体験版、皆様はやってみたでしょうか? いろんな意味で「キレ」てましたよ。
いまさらですが補足
「」←通常会話
『』←電子音声(RAYの声や放送、拡声器を使ったときなど)
≪≫←通信音声や念話。声に出さない会話。
「結局、日が昇るまで敵はいない、か」
とんだ無駄足になったと思いながらも四時を指す電波時計の時刻を拾いながら取りつけていた銃器を片付ける。銃に太陽の光があたった際に発生する反射光が見られれば、早朝から動き始めている人に見つかってしまうからでもあるが、正直なところは役目を終えたからという理由が最も高い。
全てを「一介の中学生」としての自分に戻して部屋に戻ってくると、彼女は誰もが寝息を立てていることに配慮して忍び足で自分の布団へと潜り込んだ。これから三時間ほどしかないが、睡眠時間を取らなくては体の調子にも問題も出るだろうからだ。
「……ん?」
ふと、その枕の横に見慣れない手に収まる程度の機械が置かれているのに気がつく。その隣には、読んでほしいとばかりに添えられたソリッドアイに入る大きさのSDカードも。敵がこんなものを使う筈がないと分かっているからこそ、何の疑いもなくそれをソリッドアイに挿入して情報を閲覧してみる。すると、そこには――
「ご無事なようで何よりです。織姫の捕縛、お疲れさまでした」
「何度も訪ねることになって済まない、時間は大丈夫なのか?」
「ええ。書類などは全て片づいていますから、後は戦いの現場指揮で十分ですよ。ところで、そちらが例の……」
RAYを大文字山に置いたまま呪術協会に到着して、すぐに彼らは応接室に通された。
最初に詠春が視線を移したのは、長い黒髪を靡かせる大和撫子の美しい女性。フォックスからある程度の報を受けてはいたが、解析班に一時間ほど回していたところ、改めて洗脳の様な魔力の余波などが検出されたと言う事も聞いている。だが、そんな洗脳の中に会ってもこうして歴とした自我を取り戻したその強靭な意志に、少なからずフォックスは警戒していた。洗脳されていた者が意志を強く持っていると言う事は、つまりそのまま此方を騙しに来たという口実にも使えるからだ。
口に出さずにナノマシン通信で詠春に伝えてはいるが、一体どこまで話しに信憑性があるものなのか……。
「はい、元の名は忘れさせられたので、織姫とお呼びください」
此方の思惑など露知らずと言った風に丁寧に答える彼女の姿を見る限り、その怪しさは鰻登りなことに気付いているのだろうか? 洗脳というのはあくまで本当に掛けただけのフェイクで、此方に来る前の掛けただけではないのかと言う疑いを見抜かなければ、本当に安心できる要素など皆無。だが、彼女の顔を見ているだけなら、被害者のように見えることもまた真理。
詠春は決してその動向を見過ごさないようにと、織姫の瞳を覗き込んで質問を始めた。
「では、織姫さん。過激派…いえ、反逆者の事を詳しく聞かせていただけますね?」
「此方の知る限りはお教えいたします」
「では、まずは名前と構成人数を。なるべく特徴を交えた上で言って欲しい」
「魔力」封じの呪符が貼られ、強化外骨格を着たままのフォックスと太いワイヤーで繋がれた彼女の状態は、土壇場で長の詠春を殺すような真似が出来ないようにする牽制のため。
高周波ブレードを手に握ったままのフォックスを隣にしながら、彼女は一度目を深く瞑り、一つずつ、間違えの無いようにと口を開いた。
「まず人数から言っておきますと、
「特徴については有力なものが多いですね。しかし、千草君でしたか…」
「心当たりがあるのか?」
「先の大戦で両親が他界し、それを西洋魔法使いに殺されたと思っていた子でした。数年前からずっと音沙汰もない者は多くいるのですが…まさか、彼女とは」
「この時期を狙ったと言う事は…」
「復讐、でございましたね」
フォックスと詠春の会話に織姫が割って入る。そして天ヶ崎千草の反旗を立てるに至った動悸はそれで間違いないと裏付けを取るように語った。同時に、彼女のいた拠点では相手がスプリングフィールドと言うビッグネームを倒せる事を大きな起点と思うと同時に、子供を相手にするのは少しばかり忍びなく思っていたらしいと言う事も。
「性根は悪くなりきれない子ですからね。おそらく彼女を心配していた小太郎と言う子も、心からの悪人ではないのでしょう。…ですが、気になるのは月詠とフェイトと言う少年の事です」
「フェイトという少年は俺が腕を切り飛ばしておいたが…確かに、人形だったな。アレは」
「その際に腕をくっつけたのが私なのですよ。感謝の一つも言えない、随分と失礼な面も見えたようでしたが」
「…そして月詠は―――」
「神鳴流の恥…いえ、卸せなかった私達が悪いのでしょう。彼女は、戦いを求め、強い者を求めるその道中で人を殺しています。ですから、破門の末に追放処分がおくられていましたが…」
「大方、強者がいると睨んだか」
その気持ちは、フォックスにもよく分かる。生の充実をくれる死合いの末、戦っている間の高揚感。それらは忘れられぬほどに血を滾らせ、BIGBOSSと出会ってから自覚した本名、「フランク・イェーガー」と言う個人を認識する事が出来る唯一の方法だったからだ。だが、それも弁えなければ彼のもとで働く事は出来ず、そして簡単に切り捨てられるのは容易に想像がつく。
月詠という人物は、その匙加減を気にすることなく戦い続けた愚か者だ。誰しも構わずに斬っている戦闘狂は、その他大勢の価値観から判断され、排除されるに足る理由を作ることになってしまうのだから。
「自制心を持たない者は破滅する、だろうな」
フォックスは月詠に関してはそんな判断を下した。刹那の戦闘記録をRAYも参照していたが、同じような事を思っているらしい。
「あの彦星についてもそれは言える事。しかし、私から見た彼女はどうにも危ういバランスの上に成り立っているようにも見えておりました。戦いこそ好むようですが、何の縁があるのやら…天ヶ崎千草には従っているようでして」
「飼い主のついた狂犬ですか……」
「おや、言い得て妙なことをおっしゃる」
そうして敵の戦力について織姫から粗方の事を聞きだすと、聞いた事をとりあえずは纏めておこうと詠春が机に向かう。が、既に筆を持った仔月光が綺麗にまとめてあるメモを作っていたらしい。仔月光はカタカタと硬質な音を立てながら机を降りてくると、書き留めたメモを詠春に渡し、オープンチャンネルでRAYの声を媒介し始めた。
『≪こちらからアプローチを掛けてみたけど、彼女は嘘が言っている様子はないわね。人が嘘をつくときは瞳に揺れが生じたり、何処となく個人の癖が分かる。だけど彼女の場合は偶にそんな動作は見受けられたものの、それをフェイクとして考えてもまだ信用に値するわ≫』
「RAY君。それは、科学的な観点での話かい?」
『≪それもあるわ。でも、最も大きな決め手は私の元の人格。ザ・ボスの慧眼に基づいた思考判断に他ならない≫』
「成程。……ッ」
フォックスが高周波ブレードを抜き放つと、流れるような動作で織姫を縛る縄や魔封の呪符を切り裂き、返す手で彼女の喉元に向けて勢いよく刀を振りぬいた。彼女の首の皮を一枚切り裂いたところで刃は寸止めされ、垂れた血が刀身に付着すると同時に常に振動を続けることで生じた熱で血糊を吹き飛ばしながら蒸発する。そのまま焼印のように彼女の首に押し当てて火傷で裂傷を塞ぐと、彼は今度こそ刀を仕舞い込んだ。
「フォックス! 君は何を―――」
「試した。まずは自由を縛る物をぬぐいさって、コイツの反応速度でも十分に魔力糸を取り出せる間を作った後に攻撃してみたが……」
『≪お眼鏡に適った、と言う事なのね?≫』
RAYの問いかけにそうだと答える。
「織姫は敢えて抵抗を取らなかった。殺される気がない、などと考えるような甘い殺気は叩きつけてはいない。だが、それでも受け入れたと言う事はつまり―――」
「私なりの信頼の現れです。…ところでお狐様、もし、
「この床に赤いペンキが撒かれる。それだけだ」
事もなげに言い放つ彼の眼は、どのように見ても本気だった。長期任務や戦争などで疑心暗鬼に陥る事もなく確実に任務をこなす為には、例え末端であっても成功率を上げるために「士気」を上げる必要がある。それだけで戦況はいくらでも変わってくると言う、人間特有の不確定要素を重視する事が出来なければ、フォックスがFOXの部隊称を持つ事など無かっただろう。
「…とにかく、これで貴女は立場がはっきりしましたね」
「はい、そのようで」
「貴女は操られていたとしてもその間の記憶があり、謀反を企てた者に加担していたという事実があります。ですが有用な情報源として協力した事も含め、数週間は呪術協会での“保護”と言う処置を取らせて頂きたいと思います。その能力は、私達に必要なものですから」
「…はい」
「フォックス、最終的な目的は聞きだしてから…ログ、だったかい? それに残しておくようにしておけばいいんですね?」
「仔月光の前で内容を言って、ログ送信と言えば入力されるだろうな」
「分かりました。…誰か、彼女を!」
話がまとまったようだと皆が感じ取ると、仔月光は目立たない場所へオクトカムで紛れ込み、フォックスはブレードを仕舞って立ちあがった。それと同時に詠春の部下が二人、襖の向こうから現れて織姫を連れて行った。おそらくは独房のような場所に連れて行き“保護”するのだろう。下手に本部で自由にさせるより、相手が織姫を連れ戻そうとした場合は其方のほうが本部にとって安全だからである。
人権を無視したような行いが平然と日本で行われているが、此処は治外法権の働く「裏の世界」。織姫も、苦汁をのむ決断を下した詠春もそれを分かった上でこうした判断を下した。だが、長としての判断で言うならやはり甘い。
それでも殺すと言う手段を用いなかったにもかかわらず、部下がなにも不満そうな顔をしてなかったのは、呪術協会と言う組織の甘さ、そして優しさが表れているのだろうか。
フォックスは自分が所属していた軍の事を思い出しては、此方の世界と照らし合わせては少しだけ微笑で顔をほころばせる。―――面白い、と。
「甘さが美徳、か」
―――まるでファンタジーじゃないか。
魔法と言うものが実在するこの世界で、いまさら何を思っているのやら。そんな自嘲を携えたまま、話しに出てきていた白髪の少年についても彼は思い出していた。確かにあの少年は何の感情の揺れも感じなかったが、油断さえなければガンドルフィーニに匹敵する実力を持っていただろう。
そんな相手と雌雄を決する事が出来る時こそ、甘美なひと時を過ごす事が出来るかもしれない。そんな淡い思いを心に抱き、すぐさま望みを己の中で切り捨てる。任務の達成が出来なければフォックスと言う男になる事は出来ず、戦いを楽しむのはその任務に含まれていた最低限の時のみで十分。時を構わず戦うような事になれば、それは狐ではない。ただの飢えた獣だ。
彼はすぐさまステルス迷彩で自分を隠すと、少し名残惜しさを込めて呪術協会本部を振りかえった。悠然とそびえる中で、今も見知った顔があの中でこの事態を収めるために奔走しているのだろう。物量戦以外は神鳴流剣士、呪術師の要請を呼ぶ事が出来ないが、実力不足の者を向かわせたとしても犠牲が増えるばかりで得策ではない。
ただ、心強い仲間もいる事で孤独な戦いを続けていたあのころとは違うのであると強く実感する事が出来た。
≪コールサイン、こちらFOX1。修学旅行の三日目、私らは自由行動に入った。サイファーからの映像だとフェイクの“親書”を届けるためにネギ・スプリングフィールドがそっちに向かったトコだな≫
「…なるほど、無線で伝えておく。其方の動きはどうだ?」
≪近衛と子供先生が別れて行動してやがんな。…そうだRAY、仔月光は回せるか?≫
≪残念だけど、白昼堂々オクトカムしか使えない仔月光は飛ばせない。ステルス迷彩を積んだサイファーの制御くらいしか、今できる事は……≫
「それで十分だ。FOX1は……連絡のつく奴はいないか」
≪朝倉が近衛側に。後で連絡取ってみる≫
「了解、余裕があればお前もそっちに向かってくれ。いざとなれば人前で戦う事も辞さない覚悟でな」
≪……了解≫
≪控えは必要かしら。こちらも起動準備に入るから、夜までのサポートは無いと思って≫
「了解」
本格的に忙しくなってきた。これから戦う事も多くなるだろうが、だからこそフォックスにとってやりがいのある任務だと言う実感を与えてくれる。生きる実感は、楽しみとなって彼の心を覆う。高畑とガンドルフィーニの頑張りは、ここでようやく発揮されているのかもしれない。
彼のいた場所の景色が一瞬歪み、また何事もなかったかのように収まった。
「……了解」
白昼堂々、その言葉が今か今かと待ち望んだ物でもあるものの、遂に来てしまったかと言う様々な感情が渦巻いてきた。しかし、そんな葛藤に溺れているような時間は無い。
フォックスたちの会話のログを見て彦星と言う男の言動を考察してみたが、その場合この3-Aには「織姫」となる候補の人材がいることは間違いない。どのような基準で選んでいるかは分からないが、誰しもが「関係者」になった時には凄まじい才能を秘めているとも言えよう。そんな彼女たちを彦星と言う男に手篭めにされ、術式を打ち込まれてしまった日は、悔みに悔やみきれない。
現在時刻は8時40分、まだ全員が完全に別行動を取っていない今こそ、伝えるべきであろう。そんな判断を下し、唯一のネギたちにくっついていきそうな程行動的な協力者の彼女へ向き直った。
「朝倉」
「どしたの、千雨ちゃん…?」
近くにいた朝倉に話しかけると、まだ昨日の事を少しは引きずっているのか、決して優れているとは言えない顔色で彼女の呼びかけに応じた。千雨は一旦しゃきっとしろと言う叱責を加えてから彼女の聞く体勢を整えさせ、この日の予定に関してナノマシン経由で話を伝える。
≪今日が正念場だ。傲慢そうな男が現れた場合は真っ先に伝えろ。≫
≪……ソイツが敵の頭領?≫
≪いや、だが最悪の男だ。詳しくはこのログ見てみろ≫
人物のデータを引っ張りだして朝倉に提示してみれば、彼女の顔は更に青くなる。まぁ、現実的に考えてファンタジーな世界なのだから、人が考え付く様な裏の顔が合ってもおかしくない。それでも現実に存在していると知ったからか、彼女は更に気を引き締めているようにも見えた。
≪…千雨ちゃんは、どう動くの?≫
≪近衛を追跡する。もう一介の中学生としての行動はできそうにもない≫
≪そっか……一緒なのは心強いけど、死なないでよね≫
≪当たり前だ。まだまだホームページに乗せたいもんが残ってんだからな≫
こんな所で死ぬ気など更々持ち合わせてはいないが、そんな冗談で場を和ませる必要があるほどに今回は危険だ。もっともバラけて行動する三日目、一体何が起こるのかは分からないが、用心するに越したことはない。結局は敵が現れないまま夜明けを過ごした千雨も、寝る事の無いようにナノマシンで体を最善に保ち続けているが、本当に大きな壁に出くわした際は抵抗する事さえできないかもしれないのだ。
「まぁいざとなったら狐が助けてくれるだろ」
「だったら最高だけどねー」
そうならないためにも、無難な私服の下にはいざという時のための軽装甲を違和感が出ない程度に付けている。フォックスのように強化外骨格でも着る事が出来れば様々な不安はぬぐい去る事ができるだろうが、アレを着たところで元の体が収縮する筋肉補助の限度や素早く動いた際にかかるGに耐えきる事が出来なければ内部で破裂してしまうだろう。
朝倉達はシネマ村に向かうと言っていたので、ずっと話しこむ訳にもいかずにすぐにその場で別れることにした。本来なら千雨も何処か適当な場所で三日目を過ごしたいものだが、そうする訳にもいかないのが辛い所。
「桜咲、一緒にいいか?」
「長谷川さん……」
「……後でお前にもログ送っとく。見といてくれ」
「了解しました。…昨夜は、なにを?」
「気付いてたのか、私は索敵を―――」
「長谷川さん、ご一緒するんですか?」
「っ、ネギ先生」
このまま空気と等しい感覚で列に混ざろうと思っていたが、やはり普段は人とつるんだ所を見た事がない千雨がいる事は、ネギの興味を引くには十分な効果があったらしい。
「まぁ、そう言う事になる。チョイと今回の“事”に関しても、色々する事があるんでな」
「長谷川さんがいるなら心強いんですけど…どうしてこのタイミングで―――」
「それ以上は、まぁ桜咲と話しててくれ。…つーことで、私も付いていきたいんだが、いいか?」
他にいた者たちに軽く聞いてみると、是との回答が返ってきた。堂々と作戦遂行のために紛れ込む事は人付き合いの少ない彼女にとって大変なことになるだろうが、ここで交流を築いておけば、いざという時に逃がす為の指令を聞いてもらいやすくなると踏んだ。
人の心がそんな簡単に揺り動いてくれる筈もないだろうが、と言う可能性も十分考慮はしているのだが。
そうして出発した一行は、嵐山周辺から練り歩く事に決めたようだ。各々が親しい者と話している中、千雨だけはグループの中でどこか浮足立って輪に溶け込めていないようにも見える。一応話しかけようと数人は意気込んでみたのだが、いざ交流をほとんどしていなかった彼女を相手にしようとすると、共感できそうな話題も見つからなかったから、というのが主な理由だろう。
だが、実際のところは全く違う。ナノマシンの補助もあっての事だが、木乃香と会話しながら無線を開いている刹那と、ずっと今回の事について話しこんでいたのだ。
≪…それで、どうだ?≫
≪お嬢様に会わせる訳にはいきませんね。お嬢様は強大な魔法の才能を秘めているから、狙われる理由としては十分。“織姫”として襲われる可能性は考慮に入れておくべきでしょう≫
≪しかし、ついさっき入ってきた情報は“鬼神の復活”、そして制御してしまう、か≫
≪その時の強大な魔力を狙われていたと言う事ですか。それなら、あの切り捨てた女の言っていた“人形にする”という言葉にも話しがつく…!≫
刹那はそうして一瞬怒りを滾らせるが、上がり過ぎた感情を抑えるためにナノマシンがドーパミン等を分泌して彼女を正常な思考に引き戻す。少しばかり興奮し過ぎてしまったようだと我を改めると、表面上は少し奇怪な行動をとってしまった事に対して木乃香に何ともないと答えていた。
≪それで、長谷川さんはどうするんですか?≫
≪お前らを見つつ、客観的な視点で離れたところから索敵しておくさ。他のクラスの奴と一緒に行動してると、私の“目”を使う事が出来ないからな≫
「長谷川さんっ」
「…うぉ、ネギ先生?≪すまん、話しはまた後で≫」
一旦刹那と視線を合わせると、彼女はまた木乃香の対応に集中し始めてくれたようだ。あちらは大丈夫そうだと思った彼女は、自分の3分の2ほどしかない身長のネギを前にして、一体どうしたんだと首をかしげて見せた。
「あ、その…一人だったようですから、せっかく付いてきてくれたのに楽しく無かったのかと思って……」
「見てるだけでも十分。気を遣わなくても楽しいんで大丈夫だ」
「そ、そうですか…」
自虐的な意味を持たない微笑を携えて言われてしまえば、ネギも深く言う事は出来ない。本当は明日菜や刹那を交えて今回の裏の騒動について何か言っておきたい事もあったのだが、この場所で言う事は秘匿を破ることにもなるので話しをする場所を伝える事も出来ない。
どうしたものかと全員に相談しようとネギは思ったが、その瞬間にハルナがある事を話しかけた事で頭を打った明日菜に注意をとられ、タイミングを逃してしまった。
そのまま流しに流されてゲームセンターにネギは連れて行かれたのだが、その際に千雨は外で待機し、中に入っていく刹那と目を合わせてから路地裏に駆けこんだ。昭和辺りの年代なら、不良が蔓延っていただろうその場所には当然ながら誰もおらず、その場に入って千雨は服を脱ぎ始めた。
眼鏡を取り外して首を振ると、スルスルと衣擦れの音が響かせる。彼女は脱いだラフな普段着をポーチの中に入れ、中から弾薬を取り付ける事が可能なポケットが幾つもついた野戦服を着こんだ。そしてナノマシンの電波でオンオフが可能なステルス迷彩を予備含めて三機取り付けてから、確かめるように衝撃吸収用のグローブをした手をグー、パーと動かして動作を確かめる。
いつものソリッドアイを装着してステルス迷彩を起動させると、彼女の姿は完全に見えなくなっていた。
(…超の奴、こんな特注品を渡して何がしたいんだか……)
実はこのステルス迷彩、朝に置いてあった超特製の強化されたものだ。同時に添付されていたSDカードの内容によれば、動力には魔力と電力の両方をハイブリッドで使用しているので、電池残量は極端に強化されており三時間はぶっ続けで起動し続ける事が可能である。その他の長所としては、フォックスが使っているものよりも更に処理能力がバージョンアップされているらしく、ステルス特有のちょっとした景色の揺らぎがほとんど分からないという点に加え、持っている武器までも効果範囲に入れる事が出来たとか。
だが、この状況下で使わないと言う選択肢はない。手にはハンドガンとナイフ、そして背中にアサルトライフルAK47を背負うと、ソリッドアイの電源もオンにするのだった。
その瞬間、この路地裏の一部に特異な魔力反応が二つ点灯している事に気付いた。その他二つは一般人のそれと同じだが、おそらくは気を使う事の出来る敵の反応だろうと憶測を付ける。この場で接触する事は困難で危険だが、もしかしたら情報を聞きだせるかもしれないと彼女はその場からゆっくりと忍び寄って行った。
「―――フィールドやて」
「やはり……」
聞こえる位置に着くと、息を殺して聞き取りを始める。
―――スニーキングミッション、スタートだ。
朝の数時間に一話使うって、原作より進行スペース遅い件について。
感想欄にて「REXフラグ」との声が上がっていましたが、その件に関してはお待ちください。
話が進めば、もしかしたら登場するかもしれませんから。いつ出てくるかは、お知らせすることはできないんですけどね。
そうそう、最後あたりの場面で安定の千雨ぼっちとか思った人、もしいたら出てきなさい。先生怒らないから、ちょっと爪剥がしておくだけだから。