萌え声クソザコ装者の話【and after】   作:青川トーン

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今日も二話連続更新、最終決戦です。(推奨曲:ウルトラマンX Unite(ユナイト)~君とつながるために~)


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 闇の中で光が輝いた。

 人々が見守る中、ロードフェニックスの体からあふれ出した輝きは純粋で、美しい命の輝き。

 

 怪物の姿が崩れ、中から現れたのは「白い女神」だった。

 ゆっくりと膝をつき、その手に乗っていた「少女」を地へと降ろす。

 

-あれって……-

-言わなくていい、アレを呼び戻せるとなると「彼女」しかいないのだから-

 

 その「歌姫」はあまりに有名だった、故にわかる者にはすぐにわかってしまった。

 だからあえて口にする必要はなかった。

 

 この日、一人の歌姫が装者の一人だったというのは公然の秘密となった。

 

-それにしても随分とデカくなったな……-

-俺達も鼻が高いよ……-

-おりんに巨大娘属性がつく日が来るとは……-

 

 大勢の人間がその姿を見る、神聖さを感じる鎧を纏うその姿はそのまま50メートルサイズに巨大化した加賀美詩織だった。

 

------------------------------

 

「あのバカ……成長期かよ!?」

「まだ神の力を手放してはいない……様ね。そうでしょう?翼」

「ああ」

 

 装者達が見上げるのはアダムと対峙する詩織の姿、フェニックスと人柱が消えたとはいえそのエネルギーそのものが消滅する訳ではない。

 さらに加えればこれまで吸収してきたエネルギーの分もある。

 

 とはいえここから新たにエネルギーを供給する事もできない以上勝負を急ぐ必要もある。

 

「そうだ!神殺し!私のガングニールの力を!」

「その必要はない……詩織は「必殺の一撃」で決める」

 

 サンジェルマン達の「全霊」の一撃によりアダムはすでに重篤なダメージを受けていた。

 それこそ神の力による再生も働かない程、というより元より神の力による再生は「平行世界の自身」への肩代わり……残念な事に「平行世界の神に至ったアダム」は殆ど居ない上にそこに至ったならもはや「アダム」ではない。

 

 完全にして完成した存在であるが故に、進化する事さえできなかった。

 

 

 世界一つ作ることさえ出来る神の力。

 しかしそれ単体では何にもならない。

 ただ暴虐と破壊を撒き散らすだけの暴力でしかない。

 

 

 アダムだった怪物は無軌道に炎の雨を降らせ、腹部から光線を放つ。

 それを詩織は回避する事なく、正面から受け止めつつも前に進む。

 強固な意志の鎧を、意志無き力が傷つける事などできはしない。

 

 同じ神の力、もしも「想いを形にできる」のなら、それは奇跡とも呼べる程の事象を引き起こせる。 

 

「――あれは……!」

 

 両の手のプロテクターを変形させて「一振り」のアームドギアが形成される。

 それにマリアは見覚えがあった。

 

「そうだ、あれが詩織の歌!」

 

 神の力の一部によって、詩織の「想い出」が形となったもの。

 翼はそれを知っていた。

 

「ガングニールぅっ!?」

『ガングニールだとォッ!?』

「デスデス!?」

 

 響と同じタイミングで通信機越しにでも聞こえる程の大声で弦十郎が驚愕した。

 

 純白のガングニール。

 フェニックスもイカロスも賢者の石も全て失った詩織の中にもまだ、歌は残っていた。

 繰り返し行われた「ユナイト」の記憶。

 

 その中でも一番濃く深く理解していたものこそ「ガングニール」。

 詩織が神の力で「創造」した「翔槍ガングニール」。

 当然、その名を冠する事は「神殺し」の哲学兵装としての力も得るが、そんな事は彼女にとってはどうでもいい。

 

 彼女が信じる中で一番強い「絆」の力、だからガングニールを選んだ。

 

 

『これは私一人の歌じゃない!積み重ねて来た人が!作り上げてきた人が!信じてくれる人がいるから!歌える歌なんです!!!』

 

 

 投げれば必中、掲げれば必勝、振るえば無双の一振り。

 神の力によって強化されたガングニールの前に敵はない、詩織は力の限りにガングニールを振りかぶって投げた。

 

 虹の輝きを放ちながらあらゆる攻撃を防ぎ「絆」はアダムの巨体に突き刺さり、光となってその中へと流れ込んでいく。

 

 限界を超えたエネルギーがその巨体を突き破り溢れる、「一つ」の存在が独占するにはあまりに巨大であり、重すぎる力により、アダムは自壊していく。

 

 そして天を貫くほどの巨大な爆炎をあげ、虹の光を撒き散らしながら「神」は消し飛んだ。

 

 自分だけの喜びを求めた「原初のヒト」の野望は、他者と喜びを分かち合う事を求めた少女「達」によってついに滅びたのだ。

 

 

 

 アダムを倒した事で詩織の纏う神の力もその役目を終えて大地へと還る。

 巨体は完全に光の粒子となって降り注ぎ、詩織の姿も少女としてのものに戻り、全てはあるべき場所へ戻る。

 

 フェニックスも人柱も、再び星の中へと帰っていった。

 また会える日を夢見て。

 

「……私も帰ろう、皆の所へ」

 

 新しく生まれ変わったギアのペンダントを握り、詩織もまた帰る。

 

 あるべき、そこに居たいと願えるただ一つの場所へ。

 

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「ぬぅうううううう……!!」

 

 訃堂はあまりに想定外の事に思わず「役立たず」となった杖を握りつぶす。

 

「あれほどの力を!捨ておるバカが何処に居る!」

 

 装者達によって詩織の意識が取り戻される事は想定の範囲内だった、むしろそれによって完全に神の力が詩織の意志によってコントロールされる様になる事こそが狙いだった

 アダムが復活して神同士の戦いになるのもまあ許容内だった。

 だが決着がついた後に詩織が神の力を脱ぎ捨て、この地球へと還元したのはまるで想定外だった。

 

 完全に訃堂の計画を踏み潰し、その反動で飛び越えていったのだ。

 

 とはいえ、最初から神の力が「一度」で手に入るとは考えていなかった。

 むしろ今回があまりに「上手く行き過ぎた」。

 

「……欲をかきすぎたのはワシか」

 

 想像以上に神の力は強力だ、あらゆる願いを叶えてしまうほどに強力だった。

 「国防兵器」として使うには申し分ない。

 

 だがその力を纏い、制御する手段がよくなかった。

 自分自身の意志でその力をコントロールしなければいけない。

 道具や術頼りではダメだという事がわかっただけも大きな前進である。

 

 やはり「力」には相応の「意志」の強さこそが必要だ。

 

「だが次こそは、必ずモノにしてみせよう……神の力を」

 

 まだ訃堂は諦めていなかった、忘れていた何かが火を灯した様な錯覚の中で次の計画を練り始める。

 

 

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