萌え声クソザコ装者の話   作:青川トーン

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兎にも角にも進めよ乙女

 悩んでいても進まない。

 結局、最後に全てを決めるのは自分の意思。

 何もせずに後悔はするな。

 

 と覚悟を決めて学校へ行く。

 

「おっはよー!加賀美さん!」

「加賀美さん久しぶりー!」

「昨日の配信の衣装凄かった!今度生で見てみたいんだけど!」

 

 実は話題が落ち着いた後も気がつけば学校にも私に絡んでくる人が3人程出来てまして……。

 うん…………。

 ごめんね、実は自己紹介の時とか居なかったから実は私皆さんの名前を知らないのですよ……。

 

「衣装なら……その、次来る時にでも持って来ますけど。フェザークローk……装備の方は重いのでちょっとご勘弁願います」

 

「やったー!」

「やった!優勝した!」

「優勝って何ですか」

「特にありませんけど優勝です!」

「ええ……」

 

 女子高生って何でこんなにハイテンションなんでしょうかね……。

 

 まぁ名前知らないといえば、画面の向こうのリスナーも知らない人ばかりですけど。

 そうですよね、そういう対応をすればよいのではー?

 

「まぁですね、あの衣装結構しましたからね。34万で作ってもらえましたけど」

「生イキリんだ!」

「私もあの衣装欲しいと思って探したけど背負い物付きだと平気で70万したのに!?」

「そりゃほら、本物の加賀美さんに着て貰えるってだけで宣伝になるから」

 

 良く考えればそりゃそうである、本人お墨付きの衣装なんですから、なんなら店頭にサイン入り写真もありますし。

 

「気がつけば、随分有名人になってましたねぇ、私」

「でもその重圧に潰されない加賀美さんはやっぱり素質があるよ~」

「そうそう、私達だったら絶対もう学校これないもん」

「メンタルつよつよおりんさんですよ」

 そうでしょうか、まぁ私も顔割れてからは何度も学校に来たくないとは思いましたが……。

 

 ……いわれてみれば随分図太くなったものですね、私も。

 

「ま、まま待つデース!まだ心の準備が」

「響さん……ちょっと」

 なんだか久しぶりに聞いた声ですね、それにあの変なデースは間違いありません。

 

「翼さんから今日は詩織さんが来るって……あ!居ました!おはようございます詩織さん!」

 立花さんに連れられてきた例の調ちゃんと切歌ちゃんですね。

 

「あっ立花さんだ、おまけに編入生の子」

「そういえば加賀美さんって翼さんはもちろんの事、立花さんや雪音さんともよく居ますよね~」

「後小日向さんも、どういう関係か気になりますねぇ~」

 困りましたね、これは……とりあえず無難に答えておきますか。

「立花さんとクリスさんは翼さん経由で、小日向さんは立花さん経由で知り合いました。翼さんについては知っての通りのコラボする程度の関係なんですが、最初に学校で私の声が「おりん」だとバレましてそれからの付き合いですよ……っと向こうの二人も注目されて恥ずかしそうなので、ちょっと行って来ます」

 

 さすがにここじゃ二人も話しづらいし、私もちょっと面倒だ。

 

「そうなんだ~」

「いってらっしゃい加賀美さーん」

 

 とりあえず教室を後にして、廊下に出て3人と合流して中庭に向かう。

 

「はぁ、そちらから来なくても昼には行きましたのに」

「いやーごめんごめん、でも早いほうがいいかなって」

「全く……立花さんも、翼さんも心配性ですねぇ……」

 

 とりあえず私にも心の準備というものがあるからこうやって突っ込んでくる立花さんは相変わらず天敵なんですよねぇ。

 

「あ……あの!加賀美さん!ごめんなさい」

「前はその偽善者だとか冷徹だとか言ってごめんなさい!」

 調ちゃんと切歌ちゃんが頭を下げる、が。

 

「こちらこそ、ごめんなさい。あの頃の私はそっちの事情なんて知ろうともしてなかった……」

 

 そう、あの頃の私を満たしてたのは焦燥の様なモノ、何かを果たさねばならないというそんな気持ち。

 

 イカロスが無くなってからはそういうものは無くなりましたけど、間違いなくあの頃の私はおかしくなってましたからね……。

 

 

「とはいえまぁ、お互い、それ以上特に言う事がなければそれでいいんです。私も根に持つつもりはありませんし、世界を救ってくれて感謝してるくらいですからね」

 

 そう、結局世界を救う為の最終決戦に行ったのは立花さん達やFISの方々、ただただ暴走して迷惑を掛けてただけの私は寝てましたし。

 

 

「……本当にいいのデスか?」

「いいも悪いも、全ては結果です。私だってやり方を間違えたし、あなた達だってやり方は強引でした。ですが今お互いここに居て、生きている、それだけで私は許せるんですよ」

「……なんだか、変わった人」

「あはは……詩織さんはいつもこうなんですよぉー」

 

 そう、許せないのは過去の自分くらい。

 だからこの話はもう終わり。

 

「それじゃ、これからよろしくね。お二人さん」

「よ……よろしくデース!」

「よろしく…お願いします」

 

 恐らく、だけど、私が抜けた分は彼女らがSONGの仕事を請ける事になるだろう。

 それは彼女等の贖罪の機会であり、彼女等が自分を許せる様になる為の……。

 とはいえ、もうノイズはいない筈だからそう危険な仕事に駆り出される事もなさそうですし。

 

「それでは、私は教室に戻りますので。お三方も遅れない様に」

 

 とにかくこれで不安がまた一つ減りました。和解というか、遺恨がない事を確かめたぐらいですけど。

 別に来る者は拒みませんし、去る者を追う事は私はしません。その人が決めたのなら。

 

 

 ……やっぱり薄情ですかねぇ……。

 昔ならこのスタンスでも全然心が痛まなかったんですけどね……。

 今は本当にそれでいいのか、と自分の中の誰かさんが問いかけてくるんですよねぇ。

 

「あ……それとまぁ、暇でしたら……私の配信だったりを聞いてみてくださってもいいですよ」

「配信……?」

「……デスか?」

 

 だから去り際に振り返って、二人にそれだけ告げる。

 

「詳細はクリスさんか立花さんにでも聞いてください、それでは」

 

 私から、歩み寄る。

 

 とても重く、難しい一歩だったけど。

 

 それに意味があったならいいかな。

 

 

 

「やっぱり加賀美さんって変わりましたね」

「最初は本当に無口で何考えてるかわからない!って感じだったよねー」

「まぁ……その自分でも変わった、いえ……変えられたんでしょうね」

 そう、変えられた。

 翼さんや立花さん、クリスさんや小日向さん……他にも多くの人と関わって私は変えられた。

 ……きっと今のこの状態こそ、幸せ。と呼べるものなのかもしれません。

 

「明日も、こんな日が続くと良いですね」

 

 ふと口からそんな言葉が出た。

 

「加賀美さんの口からその言葉がでると滅茶苦茶重みが違う……」

「……まあ私じゃなくて実動班の人達が作った平和ですけど……」

 そうです、私は平和にそこまで貢献出来た気がしない。

 

 少し目立って、世間の目を私に集中させる事で他の皆さんに非難が行かない様に、出来てたらいいな……くらいでした。

 ……本当に、私は誰かの役に立ててたのでしょうか?

 

 まぁ、全部終わった今、後悔こそありますが、平和になった、それでいいじゃないですか。

 

 

 もっと楽観的に、もっと前向きにいきましょう。

 

 

 ひだまり、というものも。

 やっぱり悪くは無いですね。


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