戦術人形は電気イタチの夢を見るか   作:缶コーヒー

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 息抜き回?
 美少女にそんなこと言われたら、そりゃあピンクい妄想もするでしょうよ、てな話。
 言われてみたい……。あわよくばお願いしt(タタタターン

 あ、それともう一つ(ムクッ
 我が隊の一〇〇式ちゃんが、とうとう五〇〇式ちゃんになりました。
 おかげでコアはカツカツですけど、妙に達成感。
 後はレベルを100にして、スキルも10へと上げるだけ。それが終わったら指輪を……。先は長いなぁ……。


指揮官と一〇〇式・M4A1の射撃訓練

 ドン、と。重い銃声が七発、射撃レーンに響く。

 ステンレスフレームの大型自動拳銃から発射された.50AE弾は、五体目の人型固定標的の心臓を中心に、半径数cmの範囲内へと収まる。

 弾倉を交換し、次は肺。更に次の弾倉は頭部を狙って撃ち尽くすが、ほぼ同じ結果となった。

 射手である青年──グリフィンの指揮官は、それに何か反応する事もなく、両手で構えていた銃を静かに置き、休憩のために耳当てを外す。

 すると、予想していなかった拍手が背中から送られた。

 

 

「す、凄いです……! 指揮官、射撃も上手なんですね」

 

「M4? 見てたのか。それに一〇〇式も」

 

「はい。カリーナさんにこちらだと伺ったので」

 

 

 振り返れば、そこにはいつもの二人組み。M4A1と一〇〇式が居た。

 どうして一緒に居るのかは、それこそいつも通り──指揮官に会いに行ったら鉢合わせしただけなのだが、普段とはまた違う指揮官の姿を見て、ひとまず休戦するくらいには満足しているようだった。

 一方で、見られているとは思っていなかったらしい指揮官は、少し照れ臭そうにしている。

 

 

「PMCに所属している以上、指揮官とはいえ戦闘技術の訓練は必須だし、暇を見て、こうして射撃訓練してるんだよ」

 

「なるほど。……あれ? でもそれなら、カリーナさんも訓練しなきゃダメなんじゃ?」

 

「まぁそうなんだが、あまり見かけた事はないな……」

 

「カリーナさんは、商魂の方が逞ましい人ですからね……」

 

 

 話の流れでM4A1が指揮官の同僚、カリーナの存在を思い出すが、最終的に一〇〇式の言葉が全てだと結論がつく。

 お金大好き! All for Money! を公言する彼女だ。訓練なんかしている暇があったら、その時間を仕入れなどに費やすだろう。

 そのおかげで、この基地の物資は潤沢なのだから、とやかくは言うまいが。

 

 話は変わり、M4A1は指揮官の使っていた拳銃へと注目する。

 

 

「指揮官は、大口径の拳銃をよく使うんですか?」

 

「う~ん、場合による。補給の問題もあるから。ただ、状況が許すなら、威力を重視して選ぶよ」

 

「手数より一撃の重さ、ですか。それも真理ですよね」

 

「威力より手数が重要な場面があるのも、理解はしているけどな」

 

 

 射撃台に載せられた大型拳銃を手に取りつつ、指揮官が所見を述べる。

 部隊の指揮官が銃を手に取るような状況は、つまりは最悪の状況な訳だが、その最悪にも種類がある。

 敵が少数ならば大型拳銃で牽制、あわよくば打倒も狙えるけれど、敵が多い場合などは、弾をバラ撒いて逃げられる装弾数の多い物や、マシンピストルが有利な事もあるだろう。

 要は、状況に応じて適切な装備も変わる、という事だ。

 この場の誰もが知っている、戦場の理だったが、しかし一〇〇式の興味は、指揮官が使っていた銃そのものにあるようだった。

 

 

「それって、デザートイーグルっていう銃ですよね。私、初めて見ました」

 

「いや、そうじゃないんだ一〇〇式。見た目は確かにデザートイーグルだし、内部構造もほぼ同じなんだが、違うんだ」

 

「……どういう事ですか?」

 

「ほら。刻印を読んでみてくれ」

 

 

 弾倉を抜いた状態の拳銃を渡され、一〇〇式はそれをしげしげと眺める。

 肩越しにM4A1もそうするのだが、銀色のスライドには「DESERT EAGLE」でなく、「SEA FALCON」と彫られていた。

 まるで対義語だ。

 

 

「砂漠の鷲じゃなくって海の隼……。海賊品ですか?」

 

「多分。大戦前に作られた物らしくて、倉庫の片隅に死蔵されてたのを引っ張り出して来たんだ。他にも色々あったよ。

 M9ならぬMqとか、マイクロUZIならぬマイクロUZ1とか、ガーランドならぬカーランドとか。そういえば、M4AIなんていうのもあったな」

 

「えむよん、えーあい? なんだか、複雑です……」

 

 

 表記を真似ただけの悪質な呼び名を耳にし、M4A1はわずかに眉を寄せる。

 我が半身とも言える銃を勝手に真似されたのだから、不快に思うのも当たり前だ。

 が、ふと彼女は気付く。

 指揮官は今、その模造品で射撃訓練をしていた。

 という事は、そのM4AIとやらも使ったのでは? と。

 

 

「もしかして、それも撃ってみたんですか?」

 

「え? あ、ああ。点検してみて問題なかったから、捨て置くのも勿体ないかと思って。……気を悪くしたかな」

 

「いえ、そうじゃないんですけど……。ど、どうでしたか、使い心地」

 

 

 若干、伏し目がちにM4A1が指揮官へと尋ねる。

 実銃の評価が戦術人形の評価に繋がる訳ではないし、ましてや模造品と一緒くたにされるのは論外だろうけれど、気になってしまう。

 指揮官も最初こそ気不味そうにしていたが、問われたからにはと、真剣な顔で答えた。

 

 

「そうだな。完成度が高くて扱いやすく、いい意味でアサルトライフルの基準としても考えられる銃だと思う。

 性能のバランスが良いし、無難ではあるけど、これを選んでおけば問題ない、という安心感もあるな。

 もちろん、人によって意見は違うだろうし、他のアサルトライフルを使った事も少ないから、偏った見解かも知れないが」

 

「そう、ですか。……ぃよしっ」

 

 

 無難、という点には引っかかったものの、概ね高評価と思われる返事に、M4A1は密かに喜ぶ。

 もっとも、本人がそう出来ていると思っているだけで、控えめなガッツポーズは全然隠せていないのだが。

 そんな彼女の姿を、指揮官は微笑ましく見つめ、一〇〇式は「ぐぬぬ」と羨望の眼差しを向ける。

 羨ましい。ものすっっっごく、羨ましい。

 焦りにも似た感覚が、一〇〇式を突き動かした。

 

 

「あ、あのっ、指揮官!」

 

「どうした、一〇〇式」

 

「私も……。わ、私の事も使ってみて貰えませんかっ?」

 

「へ? 君を?」

 

「あ、違う、ちょっと言い間違えましたっ。私の銃も、ぜひ使ってみて欲しいんです!」

 

「ああ、うん、そうだよな、うん……」

 

 

 少しばかり危険な言い回しに、指揮官の脳内がピンク色の妄想に染まりかけたが、即座に言い直されたおかげで持ち堪える。

 女の子が「私を使って」なんて言うのは倫理的に問題だが、「私の銃を使って」なら……いや、どちらにしても問題があるように感じられるけれど、まぁ意図は伝わった。

 ごほん、と大きく咳払いし、彼は場を仕切り直す。

 

 

「まぁ、編制拡大したダミーのを一時的に借りる位なら、指揮官の権限で大丈夫か。いい機会だし、やってみよう」

 

「あ……! ありがとうございます!」

 

「じゃあ持ってくるから、少し待っててくれ」

 

 

 こちらも色良い返事を貰い、一〇〇式が表情を輝かせる。

 指揮官は、そのまま武器保管庫へと繋がるドアの向こうへ、シーファルコンを収納したケースと共に歩いていく。

 彼の見えない所で、一〇〇式とM4A1が、また火花を散らしているとは考えもせずに。

 

 

「さて。こうして一〇〇式機関短銃の予備を持って来た訳だが……」

 

 

 ややあって、小銃が収まるサイズのケースと弾薬箱を提げた指揮官が戻ってくる。

 その頃には二人共、何事もなかったかの様に大人しくしていたが、裏では闘争心剥き出しだったりするのだから、乙女は怖い。

 ともあれ、ケースから素の一〇〇式機関短銃を取り出し、弾倉を装填。

 ブース壁のスイッチを押して新しい標的を立てるのだが、銃を構える前に一〇〇式を呼ぶ。

 

 

「初めて触る銃だし、一〇〇式。手解きして貰えないか」

 

「え? 私が、指揮官にですか?」

 

「ああ。どうせだったら、この銃と一心同体である君に教わった方が確かだろう」

 

「そ、そうですね……。では、お手伝いさせて頂きます」

 

 

 予想だにしなかった申し出をされ、一〇〇式は戸惑いつつも指揮官の側へ。

 瓢箪から出た駒を投げて一石二鳥してしまう、ような感じだろうか。

 M4A1も「く……そんな手があったとは……!」などと言いたげな表情である。

 

 

「基本の形状は小銃──ライフルと似てますので、銃床を肩に当てて、利き腕で銃把を持ち、逆腕は下から支えるようにして添えて下さい。

 発射速度は選択できませんから、まずは指切りで数発ずつ撃った方が良いと思います」

 

「分かった。弾倉は……やっぱり掴まない方が良いか? ステンの銃がそうだって聞いた」

 

「はい。掴みたくなっちゃいますし、そうすれば安定する時もありますけど、基本は持ちません。昔とは部品強度も違いますが、壊れない訳じゃないので」

 

 

 簡単な説明を受けながら、指揮官が銃を構える。

 一〇〇式機関短銃は、一見すると木で作られたストック一体型の本体を持つRFに見えるが、弾倉は銃本体の横に伸びており、銃剣も装着可能なSMGである。8mm南部弾と呼ばれる比較的小さめの拳銃弾を使用する。

 ここで言う指切りとは、発射速度の選択機構がない、フルオート射撃可能な銃を、引き金から指を離す事で、必要以上に発射しないようにする射撃方だ。

 また、ステンというのはステンMk-Ⅱという英国製SMGで、同じように弾倉が銃の横に伸びているのだが、これを保持して射撃すると給弾不良などを起こす場合があった。

 しかし、これらは部品の強度や精度の足りなかった時代の話で、現代の加工技術を持ってすれば簡単に解決できる。が、それでも万能とは言えず、銃に余計な負担を掛ける事には違いないので、正しい銃の撃ち方というのは大切なのである。

 

 脚を肩幅ほど前後に開き、右肩に銃床を当て、左手で本体を保持。

 細めた眼で照門を覗いて、いざ──

 

 

「じゃあ、少し撃ってみる。……あ、しまった。イヤーガード」

 

「大丈夫です。私が着けますから、動かないで下さいね」

 

「助かる」

 

 

 引き金に指を掛けた瞬間、指揮官は自分が耳当てをしていない事に気付いた。

 すると、すかさず一〇〇式がそれを取り、指揮官の頭へ。

 背が足りないのか、少し伸びをして身を寄せる姿は、なんとも甲斐甲斐しく見える。M4A1の奥歯も軋む。

 

 それはさて置き、準備も整った所で、指揮官は標的に向けて引き金を弾く。

 タタタ、タタタ……と規則的で軽い銃声が、合わせて30回ほど。標的の頭部が蜂の巣となった。

 弾倉一つ分を撃ち尽くし、二つ目の弾倉を再装填。今度は胴体へ向けてフルオートで射撃すれば、弾は大きく、全体的にバラけてしまう。

 次の弾倉でもフルオート射撃。反動の度合いを実感したからか、先程より集弾率は良くなったものの、やはり指切りに比べると精度は低い。

 三つの弾倉を空にすると、指揮官は一度銃を置き、耳当てを首に掛けて一息ついた。

 

 

「ど、どうでしょうか」

 

「結構、楽に反動は抑え込めるな。でも、流石にフルオートだと銃口が暴れるか。もう少し跳ねを小さくできれば、精度も期待できるんだが……」

 

「だったら、これを付けてみましょう」

 

「……銃剣?」

 

 

 一〇〇式がケースから取り出したのは、鍔が特殊な形状をした細めのナイフ。いわゆる銃剣だった。

 付属品として一応持って来た物だが、彼女は慣れた手付きで銃剣を取り付け、「さ、どうぞ」と射撃を促す。

 言われるがまま、指揮官は弾倉を装填し、新しい標的を呼び出す。忘れずに耳当ても付け、また射撃体勢を取って──撃つ。

 タタタタタ、と。ほんの10秒足らずで撃ち尽くしてしまうが、意外な事に、先程よりも銃痕のブレは小さくなっていた。

 

 

「さっきよりも安定してる。そうか、先端部が重くなったからだな」

 

「はい。銃剣装着を想定しての設計だったのかは分かりませんけど、付けているといないでは、連射した時にかなり差が出てきますね」

 

「なるほど。面白い」

 

 

 銃の重さというものは、軽ければそれだけで良いというものではなく、軽ければ軽い故の、重ければ重い故の長所と短所が出てくる。

 代表的な軽さの代償と言えば、反動制御の難しさだ。

 銃本体が重いなら、その重みが発射時の反動をある程度押さえ込んでくれるが、軽い銃では期待できない。

 一〇〇式機関短銃の場合、先端部に銃剣を取り付ける事で、重心が跳ねやすい銃口へと寄り、結果的に反動制御を容易にしているのだろう。

 

 仕組みを理解して楽しくなったのか、固定標的を移動標的に変えたりして、彼はしばらく射撃を続けた。

 一〇〇式はその隣に立ち、休憩時に再装填を早くするコツなどを教えたりしながら、楽しい時間を過ごす。

 

 

「ふぅ……。部品を消耗させたくないし、この位にしておくかな」

 

「お疲れ様でした、指揮官」

 

 

 気がつくと、10個ほどの弾倉を空にしていた。

 ただ銃を撃ち続けるだけでもそれなりに疲労し、じんわり汗ばんだ首元を緩め、パタパタと手で扇ぐ指揮官。

 何故だか一〇〇式は、労いつつも、はだけた彼の首元をじっくり見てしまう。

 なんの変哲もない、よくある成人男性の鎖骨のラインに、眼を奪われてしまっている。

 が、背後からの「いつまでイチャついてるつもりなんですか……?」という恐ろしい(M4A1の)視線にも気付き、慌てて視線を逸らす。

 

 

「そ、それで……。どう、でしたか……?」

 

「正直に言うと、思っていたより使い易かった」

 

「本当ですかっ!?」

 

「嘘を言ってどうするのさ。あの時代に作られた物だという点を鑑みても、悪くないと思う。

 威力不足はどうしても否めないけど、君の場合、それを桜逆像で補えるしな。良い組み合わせだよ」

 

「あ……ありがとうございますっ!」

 

 

 桜逆像。

 ごく一部の戦術人形に搭載されている電磁緩衝障壁──アブソーブシールドに似た性質を持つ機能だが、このシールドを発生させる為に使用されたエネルギーを、一〇〇式は転用する事が可能なのである。

 シールドが破られた場合、その緩衝エネルギーを吸収して運動エネルギーへと変じ、破られずに高出力を維持出来た場合は、緩衝ベクトルを反転させる事で、擬似的な電磁加速を得られる。

 端的に言うと、ダメージを吸収するシールドを張り、破られたら運動性能が向上、一定時間破られなければ攻撃力が向上するのだ。

 この機能を含めれば、一般的な9mm弾を使うSMGより威力の低い銃でも、第一線で戦えるという事になる。

 

 自らの存在意義を、それを指揮する彼に認められて、もう嬉しくて堪らないのだろう。

 パァ、と表情を輝かせ、満面の笑みで頭をさげる一〇〇式。

 まるで彼女の周りにだけ花が咲いたような、そんな印象を与える、本当に幸せそうな笑顔だった。釣られて指揮官まで微笑んでしまうほどに。

 しかし、そこで彼は思い出す。一〇〇式の影にすっかり隠れてしまった、M4A1の存在を。

 悪い事をしたと、指揮官は壁際で落ち込んでいるようにも見える彼女へ歩み寄り。

 

 

「すまないM4、放ったらかしに──」

 

「指揮官っっっ!!」

 

「ぅあい?」

 

 

 食い気味な返事に後ずさりした。

 見上げる瞳が、何やらメラメラと燃え盛っている。

 

 

「私も……私のも是非、是非とも使って下さいっ!!」

 

「え? いや、でも、M4AIはもう使って……」

 

「そんなパチ物じゃなくって、本物を使って欲しいんですっ!! 本物のM4A1をっっ!! きっと御満足して貰えますからっっっ!!」

 

「わ、分かった、分かったから、落ち着いて。キャラがブレてるから、な?」

 

 

 普段の控えめなM4A1は一体どこへ行ったのだろう。

 そんな事を思いつつ、指揮官は彼女を宥める。

 やはり一〇〇式と一緒に居ると、M4A1の思考は斜め上の方向に飛んで行くようである。

 兎にも角にも、次の行動は決まってしまった。

 後の予定に響かなければいいなぁ、と心の中で呟きながら、再び武器保管庫へと脚を急がせる指揮官であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝。

 自室のベッドでシーツにくるまる指揮官を、無機質な電子音が起こそうとしている。

 

 

《ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ》

 

「ん゛……」

 

 

 枕元にある昔ながらの置き時計を触れば、この音は簡単に止まる。

 けれど、彼が腕を伸ばす前に電子音は止まった。

 そのすぐ後には、耳に優しい声と、緩やかに体を揺すられる感覚も。

 

 

「……ご主人様。ご主人様。お目覚めの時間ですよ。起きて下さいませ」

 

 

 どこまでも暖かく、ひたすら甘えたくなるような囁き。

 思わず寝たふりをしようかと、不埒な考えが一瞬よぎるけれど、声の主である彼女を困らせたくはない。

 仕方なく瞼を開ければ、たおやかに微笑むメイド服の戦術人形、G36が居た。

 指揮官の用意したコンタクトレンズのおかげか、彼女の目元は慈しみに満ちており、以前の鬼軍曹的な目付きは鳴りを潜めている。

 もっとも、破損や落下の可能性を考慮し、戦闘中は外しているため、鉄血の人形達がこの微笑みを知ることは無いのだが。

 

 

「お早う御座います、ご主人様」

 

「おはよう……。あぁ、ダメだダメだと思いつつ、結局は誰かに起こされる生活に戻ってしまった……」

 

「メイドの本分を遂げられて、私は幸せですよ?」

 

「そう言って貰えるのは有り難いんだけど、どんどん自分が腑抜けて来てる気がしてさ……」

 

 

 実に満足そうなG36と、己を恥じる指揮官との温度差は激しい。

 彼女のたっての願いを受け、こうして身の回りの世話を頼む事になったが、その仕事ぶりは完璧と言う他にない手際だった。

 朝は指揮官より早く起き、夜は指揮官より遅く眠る。

 身支度や、栄養バランスを考えた食事の用意はもちろん、皆からの貰い物で散らかっていた部屋も片付き、果ては背中まで流そうとシャワールームに着いてこようとした程だ。

 最後のは断固として拒否したけれど、勿体無い事したな……と密かに思ってしまうのは男の性か。

 人の側に自律人形が居るのは当たり前で、スラムの貧民層でもない限り、彼女達を侍らせるのが当たり前となっている昨今、珍しい感性の持ち主である。

 それはともかく、目が覚めたからには起きなければ。

 

 

「朝食の御用意が整っております。お召し上がりになられますか?」

 

「もちろん、頂くよ。その前に、顔を洗って着替えてくる」

 

「では準備致します。お召し物はいつもの場所にありますので、どうぞお使い下さい」

 

「ありがとう」

 

 

 ベッドから身を起こして、指揮官は洗面所への扉を開ける。さらに先にはシャワールームがあり、その気になれば部屋に閉じこもって生活できる造りになっている。

 顔を洗い、歯を磨き、寝巻きからグリフィンの制服──彼は制服が普段着なタイプなのである──へと着替えて戻る頃には、保温カートからテーブルに配膳された朝食が出迎えた。

 固焼きの目玉焼き。バタートースト。焼きたてのソーセージ。コールスローサラダ。

 定番ながらも、決して手抜きは感じさせないのがG36の凄さだ。

 

 

「どうぞ、お召し上がり下さいませ」

 

「うん。いただきます」

 

 

 促され、指揮官は朝食を口へ運び始める。

 無言で食べ進めていくが、彼の表情は幸せそうで、G36も、ただ微笑んでそれを見守る。

 程なく食事は終わり、「ご馳走様。美味しかったよ」「ありがとうございます」と、定型句になりつつある言葉の後、コーヒーが淹れられた。

 

 

「本日の御予定は、特に組まれておりません。グリフィンの業務も、カリーナ様が処理できる範疇に留まっておりますので、しっかりと休養なさって下さい。ご主人様」

 

「ああ、そうだったか。すっかり忘れていた。……と言っても、何もやる事がないんだよな。せいぜい筋力トレーニングとか、戦術シミュレーションぐらいしか」

 

 

 ほふぅ、とコーヒーを啜りながら、指揮官がなんとも寂しいスケジュールに愚痴をこぼす。

 誰かとデートにでも行ければリア充なのだろうが、基地から出るなんて論外だし、部屋デートするほど親しい間柄の女性も居ないので、仕事の延長のような事しか出来ない。

 正確に言うなら、誘えば色んな意味でOKしてくれそうな戦術人形も居るには居るけれど、そんな事をしたら、それこそ色んな意味で問題が発生するのを、そこはかとなーく理解しているため、選択肢に入れられないのである。

 仕方なく、片手腕立て伏せの自己記録更新でも目指すかと、色気の欠片もない予定を組もうとしていた指揮官だったが、意外にもG36が口を挟んだ。

 

 

「……あの。でしたら一つ、提案が御座います」

 

「提案? 君がか?」

 

「はい。メイドの分際で、このような事は差し出がましいと思うのですが……」

 

「いや、そんな事はない。聞かせてくれ」

 

「ありがとうございます。では……」

 

 

 G36から進言されるとは予想していなかったようで、彼は驚いた様子を見せるも、すぐに気を取り直して続きを求める。

 しかし、ホッとした顔でG36がどこからともなく取り出したのは、細長いアタッシェケースだった。

 

 

「これは……?」

 

「私の使うアサルトライフル、G36が入っております。特別にカリーナさんに出して頂きました」

 

 

 アサルトライフルの入ったアタッシェケース。

 特に予定のない一日。

 なんとなく、ピンと来た。

 

 

「もしかして……使って欲しい、とか?」

 

「はい。先日、M4A1さんや一〇〇式さんの使う銃を、ご主人様が使用なされたと耳にしました。

 そこで、私の銃も一度お使いになって、お言葉を頂ければと。……御迷惑でなければ、なのですが」

 

 

 普段は凛とした佇まいのG36だが、言葉が終わりに近づくにつれ、気恥ずかしそうな顔を俯かせる。

 こんな表情は珍しい。というより、初めて見たかも知れない。

 彼女がこんな風にお願いをするのも同じだし、無下にするのは可哀想だった。

 指揮官は、コーヒーを飲み干して大きく首を振る。

 

 

「迷惑だなんて、そんなはずないじゃないか。君がいいと言うなら、遠慮なく使わせて貰う」

 

「ありがとうございます、ご主人様。なんだか、あの方達が羨ましかったんです。嬉しいです」

 

「……そうか。なら、片付けが終わったら、さっそく射撃場に行くか。腹ごなしもかねて」

 

「はい。お供致します」

 

 

 コーヒーカップを下げつつ、G36はまた微笑む。

 一見すると、完全無欠なメイドの鑑に見える彼女だが、少女らしい、可愛らしい一面もキチンと持ち合わせているようだ。

 現に、食器類をカートへ片付ける後ろ姿は、お下げ髪が上機嫌そうにヒョコヒョコ揺れている。なんとも微笑ましい。

 

 その後、指揮官とG36は連れ立って部屋を出た。

 指揮官がアタッシェケースを手に少し前を歩き、G36はカートを押している。射撃室へ向かう途中に食堂へ寄り、カートだけ置いて行くつもりなのである。

 が、もうすぐ食堂に着くというタイミングで、ある戦術人形と出くわした。

 頭でピンと立つ猫耳は、彼女がIDWであるという証拠だった。

 

 

「あ! 指揮官だにゃ! おっはようだにゃー!」

 

「IDWか。おはよう。今日も朝から元気だな」

 

「当然だにゃ! 私は元気だけが取り柄だにゃ! ……ん? 元気だけってなんだにゃ!?」

 

「自分で言ったんじゃないか……」

 

 

 一人で乗りツッコミを繰り広げるIDWに、指揮官は苦笑いを隠せない。

 彼女の明るさは隊に不可欠なものだし、助けられる事も多いのだが、日常的にそんな調子だと少しだけ、本当に少しだけ疲れる事もあるのだ。

 しかし、IDWは無駄に元気良く話を続けた。

 

 

「それより聞いたにゃ指揮官! 一〇〇式とM4の銃を射撃訓練に使ったって!」

 

「……まぁ、そうだけども。何か問題か?」

 

「二人ばっかりズルいにゃ! どうせなら私の銃も使ってみて、感想聞かせて欲しいにゃー! ……ダメかにゃあ……?」

 

 

 打って変わって猫耳をションボリさせ、指揮官の制服の袖を摘み、上目遣いにせがむIDW。

 珍しくしおらしい彼女に、思わず心臓がドキリとしてしまうが、きっと不整脈だろうと首を振る。

 

 

「ご主人様。如何なさいますか?」

 

「いや、うん、構わないんだが。構わないんだが、な……」

 

「ホントかにゃっ? やったにゃー! 指揮官に使って貰えるにゃーっ!」

 

 

 G36から問われ、取り敢えずは了承する指揮官だったけれど、これまた元気良く飛び跳ねるIDWに、段々と頬を引きつらせていく。

 何故なら、今まさに朝食を摂ろうと食堂へ向かっていたのだろう、通りすがりの戦術人形達が、興味深げにこちらを見ているからだ。

 いいなぁ。私も頼んでみようかしら。なんだか面白そう。見に行ってみようよ。

 そんな声が、そこかしこから聞こえてきた。

 

 

「ハードな一日になりそうだ」

 

 

 指揮官が呟いた言葉は、果たして、その一日を予言する事となったのである。

 のちに彼はこう語った。

 あの一日のおかげで、銃を撃つという行為が、息をするのと同レベルで出来るようになった気がする、と。

 これを成長と捉えるか変質と捉えるかは、本人に寄る所であろう……。




 紳士淑女の禁じられた遊び、大型製造。
 97式散さんが貰えるまで6/6/6/4壱式投入した結果、お迎えした戦術人形達を列記します。
 StG44、M37、イングラム、モシン・ナガン、NTW-20、PPS-43、モシン・ナガン、ネゲヴ、MG42、Vector。
 ついでに救助イベントでリー・エンフィールド、G41、P7、G17。

 KSG様は出ませんでしたけど、これはある意味大大大勝利なんじゃなかろうか!?
 実はVectorさん二人目だし、メンテ前までのデイリーでMG5さん、スオミ二人目、そして待ち望んでいたロリ痴女さんまでお迎えした事を加味すれば、夜道が怖くなるくらいの超戦果! 約一時間後にはTMPちゃんも来るし、もうウッキウキですわ! 圧倒的コア不足!
 パックに課金すりゃ良いんでしょうけども、ゲーム内でタダで入手できるアイテムにお金を払うのにはちょっと抵抗が。
 まぁ、X'masスオミのスキンは出るまで回すつもりなので、最悪3万円は払う用意してます。
 でも可能な限りコイン課金は控えたいから、ハロウィンガチャは我慢しなければ。我慢……。にゃんこVector……。くうぅ……。

 次回からはまた404小隊のお話。FFFのChapter3となります。
 作戦行動、開始。
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