萌え声クソザコ装者の話【and after】 作:青川トーン
深い闇夜を光で切り裂く。
アルカノイズだけをホーミングレーザーで的確に撃ち抜き、周囲への被害を抑える。
「ここから先は、敬虔で善良なるもの以外は通行禁止です」
「お前たちは通れない」
各所に同時に出現したアルカノイズに即座に対応する必要がある。
そして私の役目は「防衛」だ、可燃物が多く最悪の大火災レベルの被害を出しかねない「フェニックス」より今回は「イカロス」の方が向いている。
イグナイトの未搭載や焼却による時限、通常利用での侵食などの問題を解決したのは「別の世界の了子さん」が作った「フェニックス」の外部コンバーターへの統合。
それによってイカロスとフェニックスは再び一つのギアに戻り、私はこの二つのギアを「フォームチェンジ」という形で運用できるようになった。
紆余曲折、まるで装者たる私と同じ様に数奇な運命を辿って、ようやく在り方を見つけた様です。
それはさておき、まずはこの目の前のクソったれどもを一刻も早くこの世から追い出す事に集中しなければ。
-Tear Drop Ray-
「光の雨を降らせろ!!」
クリスさんのイチイバルには劣りますが、殲滅力で圧倒してやります。
とりあえずこれで反応が集中しているのは響さん達が戦っている場所だけになった筈―――
『詩織くん!すぐに響くん達の援護に――バカな!新手だと!』
!!
どうにも状況はよくないらし―――なんですかあの光は!
………
「ナニを見せてくれるワケだッ!?」
「金を作るのさ!錬金術師だからね」
イグナイトを起動した装者達をそのファウストローブの力で圧倒し、戦闘不能に追いやったサンジェルマン達の前に現れたのは統制局長「アダム・ヴァイスハウプト」。
別段、現れただけなら装者達の始末を見届けに来た程度で済む話だが、その手にしているものが大問題であった。
小型の太陽、10メガトンの威力を内抱する火球を手にして現れたのだ。
「ここは引くぞ!局長の黄金練成に巻き込まれる前に!」
自分達諸共に始末されては叶わないと錬金術師は装者にトドメを刺す事なくテレポートジェムで逃げ去る。
後に残されたのは命令さえ出されず放置されたアルカノイズ、戦闘不能になった装者達、そして今にも辺り一帯を吹き飛ばしたくて仕方ないヒトデナシ。
このままいけばシンフォギアを纏っている装者とて跡形も無く蒸発する運命は避けられない。
だが、何処からだろうか。
歌が聞こえる、諦めないと。
Linker無しではギアを纏えない筈のマリア達が、それぞれのギアを纏いアルカノイズを蹴散らし、道を切り拓く。
そして光が広がり――
「ビタ一文か……安いモノだな命ってモノは!」
光が収まった時、スプーンで掬ったかの様に大地がくり貫かれ、地表は熱によってガラス化し、風鳴機関の本部は跡形もなく消えてなくなっていた。
手がかりたるバルベルデドキュメント、そして大勢の命を巻き込んで。
「加賀美詩織、そうは思わないかい?」
………
守れなかった、何も、何もかも。
「そう思うだろう?三度も死ねば命なんて軽いってさ」
私の負けですよ、守るべき施設は吹き飛んで、解析中の暗号も綺麗さっぱり。
辛うじてマリアさん達が翼さん達を助け出すのを見たから冷静で居られるだけで。
あそこには沢山の人が居たんですよ。
「はは、最近のゴミは喋るんですね」
「おかしくなったのかい、あまりもの現実に」
こいつは生かしておいてはいけない。
容赦してはいけない。
私の命に代えても殺す。
生命を焼却し、張り裂けんばかりに叫ぶ。
収束した炎が目の前の裸の男を消炭にせんと輝く。
「ゴミは焼却しましょう、跡形も無く」
塵一つ残したくないという私の想いに反応して爆裂するだけだった筈の炎は太陽の様な球体となって浮かんだ。
炎から伝わる感覚からして確かにダメージは与えている、だが殺すにはまだ遠い。
なら火力をもっと集中してやるだけですが――ッ!!
「なかなか熱い女だよ君は、少し焦ったよ」
炎の球が破裂し所々炭化してるが平然としている奴が現れた。
「……次は受けてみなよ!僕の炎を」
この惨状を引き起こした攻撃がもう一度来るか。
だがそれが?
それがどうしたと?
「がら空きですね!!!」
-Plasma Talon-
光輝く鉤爪で。
その顔を剥いでやる!!!
………
二度目の閃光、先程のアダムが放った黄金練成よりは遥かに小規模だがそれでも十分脅威といえる爆発が起きた。
炎の柱が夜天を貫くようにそびえ立ち、炎の中心でアダムは勝ち誇った笑みを浮かべた。
「弱いぞ!!!」
だがその灼熱を切り裂いて、アダムの胸に3本の傷が走った。
その傷口は人間のモノでなく、機械であった。
「なっ!バカな!」
「ガラクタ野郎!」
続けて頬に衝撃が走った、抉り取られる感覚にアダムは驚愕した。
「役立たずの!スクラップめ!」
体に次々と出来る裂傷、それは力の優位性がどちらにあるか示していた。
詩織の纏っていたギアのプロテクターは溶岩や溶けた鉄の様に流動する様に、まるで生きているかの様に鼓動を刻んでいた。
「ふざけるなよ……!どういう事だ!」
アダムの中には困惑しかなかった、黄金練成には劣るがあれだけの威力を受けて加賀美詩織が耐えられる道理など万が一もなかった筈だった。
しかしあったのだ、一万と一つ目の道理が。
フェニックスは炎で死なず。
加賀美詩織は「=フェニックス」と定義される。
それだけの事だった。
無駄に力を放ったアダムが疲弊して勝手に弱体化し、その力を詩織が吸収しただけなのだ。
もしこれが水や氷、風の錬金術や物理的手段での攻撃ならその時点で勝負はついていたのに、思い至らなかったアダムのミスなのだ。
「私の手で……地獄に堕ちろ!!」
アダムから放たれた炎を吸収し、パワーアップした詩織は半暴走状態であった。
これまでに無い程のエネルギーがその体に取り込まれていたのだ。
理性の鎖は燃え尽き、憎しみで目の前の敵を殺し、死んでいった者達の報いを受けさせる事だけが彼女を突き動かす。
その為には自分の身が燃え尽きる事も厭わない、その暴走するエネルギーにアダムは逃げる事を選んだ。
「人間などに!!」
その顔は屈辱に塗れ、とても先程までの余裕の表情はなかった。
「息の根をォォッ!!!」
アダムにトドメをささんと鉤爪を振るうが、一瞬早くテレポートが完了し、それは空を切った。
「…………」
「…………」
「…………」
「……―ッ!!!!―――――!!!!」
目の前の敵を仕留めそこない、完膚なきまでに敗れて。
大勢の人々を救えず。
詩織は叫んだ。
アダムが相性を考えず脳死で炎ぶっぱした
↓
フェニックスは炎吸収できる
つまり自滅である