これ以上は設定の広げようもないので、ここで切りたいと思います。
その他言い分は後書きにて。
戦いが終わる。まだRAYが動く事で湖が波を立てるが、それ以外は静かな物だった。ひと際明るく見える月の光だけがこの場の光源であり、誰がどこに居るのかを表す、ひと掴みの光。
その闇さえも見通す機械の左目に手をやると、千雨は周囲の魔力反応を調べ始めた。
「…逃げていたフェイト、っつうガキから追撃が来るかと思ったが……周囲に反応は無しか。RAY、どっか壊されてねーか?」
『≪水圧カッターの噴出口が広がったわ。流石に延々と吐き続けると損傷も激しいようね≫』
「その程度なら、良かったよ」
そして、織姫の結界も解かれた今、魔力反応が無いと言う事はフォックス側も戦闘は終了しているのだろう。すぐさまあちらが呼んでいたらしい仔月光にフォックスと彦星の体の回収を命じて、RAYはその場に居た者たちの近くに寄って来た。
間近でメタルギアの存在を改めて目にした彼女らは、その大きさに少し圧倒される。
「あ、あの…ありがとうございます。千雨さんと貴女のおかげで、天ヶ崎千草をこうして助ける事が出来ました」
『≪気にしないで。そもそもは千雨の独断だし、まだ攻撃の意志があるなら千雨もその場で殺していたから。気絶していたのは、運が良かっただけね≫』
「…こ、殺す、ですか」
やはり、命のやり取りについてはまだまだ葛藤があるらしい。その辺りは十分に悩むと良い。そう言うと、千雨は皮膚が少し溶かされてしまっている天ヶ崎を持ちあげ、肩を組んで立ちあがった。幸いにも、天ヶ崎に付着していたスクナの胃液も消滅と共に黄泉に返されたようで、自分が溶かされる心配も無い。
「んじゃ、退路も戦闘でぶっ壊された訳だし、皆コイツの上に乗れ。結構揺れるが、搭乗を考えて設計された兵器だから振動で引っ繰り返る事は無いだろうさ」
「…私は、もう少しお嬢様を寝かせて差し上げたいので…飛ばせて貰います」
「……そーかい」
刹那は羽を広げると、木乃香を両手で抱きかかえながら関西呪術協会本部へと進路を向けた。織姫やネギたちも、RAYの背中に乗って織姫の糸で落ちないように固定されると、そのまま戦場を後にするのだった。
その夜、負傷した敵の天ヶ崎や、極限の疲労がたまったネギたちに更なる試練が訪れていた。それはフェイトが施した、組織全員の石化である。石化の魔法によって物言えぬ石像と化した本部の皆を戻す為に様々な策が考えられたが、明日菜の魔法無効化による効果も当人にしか効果が無いようで、治療する事が出来るかもしれないネギも魔力不足と言う八方ふさがりだった。
「ちょっと、どうすんのよ!? パパッと魔力が回復したりしないの?」
「そ、そんな事言われましても~! 稀代の魔法使いが作ったマジックポーションでも無い限り無理ですよ~!」
「あ、姐さん! それ以上はアニキがぶっ飛んじまうって!!」
そうして石化された物や治療が必要な人物が集められた大広間でコントを繰り広げるネギ一行。一応は場の空気を和らげる事が出来たが、何の解決策にもなっていない。元の流れでは癒しの力を持つと言われる木乃香もその力を発揮した事が無く、ただただ目の前の痛々しい皆の姿に心を痛めるばかりだった。
だが、そうして騒いだ事が原因となったのか、一番重症と言っても過言ではない人物が目を覚まし、むくりと起き上がった。
「おい、フォックス」
「……これを治すのだろう…? ならば……ぐッ」
カラカラ、と青い物体が彼の手から零れおちる。
それはあの彦星への止めを刺した際、ようやく使えるようになった退魔の小刀。
「それは…剣を抜く事が出来たのですね」
「今も抜けるかは知らないが、試す価値はある……」
「フォックス君、それを使うのは私達がやるから、君は―――」
「………」
フォックスは、剛力を使用した事で、全身の筋肉が断裂しかかっていた。その状態は当たり前のことだが回復などしておらず、剣を振ると言った行動をすればたちまちに無理の祟った体からは血が噴き出す事だろう。
だが、彼の眼はそれさえいとわない覚悟だった。最後まで、この関西の協力者として力を振るうつもりらしい。
「……ありがとう」
詠春の止めに掛かった手が彼を支えるように指し伸ばされたのを見て、ボロボロの体を引きずりながら彼は立ちあがった。その際に千雨が拾い直した小刀を受け取ると、両手で小刀の鞘と柄を持ち、ゆっくりと力を入れる。
それは、どこか幻想的な光景だった。
発光する青い文字が刀の刃があるべき場所から噴出し、その勢いはこの大広間の壁をも突き破らんとするもの。だが、実際には何一つ傷を付ける事は無く、ただただ圧倒的な圧力を発しているだけだった。
「これが……薬師寺家の伝説…」
「やはり、また引きぬけるか」
呟き、彼は大振りに一閃を放つ。
横切りに石化した者たちの胴体に突き立てられた法力の刃は、石像を傷つけずにすり抜けて次の石像へと斬りかかる。それら全てに小刀の刃が通り抜けて行った時、ひとりでに鞘が小刀を収めて、フォックスは振りぬいた形のままぐらりと体勢を傾けた。
鈍い音を立てながら倒れ込んだフォックスに、近くに居た織姫が急いで駆け寄って脈を確かめると幸いなことに気絶しただけだと言う判断が下される。その瞬間、大広間は歓声に包まれた。
石化をくらった人々の石が弾け飛び、魔力の残骸となって空気に溶けて行く。解放された人々は石化された直後からの光景から何が起こったのかを理解すると、生きている喜びに隣に居る人物を抱きしめながら狂喜乱舞。その中にはネギのクラスメイトも含まれているが、彼女達は目の前に居る戦いに参加しながら、ボロボロになった友達に抱きついているようだった。
「…少々騒がしいですね。また私の糸で黙らせておきましょうか」
「いや、織姫君。そこまでで落ちついてくれると嬉しい」
「……仕方ありません。私もこの様な光景は嫌いと言う訳でもないので」
そう言って、満更でもないと言った表情を浮かべながら喜ぶ石化の被害者達に笑みを向ける。その横顔は美しく、思わず詠春は彼女の笑みで顔を赤らめてしまうほどだった。
時は過ぎ、朝になった。
安らかな寝息を立てる木乃香の傍で、刹那は自らの持つ白き翼を惜しむ事無く広げ…木乃香を優しく抱擁している。もう、あの様な事が無いように自分の力の証とも言える物で守りたい。そうした彼女の自己満足から来る行為だったが、不思議と嫌悪感よりも安心と充足が満ちていた。
「…ありがとうございました、お嬢様」
一族の掟は既に破ったつもりだった。
あの決死の一撃を放った時、烏族の刹那ではなく桜咲刹那として自分を再確認した。そんな気がしていたが―――やはり変えられないらしい。
少しばかり女々しい気持があるものの、去らねばならない。あまりにも特定の人物に「魔」が集まると、更なる「魔」が寄ってくる。因果はそうして不幸を呼びこんでしまうのだから。
「これで、お別れになります――――っ?」
翼を収納し、長に返す為に夕凪を縁側に立てかけ、そのまま森にまぎれて烏族の元居た場所へ戻ろう。そうした一連の行動を起こそうとした刹那は、後ろから優しく抱きしめられた。
「……このちゃん」
「やっぱり、そう呼んでくれるんやね。…嬉しい」
「これが最後だと…思ったんよ」
「だから本音? 昔と同じ話し方なん?」
「…うん」
ただ、この言葉づかいも今となっては意識しないと出来ない。
近衛木乃香の護衛、桜咲刹那。そうした存在として過ごしてきた日々は、すっかり自分の内面をも変えてしまっていた。
そんな事を考えていたのが分かったのか、木乃香はいじわるっぽい声で言った。
「じゃあ、ウチが次期党首として護衛に最後に命じます」
「……はい」
「せっちゃん……ううん、桜咲刹那はウチの元から居なくならないようにしなさい」
「それ、は……」
「守れん、なんて言わせんよ?」
ぎゅっ、と抱きしめられる力が強くなる。
その暖かな気配に気持ちが緩み、また彼女の純白の翼が姿を見せてしまった。
どうにかして元に戻そうとするが、言われた事と木乃香の行動によって気が動転して、どうにも上手く自分の翼を仕舞う事が出来ない。刹那が慌てていると、木乃香はその翼に顔をうずめてしまった。
「こ、このちゃん!」
「嫌。もうせっちゃんが居なくなるんは嫌! 命令もしたよ、お願いもしたよ。やから、やからお願い。一緒に居って欲しい……!」
「…………」
木乃香の叫びに、刹那は暴れる力を緩めた。
ついに諦めてくれたのかと思った木乃香が腕を緩めると、刹那はその拍子にするりと木乃香から離れてしまう。不意打ちにも近い行動は、自分から去る意思表示だと感じた木乃香が目に涙をためると、彼女の創造に反して、刹那は木乃香と正面から向き直った。
「このちゃん、あの会議の後にウチが言おうとした事覚えてる?」
「……聞かせて」
「うん」
ああ、こんなにも泣かせてしまった。そう思うと罪悪感が胸を締め付けるが、ここで言えるなら言ってしまおう。昨日の夜、最後まで聞かせる事が出来なかった自分の想いを。
「ウチと、一緒に居てくれませんか」
「うん!」
「っ、ごめん、ありがとう……」
刹那の目にも涙が浮かぶ。
再び抱きしめあった二人は、クラスメイトが呼びに来るまでの間、互いを決して放さないよう、より強い絆を確かめるように抱き合っていたのだった。
「今回はありがとうございました。封印の地が必要に無いほど…いえ、完全に両面宿儺を消滅してくれた事、関西呪術協会を代表して心からお礼申し上げます」
『≪受け取らせていただく。だけど……そちらの面目は、機械に及ばなかったという結果になってしまうわよ? 彦星を捕えたのもフォックスで、更に貴方達はネギ・スプリングフィールド一行の力添えがあったからこの事態を治める事が出来た、と≫』
「それに関してはもうどうしようもありませんので、これからの実績で関西呪術協会の株を上げて行くつもりです。それに…彦星には黒幕を聞く必要もあります」
詠春が笑顔と共に告げると、RAYのカメラアイは呪術によって拘束された彦星の姿が映った。一応、フォックスの退魔剣に斬られた事で診察なども受けさせられていたようだが、結果は「一切の魔力反応の消失」。まさしく彼の原動力たる魔が消え去っているようだ。
とはいえ、彼自身の人格や記憶が変わったわけではない。これまでの罪を洗いざらい調べ直す為に、人の精神を操る術に長けた名家に彦星は魔法の研究として引き渡されることになった。その際、研究協力の見返りに記憶の全てを偽りなく報告すると言う制約を科したらしいが、そのあたりはRAYの知るところでは無い。
「天ヶ崎の処分は鬼神に呑まれ、貴方がたに圧倒された事で精神に異常をきたしていました。一般の法律なら精神疾患者は罪に問われませんが、此方としてはメンタルケアを行った後に呪符の開発に努めさせるという形に決まりました。彼女次第で、再び日の目を見る事も出来るでしょうね。……それから、もっとも被害者に近い“織姫”の処遇は、能力が使えると言う点からフォックス派遣のお返しとして麻帆良へ永久派遣。彼女もそれに依存は無いようでしたから、其方の手札として加えても問題はありません」
『≪流石に厳しいわね≫』
「こうでもしなければ、組織でまた甘いと言われてしまいますから。いつの間にか魔法世界のメガロメセンブリアが此方の上部組織として指令を下してくる以上、目を伺いながら雌伏で待ちますよ。…おっと、これ以上は長の書類仕事が待ち構えていますので失礼させて頂きます」
『≪良ければ仔月光も使いなさい。命令権を一時的に其方に設定しておいたわ≫』
「これはこれは、どうもすみません」
そう言うと、暗がりから顔を出した仔月光の何体化を引き連れ書類の待つ部屋へと詠春の姿は消えて行った。その場に立ちつくすRAYが残されるが、彼女は身動き一つすることなく視線をフォックスへと移す。
あの時、もう一度退魔の小刀を抜いてから昏睡したように地面に倒れ伏した彼は、数時間の時がたっても未だ目覚める気配はない。
『≪全身のサイボーグ化も検討しなければならないわね……≫』
彼の纏う強化外骨格は介護などで使われるパワードスーツの類ともいいかえる事が出来るが、今回はその脆さが裏目に出た。ドーピングと骨を人工の物に感想した程度では、まだまだ使い方も未熟な気の力を扱うだけで敵との相打ちが精々だった。だからこそ、脳以外の全てを人工物にする必要がある。必ず、彼もこれには同意するだろう。
だが、問題点はその処置を施す場所。
麻帆良の超に任せる事も考えられるが、葉加瀬聡美が正真正銘の外道な行いを前にして拒否する可能性が高い。かと言って超一人に任せるのでは人手が足りなくなる。もう一つの問題として、そうなった場合彼に「気」は宿るのかどうかという事。生命のエネルギーが「気」を生み出すと言うのなら、生身の部分の在る無しによって強度や量が関係してくるかもしれない。過去にこの様な事を考えた人物など居ないだろうから、飽くまで此方の創造と理屈を兼ねた理論によってイメージするしかない。
『≪回答_グレイ・フォックス覚醒の待機_現状維持が有効手段と判断≫』
これ以上は回路がショートしそうだ。
ありもしない可能性ばかりに目を向けるわけにもいかない。そう言った無駄な知識や興味を削ぎ落し、どうすれば効率よく、かつ其の個体の意志を尊重した方法が確立できるのか。そのような思考モードに入った彼女の思考形態はもはや原型となったママルポッドの範囲から逸脱していた。
だが、やはり思考ルーチンが発達した機械と言う範疇から抜け出すには程遠い。いつかその時が来るのかは定かではないが、RAYは更なる進化を求めながらフォックスの目覚めを待つのだった。
―――お前は何のために戦う?
―――別にいいじゃないか、フォックス。
―――なら、私達がその日常になろう。
―――何時か、君と馬鹿笑いできる日が来ると良いんだけどね。
まどろむ意識の中、ゆっくりと目覚めを実感する。何か暖かな夢を見ていたようだが、自分にそんな似合わない物が来る筈がないと自嘲しながら目を覚ました。正常に働くナノマシンが眠気をコントロールしながら、体内で損傷した筋肉繊維の補強や修理を行って数時間。呪術師達の魔力の力添えも功を成し、体はまだ安静にする時間は必要なれど日常生活ぐらいには支障をきたさない程度に回復しているようだ。
もっとも、自分にとっての日常がどのような物か想像も出来ないが。
「……少しばかり寝過ごしたようだな」
『≪ようやく目覚めたのね≫』
「RAY」
隣に目を向けると、意志を持ったメタルギアが鎮座していた。
生物と違って脈動一つさえ無い姿は不動を連想させる。だが、見る者によってはそれだけだと言うかもしれない。
『≪強化外骨格が大破、貴方自身も自滅ダメージで死に体。隠し通していた点については評価が高くなるけど、行動としては無駄な労力を使っているようにも見えるわ≫』
「言い訳はせん。…敵の裏はどうだった?」
『≪彦星の脳内は上手い事隠ぺいされていた。まるで追いかけてきなさいと言わんばかりに黒幕へ繋がる部分の記憶のみが消去されてたわね≫』
「月光やSOPシステム上書きの正体は」
『≪月光に関しては記憶から消された人物…彼曰く“天帝様”からの贈り物。SOPシステムやその他渡されていた電磁波兵器とステルス迷彩も同上。ただ、システムに関しては魔法の概念的な物で操っていたのでは無く、“愛国者達よりも上位の命令権”を創造した上で彦星をそこに設定していたようね。月光の残骸でCPUが生きている物から見た結果がそれだったわ≫』
「…見つけろとはな。相手はよほどの自信家か、ゲームに興じる脚本家とでも言うのか」
『≪まるで良く出来た
「俺に待ち人? …まぁいい」
言って、立ちあがる。少しばかり関節や骨が軋むが、動かす自体には支障はない。
RAYがこれ以上は話す必要も無いと沈黙を保った起動音を背景に襖をあけると、何時しか見た事のある顔ぶれがそろっていた。
「おや、ようやく目覚めましたか狐様」
「久しぶりに……ございます」
「織姫に、薬師寺の党首」
片や若々しき大和撫子。片や知の光を目に灯す老婆。
多少の予想はついてはいたが……。
「お狐様……退魔の刀をば、拝見させて頂きたく候」
「…ああ」
いつの間にか枕元に置いてあったそれを、老婆の手に渡す。いくばくかしげしげとそれを見つめた老婆は、僅かな歓喜が籠った目線でフォックスを見つめた後に小刀を彼に返した。
「やはり、見込み通りでしたか……」
「だが、今は抜けん」
実証するように鞘に力を入れるが、また突っかかりが在るように小刀はその口を固く閉じていた。しかし、それでも老婆は満足したのかよろしいのですよ、と彼に語りかける。
「大広間での退魔の儀、しかとこの目に焼きつけました……その小刀は、貴方の手に相応しい。薬師寺家党首の名の元に、この退魔を授けることを宣言しましょうぞ。……私は、死に行く前に……祖父の御業を目にする事が、出来た。それだけで、ほんに…十分です」
「そうか。有難く頂戴する」
「私の要件はこれまで。……では、後はお若い二人で―――」
言って、老婆の姿は突如巻き起こった風と共に消えた。よもや幽霊かと思える去り方だったが、単純に考えて何らかの呪術を使用したのだろうと辺りを付ける二人。ただ、最後の言葉の意味に対し、フォックスは見当さえつかなかったが。
「おやおや、嬉しい事を仰る婆様ですね。…それはともかく狐様? お体はよろしいので」
「細かい修理は麻帆良に戻ってからだろう。サーバーを見たが、全身サイボーグ…脳以外を機械に換装するのも悪くはない」
「今や科学はそれほどまでに進歩したのですか。まぁ、
「…やはり、生身は気に必要不可欠か」
「……私、本当はそのような会話の為に待っていた訳ではないのですけどね」
本格的に悩み始めた彼を見て、扇で口元を隠しながら織姫は苦笑した。
「お前も何か話があると言っていたか…。まぁ今は麻帆良への帰還以外にする事も無いだろう、言ってくれ」
「では早速。……この度の騒動より、存じておりますでしょうが麻帆良への永久派遣となりました。詳しい派遣先は狐様がおられる場所になるようでして、これからお世話になるようです」
「そうか」
彼とて、織姫の処遇について聞いてから予想はしていた。麻帆良の魔法使い側として所属するためには、本格的に魔力を扱う人員が必要だ。そのための名目上の要因として、外部者でもあり自分たちと深いかかわりのある織姫が抜擢されたのだろうが……。
どうにも不釣り合いな物だ、と内心で素直な感想を述べるフォックス。木や香の匂いが似合う織姫は、鉄とオイル臭い麻帆良の格納庫に行っても悪目立ちする形になるだろう。彼女とて、そのような錆臭さは好むまいに。
「最後に狐様、私を含め麻帆良の修学旅行が終わると同時に帰還命令が下されております。明日、共に帰還をお願いします」
「了解した」
だが、向こうに戻っても動乱は再発するだろうとフォックスは未来に思いを馳せる。こうした闘いが繰り広げられる未来は、しかし彼にとっては悪くない物だ。
既に話す事は無いと立ちあがり、彼はRAYの立ちつくす縁側へと移動する。そして、空を見上げた。
―――願わくば、この日々が続け。
昇り切った太陽に願掛けをするように、狐の鳴き声は遠く鳴り響くのだった。
前回でも言ったように、修学旅行編でプロットが完全に切れています。
というのも、これまた言ったように最初期の構想で修学旅行編が最終回だったんです。
登場したREXのフラグは次の章。
その他デスペラード社のメタルギアRAY・改の詳細も大幅パワーアップ篇と思っていた学園祭で色々やらかそうと思ったんですが……イメージがちょっとだけ力尽きました。
それに、一番書きたかったところも終わったので。
フラグは三、四個ほど残したままですが、それらも回収しようと続けると無駄にフラグ続くんですよ。それに黒幕なんて、おそらく皆様の予想通りであろう完全なる世界のオリジナル派閥ですし。それ以上は言いませんけど。
そういうことで、下手にハチャメチャなことになる前にしっぽを切らせていただきます。
ほとんど自己満足に近いものでしたが、約半年の間ありがとうございました。
続きを書くとしても、気分や私達の大学生活に余裕ができたら…になると思います。
これ以外にも現在書いている小説を完結させたいので、二本に絞って集中していく次第です。
長々と書き綴りましたが、いったんはここで「抑止兵器マギア」は完結となります。
フォックスや千雨の元のキャラが無くなっている点で憤慨した方もいらっしゃるでしょうが、ここまでお読みいただきありがとうございました。