抑止兵器マギア   作:マルペレ

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日常とは、すぐそばに危険が潜んでいるものである。
あなたの隣にいる人も、あなたが通っている場所も。

時既に遅しとして、もし訪れているとしたら?


☮Sorry dialy

「おうおう、やっておるな。どうして中々、勉強熱心じゃの~」

「覗きですか、感心できませんな学園長」

「なぁに、プライベートまで覗くような真似はせんわい」

 

 額を抑えたガンドルフィーニがそう言うと、ふっ、とネギたちがいる場所を映していた映像が消え去って学園長室に明かりが点く。投影の役目を終えたMk.Ⅱは台座の上からジャンプすると、キュルキュルとローラーを回しながらフォックスの後ろに回り込んで姿を消した。言わずと知れたステルス迷彩である。

 一連の茶番が終わった事を確認すると、フォックスが口を開く。

 

「それで、そっちでは何か進展は?」

「何もありゃせんよ。魔法の痕跡を追おうとしてもこのザマじゃ」

「これは…また」

 

 呆れるように学園長が取り出したのは、粉々に破壊された式神の紙片。人型の姿をしている筈のそれは、胴のあたりをばっさりと断ち切られている、無残な姿となって返ってきたという事は迎撃されたのだろう。これを最後に魔力の名残も消えてしもうた、と続けた近右衛門にガンドルフィーニはガックリと肩を落とす。フォックスは、溜息にとどまっていたが。

 

「最近“こちら”で見かけないが、高畑はどこへ遣った?」

「次期三年生の修学旅行先の下見じゃよ。確かに彼は魔法先生として優秀じゃが、教員としての仕事もして貰わねばならんのでな」

「悠長な……」

「もどかしいのは分かるが、フォックス。気を張り詰め続ける必要も無いだろう」

「……だが」

 

 絞り出すようなフォックスの声に、無言で首を振るガンドルフィーニ。確かに、手掛かりが消えた今、自分の世界の負の部分を晒すような存在を消したいと願っていても、不可能なのは明白な事実。らしくなく盛り上がった事に謝罪を告げると、続いて近右衛門が話し始めた。

 

「こうなってしまった以上、後手に回るしかない。事態が起こってからの急速な対応措置が必要じゃて。……これはワシが考えておくので、君たちにはしばらくの休暇を課すことにする。二人とも、良くやってくれた」

「…はい。謹んでお受けします」

「ああ……」

 

 下がってよいと言われた二人は、その指示にも従って学園長室から退出した。

 あの襲撃の日から、すでに一ヶ月が経過していた。術者がいたと思われる場所で残留魔力の調査、残骸から何かしらの情報を得る事が出来ないかという試み。試せそうな物はほとんど試してみたが、犯人につながりそうな物は見つからなかった。フォックスは身元がまだ偽造(しっかり)されておらず、麻帆良の外に出ることはできない。ガンドルフィーニも授業や家族の事があって、この地から動く事が出来ない。これらの事から「高畑・T・タカミチ」という人物は麻帆良の外まで調査の手を広げるに最適な人物だったのだが、彼自身にも致命的な欠陥がある。それは、魔法詠唱が出来ないという魔法使いに有るまじき点だった。

 つまり、普通の追跡魔法も何もできない、戦闘に特化した以外は一般人程度の探索能力しかなかったのである。それゆえに、学園長の判断は早かったのだろう。外に出している事をそのままよしとして、修学旅行先――京都の「関西呪術協会」へ渡りをつける。そちら側での犯人の調査協力と、ネギ・スプリングフィールドの訪問を伝えるためだ。

 それらを理解している二人は、高畑と、まだ関係が良いとは言えない関西呪術協会に願いをかけるしかなかった。それぞれが「犯人」を排除したい理由は違えど、それにかける情熱は同じ。彼らに出来ることは、成功を願うのみであるのだから。

 

「此方から身分証明の手続きについて進言しておくよ。君は……最近修行をしていなかったろう? この際だ、桜咲と組んでくると良い。私は、休暇中は籠ることにするさ」

 

 フォックスを連れ、校門で別れる前にガンドルフィーニはそう告げる。

 対する彼は、力強く頷いた。

 

「そうか……時にあたり、力不足があっては高畑に合わせる顔が無くなるか」

「そう言うことだな。それじゃ、また今度」

「ああ」

 

 ガンドルフィーニと別れると、校門から駆けてきたあわただしい集団とすれ違った。中見覚えのある学校の制服を着ていることから察するに、千雨と同じ場所の奴かと頭の片隅に感想が浮き上がった。いずれにせよ、関係ないだろうと思って世界樹前に行こうとしたのだが。

 

「フォックス君か」

「学園長。どうした?」

「いや、2-Aの彼女らを追いかけていての。どっちに行った?」

「駅に向かったようだ」

「すまぬ」

 

 老人と思えぬ軽やかな動きで移動する彼は、仙人の如くふわりふわりと跳ねて行った。視線がその背中を追い、瞳が空を映せばすでに夕暮れの赤が包んでいる。そこで、唐突にガンドルフィーニの言葉を思い出して足はガレージの方に向く。焦り過ぎず、気を張り詰め続けるな。早い話が、肩の力を抜いて過ごしてみてはどうかと言いたかったのだろう。

 そんな日も、悪くないかもしれない。そんな思いのままに、修行の日を遅らせる予定を作るフォックスであった。

 

 

 

『≪お帰りなさい≫』

 

 ガレージに戻ると、実に4日ぶりに聞くRAYの声が彼を出迎えた。小さく帰った、告げる彼はそのままエヴァンジェリンによって持ち込まれたソファに寄りかかって力を抜いた。

 

『≪珍しいわ。あなたがそんな姿をさらすなんて≫』

「俺も道具ではない。疲労もすれば、寝ころびたくもなる」

『≪ガンドルフィーニ先生の言葉がそんなに響いてるのね? まあ、良い機会だと思って休養を取りなさい≫』

「筒抜けか。つくづく自由は無いように思えるな、ナノマシンを入れられてからは」

『≪私も記録の一部を抜粋してるだけ。貴方たちの経験は全てデータになっているのは…否定しないけど≫』

 

 やはりな、と呟いた彼は腕で顔を覆った。

 遥か上に存在する天井を見つめると、己の存在が小さく見えて息を吐く。RAYもそんな様子の彼を気遣って、無言でそこに佇んでいた。作動していない工場の寂しさが、辺りにシンと響き渡る。無音の世界に、フォックスはゆっくりと目を閉じた。

 

「あいつらもとことん常識はずれだよなぁ」

「貴様が言える立場でもないだろう……ん?」

 

 彼が眠りについてすぐ、入口の扉がスライドして千雨とエヴァンジェリンが入って来た。

 

『≪いらっしゃい。彼が寝ているから、静かにしてほしい≫』

 

 フォックスが精神、肉体共に疲労困憊で眠っているのを邪魔したくないRAYが小声で告げると、二人は了解、と彼が寝ている場所とは遠い場所で腰を落ち着けた。持っていた荷物はそっと机に置き、なるべく音が響かないように小声で会話をする。

 

「アイツ、久々に見たと思ったら……」

「特務、か。十中八九、1月のアレ関係だろう」

「原因の月光はRAYやフォックスのいた世界(ところ)だしなぁ。躍起になるのも仕方ないんじゃねえか? 今はああして寝てるみたいだけどよ」

「違う戦争の歴史を紡いだ世界、か。興味深いが行きたくはないな」

『≪私も戻りたくは無いわ。戦争経済は終わっても、人の欲は変わらなかったから≫』

「お、Mk.Ⅱからか…ま、そうにしても人間なんて単純だよ。欲があればすぐに飛びつく」

 

 フォックスの元に預けていたMk.Ⅱが二人に近づき、大声になってしまうRAY本体の代理として会話に混ざった。茶々丸もそうだが、長い年月を生きてきた故か、こういった技術の進歩とは凄まじい物であるとエヴァンジェリンが零す。その言葉に千雨は皮肉を込めて、此処までの技術力は麻帆良(ここ)しかないだろ。と返したのだが。

 

「私にとって、時が過ぎるという事はそれこそ“あっという間”だったさ。少し瞼を閉じれば、馬が荷物を引いていた中世の景色が映されるくらい、な」

「……真祖の吸血鬼って言ったか。わりい」

「気にするな。良くも悪くも時代の風刺には慣れている。決して、受け入れられる世代なぞなかったのだからな」

 

 見た目は十歳の女児であっても、本質は600年の時を生きる吸血鬼。そんな、エヴァンジェリンの諦めたように笑った姿に、千雨は胸の奥が痛んだような気がした。

 空気が暗く淀んできたその時、Mk.Ⅱのケーブル先から電気ショックの音が二人の耳元で炸裂する。その衝撃で、二人はハッと意識を取り戻した。

 

『≪辛気臭い話は置いておきなさい。明日は終了式なんだから≫』

「ようやく、また三年か。今度こそ卒業できればいいのだがな」

「だからそう言うのは……まぁいいか。私も居るんだ、終業式くらいは引きずってでも連れてってやるよ。“卒業する”と呪いが解けるんだろ?」

「……おお、その手があったか」

 

 ぽん、と手をついて驚くエヴァンジェリンに、溜息の音がハモった。

 

『≪一般視点の理解者がいると、魔法使いの考え方を簡単に塗り替えしそう。もっとも、私たちは貴女の本当の理解者には程遠いでしょうけど≫』

「駄弁る仲間がいるだけ、例年よりマシかもしれんな……しかし、本当に卒業か。式の日は体調不良で絶対に行けなかったからな。ふむ、長谷川。今年は頼んだぞ」

「余計なこと言ったなぁ……また私かよ」

 

 苦労人はいつも貴女ね。と三人で笑いあった。

 その後もしばらく談笑は続いたが、夜遅くになってくると流石にとどまり続けるわけにもいかず、そこで解散。その帰り際に寝ているフォックスに布をかけ、明日の終了式に備えて帰路に就くのであったとさ。

 

 

 

「おはよーございます、えーと……長谷川さん!」

「ん? あ、ああ……おはよう」

 

 3月25日の終了式の日。さんさんと降り注ぐ太陽光が残寒を打ち消してくれる、丁度良い気候になってくれていた。そんな中で千雨がカバーを教本に変えたCQCの指南書を読んでいると、何人かの生徒を引き連れるような形でネギがすれ違いざまにあいさつを交わしていく。

 発砲音は別として、あまり騒がしいのが好きではない彼女は小さく挨拶を返して彼らを見送った。

 

「元気あり余ってんなぁ。いまさら麻帆良にアレが本当に教師でいいのかっていう突っ込みは入れれねえけど」

「それでも、しっかり口にする辺りは気にしてるんじゃないかい? 長谷川さん」

「ぉおっ!? ……て、龍宮か。おはよう」

「はい、おはよう。ついでだ、一緒に行くかい?」

 

 その道中、何かと銃を扱う者同士で気の合った会話を続けながら、終了式を無事に終えた。その際に改めてネギ・スプリングフィールドの正式採用が発表されたが……まぁ、流石は麻帆良。誰も疑問に思うことなく、全員が祝福する形(拍手しているだけのやる気のない生徒もいたが)で無事に式は終わりを迎えた。

 何とも様々な事があった今学年分のカリキュラムを全て終えた後、教室に戻った2-Aではネギの「学年トップおめでとうパーティー」が開催されることに。当然ながら千雨は目の前で辞退をして抜けると決意。ここしばらくRAYもフォックスもエヴァンジェリンも忙しいので、さっさと家に帰ってアイドル活動(NET)を弾けるまでするつもりだったからだ。

 

「…ちょっと、頭が痛いので私はこれで帰宅します」

 

 まぁ、その理由づけにはちょっとした風刺も織り交ぜていたのだが。

 

 

 

 靴を脱ぎ換え、最近購入した実用性に重きを置いたランニングシューズを足につける。ここ一年で運動も好きになったものだと思いながら、外の空気を肺いっぱいに吸い込んだ。

 

「ふぅ、やっと終わった」

 

 校門を抜けると、後は寮に向かって足を進めるのみ。そんな事を考えながら、片っ苦しいおとなしい敬語キャラを腕のストレッチと共に脱ぎ捨てた千雨は足早にその場を立ち去ろうとする。だが、目立つ形で辞退したのが気に留まったのだろう。

 

「は…長谷川さ~~~ん!」

(ああ、こうなったか)

 

 終始身につけて離さない巨大な包帯ぐるぐる巻きの杖を振りまわして、アピールするようにネギが走ってきていた。皮肉気な台詞も、あの場では分かりやすい体調不良への訴えになったか、と額に手を当ててため息交じりに失態を吐き出す。次からは、迂闊な応答をしないよう気をつけよう、と。それを覚えていられるかは別として。

 

「どうしました?」

「あ、あの。さっき頭痛がするって言っていたので…これを」

「………」

「ず、頭痛薬です。すごく効くので、いかがかと思って…」

「それはどうも。ですが、少し深呼吸して落ちついたのでもう大丈夫ですよ」

「へ、あ、あの。そうですか……ところで、パーティーは……」

 

 生徒をいたわる気持ちで、抜けた理由そのものには気づかなかったということだろう。その辺りの気遣いはやはり子供だなぁ、と千雨はそんな事を思う。

 

「騒がしいのが余り好きではないので。それでは、私はこれで」

「あ」

 

 しゅぴっ、と片手をあげてその場を去る。最初は早歩き程度だったが、曲がり角を通った瞬間に全力ダッシュ。多少疲れが出るだろうが、今は目の前に待ち構える至福の時を手にすることが先決であった。

 そして、寮の正面まで来ると息を吐いて呼吸を落ち着ける。深呼吸を三間ほど繰り返せば後はナノマシンが息を整えてくれた。そして、ウキウキ気分でドアに手をかけた。

 その時―――背後に、何かの気配が……

 

「は、長谷川さ~ん! 待ってくださ~い!!」

「何で追いかけて来てるんだよ……」

 

 いや、全力ダッシュなどしたら頭痛再発とか、そんな危惧もあったかもしれないし、子供ゆえに(ほんの少しとはいえ)知り合いが近くに居ないとそれなりに不安なのかもしれない。ならばクラスの方へ行け、と言いたかったが、会話をすると引きずり込まれる気がした。

 

「ハァ…ハァ…は、長谷川さん?」

 

 しょうがない。そんな事を思いつつ、寮の自分の部屋まで直行。後ろの方で何やら言っている教師を放置し、しっかりと鍵をかけて部屋に入った。多少強引な形で仔月光(チェーン)を取りつけたので、魔法を使ってもそう簡単に開きはしないだろう。

 

「………くすっ」

 

 さぁ、始めよう。これが私たちの―――理想郷(ユートピア)である!!

 

 

 

「あ、あれ? 開かない……何で?」

 

 一方、引きこもりの親の様な状態になっていたネギは、訳も分からず混乱していた。

 最早勢いそのままで千雨宅に侵入しかけていたのだが、鍵がかけられていると分かるとおなじみの杖を使って解錠(アンロック)の魔法をかけた。手ごたえを感じたのでそのまま入ろうとしたが、開いている筈のドアはピクリとも動かず、そのまま額を強打。漫画であるなら、患部にはでっかい絆創膏が張り付いていたほどの衝撃だった。

 疑問をそのままにもう一度アンロックしたが、また鍵の開く音がしただけでドアは動かずじまい。向こうから取っ手ごと掴んで固定している三体の仔月光がいるので、当然ながら子供の力で開けることなど不可能。故に、事実を知らない彼は、何度かの試行錯誤の後に呆然とドアの前に立ち尽くしているのだった。

 

「ネギセンセー! あ、いたいた!」

「バカネギ、あんたどうしたのよこんな所で……」

「アスナさん、朝倉さん!」

 

 そんな彼を見つけたのが二人の生徒。パーティーにいつまでたっても現れない主役を追って、此処まで駆けつけてきたのだ。情報筋は朝倉和美の仕事だろう、ということで彼女も担ぎ出されたのだが、ある意味理由を知っている彼女はすぐさま此方に足を向け、明日菜を連れて此処までやって来たという事。

 それはさておき、ネギが二人に事情を説明すると、和美は携帯を取り出してちょっと待ってて、とダイヤルコール。ありふれた呼び出しコールが数回なった後、その相手は電話をとったようだ。

 

『≪こちらHQ。どうした、緊急事態か…?≫』

「ああ、今回はそう言うのじゃなくて」

 

 厳格な声が通話先から聞こえたが、和美が砕けた口調で話すと、なんだ。と返ってくる。

 

『≪なら……ああ、そう言う…………≫』

「そうそう、今日くらいは良いんじゃない?」

『≪つっても、更新と“こっちのみんな”がなぁ≫』

「どうせ見てるのなんて、もてない男や汚いオッサンばっかりだって」

『≪そーゆー夢の無い事言うなっての。まぁ、仕方ないか。まだいるのか?≫』

「あ、代わる?」

『≪いや、いい≫』

 

 ちょっと、裏の方でも作業があるので今日の参加は無理そうだ、と千雨が話せば和美は雰囲気を一変させる。だがそれもつかの間、いつもの態度に戻るとそれじゃ無理だね、と返して通話を切った。

 そわそわしている話題の教師に振り返ると、駄目だった、と伝えた。

 

「どうして…」

「女性には秘密があるものなの。英国紳士にはレディーを気遣う心がないのかな?」

「あうう……それも、そうですね…」

「千雨ちゃんもやむにやまれぬ事情があるわけだし、諦めも肝心だよ~」

 

 それから、和美は言葉巧みにネギを誘導して、千雨を追わせる気力を無くさせた。そうして思考の海に陥ったネギを明日菜が担いだ時、自分のペースで歩くから先に行けという旨を彼女に伝え、とんでもない速さで走って行った明日菜を、彼女もまたゆっくりと追い始めた。

 おもむろに先ほどの携帯を取り出すと、違う番号プッシュ。コールが鳴るかならないかの短時間で、相手は通話をとったようだ。

 

「……とりあえず、これで良いんでしょ?」

『≪ああ。今チサメの部屋でやっている事が先ほどの面子に知られると、無駄な騒ぎを起こしかねない。いや、騒ぎになることは明白だっただろう≫』

「相変わらずの保護者だね。それとも、RAYさんの御達しでもあるの? …おっと、詮索はしない方が良いんだったね」

『≪……本心か。あんたも随分と正直な奴だ≫』

「それで分かる貴方の方が凄いと思うけど? フォックスさん」

『≪まぁいい。切るぞ≫』

「はいは~い。データバンク以上の情報は私にいつでもどうぞ」

 

 HLDのボタンを押すと、先ほどまで自分を覆っていた圧迫感が消えた。これにも随分慣れた物だと思いながら、改めて請け負った自分の仕事の重さにため息が出る。

 

「だめだめ。パーティーなんだから明るく行かなきゃね」

 

 両頬にパシッ、と気合を注入。これから騒がしくなるであろう……というか、もうすでに騒がしくなっている裏側の芝生に向けて足を進めるのであった。

 

 朝倉和美。フォックスと出会ったあの日以来、RAY側の日常系情報提供者となり、端末型メタルギアMk.Ⅳを所持している普通の女子学生。主な役割は、RAY関係の秘密に近づく一般人と、その可能性がある麻帆良人物の身元割り出しだ。処理に関してはフォックスが実動部隊。

 追記・RAYは知っていても、魔法は知らない。給金は結構いいらしい。

 

 

 

『≪また無茶をしたな。おかげで彼女に殺気を向ける羽目になった≫』

「良いって。アイツも役はしっかりこなしてるし、引きどころだって弁えてる」

『≪…存外にドライな性格をしている。それも、ナノマシンを打った影響か?≫』

「私はそれなりに冷めてたさ。今はちょっと過激なだけで」

 

 よく言う。とナノマシン通信の相手は失笑。そんな反応を聞いて、千雨は感情表現も豊かになって来たんだな、という感想をフォックスに抱いた。口にはしない。不機嫌な姿を見るのも面倒だから。

 

「起きたと思ったら、また仕事か……休めよな? 体もナノマシンで抑えてるだけで不安定なんだろ」

『≪その言葉で十分だ。分かっている≫』

 

 まったく、と自分をいたわらないフォックスに対して、蓬莱凸輝夜な千雨は何度目かも分からない溜息を増やした。彼女が思うに、どうにもフォックスは戦場を駆けまわっていたころの我武者羅さが抜けていない。隙あらば鍛錬、仕事、監視。昨日のように寝ている姿は、本当に貴重なのだから。

 

「今度、学園長から薬でも貰うか…?」

 

 当然、それは魔法薬をという発想だったのだが、不安定な体は正にその薬物漬けだったからという理由を思い出して考えを振り払う。ともすれば、RAYに頼んで治療用のナノマシンを大量投与してあの「ヴァンプ」とか言う奴と同じ状態にしてやればいいのではないか、などと言う事を延々と考えているのであった。

 

 

 

『≪チサメ、これ以上の投与は……いえ、面白いかもしれない≫』

 

 今日もまた、平和である。

 




いつの間にか後付け設定のオンパレード。
気分で設定考えてるから仕方ありませんね。活用はするけども。三段階で。

そろそろエヴァンジェリン編も近くなってきたころ。戦闘はちょくちょく入れていきます。
ドンドン戦い方が外道に染まっていく千雨を書いていけたらなぁ、なんて。
あ、いつもはいい子ですよ? 戦いのときは自分の命が最優先になるだけで。

……いや、日常がなかなか思いつけず、台詞が独り歩きしてただけです。ごめんなさい。
これから少しずつ更新早めていきますね。

それでは、お疲れさまでした。
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