戦術人形は電気イタチの夢を見るか 作:缶コーヒー
画面越しならニヤニヤできるけど、実際に目の前に居たら直視できませんよね……?
唐突であるが、指揮官は悩んでいた。
食欲は旺盛だし、睡眠も毎日たっぷり7時間取れているが、本当に悩んでいた。
業務の合間、基地内の各所にある簡易休憩所のベンチで、飲み物片手に一人で項垂れるほどである。
「一体、どうすれば良いんだ」
ジュースを呷り、空になった缶を、ベンダーの隣のゴミ箱へと投げる。
しかし狙いは逸れ、甲高い音を立てて床に転がった。
こんな事すら上手くいかないのか、と溜め息。指揮官は立ち上がり、落ちた缶をキチンと捨て直す。
「あっ、ご主人様だ! ご主人様~!」
すると、いきなり背後から呼び掛けられ、ビクッと指揮官の体が跳ねる。
聞き覚えのある声だった。
付け加えるなら、この声の主こそが、悩みの原因だった。
振り返れば、純白のノースリーブワンピースを着る、幼い少女が駆け寄って来ている。
碧い瞳。中程で二つに分けた、身長ほどもある長さのプラチナブロンド。胸元を飾る青い花のブローチ。そして、最も特徴的なのは、頭にピンと立つ動物の耳。
それだけ見れば、まるでおとぎ話に出てくる姫君のようだ。
何故だかワンピースの生地がやたらと薄く光に透け、スカート部分の前が大きく開いたデザインのせいで、ローライズなショーツが丸見えでなければ。
ちなみに、こちらの色も純白である。
「や、やぁ、G41。今日も元気だな」
「うん! でも、ご主人様の顔を見たら、もぉっと元気になりました!」
「そうかそうか」
ぴょんぴょん飛び跳ね、指揮官へと抱きつくG41。
受け止める彼の表情は、すでに能面となりつつあった。
G41がどうしてこんな格好をしているのかを説明するには、簡単にではあるが、戦術人形の作られ方を説明せねばならない。
戦術人形は、主に二通りの製造方法がある。
一つ目は、既存の自律人形にコアを取り付け、ASSTを施して銃と同期、戦闘能力を付与する方法。
二つ目が、まずASSTで同期する銃を用意し、それに最適化された自律人形を、衣服も含めてデザインする方法だ。
自律人形に最適な銃を選出するASSTは、銃に最適な自律人形を選出する事も可能なのである。
G41は後者の方法で製造された人形であり、太ももの付け根にあるバーコードが、その型番を示している。
幼げな少女にあのような格好をさせなければならないのは、こんな理由があっての事なのだ。
決して指揮官の趣味ではなく、責はASSTの仕組みと、その開発者にある。
つまり、頭に猫耳っぽい何かを付けた、妙齢の女性科学者が悪い。
そして、指揮官の悩みとはズバリ、この純真無垢かつ天真爛漫な上に露出過多な戦術人形の、理性へのダイレクトアタックをどう凌ぐか、という事なのだった。
具体的には、現在進行形で押し付けられている、幼さに見合わないボリュームの柔らかさとか。
「こらこら、ダメでしょ
G41に見えない所で自分を抓りつつ、どうにか煩悩を押さえ込んでいると、彼女の背後からまた駆け寄って来る足音が。
まず目に入ったのはメイド服だが、G36ではない。
明るい色味の茶髪を左でサイドアップにする彼女は、大陸産のRFと同期された戦術人形、漢陽88型といった。
といっても、本人は別の自称を使っているのだけれど。
「ふぇ? わたし、メイドさんじゃないけど……」
「いいえ、貴方はメイドです! 今はまだそうでなくとも、いずれメイドにしてみせます!
そして、正統派メイドのG36さん、オタ系メイドの私・アイちゃんこと漢陽88式、純真幼メイドの41ちゃんで、完璧なるメイド・トライアングルを描くのです!」
「メイド・トライアングルってなんだ……」
「世の男性方の夢です! あ。遅ればせながら、おはようございます、ご主人様♪」
「……おはよう。ところで、メイドはお淑やかじゃないとダメなんじゃないのか?」
「TPOによりけりなんです! 細かい事は気にしない!」
微妙にないがしろにされた感もあるが、とりあえず指揮官も挨拶を返す。
彼女の言う「アイちゃん」とは、かつて大陸で開催されていた同人誌即売会のマスコットキャラクターの名前……らしい。
自律人形は架空の人物を模して製造される場合も多くあり、漢陽もそういった類いの人形だったのだろう。
元は富裕層向けの喫茶店で働いていたと聞いたが、すっかり戦術人形としての生活にも慣れたようである。
立ち話もなんなので、三人は休憩所のベンチに揃って腰掛ける。
指揮官を挟み、右隣にG41、左隣に漢陽だ。
「ご主人様。ご主人様。頭撫でて?」
「ん? ああ、いいぞ」
「えへへ。やったぁ」
早速、上目遣いで甘えてくるG41の頭を、指揮官が優しく撫でる。
繊細な手触りの髪が、手を楽しませてくれた。
彼女も気持ち良さそうに眼を閉じ、時折、犬……もしくは狐を思われる動物の耳を触ってやれば、くすぐったそうに、けれど楽しそうに微笑む。
「相変わらず、41ちゃんはご主人様にベッタリですねぇー」
「なんでだろうな……。特に何かした覚えもないんだが」
「刷り込みってやつでしょうか? ほら、41ちゃんって、ご主人様の部隊が初めての所属みたいですし」
「それはそれで、この子の将来が心配になるぞ。人懐っこ過ぎる」
「あー、ちょっと分かります。簡単にお持ち帰りされちゃいそうな」
「お持ち帰り? ご主人様とアイちゃんさん、なんの話してるの?」
「気にするな。大した事じゃない」
指揮官と漢陽の話に、G41は可愛らしく小首を傾げている。
やはりこういった知識には乏しいようで、その純粋さを損ないたくなかった指揮官は、強めに頭を撫でる事で誤魔化す。
加えて、漢陽へと小さな声で尋ねた。
(で、頼んでいた事はまだ成功してないのか? してないんだな、この様子じゃ)
(うっ。申し訳ございません、ご主人様ぁ……。私も頑張ってみたんですが、41ちゃん、意外と頑固で……)
二人同時の溜め息は、幸いG41に気付かれなかった。
頼み事とは他でもない。G41へと追加の服を着せる──最悪、スカートだけでも穿いてもらう、という至極簡単なものだ。
そう。簡単なものであるはずが、全くもって上手くいかないのである。
先程、ASSTが戦術人形の衣服もデザインすると言ったが、その衣装でないと最大のパフォーマンスを発揮できない訳ではなく、別の衣装を着ても問題ない。
が、やはり生まれた時に紐付けられた衣服、着用方には思い入れがあるのか、G41は頑なにスカートを履こうとはしなかった。
もう「あれはズボンだ。薄手で限りなく丈の短いズボンなんだ」と言い訳するのも限界。
精神衛生のため、そして基地内の公序良俗を守るためにも、可及的速やかにスカートを穿かせなければならない。
指揮官は意を決し、自ら働きかける事にした。
「な、なぁ、G41。寒かったりはしないか」
「寒い? ううん、大丈夫だよ。どうして?」
「それは……あ~……お、お腹が出てるから、心配でな。女の子は体を冷やしちゃいけないと聞くし」
けれども、当然「パンツ丸見えだからだよ!」なんて面と向かって言えるはずもなく、適当な理由をつけてみる。
するとG41は、眼をパチクリと瞬かせた後、ふにゃり、という擬音をつけたくなる微笑みを浮かべた。
「ご主人様、ありがとう……。優しくして貰えて、わたし嬉しい!」
「ど、どういたしまして」
「でもね、心配しなくても大丈夫! わたし強いから! ほら、触ってみて?」
「え゛。あ、ちょっ」
G41は、頭に置かれていた手を、自分の下腹部へ移動させる。
しっとりと吸い付くような柔肌。
その肉感に、指揮官の顔が強張った。
「ね? あったかいでしょ?」
「ぅ、うん、そう、だな……」
無邪気な微笑みは、しかし生々しい体温を伴っているからか、どこか艶かしく見えた。
指揮官も緊張を強いられ、手がモゾモゾと動いてしまい、G41が身悶える。
「んっ、ご、ご主人様、くすぐったい……ひゃう!」
「ぬぉっ、す、すまないっ」
喘ぐような反応に、慌てて手を引き剥がす指揮官。
勘違いだったのか、次の瞬間には何事もなかったように佇むG41であるが、傍から見ていた漢陽には別の感想があるらしく。
「ご主人様~。今のはかなりヤバい絵面でしたよぉ~。三日目でしか買えない薄い本に発展しそうでした」
「だったらなぜ止めないんだ……!」
「止める暇がなかっただけで~す。それより、これからどうします? 続けます?」
実に楽しげな漢陽が、膝に頬杖をついて指揮官の顔を覗き込む。
G36とは違って友達感覚のあるメイドな彼女だが、職務には忠実に従ってくれるし、職務外の頼みにも、こうして意欲を見せてくれる。
まだG41着衣作戦は諦めたくないし、せっかくの好意を無駄にもしたくない。
指揮官はひとまず継続してもらう事にした。
「少しずつ慣れさせていく方向で頼む。君だけが頼りだ」
「了解です! ご主人様の頼みとあらば、アイちゃん頑張っちゃいます!」
座ったまま、右手で小さく敬礼した漢陽は、「行きましょっか」と、G41を連れて休憩所から歩き去る。
問題は未解決だけれど、頼れる仲間が居るというだけで、気が楽になった。
そろそろ仕事に戻ろうかと、指揮官はベンチから立ち上がる。
「んっふふ~。面白いもの見ちゃったな~」
……のだが、横合いからまた声が聞こえた。
“彼女”の履いているハイヒールサンダルと、足首に巻かれたドックタグの音は軽やかなのに、近づいて来るほどに心がズッシリ重くなる。
何故ならば、声と音の主が、悩みの原因その二だからだ。
「その声は、ヴィーフリか」
「ご明察。おはよ、指揮官」
「おはよう……」
顔を向けると、薄い紫色の瞳が指揮官を見つめ返す。
SR-3MP、ヴィーフリ。彼女もまた、幼さを残すミドルティーンの少女の姿をしていた。
ふくらはぎに届くかという程の長い金髪を、三つ編みのツインテールにしている。
兎の耳を思わせる飾りのついた、紺色の帽子。ノースリーブの白いブラウスに、帽子と同じ色のミニスカートと、ロングベスト。
ここまでなら極普通の服装だと思えるだろうが、悩みの原因となるに足る、普通でない点もあった。
それは、首元を締める短いネクタイから下腹部まで、遮るものがなく肌が見えてしまっていること。
ブラウスとベストのボタンが、丸っと全開になっているのである。
「にしても、真っ昼間から戦術人形のお腹を撫で回すだなんて、指揮官も大胆よね?」
「撫で回してはいない! 咄嗟の事で、反応できなかっただけだ」
「まぁ、確かに。いきなり触らせられるとは思わないものね。でも嬉しかったでしょ」
「……黙秘する」
「それ、嬉しかったって言ってるようなもんじゃない」
小悪魔のように笑う彼女は、そんな事もお構いなしに身を屈めたり、服の裾が翻るような動きをした。
強い風が吹けばもちろん、小走りや、下手をすれば息を吹きかけただけでペロンと捲れてしまいそうなのに、だ。
せめてブラジャーを着けていればまだマシなのだが、上で説明したように、それらしい布地は一切見る事が叶わない。
ようするに、見えそうで見えない絶妙なチラリズムが、G41とは別の方向から理性を削ってくるのである。
わざと挑発するような言動をされる事も多く、ヴィーフリ相手なら遠慮も要らないだろうと指揮官は判断し、強めに言い含める事にした。
「そんな事より、その格好はなんだ」
「へ? な、何よ。いつも通りの服装でしょ」
「いつも通りなのが問題だと言っているんだ! 前から言ってるだろう、キチンと前を閉めなさいと!」
いかにも怒っていますという表情に、ヴィーフリも少しばかり、たじろいでいるようだ。
戦術人形達と仲良くやって行く事は大切だが、それは甘やかしても良いという事ではない。時に厳しい態度で接する事だって必要なのである。
ところが……。
「……優しくない……」
「は?」
「なんでアタシには、あの子みたいに言ってくれないのよ」
続く彼女の反応は、指揮官の予想とは大幅に違うものだった。
反論する訳でなく、怒り出すでもなく、寂しげに瞼を伏せるだけ。
「ヴィーフリ……?」
「ふん、だ」
不安に駆られ、名前を呼んでみるものの、ヴィーフリは不貞腐れたようにベンチへと座り込んでしまう。
脚を組み、腕も組んで、顔はそっぽを向いていた。
拗ねている。誰がどう見たって拗ねている。
流石の指揮官でも扱いを間違った事に気付き、どうにか話を聞いてもらおうと、その隣へ腰を下ろした。
「言い方が悪かった。謝る。すまない」
「………………」
「だが、こちらの気持ちも汲んでくれないか。正直な話、身近で女の子が肌を露出して歩いていると、気が休まらないんだ」
今度は下手に出て、子供を宥めすかすように語りかける指揮官。
健全な肉体と、少し下に広い性的嗜好を持つ成人男性にっては、彼の置かれている環境は正に理想郷であろう。
何せ、彼女達は普通の人間と比べて容姿が整っている上、備品のような扱いをしても問題がなく、むしろそうする事が世間一般においての常識だからだ。
しかし、これまでの言動から分かるように、彼は戦術人形を、個別の意志を持つ人間の女性として扱っている。
だからこそ、不必要な間違いを犯さないため、事前に対処しておく事が重要だと考えているのである。
真摯に向き合おうとしている事が伝わったのか、そっぽを向いていたヴィーフリも、指揮官の方へと視線を戻す。
「……女の子なら、誰でもいいわけ?」
「え? う~ん……。それはまた違うが……」
「じゃあなんで? どうしてアタシがこういう格好してると、指揮官は困るの?」
何か思う所があるのだろう。
ヴィーフリはいつになく真剣な顔付きで、指揮官に質問を投げ掛ける。
それは、言葉を引き出そうとしているように感じられた。
致命的で、一度口にしたら取り消せない、彼女にとって大切な一言を。
「も、黙秘権を……」
「だぁめ! 黙秘権は無効! ちゃんと言葉にして。指揮官の口から聞きたい」
窮地に立たされていると悟り、戦術的撤退を試みる指揮官だったけれど、ヴィーフリがずいっと詰め寄った事で失敗してしまう。
怒っているように釣り上がっていたまなじりが、次第に丸みを帯び、至近距離から指揮官を見上げる。
ここで誤魔化したりすれば、彼女は傷付く。
指揮官は、そう理解できてしまう自分を恨みつつ、静かに口を開く。
「……ヴィーフリみたいに、み……魅力的な女の子が肌を出していると、落ち着かないんだ」
マネキンの裸を見ても、興奮なんてしない。
全くの赤の他人でも同じ。なんだあの変態、で終わらせられる。
そうする事が出来ないのは、つまり、無視できない魅力を感じているから。
状況を考えれば、口説いているとしか思われないだろう言葉が、嘘偽りのない、指揮官の本心だった。
ヴィーフリは一瞬、驚いたように眼を丸くし、恥じらう乙女のような表情を浮かべた。
……かと思えば、一転して意地の悪い笑いを見せる。
「んっひっひっひー♪ そぉっかー。そーなんだぁー。じゃあ仕方ないよねー? 指揮官も男の子、だもんね?」
「………………」
ついさっきまでの真剣さが嘘としか思えない、「言質取ったもんねー!」という心の声すら聞こえてきそうなほど、満足げなヴィーフリ。
対する指揮官はと言えば、「してやられた」と、苦りきった顔だ。
現に彼女は、笑いながら指揮官の脇腹を指でツンツンしている。
まるで新しいオモチャを見つけた子供だった。
「でもぉ、だったら尚更、この格好でいた方が良いんじゃない? 本当は女の子の肌を見られて嬉しいんでしょー? 正直になりなさいよ、うりうり」
「……もう、いい」
「へ? ──きゃっ」
突然、指揮官はヴィーフリの肩を掴み、ベンチに押し付けるようにして立ち上がる。
見下ろす彼の顔は逆光で陰り、言い知れない迫力があった。
「な、なに? 怒ったの? ほ、ほんの冗談よ、指揮官がG41ばっかり甘やかすから、つい……」
「そうか。だが、君は言っても聞かないようだからな」
「……ま、待って。待ってよぉ……。ここここ、心の準備が……っ」
冷たく言い放たれる言葉が、ヴィーフリの背筋をゾクリとさせる。
両肩に乗せられた彼の手は、今や胸元へと滑っている。
指揮官って、こんな風に怒るの?
っていうかこんな場所で?
流石に人の往来があるかも知れない場所でとか、恥ずかし過ぎるんですけど!?
と、ヴィーフリは酷く混乱していた。
頬が赤らんでいるのが自分で分かる。
本気を出せば容易く振り払えるはずなのに、腕に力が入らない。
これから彼がするであろう行動に、抵抗できない。
そんな、諦めにも似た情動の中、ヴィーフリは近づいてくる“男”の気配に身を任せる。
けれども、そうは問屋が卸さず。
「って、なんでボタン閉めてんのよっ!?」
「動くな。言っても聞かないから実力行使してるだけだ」
「そうじゃないでしょう!? ここはもっとこう、男らしく……ああもう! ばか! 鈍感!」
サササ、と彼は手早くブラウスのボタンを閉めていく。
ピンクい妄想とはまるで正反対の行動に、ヴィーフリは成す術もなく翻弄され、最終的にベストも含めた全てが、正しい着用状態となってしまった。
「これでよし、と」
「うう……。ボタン全部閉められた……。なんか息が詰まるぅ……」
「何を言うんだか。その方がよっぽど可愛らしいじゃないか」
満足げな表情で腕を組む指揮官と、乱暴でもされたかの様に「よよよ……」と身を庇うヴィーフリ。
彼女なりに着崩し方のこだわりがあったようだが、指揮官の言った通り、今の姿は歳相応の可愛らしさで溢れていた。
ポーズが少々怪しいけれど、露出は控えめだし、なんだかんだ言いつつ服も似合っているのだ。
そんじょそこらの自律人形と並んでも、際立って目立つくらいに。
「ほ、本当に? 本当に、可愛いって思うの……?」
「ああ、もちろん。だから、今度からはちゃんと前を閉めてくれ。いいな」
率直に褒められて満更でないのか、ヴィーフリは珍しくしおらしい様子だ。
これなら、言う事を聞いてくれるかも知れない。
日常生活に潜むチラリズムの脅威から、解放されるかも知れない。
そんな手応えを感じ、密かな達成感に浸る指揮官だったが……。
「やっぱりイヤ。息苦しいから開けるわ」
「なんでだ!? そういう話の流れじゃなかっただろう!?」
「イヤなものはイヤなのよ! これはこういうファッションなの!
それに、どうせ基地内で会う男なんて指揮官だけだし、だったら別に見られていい!」
「そんなファッションがあるか! この分からず屋め!」
「分からず屋で結構よ! このオタンコナス!」
結局、ヴィーフリはまた服の前を開けてしまい、努力を無駄にされて怒る指揮官と、顔を突き合わせて怒鳴り合う。
その最中、サラッと大胆発言をしていたりもするのだが、彼は気付いていないようである。
小悪魔なようで実は素直なヴィーフリ、聡いようで鈍い指揮官の睨み合いは、しかし、不意の乱入者で中断される事となった。
「あら。私抜きでファッションの話だなんて、水臭いじゃない」
「げっ」「うわ」
その声が聞こえた途端、二人は全く同じ反応をしてしまう。面倒なのが来た、と。
またしても休憩所に現れたのは、長い茶色の髪を、青いリボンでサイドテールにする戦術人形だった。
自信に満ちた青い瞳。ベージュ色のスリップの上に黒いショートジャケットという、蠱惑的なボディラインを惜しげもなく晒す出で立ち。
人は彼女をこう呼ぶ。
戦術人形界のファッション番長、FALと。
お供として、首に赤いリボンを巻いたT-Petのフェレットを連れていた。
「聞き間違いかしら。指揮官、今あなたの口から『げっ』って聞こえた気がするんだけれど」
「気のせいだ。ついさっき、炭酸系のジュースを飲んだから、ゲップが出そうになっただけで。下品ですまない」
「そう……?」
「そ、そうそう! そうなのよ。全くもう、指揮官ってば子供みたいなんだから~」
「そういうあなたも、『うわ、面倒なのが来た』と言っていなかった?」
「いいい言ってない言ってない! 後半は口に出してないわよ!?」
「という事は、心の中では思っていたのね」
「あ」
単純なカマかけに引っかかり、ヴィーフリが頬を引きつらせる。
別にFALの事を嫌っている訳ではないけれど、服飾の事で彼女に関わると時間が掛かるため、単にタイミングが悪いというだけだ。
しかし、目の前で嫌な顔をされれば多少なりとも傷付くし、加えて、気になる事もあったFALは、それを尋ねてみる事にした。
「ま、それは置いておくとして。指揮官? ついでだから聞かせてもらうけれど、あなた最近、私と話す時に目を逸らすわよね」
「そ……そう、だろうか」
「ええ。これは気のせいではないと思うわ。私、何かしたかしら」
「何かしたというか、今もしているというか……」
「そりゃあ、下着姿で基地内どころか戦場までうろつくんじゃ、見ている方も気が気じゃないわよね」
「おいヴィーフリ! 言っちゃダメだろう、本人が気付いてないかも知れないのに!」
どうにか指揮官は誤魔化そうとしたのだが、すぐさまヴィーフリに裏切られてしまう。
実を言うと、指揮官も最初はよく分かっていなかった。
どうしてグリフィンの中でもエリートで、FN小隊という部隊のリーダーでもあるFALが、周囲から「アレは無いよね」「ちょっとねぇー」扱いされる理由を。
女性服の知識に乏しく、キャミソールドレスか何かと思っていた彼は、世間話の中でそれをカリーナに確かめ、以下のように返された。
『指揮官様……。あれ、スリップと言いましてですね。女性用の肌着なんですよ?』
『え、肌着?』
『はい。かなり薄手ですから、汗をかいたり、ちょっと水に濡れただけでスケスケになっちゃいます。私も、あの格好で表を歩く勇気はありません』
『あ~……そうなのか……』
ここで、改めてFALの姿を思い出して欲しい。
彼女の着ている服の中で、アウターと呼べるものはジャケットだけである。
つまり、布面積で考えればG41、ヴィーフリよりも大きいけれど、丸見え度では断トツ。
この事実に気付かされ、以降の指揮官はFALを直視できなくなってしまったのだ。
何せ、布面積に問題のある三名の中では、一番に豊満な肉体を誇るのだから。
「私に一番似合うスリップを選んだはずだけど、指揮官の好みじゃないかしら」
「いや、好み云々の問題じゃ……待った。って事は……?」
「知ってるに決まっているじゃない、スリップが肌着だって事くらい」
そして、そんな問題児でもあるFALは、やはり自信満々に微笑んでみせる。
「色々と言う人は居るけど、結局のところ、この格好が私の魅力を最大限に引き出してくれるから、こうして着ているのよ。何か問題でも?」
ファッションモデルが如く、片脚に体重をかけたポーズを取り、しなを作ってボディラインを強調。
その堂々たる風格は、身に纏うのがほぼ肌着であるという事を鑑みても、確かに彼女らしいと感じさせる。
男なら、誰しも生唾が喉を下るほど、扇情的だった。
が、今日一日で耐性が強まったらしい指揮官は、一切惑わされずに言い返す。
「普通に、倫理的に大問題だと思うぞ。公序良俗に反する」
「……ふ。倫理なんて、時と場合によって容易に変わってしまう、脆い価値観よ。私はそんなものに囚われないわ」
「ねぇ、屁理屈こね出したわよ。もう放っておきましょうよ」
馬に念仏。馬耳東風。
彼女も指揮官の言葉を意に介さないようで、服装を改めようとする気は無さそうである。
ヴィーフリは退屈なのか、指揮官の袖を引っ張って離れようと主張する。自分の事を棚上げして。
なんだか面倒臭くなり、本当に彼女達を放っぽり出して仕事に戻ろうかと考え始める指揮官だった。
すると、次の瞬間。
「ご主人様ぁ!」
「ぐふぉ!?」
背後から不意打ち気味に突進され、指揮官はもんどり打って廊下に倒れる。
床へ強かに打ちつけた顔面の痛みを堪えつつ、その声と押し付けられる柔らかさがG41の物であると判断した彼は、ちょっと涙目になりつつ、ダメージを負わされた理由を確かめようとする。
「な……何事だ、G41……」
「うっ、ぐすっ、あ、アイちゃんさんが、アイちゃんさんがイジメるの……」
「なんだって?」
予想外の言葉が、朦朧としていた指揮官の意識を覚醒させる。
漢陽がイジメ? そんな事があり得るのだろうか?
だが、しがみ付いてくるG41は、確かに涙を浮かべていて。
とりあえず体を起こしてみると、その元凶である漢陽が、黒いメイド服片手にえらい勢いで駆け込んで来た。
「待って下さい41ちゃん! アイちゃんが厳選したこの黒ゴス系メイド服を着れば、貴方のメイド力はウナギ登りなんですっ、ご主人様もルパ○ダイブするくらい喜びますよ!」
「誰がするかっ! いいから落ち着け漢陽っ」
「ご主人様はどうして落ち着いていられるんですか!? 誰もが夢想する黒ゴスロリメイド実現が目の前に迫ってるんですから、もっと熱くなって下さいよぉおおっ!」
「ダメだこいつ……。完全に目がイってる」
何故だろうか。暴走する漢陽の背後から猛炎が上がり、眼には怪しい輝きが宿っているように見えた。
指揮官ですら威圧されるのだから、G41にとって恐怖以外の何物でもない。
いつの間にか指揮官の腕の中に収まっていた彼女は、今にも泣き出しそうな顔で訴える。
「わたし、あんな動き辛い服着たくない……。ご主人様は、あんなの着なくても褒めてくれますよね? ね?」
「え。ああ、うん、もちろん……いやでも、布面積を考えると、まだメイド服の方が?」
「そ、そんなぁ、ご主人様まで……」
「ほぉらぁ、アイちゃんの言った通りでしょう? 分かったら大人しくこのメイド服を着て、楽しく撮影会しましょうねぇ~。どぅふふ」
我が意を得たり、といった様子で勝ち誇る漢陽が、両手でメイド服を構えつつ迫る。
美少女が親父臭い笑い声と共に、鼻息荒く。
ヴィーフリ、FALすらも近寄れない、濃厚な瘴気を放ちながら。
一瞬、顔から全ての表情を消した指揮官は、躊躇なくG41を横抱きにし、一目散に逃げ出した。
「……すまん、漢陽。行くぞG41!」
「ふぇ? わわわっ」
「ちょいご主人様ぁ!? なして逃げるとですかぁ!?」
風のような速度で小さくなる指揮官を、漢陽もまた風のような速度で追いかけて行く。
取り残されたヴィーフリは、無言で彼等を見送り、落胆した様子で肩を竦める。
「行っちゃった……。あーあ、つまんない。アタシも行こ」
「待ちなさい。いい機会だから、私があなたのファッションをチェックしてあげる」
「うぇ。いいわよ、そんな事しなくても」
「遠慮する事はないわ。そうねぇ……。まず、単に露出しているだけの現状を打破しましょう。ブラを着けなさい、ブラを。可愛らしいのを選んであげるから」
「だから、別にいいってば──ちょっと! 引っ張らないでよ!?」
ガシッと腕を組み、問答無用でヴィーフリを連れて行くFAL。
廊下に響く彼女の悲鳴は、やがてベンダーの稼動音にも搔き消えるほど小さくなる。
そうして、休憩所からは誰も居なくなったのであった。
おまけ。実は影から全てを見ていた一〇〇式の反応。
「私も、スカートを脱いでケモ耳を生やせば、し、指揮官に可愛がって貰え……貰、え……やっぱり無理っ、私がやったら絶対にドン引きされる! 何か別の手段を考えないと……っ」
おまけ二。実は(中略)見ていたM4A1の反応。
「……可愛い下着、買わなきゃ。ファッションチェック頼もうかな……」
おまけ三。実は(中略)いた???の反応。
「指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官」
一〇〇式ちゃん。セーラー服の下にスク水を着て、ついでにストライカーユニットを装着すれば、貴方も扶桑のウィッチになれまっせ!
……ストパンコラボとかは流石に無理そうですな。空中戦無いし。妖精枠ならワンチャン?
設定を調べてみたところ、ASSTには戦術人形をデザインする機能もあるらしいですが、服装込みなのかまでは分からなかったので、この作品では服も含めてデザインされるという事になっております。
っていうか、そうじゃないとG41ちゃんの前歴がとってもヤバい事になっちゃいますし。あんな格好をするお仕事なんて、ねぇ……? 将来的にそういう子も出るとは知ってますけど。
最近はデイリー製造でHGレシピ回してるんですが、今一番欲しいキャリコちゃんが来ません。なぜかMP5ちゃんしか出ねぇ。
しぁかし! 今週の大型製造でついに! ついに念願の☆5RF、WA2000ちゃんをお迎え致しました!
いや強いっすね、三拡でも結構なDPS出てビックリ。スキル倍率も高いし、こりゃあ☆7言われる訳ですわ。そして過去の水着スキンが欲しくなる罠。
仕方ないから、ロリネゲヴとロリズリーを愛でながらブラックカード貯めます。あー、もう可愛くて堪りませんがな。
もう少しで引換券が200枚行くので、そうしたらロリーエンも交換する予定。欲を言うなら親指姫まで揃えたいけど、流石にこれ以上の散財は無理なのが辛い。
更に問題なのは、これで年末重課金が決定してしまった事っすな……。貧乏人には地獄のクリスマスだぜぇーフゥーハハハー!