抑止兵器マギア   作:マルペレ

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時間が経とうとも、変わらないものがそこにある。
意思だけは、個人のものでは終わらないのだろう。


☮時の過ぎた残骸

 景色は前方から後方へ、回転するスクリーンに映った張りぼてのように抜けて行く。木の間を縫うように走る彼は、知らずに木が自分から道を開けているようにも見えるものだと詩人を語る自分を嘲笑した。

 そして、立ち止った瞬間に面として広がる森の光景。御丁寧にも彼…フォックスが修行に使用している森の一角に、その目標は点在していた。その一匹が、牛に似ている間の抜けた声を上げる。その数はこの森の一角を埋め尽くすほどであり、余りにもな光景に彼は笑みを浮かべる。

 

「≪フォックス、来たのね≫」

「これは、確かに誰にも告げないわけだ」

「≪どこから湧いて出たのかしら。あるいは、私たちと同類か――≫」

「成程、当たっているかもしれないな。だが御託を言っている場合ではないようだ」

 

 そんな調子で、RAYに楽しげに語りかける彼。戦闘狂もここまでくれば大概なものだと呆れる彼女もレーダーで探知を開始した。周囲の200メートルはこの無数の「月光」で埋まっているらしく、レーダーに映る赤い光点はうぞうぞと(ひし)めいている。…牛のような鳴き声を持つ機械群にとって、なんと言葉遊びに相応しいか。あるいは狙っていたのかもしれないわね、とRAYの思考回路は肺が痙攣するように引き攣った。

 

「≪あら、ご都合()ね≫」

「どうした…?」

「≪おでましよ≫」

 

 月光の群れを割って出てきた人物は、熱い革の鎧とコートを着込んだ巨人。手に持った大斧は2メートルを超していた。牛飼いにしては屈強な人物であるな、フォックスはそう言って笑いかけた。

 

「ヴヴヴ……ヴァァァァァッ!!」

「またこの手の相手か。最近多いな」

「≪思考値、精神ハーモニクス共に異常値を示しているわ。薬か元々か、狂っているには違いないわね。……そっちはお願い≫」

「了解した。機械群は任せよう」

 

 常人なら聞くだけで怯むであろう咆哮を聞き流し、大胆にも「新しい」強化外骨格を試すいい機会だと、そう言った彼は構えをとる。その装備は目につくプロトタイプ特有のオレンジ色が消えていて、新しい配色のメインカラーは薄いグレー、サブがダークブルーへ据えられており、間接などの接合部を補強する黒い線は炭素硬化による重量軽減・装甲重厚化がもたらされている証拠。より隠密に長けた改良型の強化外骨格を身にまとい、フォックスは不敵に笑う。

 

「いいぞ、闘いの基本は格闘だ。武器や装備に頼ってはいけない……強化外骨格の俺が言う台詞でもないかもしれないが」

 

 武器を持つ相手に対して、徒手空拳。高周波ブレードは鞘に仕舞い、頼りがちな右腕のチャージガンのエネルギー配給を停止させる。自前の爪を研ぎ澄ました狐が今、野に放たれた。

 

 

 

「…おい、マジか」

 

 その頃の教室。既に授業が始まっている時間だったのだが、千雨の口からは思わずその台詞が出てしまった。隣に居るエヴァンジェリンはその意外そうな声を拾い、一体どうしたのかと尋ねてくる。一瞬答えに詰まった彼女だったが、エヴァンジェリンが機転を利かせて「秘匿会話が雑談に聞こえる魔法」を使ったので、渋々ながらも詳細を話すことになった。

 

「……所属不明の“兵器群”にRAYが接触したらしい。学園側が動き出してないところを見ると、結界とやらを掻い潜ってきたっぽいな」

「…なに? 私は結界の異常に一番敏感だと自負しているが……そんな様子は感じられなかったぞ」

 

 とある事情から、エヴァンジェリンは麻帆良大結界の異常察知に長けていた。だが、その彼女をして結界に異常なしと言われたということは、学園側はこの以上に察知できていないということを現していた。

 

「この授業の先生が魔法先生なら良かったが…」

「残念ながら一般の教師。ともすれば奴らに任せるしかない、か」

「いや、データ通りに相手が“月光”なら出来ることがある。……授業サボりになっちまうけど、手伝えるか?」

「……まあ、この機会でジジイに貸しを作るのも悪くないな」

 

 千雨の提案に悪だくみを思いついた犯罪者のように笑う。その悪意たっぷりの笑顔にちょっと引いた千雨だったが、どうやったのか顔を真っ青に染め上げると挙手をした。

 

「すみません。体調が酷いので…」

「あ、あら長谷川さん大丈夫?」

「え、ええ……マクダウェルさん、手伝ってもらえますか?」

「ええ。すみません、私たちはこれで」

 

 お大事にー…と教師のエコーが掛かった声を聞きながらドアをぴしゃりと閉める。すると、一気に顔色が戻った千雨は一つ頷いて、二人共に足音を立てないようにしながら「屋上」へと走った。片方は少しだけ浮いており、もう片方は走っている筈なのに足音が無いという異常な光景だったが。

 

「それで、屋上でどうするんだ?」

「この時間と次くらいまでならどのクラスも使わない授業の筈。ちょっと私らで占拠して、フォックスかRAYの援護をするさ」

「……おい、この状況で遠距離狙撃は不可能な筈じゃ―――」

「っと、意外に早く着いたな。教室が近くて助かった」

 

 そう言って彼女は、最近身につけだしたポーチに手を突っ込んだ。すると、そこから出てきたのは木製の銃床。どう考えても入らないだろうという突っ込みをする前に、エヴァンジェリンの眼前で20cmほどのポーチからは730mmの狙撃銃――「モシン・ナガンM1891/30」が顔を見せる。更に232mmのサプレッサーが慣れた手つきで装着されていき、5発の弾丸を込める時間は実に8秒。ようやく我に返ったエヴァンジェリンは、当然の如く突っ込みを入れる。

 

「ちょ、長谷川…おま、それどっから出したのだ!?」

「え、いや。……普通だろ」

「ふ、普通はそのポーチに収まらないだろうがっ! 貴様が好きな常識はどこにいった!?」

「いや……これがRAYも普通だって言ってたし、それより集中したいから少し静かにしてくれよ」

 

 呆れた目つきでそう言った千雨は、再びポーチから一錠の薬剤(ペンタゼミン)を取り出して口に含むと、一気に飲み下し、深呼吸して脳に酸素を送る。ソリッドアイを装着してからサイトとそれを直結させ、体制をうつ伏せに切り替えて目標地点をサーチ。見つけた、と言った頃には彼女の指は引き金に添えられていた。

 

「フォックスと……なんだあれ?」

「…どうやら侵入者というのは本当だったようだな。しかし、どこからあんな軍勢が入って来ていたのか」

 

 遠くに目をやりながらそう言ったエヴァンジェリンの足元には、魔力補充用の魔法薬のフラスコが転がっていた。吸血鬼の超視力を使うために魔力を回復させたのだろう。だが、彼女はその軍勢に対してよくやるものだと、呆れた表情で現状を物語っていた。千雨も言葉をそれだけにして照準を合わせ始める。そして、引き絞られた指と共に一発目の弾丸が風を裂いて飛翔した。

 

 

 

 見る限りは何かの皮で構成された相手の防具。やりにくい相手だと考えたフォックスは、周囲の月光にも注意を割きながら早々に装備を切り替えた。当然ながら手にしたのは高周波ブレードであり、それが高速振動を開始したのを「皮切り」に、相手の巨漢へと一閃。しかし、刃は皮の上を空しく滑ってしまうにとどまった。余りに軽いその手ごたえに、フォックスは実に相性の悪い相手だと内心舌打ちする。だからといって、現状が変わるわけでもないのだが。

 

「ゴォォアァアアァァァッ!」

「くっ……」

 

 だが、それが不利かと聞かれればそうでもない。相手の動きも鈍重過ぎて彼もダメージが無いというのが事実。お互いに、(巨漢の方は分かっているかも定かではないが)解決策を未だ模索しているまま、この無意味な均衡を保っていた。敵の来ている皮は「気」による強化も纏われているらしいので、銃弾も効果は望めそうにはない。……ともなれば、手段はごく僅かに限られる。長年の相棒である手持ちの高周波ブレード。この一本に気を集約させた一撃で丸ごと切り裂くしかないのだろう。

 薙ぎ払いをしゃがんで避け、試しだと再び関節を斬りつけるがそれも逸らされる。やはりああするしかないかと、それでも心配なのは……

 

(やはり、敵そのものの強度)

 

 鎧を切ったとして、「肉を切らせて骨を断つ」で返されてしまえばフォックスはそれまでだ。大ぶりで鈍重な攻撃を再び避けるが、これも当たっていないからこそ。敵を侮るような真似をすればやられるのは分かっているからこそ、この超常現象が渦巻く世界での戦闘は慎重にならざるを得なかった。思考に区切りがついたその時に振り降ろされた斧をブレードで逸らし、地面へと陥没させる。その隙をついて刺突を繰り出したが、どこまでも頑丈な相手のようで、手には皮のほんの先の方を破る感覚しか返ってこず、貫通とまではいかなかった。新たに理解できた相手の特性に、舌打ちが今度こそ表面(げんじつ)に浮き上がる。

 ほんの少し程度の伐採にはびくともしない、そんな「敵」はいつしか戦った巨大兵器メタルギアを彷彿とさせた。やはり、趣味ではないが大技に頼るしかないようだと彼は次の行動をシュミレートした後、可能性にかけて実行を採った。

 

「はぁっ!」

「ごぁっ!?」

 

 動きはフォックスの方が速い。ならばと背後に回った彼は、古典的ながらも両膝裏に均等に衝撃が行くように蹴りを放った。一般とは程遠い巨躯と重量のある得物を持った敵は、たまらずに支えを失って地面へ倒れこんだ。体勢を立て直すのに時間はかかるだろう。そう見越した彼は刃先へ気を集中させ、必死に起き上がりながらの悪足掻きの一発を避けると、そのそっ首へと刃の軌跡を―――描く!

 

「ッ!!」

 

 刃は、彼の力の限りに振り抜かれた(・・・・)

 瞬間、時間そのものが遅刻したように皮の鎧ごと首は正位置よりずれていき、根元からは血液が噴水の如く飛び上がる。血飛沫は生臭い香りを森の木に張り付け、首がごろりと転がるころには身体も完全に動かなくなっていた。流石にこうなってしまえば活動を続けられる生物など存在しないだろう。

 ピッと刀を振るって血糊を払い、鞘へと刃を収める。さて、この事態はどういうことかとRAYに通信を繋げようとした瞬間、彼を覆うほどの影が背後から伸びた。牛のような鳴き声がその正体を現している。

 

(ッ、平和ボケが進んだか…!)

 

 気配を読み違えるなど、己にとって愚の骨頂。そう思った時にはすでにアームズテック社の無人二足歩行兵器、「月光(IRVING)」の片足が振り上げられていた。これが油断の代償だと言うことかと、そんな戒めの一撃を甘んじて受けとめようと身体に力を込めた刹那、鳴り響く無線が鼓膜を揺らす。

 

≪斬れっ!!≫

 

 聞き覚えのある声。まだ年端もいかぬ少女の一声に、自然と手が刀へと添えられていた。柄を握ったころには一発の弾丸が風を切って月光の脚に着弾。麻痺による弛緩で動きを止めた無人兵器は、ほんの一瞬で機械部と生体脚部が泣き別れることとなった。全高5メートルほどの無人兵器は地に倒れ伏し、地面を大いに揺らす。周りで同じように倒れている月光に止めをさすと、フォックスは通信を繋いだ。

 

「…いい援護だ」

≪そりゃどうも。っと、RAYも終わったみたいだ。私らはこれで戻るからな≫

「ああ、助かった」

 

 簡潔ながら、彼らしい感謝を告げると、再び近くの月光が一体、地に沈んでもがき始める光景が生まれる。距離は相当離れている筈だが、千雨はモシン・ナガンのスコープを高い倍率の物にとりかえることで汎用性を犠牲に、狙撃一点特化として狙撃銃を展開させていたのである。銃弾そのものスピードや射程距離については、メタルギアのお約束だろう。

 それから少しすると、目の前の地面がいきなり陥没した。つまり、RAYも敵の掃討が終わってフォックスの元へ来た、ということだ。白昼にこのような巨大兵器が目撃されるのは不味い。そう考えていたのか、未だに擬態を施しているようだ。

 

「敵の目的は?」

「≪割り出しは不可能。そもそも、この結界を私たちの仔月光でやっと感知できる程度にすりぬける方法も、白昼に堂々と兵器群を送りつけて暴れると行動も全てが理にかなっていないわ。これを企画した相手はよっぽどの馬鹿か、それとも…≫」

「俺たちと同じ、流れてきただけか」

「≪そう、なのだけれど、それじゃあ説明がつかないのが一人≫」

「あの大男、だな」

≪こっちで掃討を確認したけど、もう戻っても大丈夫そうか?≫

「≪ええ、ありがとうチサメ≫」

 

 陽気な声色で通信を切った千雨に頼もしい物だと感想を持ちながら、二人は残骸の広がるこの一帯を見渡した。その中で、無人兵器からではない生きていた赤い液体を垂れ流す骸がひと際目立って転がっている。

 無人兵器がRAY、フォックスと同じように「流れてきた」のならが、何故この人物も「気」を使うことが出来たのか、そして何故精神が侵されている相手となっていたのか。何故、無人兵器はこれに従っていたのか。アームズテック社の「月光」もまたSOPシステム(ナノマシン)を主軸として起動する兵器であり、このような異界の地で活動するためにはRAYのような疑似ネットワークか、制御するに値する要因を新たに作る必要がある。ただ、今回は自爆型でもないのにただ単に突っ込んでくるだけの様子から、後者の可能性が高いとRAYは示唆した。

 

「≪やっぱり、どこへ行っても変わらないのかしら≫」

「変わらないだろうが、俺たちは変わってしまっている。時代の流れに逆らい、変化を受け入れない者は押し潰されることになるかも知れないな」

「≪説得力のあること……とにかく、学園長との契約はこのぐらいがちょうどいいわね≫」

「そうか」

 

 それとなくほのめかした話題にフォックスが喰いついてこないと分かると、RAYはこの男の性分には難しい話はいらないのか、といつも通りの雰囲気を流し始める。幸い、大事になる前に処分できたから良かったものの、このままここにRAYがいれば新たな面倒事になりかねない。そう判断した彼女はゆっくりと、帰路についたのであった。

 

 

 

「さてと」

 

 一息ついた千雨は銃のサイトやサプレッサーを取り外し、再び四次元ポーチに銃口から突っ込んでいく。魔力を感じないというのに、容量を完全に無視した異様な光景はエヴァンジェリンの気を引いたが、逆に突っ込んだら何か自分の大切なものが、おもに価値観とかが変わってしまうのだろうと思い、突っ込みを放棄した。

 

「っし、授業戻るぞエヴァンジェリン」

「……ああ」

「どうしたんだよ?」

「なに、私も案外理不尽というものを知らなかったのだな、と思ったまでだ」

 

 その言葉に変な奴だなと再認識した彼女は、何事もなかったかのようにその場から去った。少し遅れたエヴァンジェリンも、誰にも聞かれないよう年相応な表情で盛大にため息をつくと、屋上の扉を閉めて千雨の跡を追っていく。すると、屋上の一角から人影がもぞりと蠢いた。

 

「撮影完了。流石です、マスター」

 

 言葉は淡々と告げているくせに、鼻から溢れ出るアガペーを隠そうともしない茶々丸。仕事熱心なのはいいことだが、お約束の回収は後でもよかろうに。

 

 

 

 その夜、破壊された月光の残骸や身元不明のフォックスが対峙した男の調査のために一帯は魔法先生で溢れかえっていた。ある者は残骸を燃やし、ある者は秘匿の結界維持に努めている光景は工事現場のような様相を晒している。その中、流石におおごとだと判断した近衛近右衛門の姿もそこにはあった。

 

「……ふむ、そうしてこ奴らは現れたということか」

「今回はRAYも動いていた。契約がどうとかいっていたな」

「ほう! それならば十分じゃわい。……そんで、それはさておくとしよう。この首切り死体については、心当たりはないのじゃな?」

「死体の検査などは専門外だ」

 

 難しいの、と。近右衛門は渋面を浮き上がらせる。襲撃目的、素性、能力が一切不明で斬り捨てられた侵入者の情報。どれも憶測さえも浮き上がらない不明だらけの襲撃は、学園側の新たな問題になりそうだ。

 

「しかし、良いのか? これこそワシらに見せるべきものではないじゃろう」

「あんたたちが嬉々として使う様子を思い浮かべる方が難しいな。それに、“こんなもの”は学び舎の園にとって、一番不必要だろう。だから処理を任せている…とのことだ」

「ほっほう、信頼してくれるのはうれしいの。……まあ、当然ながらワシら学園側はこんな危険しか持ち合わせとらん物を使うつもりなぞない。研究会あたりに見つかる前に全て消し去るとしよう。しかし、牛か……」

 

 すると、近右衛門は何か思うところがあったのか、後始末を頼むとだけ言って地のゲートを開いて学園長室へ帰還する。面々が真相を知るのは、もう少し先になるようだ。

 

「フォックス、この残骸は君のいた世界の物だと聞いたが」

「らしい。…俺が死んだ未来の事だが、RAYの情報と特徴は完全一致している」

「……無人兵器、か。科学とは恐ろしい物だな」

「魔法も気も、科学も便利であり危険な物には変わりないだろう?」

「ああ…だからこそ、私たち教師が、大人が教え子に正しい物を教えなければならない。多少は厳しいくらいがちょうどいいというのに、高畑先生は優しいばかりで苦になるかもしれないがね」

「俺には到底出来ん事だな。応援するよ」

 

 息まくガンドルフィーニに笑いかけたフォックスは、やはり教師というものと自分は程遠い物だと再認識する。とはいえ、それなりの接点を持ち始めた相手をこうして知っていくのは悪くないとも思っていた。

 そこに、タカミチがひょっこりと顔を出す。担当数は月光の処理が終わったのか、彼は幾ばくか疲労しているようだった。

 

「ガンドルフィーニ先生、僕がどうかしましたか?」

「いや、少し我々の魔法について考えていまして」

「ははは、難しいですよね。魔法って」

 

 まったくもって、と答える代わりにガンドルフィーニは眼鏡を押し上げた。丁度その時に葛葉刀子の雷鳴剣が残骸を消し飛ばし、闇夜が一瞬明るくなる。それで役割を思い出した両者は、まだ処理が終わっていない場所へと足を運んだのだった。

 

「フォックス。とにかく君はよくやってくれた。ありがとう」

「ふむ……やはり悪くない、な。残骸を集めるぐらいは出来る。そちらが終わったら人員を割いておけ」

「分かった。……しかし、学園長が何か見つけてくれるといいのだな」

 

 そう願うように見上げた先には、雲の隙間から瞬く星々が広がっている。冬の大三角形が麻帆良を囲むように位置する様子は、暗にこの地をバミューダトライアングルと定めているようでもあった。

 

 

 

 学園長室はそれなりに広く、長の威厳を保つに相応しい雰囲気がある場所だった。だが、今この場に居るのは焦った様子の老人が一人。集められた資料はひっくり返され、あたりに無造作に散らばっている。その中でピタリ、と彼の動きは止まる。

 

「特徴は牛のような鳴き声。いささか証拠不十分じゃが、検討の余地はあろうて。……のう? 彦星や」

 

 彼の手に握られているのは、今期とは正反対の季節を表す夏の大三角形の図形。その川を挟んだ一方にある彦星についての資料だった。伝承と成り、いまでは七月七日の一日だけしか思い人に会えぬ不遇の恋を遂げた男。

 その細部にわたる事実は、この懐かしげに笑う妖しの法を使う翁だけが知っていた。

 

「RAYくん、君の覚悟は見せて貰った。ようこそ麻帆良へ」

「≪学園長≫」

「ああ。だが解決は待たねばならぬようじゃな。君の契約に関しては問題はないが、こ奴については手伝ってもらうことになるかもしれん」

「≪それぐらいでよければ。私たちはもう同じ仲間≫」

「……ふぉっふぉっふぉ。そう言ってくれると嬉しいのう。さて、それでは追加の依頼を頼みたい」

 

 さあ、正式に認め合った「仲間」へと託そうではないか。老人にしてやれることはこれくらいしかできないのだから。その御年から、「老翁」が最もふさわしい彼は、ほがらかに笑う。

 

「ワシの孫と、可愛い付き人へ送る祖父の愛情を、届けてやってくれぬか?」

 

 親と言う存在は、どこまでも子供を愛しているのだから。と、

 




はい、ここまでお疲れさまでした。
やはり二次創作やるからにはしっかりと「創作」の要素があった方がいいですよね。
あ、感想に要望があったので、次回の冒頭にRAYの戦闘入れてみます。

ここまでこの文をかけてきたのは皆様のおかげです。
これからもよろしくお願いいたします。
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