吾輩は
それ以上でもそれ以下でもない。
吾輩は
どうしてこうなったかはてんで検討もつかない。なんでも気がついたら野山に混じって竹を取りつつ......
「いやそうはならないにゃ」
普通考えて吾輩が猫であると竹取物語は混ざらんて、どんだけラリってるにゃ私。
状況を整理しようかにゃあ。
ウィキ◯ディアに乗ってないくらいマイナーな銃を扱うゲーム内のキャラになっちゃった......なっちゃったのにゃ。
そのゲームがドールズフロントラインで、お隣の大陸の国が配信元の銃擬人化(?)ゲーム。
そのゲーム、と言うよりは現実世界でもサブマシンガンに分類されている銃でありキャラが、私? が現在進行系でスリングで肩に下げてるコンパクトな銃、IDW。
十中八九略称だけど、どマイナーすぎて正式名称なんて知るかバーカと言うかにゃー。
9×19パラベラム弾使用、20/28発マガジン。
電動バッテリーにより毎分1400/450発を撃ち分けられるイギリス製サブマシンガン。
それが私が持ってるこの子について言える情報にゃあ。
使い方はなんというか、呼吸するのと心臓を動かすの、それと同等の本能レベルに刷り込まれてる、文字通り手足みたいな感じみたいにゃね。
予備マガジンが8本、予備バッテリーが3本。バッテリーは連続使用で4時間持つらしい、だからしばらく心配は不要そうにゃ。
使い方はわかったとして使い道は無いにゃ。
ゲーム中で語られた鉄血のロボだかご同類は見かけにゃいし、同僚にあったことはにゃい。 詰まる所ただ女の子になってサバイバルしてるだけにゃ、つまんにゃい。
銃を使った事なんて、せいぜいがバッテリーをショートさせて火起こししたくらい。
「これじゃなんのために来たんだかわかんないにゃあ」
今日も今日とて保存食を拾い食いしつつ、無為に1日を過ごす毎日。
あいにくとトラックに跳ね飛ばされた記憶も襲われる記憶も、天気が悪かった覚えもない。死んだとしても、フツーに死んだんだろうにゃあ。
「はぁ」
ぱちり、と火にくべていた枝が爆ぜて火の粉が舞い、スリングに吊り下げられたIDWが光を反射して鈍く光る。
「いっそのこと、なんか襲って来てくれたほうがましにゃん」
そう言ったのがフラグだったのにゃ。
「はぁ、はぁ、はぁ......味方?」
形式番号 M4A1。
識別番号不明。
所属部隊 unknown
硝煙の匂いを染みつかせ、枯れ葉と泥にまみれ、血を流す傷だらけの戦闘人形。
「 」
思わず白目を剥いたのは言うまでもなく。
「......近い、逃げなきゃ。立って、貴女も逃げて」
「なんでにゃあああああああああああああああああ!!!!!!」
私は厄介ごとを背負い込み、巻き込まれるようにM4A1の後を追いかけた。
M4A1。
物語序盤のプロローグで何やらやばそうな情報を押し付けられ、死屍累々の山を築き上げながら逃げおおせた特級の鬼ごっこ能力を誇る戦闘人形。
逆説的に、物語の主人公より不幸を背負い込む哀れなヒロイン。どうやら私は、その
「こんなんだったらやられる前に南の島でバカンスしたかったにゃあああああああ!」
私は泣きながら後ろにいるであろう鉄血の人形たちに9ミリパラベラム弾をばら撒きながら走った。
これは、生き残るための物語。
「走りながら銃を撃つのは非効率。アタッチメントも無いのに当たる訳ない」
「いいからばら撒いて牽制なりなんなりするにゃ! この状況は猫の手も借りたいのにゃ!」
「弾切れ」
「つっっかえないにゃああああああ!」
IDW
不幸にも黒塗りのアサルトライフルに追突されてしまった悲しき転生者X。よく叫ぶ。
原作知識があんまり役に立たないところに放り込まれたせいでただの戦闘能力の低いポンコツドールと化した残念(元男)。
某アイドル前川のように魚が喰えない。
M4A1
エリートAR小隊のひとり。ただし若干ポンコツの模様。
森の中を歩いていたらたまたまIDWを発見してしまった全ての不幸の元凶。彼女はこれから救助されるまでIDWとふたり旅を続ける事になる。