いきなりですが、更識簪に転生しました。   作:こよみ

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 セシリアは全く見せ場がないままドナドナされますた。全く、セシリアはエロいなぁ(エロシーンなんて書きませんけど)!


貴方は何者か。本物の定義。

 ルクーゼンブルクの一角にある、オートシュール湖上空。そこで、IS同士による戦闘が行われようとしていた。勿論IS学園の専用機持ち達である。恋する一夏を賭け、本気で戦うのだ。負ければ死ぬ可能性すらあるが、恋する乙女達にそんな考えは最早浮かんでいない。

 一夏を奪った側は、鈴、ラウラ、レイン、フォルテ、オータム、スコールがそれぞれISをまとってスタンバイしていた。シャルロットはその場にいない。まだデュノア社から受領したIS『コスモス』に慣れていないからだ。習熟訓練が終わり次第合流するか、一夏の護衛を続けるか臨機応変に動くだろう。

 対する者達は、千冬、真耶、セシリア、箒、万十夏だ。布仏の二人と更識姉妹はその場にはいない。楯無達は遊撃で隠れており、布仏の二人はそれを補助するために姿を隠していることになっているのだ。実際には、当主から命令を受けている彼女らは既にコア・ネットワークを切断してそこからは脱出しているのであった。

 それはさておき、相対して最初に口を開いたのは箒だった。

「一夏は返してもらうぞ!」

(そうでなければ、斬る!)

 その啖呵に、ラウラは冷笑をもって応える。

「返す? 元々お前のモノでもないだろう?」

「ラウラァ……!」

(一夏は、一夏は私のモノだ!)

 沸点の低い箒を怒らせるのは簡単だ。そして、その動きを制限するのも。冷静でない箒さえ飛び出せば、後は戦闘を始めるだけのことだ。そう思っていたのだが、それを止めた者がいる。たった一人型落ちのISを纏う千冬だ。

 押し殺した声で千冬はラウラに問う。

「何故お前が裏切る、ラウラ」

(お前は私を慕っていてくれたのではないのか!?)

 それに対し、ラウラは千冬が見たことのないほど感情が凪いだ無表情で返答する。

「何故? むしろ教官がこちらにいらっしゃらないのがおかしいのです」

「今はもう教官ではない」

 そのやりとりはいつものものと同じだというのに、ラウラの返答だけが違っていた。彼女はその呪われた出自を詳しく知ってしまったのだ。遺伝子的に父は一夏であることを。千冬はラウラにとって確かに教官ではない。

 千冬はラウラにとって――

 

「そうですね、私は今は貴女を『叔母上』と呼ぶべきなのでしょう」

 

 叔母だ。それも、ほぼ血が繋がっているに等しい叔母である。一夏とほぼ同じ遺伝子を持つ以上、千冬はラウラの叔母なのだ。

「……何?」

(何が言いたい、ラウラ)

 怪訝な顔をして問い返す千冬を見て、万十夏が焦ったように声をあげる。

「おいやめろラウラ・ボーデヴィッヒ。ねえさんに耐えられるとは思えん」

「だからだ、伯母上。私の父は一夏だ。要するに教官は叔母で、お前は伯母だということになる」

(つまりババアと呼べば良いのだ。確かクラリッサもそう言っていたからな)

 それを聞いた瞬間、千冬の頭は真っ白になった。確かにラウラは試験管ベイビーである。しかし、その遺伝子がどこから来ているのかなど考えたことはなかったのだ。ラウラの髪が銀髪であることもそれを助長する。まさか親無しの千冬に、姪的な存在がいるとは思わなかったのである。

 その言葉はセシリアや箒にも少なからずショックを与えた。ラウラの出自は知っているが、まさか一夏の遺伝子を継いでいるとは思いもしなかったのである。

 その混乱を最大限に利用したのは更識姉妹だった。

「墜ちなさいッ!」

 楯無はラウラと簪の援護を得て全員に痛打を与える。とっさの判断で真耶がシールドを展開していなければ、全員が湖の藻屑となっていただろう。

 絶対防御を抜けた衝撃に顔をしかめる一同に、更に簪が追い討ちをかける。

「よくやったわ、ラウラ……()()()()()()

「ふふ、そうだろう? もっと誉めてくれても良いのだぞ、()()

 武装の上から頭を撫でられて、これ以上なくご機嫌になるラウラ。その頭を撫でる簪の顔には、確かに惜しみなき愛情が浮かんでいた。それはまるで親子のようで。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことに、ようやく一同は気付いた。

 目を見開き、セシリアがうわ言のように漏らす。

「そんな……嘘、嘘ですわ……」

「そんなことって……っ」

 真耶も驚愕を隠しきれず、またしても不意打ちを食らわされた。今度は気付いた万十夏を『アラクネ』が糸で縛り、レインとフォルテがそれぞれ氷と炎で叩きのめす。それだけで、動ける人材はほぼいなくなっていた。

 そんな戦域から、二機のISが離れていく。ボロボロになってしまった『ブルー・ティアーズ』と『幕は上げられた(ショウ・マスト・ゴー・オン)』だ。真耶はセシリアを守るよう圧力をかけられているため、彼女をつれて撤退せざるを得なかったのである。

 それに抵抗しようとするセシリア。

「やめて、山田先生、離れないでくださいまし! 一夏さんが、一夏さんがァ!」

「だめです! 死にたいんですかオルコットさん!」

「死んでも構いませんわ! 一夏さんを取り戻せるのなら……! ですから離してくださいまし!」

 身をよじり、抵抗するセシリア。しかし武装が全壊してしまっている『ブルー・ティアーズ』を纏って戦いに行かれると、真耶がイギリスから殺される。故に真耶は彼女を離さないようイギリス上空へと向かおうとして――

「……え?」

 突然発光して変形し、消えたセシリアに呆然とするしかなかった。全く意味が分からなかったのだ。しかも、いくらスキャンしても『ブルー・ティアーズ』の反応は途絶している。その理由を知るものは、そこにはいなかった。

(オルコットさん……っ、こう、なったら!)

 歯噛みした真耶は、一度も使ったことのない通信を近くにいるかもしれない友人に送る。

『じぶちゃん!』

『おわっ!? ……真耶、か?』

『今すぐ『ブルー・ティアーズ』の反応をスキャンして下さい! 生徒の命がかかっているんです!』

 奇跡的に繋がったその通信相手は、ルクーゼンブルク公国親衛隊のジブリル・エミュレールだ。真耶がIS学園の生徒だった頃の同級生であり、弄りがいのある友人でもある。

 そんな彼女から、不可思議な返答がくる。

『それは恐らく無理だ。今しがた、生身のセシリア・オルコットが殿下の前に転がり出てな……今はその、取り込み中だ』

『……へっ?』

 全くもって意味不明な返答に真耶はフリーズするが、ISがなんたるかを知らない彼女に理解できるはずもない。故に、ジブリルは真耶に対してもう少しだけ分かりやすくセシリアの現状を伝えた。

『取り敢えず、セシリア・オルコットは保護している。だから安心すると良い、真耶』

『……分かり、ました。出来ればそこから動かさないで下さい。やることを終えれば迎えにいきますから!』

 そういって一方的に通信を切った真耶は先程の戦域へと戻った。それを後悔するのはもう少しあとのことだ。実は、ここでジブリルの元へ向かっていれば、一夏を容易に取り戻せたのである。

 今現在一夏がいるのはルクーゼンブルク公国の黄昏宮殿と呼ばれる場所。そしてそこは、第七公女アイリス・トワイライト・ルクーゼンブルクの住居であり、皆のためにその伴侶となった一夏の住居でもあるのだ。ルクーゼンブルクは一夫多妻制の残る稀少な国であり、現状ではここでないと愛し合った少女達を同列に扱えないのだ。

 それはさておき、戦域へと戻った真耶はセシリアの無事を伝えるべく誰かにプライベート・チャネルを送ろうとした。しかし、そこにそれを伝えても問題ないほど冷静な人間は残っていなかったのだ。そこら中に怒号が飛び交い、言葉で争っている。

 その中で事態が急変したのは、この二人の会話だった。

「何故そちら側に行くのだ、簪!」

「だって、そうしないと……一夏と結ばれないもの。マドカにだって、分かるでしょう? ……何の犠牲もなしに、何かを手に入れることなんて……出来ないから」

(それが、世の中の真理……何かを得るには何かを失わなければならない、等価交換)

「……ッ!」

(違う……ッ!)

 万十夏は瞠目し、確信をもってその結論に至った。ずっとおかしいと思っていたのだ。万十夏にとって『本物の簪』とは、誘拐された間中ずっと一緒にいた少女のことだ。そしてその少女は、目の前にいる彼女ではあり得なかった。

 何故なら――

 

「……どうした簪。お前は『自分以外の誰も犠牲にせずに成果が欲しい』のではなかったのか?」

 

(そうだと言ってくれ……!)

 そう、本人が語っていたのだ。犠牲になるのならまず自分から。誰も犠牲にせずに救われるためにはどうすれば良いのかをずっと考えていたはずなのだ。だから、目の前にいる彼女は『万十夏にとっての本物の簪』ではないのである。

 そしてその確信は裏付けられた。

「そんなの、嫌だよ。自分が犠牲になるんじゃ……意味ないの」

(自分が幸せになりたいのに……どうして、自分を犠牲にしなくちゃいけないの?)

 その返答は、確かに彼女が『万十夏にとっての本物の簪』ではないことを示していて。

「……そうか。そうかぁ……はは、はははははは……」

(私は……私は、何ということを……っ)

 その悔恨に囚われて、万十夏はその場から消えた。最早戦う必要すらなかったのだ。もう一度『万十夏にとっての本物の簪』に会って、謝らなければならない。皆に自身を否定される辛さを万十夏は嫌というほど知っているのだ。だからこそ、この思いを伝えなくてはならなかった。

 去っていく万十夏を追う余裕もなく、箒を狙うあるいは守るような陣形で戦いは進んでいた。この中での一番のキーパーソンは彼女だ。シールドエネルギーを回復する手段のある彼女がいる限り、この戦いはいつまでも続くのである。武装が破損しても、直している間他の面々が戦えば良いだけの話だ。

 

 だから戦いは終わらない。この戦いが終わるのは――皆が願いを叶えたときだった。

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