戦術人形は電気イタチの夢を見るか 作:缶コーヒー
いやぁ、最高の背景ですな。ヴィーフリ(大破)とかトンプソン(大破)とかと合わせるとヤバ過ぎっす。
カーミラとかロリズリー、星のSAAならルパンダイブ不可避、冬の日のWAちゃんなんてハイエース後の戴き前ですぜ旦那ぁ!
スオミのクリスマススキン? けっきょく引換券交換で、マジで三万円掛かりました。
他の面々のも全て出てくれたし、ブラックカードは8枚に増えましたから、お布施と思えば……まぁ……いや来年は控えます。自制って大切。
そして、M21ちゃんが居ないので服を渡せない問題。泥限定人形スキンは厳しいのう……。
「ど、どうでしょうか」
緊張した面持ちで、M4A1は指揮官の様子を伺う。
複数のモニターが置かれたデスクに着く彼は、ゆっくりとコーヒーで満たされたマグカップを傾け、しっかりと味わってから、M4A1に微笑んだ。
「うん。美味い。M4もコーヒーを淹れるの、上手になったな」
「あ……! ありがとうございます、指揮官!」
望んでいた褒め言葉を貰い、M4A1は喜色満面に微笑み返す。
そんな彼女のはす向かい──指揮官の背後では、肩揉みをする一〇〇式が「うぬぅ……っ」と歯嚙みしていた。
まさしく普段通りの光景だが、場所は基地ではない。
指揮官が鉄血から奪還し、管轄する地区の前線に存在する、臨時司令部である。
基地に比べると手狭な印象で、雑多に置かれた物資がそれを助長していた。
「最近はG36さんが指揮官のお世話をしていたから、こんな風に過ごすの、久しぶりな気がします」
「言われてみれば、そうだな。事実、助かってるのが現状だが、一人に甘え過ぎも良くないか。これからは、もっとM4を頼らせて貰うよ」
「……はいっ」
G36が部隊に加わってからというもの、指揮官の身の回りの世話は彼女に一任されていた。
元がメイドなのだから当然なのだろうけれど、その分、指揮官と直に接する時間も減ってしまい、M4A1は寂しく思っていたのだ。
しかし、そんな心中を察したような発言で、胸のモヤモヤは呆気なく晴れてしまう。
現金だなぁという自覚はあったものの、どうにも嬉しさは隠せず、M4A1から笑顔が消える事はない。
そして、目の前でイチャイチャされて黙っていられない程度には、一〇〇式も同じ想いを抱いており、負けじと存在をアピールする。
「指揮官。肩を揉む強さ、大丈夫ですか? あと、場所を変えたかったりとか」
「大丈夫、丁度いいよ。もう少し上の、首の辺りを押して貰えると……」
「こう、ですか?」
「あ゛~、そこそこ。書類仕事はやっぱり首に来るんだなぁ……」
一〇〇式が丁寧に首筋を揉み解せば、指揮官は御満悦といった様子で、少々だらしない表情を浮かべる。
仕事中の真面目な顔。
戦闘中の厳しい顔。
戦術人形と接する時の、柔らかい表情や困った顔。
様々な顔を持つ彼だが、こうした弛みきった顔を見せる事は少ない。
一〇〇式とM4A1が知る限り、他の戦術人形の前では、彼がこんな表情を浮かべる場面を見た事はなかった。
独り占めでないのは由々しき事態だけれど、その事実が、自然と二人の頬を緩ませる。
「でも、本当に良かったんですか?
「ちゃんと許可は下りてるさ。この目で戦場を見て、空気を感じる事も、勘を鈍らせない為には必要だ。それに……」
「それに?」
「いつもいつも基地に閉じこもってばかりじゃ、気が滅入る。たまには息抜きも必要だろう?」
「指揮官……。仮にもお仕事中なんですからね? 気を抜いちゃダメですよ!」
「分かってる。ありがとう、一〇〇式」
M4A1からの問いに指揮官は笑い、一〇〇式がキリリとした顔付きで忠言しても、やはり変わらなかった。
ともすると銃弾が飛び交う戦場であるのは確かだが、戦術的にもう重要度は低く、現れる鉄血も数える程という状態が手伝い、茶飲話は尽きない。
「そういえば。新しく配属される予定の新人は、一〇〇式と同じメーカーが製造した戦術人形らしいな。まだ受け入れを打診されている段階だが」
「あ、はい。六四式の事ですよね。私も話に聞いた程度ですけど、そうみたいです」
実験機でもある一〇〇式が一定の戦果を挙げた事を受け、新たに予算を得て開発が進んだAR同期型戦術人形。それが六四式である。
一〇〇式の運用実績を買われ、また指揮官の元に配属されるという話が持ち上がっていた。
「指揮官が私を運用したデータを元に、より先鋭的な機能搭載に踏み切った戦術人形……。一体どんな子が来るのか、少し心配です」
「心配? どうしてだ」
「……その。基本的に、機械とか兵器は後発の方が優秀ですよね。だから、私の居場所が減っちゃうんじゃ……って……」
知らず肩を揉む手を止め、物憂気に呟く一〇〇式。
彼女に搭載された桜逆像も、他に類を見ない特殊な機構だが、そのメーカーは……どうにも魔改造というか、極端に難しい技術を使いたがる傾向があり、六四式にも同じような機構が搭載されているらしい。
技術は積み重ねるほど磨き上げられ、洗練される。
故に、先行した兵器や武器は、後発の存在に更新される運命にあるのだ。
戦術人形も兵器であり、本能的に不安に駆られた一〇〇式だったが、指揮官とM4A1の視線が集中している事に気付き、慌てて取り繕う。
「ご、ごめんなさい。変なこと言っちゃいました」
「全くだ。一〇〇式、君は気にし過ぎだ」
「そうですよ。指揮官がそんな風に、誰かを除け者にしたりする筈ないじゃないですか」
「うんうん。言ってやってくれ、M4。一〇〇式がどれだけ重要な存在なのか」
「……えっ? 私が?」
一〇〇式の不安が杞憂であると、二人揃って言い聞かせる筈が、何故か指揮官はM4A1へ最後の一押しを投げる。
M4A1は驚いて彼を見るが、頼んだぞ、と言わんばかりに頷くだけ。一〇〇式までもが、期待と不安の入り混じった目で見てくる。
何が悲しくて、わざわざライバルのフォローをせねばならないのか。
けれど、その気持ちは同じ戦術人形であればこそ、深く理解できた。
仕方なくM4A1は、理詰めで不安を解消しようと試みる。
「えっと、ですね……。やっぱり、ほぼ最古参なだけあって、SMGを使う戦術人形の中でも戦闘レベルは高いです。
シールドスキルによるタフネスは、た、頼りになりますし、桜逆像によるシールド転化の攻撃力増強も侮れません。
だから……その……居場所が減るなんて事は、あり得ないです。というか、SMGとARを比べる事自体が間違いで……」
「M4さん……」
真正面から一〇〇式を褒めるのは照れくさいようで、少し俯き加減に、所々詰まりながら、M4A1が語る。
辿々しくも感じられる語り口は、だからこそ真実味を強くし、一〇〇式はわずかに目を潤ませていた。
「ありがとうございます。指揮官、M4さん。私、これからも頑張ります!」
「ああ。これまでも後輩は居ただろうけど、六四式が来れば直属の後輩になるんだ。先輩として、しっかりな」
「はい!」
「私も、一応はARの先輩ですから。その六四式さんが来たら、早く馴染めるよう、気に掛けておきます」
「よろしくお願いします、M4さん!」
すっかり元気を取り戻した一〇〇式が、小さなガッツポーズと共に意気込み、指揮官、M4A1も同調する。
仲間同志の親睦は深まり、新しい仲間への期待は膨らむ。
明るい展望を予想させる、和やかな雰囲気が広がっていた。
一見すると、ではあったが。
(まぁ、だからってM4さんに指揮官の隣は譲りませんけどね)
(それはこっちのセリフです、一〇〇式さん。いい気にならないで下さい)
鷹揚に腕を組む指揮官の見えない所で……いや、聞こえない
これこそ平常運転という事なのだろうけれど、いがみ合っているようでいて、本人達も楽しんでいるのかも知れない。
そんな二人を横目で見ていた指揮官だが、しかし思い出したように難しい顔をした。
「もう一つ問題なのは、名前だな」
「え? 名前、ですか」
「うちにはもう64式が居るし、どう区別をつけようかと考えてるんだ」
「あ、言われてみれば……」
名前が問題点と言われ、M4A1は首を傾げるが、続く言葉で納得したようだ。
以前、戦術人形は使用する銃器の名前で呼ばれると説明したが、これが厄介で、結構な確率で被ってしまう。
そういった場合、銃器のメーカーや愛称、通名などで代用し、区別をつけなければならないのである。所属する人形が多くなったが故の悩みであった。
と、そんな時……。
「失礼致します。指揮官、部隊の準備が整いました。いつでも展開できます」
噂をすればなんとやら。臨時司令部に、新たな戦術人形が現れた。
64式消音短機関銃。
緑地迷彩を意識した半袖のワイシャツとスカートに、ヘッドホン、水筒、赤い腕章。長い黒髪を、中程から一本の三つ編みにしている。
敬礼する姿は、淑やかながら確かに兵士のそれだった。
「了解した。定期巡回といえども、未だに鉄血は活動を続けている。十分に警戒してくれ」
「はい。ご忠告、痛み入ります。では……」
「あ、待ってくれ。任務には関係ないんだが、一ついいだろうか」
「……? なんでしょう」
報告を終えて立ち去ろうとする64式を、指揮官が呼び止めた。
仕事の話ではないと聞くと、不思議そうにしながらも歩み寄ってくる。
「実は、今度配属される予定の戦術人形の名前が、君と被ってしまうんだ。それで、呼び名をどうしようかと悩んでいてな」
「まぁ。そうなのですか?」
「なのです。私の後輩に当たるんですけど、その子も六四式といって……」
「なるほど、困りましたねぇ」
自分の頬に手を当て、ゆったりとした調子で呟く64式。
口では困ったと言っているけれど、どこか他人事というか、達観した口振りだ。
やがて、彼女は小さく手を打ち鳴らし、思いついた案を話し始めた。
「いい案を思いつきました、指揮官。“ろくよんしき”、という呼び方はそのままで、後ろに銃種に沿った短い一文字を付けたらどうでしょう?」
「となると、ARの場合は自動小銃だから、六四式自になる訳か」
「ええ。そして私は64式短に。少し縮めて、64短でも良いですね」
「……64式短?」
「はい」
珍しく得意げな64式と打って変わり、指揮官は首を捻っている。
64式短。
確かに意味が通じるし、区別もつくので良い案だと思われたが、一つ問題がある。
今まで64式……「ろくよんしき」と呼んでいた相手を、いきなり「ろくよんたん」と呼び始めれば、いらぬ誤解を招くかも知れない。
具体的には、「何あれ。いつの間にか“たん”付けで呼んでる!」「もしかしてあの二人デキたんじゃ?」という感じで。
大抵の物に“たん”を付けて愛せる、萌え文化の弊害であった。
「いや、ろくよんたんは、止めないか……」
「えっ? だ、ダメですか。良い案かと思ったんですが」
「良いとは思うが、普段使いにはちょっとな。うん。先任の君を64式。今度来る戦術人形を六四式自にしよう」
「そうですか……。分かりました、ではそれで」
たん呼び文化を知ってか知らずか、64式に特に残念がる様子はない。
いや。知った上で、それとなく誘導しようとしていた可能性も捨てきれないだろうか?
侮れない強敵(?)の出現に、「まさか彼女も……」と、一〇〇式は密かに戦慄する。
一方でM4A1は、「可愛い、の?」と不思議に思っていた。まだ萌え文化に染まりきっていない証拠である。
「呼び止めて済まなかった。そろそろ巡回を始めてくれ」
「了解しました。では、一〇〇式さん、M4さん。指揮官の護衛、お願いします」
「もちろんです」
「傷一つ負わせません」
ともあれ、仕事の前に長話はいけない。
促された64式が敬礼、足早に司令部を去り、一〇〇式とM4A1が背中を見送る。
指揮官もモニターへと向き直り、据え付けられた二つのスティックコントローラーの感触を確かめた。
「さて。ドローンを起動して、部隊のサポートを開始する。二人とも、周辺の警戒を」
「はいっ!」
「任せて下さい」
今度は一〇〇式達が敬礼し、少し名残惜しそうに司令部の外へ。
既に安全は確保されているが、何事にも絶対はない。司令部周辺の観測塔などで、外敵に備えるのである。
もちろんSMGとARの二人だけでなく、M14、NTW-20、SV-98などのRF同期型戦術人形も配置についているのだが、この場での紹介は残念ながら省略する。
ほぼ無人となり、データ中継サーバーだけが低く唸る中で、指揮官が二台のドローンを同時に操作。出発した二つの巡回部隊を、晴れ渡った上空から見守る。
一つは64式の属する、大陸製銃器を使う戦術人形の部隊。もう一方は、つい先日合流した、とある部隊が務めていた。
どんな些細な変化をも見逃さぬよう、モニターを見つめる目は真剣そのものだ。
が、特に何事もなく時間は過ぎ、道程の三分の一を消化した頃。
不意に卓上の通信機器が着信を告げる。
「……ん? グリフィン本部経由の通信……。秘匿回線?」
ドローンを自動操縦に切り替え、指揮官が通信機を操作する。
付属のホログラム端末が起動すると、そこには白衣を着た妙齢の女性が映し出された。
『こんにちは、指揮官。久しぶりだね』
「……ペルシカさん? お久しぶりです」
まさかの相手に、指揮官も内心かなり驚き、けれどそれを顔には出さず挨拶を返す。
本名、ペルシカリア。
人形に関わる技術の第一人者であり、16LABの所長 兼 主任研究者。
だらしなくシャツの胸元を開け、くすんだ茶色のロングヘアに、何故か猫耳型アクセサリーを飾る彼女こそ、人類最高の頭脳の持ち主だった。
「今日はどうなさったんですか。また頼み事ですか?」
『そうじゃないわ。私だって、いつも何かに困っている訳じゃないよ。ちょっと世間話でもしようと思っただけ』
「申し訳ありません。あいにくと仕事中ですので、重要な案件でなければ時間を改めて頂きたいのですが」
『あ、うん……。分かってる。分かってるんだけど……じゃ、邪魔しないようにするから。ダメ?』
相変わらず眠そうな顔のペルシカだったが、支援に集中したかった指揮官が話を遠慮しようとすると、慌てて食い下がってくる。
こう見えても30代……指揮官より年上なのだけれど、あまり貫禄は感じられず、掴み切れない人物でもあった。
正直、邪魔にしかならないのだが、世間話が建前で、本当は他の話がしたいのだろう。
G&Kの代表、べレゾヴィッチ・クルーガーとも覚えが良い彼女を無下に出来ず、指揮官はドローン操作の片手間ながら、相手をする事にした。
『M4はどうしてる? 他の戦術人形とは仲良くしてる?』
「はい。関係は良好です。特に、張り合う相手が出来てからは楽しそうですよ」
『張り合う相手……。あのM4が、ねぇ。具体的にはどんな風に?』
「この前は……何を思ったのか、メイド服を着てましたね」
『メイド服ぅ? メイド……M4が……』
「一応言っておきますが、強要してはいませんから。彼女の自由意志による行動ですから、誤解しないで下さい。絶対に頼んだりしてませんので」
『……ホントに?』
「本当ですっ」
目を丸くするペルシカに、指揮官が重ねて念を押す。
契約上、M4A1の所属は16LABであり、指揮官が──G&Kが預かっているだけ。
いわば秘蔵っ子の戦術人形に、下劣な欲望ままメイド服を着せたなどと、勘違いされたくないからだ。もっとも、その念押しが逆に怪しさを醸し出すのだが。
不穏な空気を感じ取り、指揮官は自ら話を振って話題を変えようと試みる。
「いい機会ですから、こちらからも聞かせて欲しい事があります。よろしいですか」
『ん、いいよ。答えられるかは保証できないけど』
「……“彼女達”と引き合わせたのは、何故ですか」
一瞬の沈黙。
緩みかけていた雰囲気が引き締まり、ペルシカが薄く笑みを浮かべる。
『それは、どっちの話?』
「遊び呆けていると思われている方です。……正直、知っていい情報だったとは思えないんです」
指揮官の言う“彼女達”に、ペルシカは二つの候補を上げる事が出来た。
後か先か。内か外か。
補足によって後の方であると分かると、通信機越しだと分かりにくい位に小さく肩をすくめる。
『まぁ、そうかもね。私も本来なら積極的に関わるべきじゃないし』
「では、どうして?」
『一番遠い存在だったから……かな』
「遠い?」
『そう。遠い』
科学者らしからぬ抽象的な言い回しに、眉を寄せる指揮官。
彼女……ペルシカにとって遠い存在。
ほぼ全ての戦術人形にとって、必ず関わる存在であるはずなのに。
思わず、その言葉の意味するところを考えようとしてしまうが、ペルシカは先に次の話を始めた。
『そういえばなんだけど……お礼、まだだったよね。“あの一件”の』
「……報酬なら頂いた記憶がありますが」
『いや、気持ち的な方の、ね? 実はもうそっちに送ってるんだけど』
「送っている?」
『うん。そろそろ確認できるはずだから。楽しみにしててよ』
それだけ言うと、『じゃ、またね』とペルシカは通信を終えてしまう。
秘匿回線では、こちらから通信し直す事も不可能。
置いてけぼりにされ、指揮官は仕方なくドローンの操作に戻る。
「もしかして、お礼が本題だったのか……?」
回りくどい癖に妙に律儀な所がある彼女だ。きっとそうなのだろう。
送っている、という部分が気になるが、その疑問はすぐに氷解する事となる。
大陸製銃器の部隊に随行させているドローンが、遠方に輸送ヘリを捉えたのだ。
「あれは、グリフィンの輸送機、だな」
敵機かと身構える指揮官だったけれど、識別信号と胴体横の社標のペイントから、それがグリフィンの使用する機体であると判断できた。機体下部には投下式のコンテナが連結してある。
支援部隊や物資を要請したりはしておらず、この地域に飛んでくる理由がない。しかしつい先程、ペルシカは「もう送っている」とも。
ひとまず状況を確認するため、指揮官は部隊への通信回線を開く……。
時を少々遡り、まだ指揮官がペルシカと通信を始める前。
定期巡回の経路を巡る装甲車の上部──経費削減のため、銃座を撤去した跡の開口部から、とある少女が顔を出し、大きく背伸びしていた。
「んー! まさに絶好の巡回日和だよねー! 太陽が気持ちいい~」
幼さを残す顔立ちに風が吹きつけ、ポニーテールにした黒髪と、短めの白いマントをたなびかせている。
ごく普通の緑色のノースリーブに、ベージュ色のスカートを合わせる彼女の名は、63式自動歩兵銃。同名の大陸産ARと同期した戦術人形だ。
降り注ぐ陽光を一身に浴び、楽しげに笑っている63式だったが、そんな彼女に車内からツッコミが入る。
「ちょっと、巡回日和って何よ63。ピクニックとかと勘違いしてない?」
「し、してないよ、ホーク! ただ純粋に、日の光が暖かいから、やる気が出るなぁっていうだけで……」
「っふふ、冗談冗談。分かるよ、その気持ち。この景色だけ見れば、本当に平和そのものだしね」
「む~……。ホークの意地悪……」
「ごめんってば。ほら、飴あげるから許してよ。いらない?」
「……いる」
機嫌を損ねてしまった63式に、赤味がかった茶髪を一本の長い三つ編みにする女性が飴を差し出す。
都市迷彩を施された上着とスカートを着ているが、スカートの裾から覗くスパッツが、スポーティーな印象を与えている。
97式散弾銃。
ライオットガンとも呼ばれ、防暴銃と表記する場合もある銃器を使い、戦闘時には、赤い星が刻印された強化アクリルの盾を左腕に構え、最前線を走る戦術人形だ。
ホークと呼ばれているのは、メーカーの名前に鷹の文字が入っているからである。
ホークから飴をもらい、63式はとりあえず機嫌を直したようだ。頰っぺたがリスのように膨らんでいた。
それを見て、車内に居たもう一人の食いしん坊が笑っている。
「ホント、これでお弁当もあれば最高なんだけどねー。肉まんとか作ってくれば良かったかな?」
「アンタは少し緊張感持ちなさい、56。そんな風に食べ物の事ばっか考えてると、逆に鉄血に食べられるわよ」
「む。何よ、じゃあホークは補給無しで戦えるっていうの? 飲まず食わずで鉄血共を倒せるのっ!?」
「そうは言わないけどさ……」
ホークに56と呼ばれる、豊かな黒髪を赤い星の髪飾りです二つに結う少女は、凄まじい剣幕で食への情熱を語る。
胸元を大きくくり抜いた、ノースリーブのボディスーツと短パン姿が、健康的な肉体美を引き立てていた。
戦術人形としての正式名称は、56式自動小銃1型。もしくは、56式自動歩槍1型である。
食事に対して並々ならぬ熱意を持つだけでなく、料理の腕も中々であり、基地では厨房に立つ事も多い。
が、巡回任務中とは思えない騒がしさに、部隊長である戦術人形──助手席に座る92式が、運転手である64式の集中をみださないよう、皆を窘める。
「貴方達、いい加減に静かにして。こんなに騒いでいたら、鉄血に気付かれてしまうわ。
全く……。指揮官さんのおかげで台所事情は改善してるっていうのに、変わらないんだから」
「当たり前でしょ! 食欲は人間の三大欲求の一つだよ? 空腹を幸せで満たす事を考えるのは、人生の楽しみ方を考えるのと同じなんだからっ」
「私達、人形だけどね」
「63式、野暮なこと言わない!」
一応の上官から窘められても、56-1式の勢いは衰える事がない。
つける薬もないのかと、92式は天を仰ぐしかなかった。
ちなみに、92式は茶髪をショートカットにしていて、星の飾りがついた紫色の帽子を被っている。
帽子と同色のフリル付きスカートを履き、肌けた上着は裾を胸の下で結んでいた。
経験豊富な戦術人形であり、新たに配属されたこの部隊でも辣腕を振るっていたが、その視線は、呆れ返るついでに空を行く影──不審な輸送機を発見してしまう。
即座に車載レーダーを確認、発せられる識別信号がグリフィンの物であると確かめた92式が、そのまま指揮官へと通信を繋ぐ。
「指揮官さん。こちら第一巡回部隊、92式です。上空に、グリフィンの識別信号を発する輸送機が見えます。確認できますか?」
『ああ。こちらでも視認している。今、それに関すると思しき通信もあったんだが……』
「そうでしたか。なら……あ、コンテナを切り離しました」
言うが早いか、輸送ヘリとコンテナを繋いでいた連結器が解除され、装甲車から遠くない地面に突き刺さった。
轟音と土煙が上がり、木々から羽を休めていた鳥達が飛び立つ。
一番確認しやすい位置に居る63式が、双眼鏡でコンテナ周辺を確かめる。
「うわー、結構近くに落ちたわね、すっごい衝撃」
「ちょっとマズいかも……。今の、絶対に鉄血にも聞こえているはず」
「ええ、そうね。指揮官さん、どうしましょうか?」
『すまないが、寄り道して中身を確認して欲しい。64式の言う通り、鉄血も気付いている可能性がある、十分に警戒を』
「はい。素早く静かに確実に、ですね」
指示を受け、装甲車と指揮官のドローンは一直線にコンテナへ向かう。
まずは側面に急停車して一方の視界を塞ぎつつ、戦闘体勢を取る皆が、特殊合金製の簡易トーチカを手に飛び出す。
コンテナの背面を除く残り二方向で、即座に陣地を形成した後は、63式と64式、56-1式が警戒に当たる。92式が荷を開け、ホークはその護衛だ。
各側面には認証のためのパネルが存在し、92式が陣地内に向かうそれに手を乗せると、プログラムがグリフィン所属の人形であると判断。
プシュー、という音を立て、ロックである上部ハッチが開く。続いてどの壁面を開けるかを選択。92式が離れる。
数秒経つと、重い壁面が陣地内へと倒れ、ようやく運搬物を確認できるように。
自動照明が照らし出す内部には……ポツンと一つだけ、紙袋が置かれていた。
「こ、これは……」
『どうした、92式?』
「……コーヒー豆、ですね」
『コーヒー豆ぇ?』
「は、はい。しかもこれ、代用コーヒーとかではなく、本物のですよ?」
92式が紙袋を取り上げると、その表面には上書きが貼り付けられており、物凄く分かりやすいコーヒー豆の写真と、産地や生産者の詳細があった。
オマケに一枚の付箋が付けられていて、「thank you!」と書かれている。ペルシカが書いた物だろう。
コーヒー豆を一袋運ぶためだけに、輸送ヘリと投下式コンテナ。
これぞ無駄遣いの極みか。
指揮官は頭痛を覚えるが、このまま放っておく訳にもいかない。ドローンのマイクを使って、92式に指示を飛ばす。
『あー、とにかく確保して、それから巡回に戻ってくれ』
「了解です。……凄い香り。まだ封を開けてもいないのに」
『それが本物って証拠だ。無事に持って帰って来たら、皆にご馳走しよう。少し量は少なめになるがな』
「まぁ。それは楽しみです」
『……56。摘み食いはダメだからな』
「うぇ!? な、何言ってるんですかぁ指揮官ってばぁ、流石にコーヒー豆をそのまま食べはしませんよ~あはは~」
「そう言いつつ食べそうだよね」
「食べるかもねぇ」
「食べようとはするんじゃない?」
「ちょっとぉ!? 私の事なんだと思ってるのよ!」
急に話を振られて慌てる56-1式だったが、63式、ホーク、64式の三人が勝手に肯定してしまい、顔を真っ赤に拳を振り上げている。
未だ敵の脅威は去らないけれど、少なくとも、今日の某地区は平和だった。
一方その頃、臨時司令部の警護をしているはずの一〇〇式とM4A1は……。
「どっちが指揮官にオヤツの差し入れをするのか、いざ尋常に勝負、です!」
「いいですよ。絶対に負けませんから。……じゃんけんぽん!」
『あいこでしょ、あいこでしょっ、あいこでしょっ!』
警護そっちのけで、じゃんけん勝負を長々と繰り広げていたのであった。
やっぱり、某地区は平和である。
2018年も年の瀬。
ウサギ狩り作戦が終了し、ジンジャークッキー回収イベントが熱いというのに、作者は財布が寒くてガタガタ震えております。ガチャは悪い文明だホント!
にしても、人形製造イベントで資材を溶かすのは楽しいですな。
こういうのがないとMGレシピとか回す気にならないし、新しい子をお迎えできるのはやっぱり嬉しい!
……大本命らしいカルカノ姉妹の妹さん、PKPさんとは、残念ながら縁がなかったけども。製造契約500枚消費したんすけどねぇ……。途中で資源が尽きて息切れですわ。
これから毎日レシピ回せば、半年後くらいまでに……来て……くれるかなぁ……欲しいなぁ……。
まぁ、見た目性能的に絶対欲しかった、六四式自とカルカノお姉さんはキッチリ確保したんですが。六四式自ちゃんはサクッと呼べたし、お姉さんの方は二人も来ました。
六四式自ちゃん、白シャツに赤ネクタイは国旗イメージですかね? 大破の破れタイツがえっちぃ。くっ殺感満載。
カルカノお姉さんは爽やかな笑顔が素敵。大破のポロリも堪りませんがな。
まだ声が聞けなくて寂しいけど、六四式自ちゃんは一〇〇式ちゃんと組ませて使う予定。スキルの強弱なんて知らん。六二式ちゃんも来るし、早く日本銃小隊を作れるようになって欲しいです。
他の☆5(15体)はダブりだけだったので割愛します。せめてもの救いは、G11ちゃんとWA2000ちゃんが余分に来てくれた事でしょうか。戦力アップは確か。うん。
ただ、途中で45姉が3連続で来たのはなんだったのか……。本編に出せって要求されてる? つ、次っ、次出すから鼻パンチは待って下さいお願いします。