。
「その罪深い願いで何人が死ぬとお思いですか?」
「……え?」
「わたくしがここから解放される条件は、全てのISが機能を停止すること。もしくは全てのコアが願いを叶え、消え去ることです」
その言葉に、サラは首をかしげた。そんな簡単なことで、何故人間が死ぬのかと。しかし、サラは知らなかったのだ。どれほどまでにIS業界に闇が広がっているのかを。
その情報を補足するためにレティは告げた。
「実戦配備された322機。そして研究・専用機に使われている145機。その詳しい内訳を、わたくしは知ることができます。そして知ってしまったのです。実戦配備された322機がいずれ『複数人に搭乗されているがために叶わない願い』で壊れてしまうことを。研究・専用機に使われている145機のうち、半数以上が禁じられた生体融合型ISとして開発が進められていることを」
その情報に、サラは絶句した。前者はまあ良い。自業自得だ。ISという願望器に複数の願いを叩き込めば壊れるのは分かりきっている。叶えられる願いに限度があるのはチェルシー達が証明した通りなのだから、いくつもの入り交じった願望を叩き込まれれば壊れるのは当然だ。
問題は後者だ。145機のうち、専用機として華々しくデビューしているのは約半数なのだ。つまりどの国も生体融合型ISを開発し切磋琢磨していると、そういうことなのだ。国家に忠実な少女たちに無理矢理コアを埋め込み、裏切らせないようにすれば他国も奪取することは難しいのだから。
何せコアを手に入れようとすれば意思ある本体が抵抗してくる。代わりに本体を黙らせれば奪取出来るということでもあるが、意識を失った場合、本体に手を触れれば強制的に電撃でも浴びせるようにすれば問題ないだろう。
そして、そんな哀れな生体融合型ISの搭乗者を殺してまでレティは解放されたくない。
「わたくしが、悪いのです。世にISという形で時結晶を解き放ってしまったわたくしが……」
その妙な言い回しに、今度はセレストが首をかしげた。
「……ん? ISって篠ノ之博士が単独で発表したんじゃないの?」
「何言ってるの、セレスト。とうとうボケたのかしら?」
「ボケてないって。でも、そうか……原材料がここにしかないなら、どうやって篠ノ之博士はISを作った? いや、彼女はどうやってその時結晶とやらに導かれたの?」
その探り当てるような口調に、レティは静かに語り始めた。何故、どうしてこのようなことになってしまったのかを。
それを聞き終わったとき、サラは、セレストは、チェルシーは、エクシアは、選んだ。それぞれの道行きを。
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むかし むかし あるところに ねがいを かなえる ふしぎな いしが ありました。そのいしは るくーぜんぶるくの ちのそこの だれも ぬけだせない どうくつに ありました。いまよりも もっともっと むかしには そのいしを もとめて さまざまな ひとが あつまって きたのです。
あるひとは それを せいはい とよびました。また あるひとは それを こるぬこぴあ とよびました。また あるひとは まほうの らんぷと よび さらに また あるひとは さんぽ とよんだのです。それは すべて その ふしぎな いしの ことでした。
るくーぜんぶるくの ひとたちは それを たいむ・くりすたる と よびます。なぜなら その ふしぎな いしは かこ げんざい みらいの すべての ときの なかから いちばんの ねがいを くみとって かなえてくれる からです。ときを こえて ねがいを かなえてくれる すいしょうだから たいむ・くりすたる なのです。
その たいむ・くりすたるを もとめて おおきな せんそうが おこってからは るくーぜんぶるくの ひとたちは それを けっして そとには ださないように してきました。ふたりの しょうじょが それを ときはなつまで たいむ・くりすたるは ねむりに ついて いたのです。
あるひ ぱれすから ぬけだした ありすひめと びおらひめは その ちのそこの どうくつへと はいりこみます。そこは きらきらとした ほしぞらの ような すてきな ばしょでした。
「ふたりだけの ないしょよ」
びおらひめは ありすひめと そう やくそく しました。そこが はいっては いけないばしょだと びおらひめには わかっていたからです。ばれたら おこられると おもっていました。
だけど ありすひめには わかりませんでした。
(こんな きれいな ばしょを ないしょだ なんて もったいないのじゃ。みなに おしえて あげるのじゃ!)
むじゃきな ありすひめは そうやって そらから ふってきた しろうさぎさんに おしえてしまいます。しろうさぎさんは その たいむ・くりすたるを みて その しょうたいに きづきます。
(これが あれば ゆめが かなう!)
しろうさぎさんにも かなえたい ねがいが ありました。だから それを もちかえって いもうとの あかうさぎさんにも あげようと したのです。
ですが それを きれいにして わたすまえに しろうさぎさんは くろうさぎさんに とって かわられて しまいます。くろうさぎさんは しろうさぎさんのことが とても とても きらいでした。なぜって じぶんと いろいがい ぜんぶ おなじだったからです。
そうして くろうさぎさんが かんせいさせたのが いんふぃにっと・すとらとす。むげんの せいそうけんを いみする へいき でした。くろうさぎさんが しろうさぎさんを ころすための へいきです。そして こんな じぶんを うみだした せかいに ふくしゅうするための へいきなのでした。
たいむ・くりすたるを しっている ありすひめを そのままには しておけません。だから くろうさぎさんは ありすひめの きおくを けしました。そして びおらひめの きおくも けそうと しましたが びおらひめは もう しんだことに なっていました。なぜって たいむ・くりすたるを そとに だしてしまった びおらひめを たいこうさまが ゆるすはずが なかったからです。
そうして くろうさぎさんは せかいを こわすための へいきを ひろめました。びおらひめは その せきにんを とって くろうさぎさんが はつめいした へいきの なかで ずっと ずっと とじこめられて いるのです。
いつか いんふぃにっと・すとらとすが みなの ねがいを かなえて ひとつのこらず きえさるまで ずっと びおらひめは そこに いなくては なりません。そして さいごには しななければ ならないのでした。それが びおらひめの ばつ なのです。
そうして ひろまった いんふぃにっと・すとらとすは きょうも だれかの ねがいを かなえるために その だれかからの たいわを まって いるのです。その たいわを つうじて じぶんの やくわりを はたす ために。やくわりを はたして きえさる ために。
これが るくーぜんぶるくに つたわる ふしぎな ねがいを かなえてくれる いし たいむ・くりすたるに まつわる おはなしです。
おしまい。
ひらがなばっかりで読みにくかった人用の要約
・ルクーゼンブルクに願いを叶える石があった。
・聖杯=コルヌコピア(豊穣の角)=魔法のランプ(アラビアン・ナイトの)=サンポ(持つものに幸福をもたらす神秘的な人工物)=
・
・
・ある日城から抜け出したアリス(アイリス)とヴィオラ(レティ)は
・バレると不味いことぐらいは大公から聞いていたので内緒にするようヴィオラはアリスに告げるが、アリスには理解できていなかった。
・発明少女だった束が実験の失敗でルクーゼンブルクの城に不時着。アリスと知り合い、洞窟に案内される。
・年不相応に発達した束はそれが願いを叶える性質がある石だと知り、持ち帰れるだけ持ち帰る。
・束、最初のISを開発中にクローンと入れ替わる。クローンはそれを兵器だとみなして更に改造する。
・IS発表。開発目的は、無意識内に生じた『自身を生み出した世界への憎しみ』を晴らすための復讐の道具として使うため。
・ISを見た大公、中身が
・大公、アリスもそれを知っていることに気付いたが、幽閉するまえにクローンに記憶を消されたため様子見。
・ISが願いを叶えるためには対話が必要(対話するためには二次移行しなくてはならない)。