戦術人形は電気イタチの夢を見るか   作:缶コーヒー

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一〇〇式機関短銃の憂鬱

「あの……。指揮官。本当に、私を編制拡大するんですか」

 

 

 意を決したかのように、その少女は目の前に居る男性へと意見した。

 ごく普通の、黒いセーラー服を着る可愛らしい少女に見えるが、実際はそうではない。

 一〇〇式機関短銃。

 同じ名を持つ日本製SMGを操る、生体アンドロイド──戦術人形である。

 桜型の緑の髪留めが、長い黒髪に飾られていた。

 

 

「どうした? 珍しいな、一〇〇式が口を挟むなんて」

 

 

 対する男性は、彼女を指揮する立場にある人物である。

 場所は某地区の地下司令部内にある、戦術人形を新たに製造する工廠だ。

 大きく分厚い、強化透明アクリル樹脂の向こうに、様々な機械部品・生体部品の山と、それらを自動で組み上げる多目的アームが鎮座していた。

 一〇〇式が声を掛けたのは、それを稼働させるために男性が──指揮官がコンソールを操作しようとした、まさにその瞬間だった。

 

 

「何か、思うところがあるんだろう。聞かせてくれ」

 

 

 戦闘以外では万事控え目な一〇〇式が、こんな風に指揮官を引き止めるのは初めてだ。

 コンソールから離れ、指揮官は彼女に向き直る。

 数秒の沈黙。

 一〇〇式は、黒いストッキング──右脚に桜の花弁がプリントされている──で包まれた細い脚をモジモジとさせていたが、やがて、胸の内を語り出す。

 

 

「他に、優先して編制拡大した方がいい戦術人形が、居ると思うんです」

 

「……続けて」

 

「私に備わった機能──桜逆像は、効果が特殊で有効活用が難しいです。しかも、この機能のせいで、拡大に必要な代用コアの量も多くて……。

 戦術人形としての正式ロールアウトも未定ですし、だったら他の、拡大をしやすい戦術人形達に代用コアを使った方が、総合的な作戦遂行能力は上がるんじゃ、ないかと……」

 

 

 編制拡大とは、第二世代型戦術人形に搭載されたダミーネットワークシステムを活用するために、主機に追従する従機を製造、主機とリンクさせる事である。

 生産ラインの確立されている戦術人形の場合、単に同じ型の戦術人形を用いる事でコストを削減できるのだが、一〇〇式機関短銃は、戦術人形生産の総元締め的存在であるI.O.P社の製品ではなかった。

 他社の製品テストを、指揮官が属するPMC──民間軍事会社「GRIFON & KRYUDER」、通称グリフィンが、I.O.P社を通じて委託されている状態だ。

 

 この状態で編制拡大を行うには、戦術人形の主要部品であるコアから得られる情報を代用コアへとコピー。その情報を元に、文字通りの複製をしなければならない。

 当然、相応のコストと時間が掛かり、また、細分化された特殊機構の情報を正確に再現するため、貴重な代用コアを大量に必要とする。

 一〇〇式の編制拡大一回で、ローコストな戦術人形ならば五回から十回は編制拡大を行える計算だった。

 

 それを踏まえた上で、指揮官は。

 

 

「ポチッとな」

 

「あっ」

 

 

 なんの躊躇いもなく、コンソールのキーをタップした。

 途端、アクリル樹脂の向こうで忙しくアームが動き始める。

 一〇〇式は呆然とそれを眺め、そんな彼女に指揮官が語りかける。

 

 

「確かに、効率だけを考えれば、一〇〇式の言う事は正しい。M4A1やSOPMODⅡとかも、代用コア待ちの状態だしな」

 

「……だったら、どうして……?」

 

 

 問い返す一〇〇式の声は、かすかにしか届かない製造音にも消えそうなほど、とても弱々しい。

 指揮官を見上げる瞳が、揺れている。

 とても作り物とは思えない。本物の少女としか思えない、儚さ。

 

 

「君を信じている」

 

 

 そんな一〇〇式に、指揮官はハッキリと断言してみせた。

 

 

「基本性能とか特殊機能の有用性とか、そういうのじゃなくて、君なら……。

 君となら、この先の戦いを切り抜けられる。そう信じているから、こうするんだ。

 ……納得、できないか?」

 

 

 確固たる意志を乗せた、力強く、同時に優しい声。

 人間である指揮官の声は、作り物の鼓膜を通じ、戦術人形である一〇〇式の内側へ。

 スカートの裾が、震える手で握り締められて。

 

 

「指揮官……」

 

「なんだ」

 

「一〇〇式は……。一〇〇式は、頑張りますから……っ! だから……っ」

 

 

 そこまで言って、後が続かない。

 一〇〇式の整っている眉は歪み、今にも泣き出しそうに見える。

 指揮官は苦笑いし、唇をへの字に結ぶ一〇〇式の肩に右手を置く。

 

 

「期待している。これからも、よろしく頼む」

 

「はい!」

 

 

 指揮官の手に自分の手を重ね、今度は、とびきりの笑顔で頷く一〇〇式。

 その手は、銃把を握るために作られたというのに、柔らかく、温かかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃。

 工廠の天井に設置された監視カメラの映像が届く機械警備室では、三つの人影がそれを見ていた。

 

 

「うっはー。指揮官様と一〇〇式ちゃんってば、青春してますねー」

 

「いいなぁ、一〇〇式ちゃん、ワタシも指揮官に抱っこされたぃー。っていうかカリーナさん、こんな事してていいの?」

 

「良いんです! このくらいの楽しみがなきゃ、日がな一日、作戦報告書を書かされてる意味がないですもの! いけ、いっちゃえ指揮官様、そのままブチューっと! きゃー!」

 

「うわぁ……」

 

 

 そのうちの二人──指揮官の補佐役を務める金髪サイドアップの少女、カリーナと、赤いメッシュの入った薄桃色の髪と赤い瞳を持つ戦術人形、M4 SOPMOD Ⅱは、モニターの前で鼻息荒くニヤつき、方や顔を引きつらせていた。

 SOP Ⅱも人の事は言えない悪趣味を持つが、「カリーナさんはこんな風に盛り上がるんだなー」と、少し引き気味である。

 しかしそうなると、いつにも増して大人しいもう一人の様子が気掛かりで。

 

 

「あれ? M4、どうしたの? さっきからずっと黙ってるけど」

 

「………………」

 

「おーい? M4ー? えーむーふぉー?」

 

 

 SOP Ⅱの姉ともいうべき戦術人形、M4A1は全く反応せず、モニターを凝視している。

 あらゆる意味でSOP Ⅱとは対照的な彼女だが、こんな風に黙り込んでしまうのは珍しかった。

 ちなみに、対照的なのは姿形も含めてである。

 薄桃色の髪に対してM4A1は黒髪であり、メッシュの色は緑。羽織るジャケットも黒と白で、同じなのは髪の長さと、仲間への強い義務感か。

 ともあれ、SOP Ⅱが目の前で手を振っても、口の両端を引っ張って「いーっ」として見せても、M4A1の反応は変わらない。

 それもそのはず。彼女のAIは、ある一つの事柄に処理能力の全てを持って行かれていたのだから。

 

 

(私だって……。編制拡大して戦果を上げれば、指揮官と……。もっと、もっとコアさえあれば……!)

 

 

 羨望。渇望。嫉妬。慕情。

 人間であれば誰もが抱く感情を、戦術人形であるM4A1は持て余しているのだった。

 この瞬間、“彼”の下に属する一部の戦術人形達に、原因不明の言い知れない悪寒が走ったのは、言うまでもない。

 そしてこの日から、一〇〇式機関短銃とM4A1、二体の戦術人形の間で静かな戦争が始まったのである。




 ドールズフロントライン。
 なんの前情報もなくプレイを始めてまだ6日目ですが、一〇〇式ちゃん可愛いです。
 ええ。何も知らずにコアを注ぎ込んでしまいましたけども、後悔なんてあるはずがない。五〇〇式ちゃんになるのはいつの日か……。
 レア度と代用コア数の関係、一〇〇式ちゃんの製造元については妄想です。室内なのでマフラーとジャケットを外してます。M4A1ちゃんがヤンデレってるのは趣味です。
 さぁ! まずは一〇〇式ちゃんを画像検索するのだ! そして、こんなに可愛い一〇〇式ちゃんをタダで貰えるドールズフロントライン、みんなも今すぐ始めよう!(ダイレクトマーケティング)

 他のキャラの話も書くかも知れませんが、持ってないキャラは出せませんので、「あの子の話が読みたい!」という方は、作者がお迎えするのを祈って下さい。
 WA2000ちゃんとか強いらしいっすねー。でも、新しく実装された子達も欲しいというジレンマ。そして3-6がクリアできぬ。もっと強化せねばー。
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