戦術人形は電気イタチの夢を見るか 作:缶コーヒー
なぜか以前通っていた高校にまた通う事になり、車で爆走して駅へ。
見覚えがないのに懐かしい級友とダベりながら、出席日数を謎の美少女ゲームアプリで管理してました。しかも登場キャラ全員がメイド服着てました。
……我ながら煩悩まみれ。いや好きですけど、大好きですけどメイドさん。ゲパちゃんとかキャリコちゃん、ダネルちゃんのメイドスキン超楽しみ。
それはさて置き今回は、けも耳戦術人形だらけなお話。
きっと製造メーカーには「けも耳だけでも十分可愛い派」と「けも耳は尻尾があってこそ活きる派」があるに違いない。
ちなみに作者は後者ですが、尻尾だけというのも選択肢としてはアリな気がする今日この頃。
「猫ちゃんの愛を取り戻したい、ですか?」
「はいぃ……。うううっ……」
唐突な懇願に、ステアーTMPは困惑していた。
いつぞや、指揮官がG41やヴィーフリ達と組んず解れつしていた、ベンダー前の休憩所。
黒いコートを着て、酷く困った顔をしている長い茶髪の戦術人形が、SMG同期型戦術人形、TMPである。
彼女の眼前には、泣き濡れる頬をハンカチで拭うAR同期型戦術人形、ティスの姿も。
早めに仕事が終わった午後。
ちょっと一息入れようとしていた所にティスがやって来て、今に至るのである。
「あの……大変だなぁとは思うんですけど、どうして私に?」
「だって、貴方は猫耳も、猫の尻尾も付いてるじゃないですか。だったら猫の気持ちが分かると思って、藁にもすがる思いでぇえぇぇ」
「あはは……私は藁なんですね……」
切羽詰まっているようだし、悪気は無いのだろうが、暗に頼りないと言われている気がして、TMPは苦笑いを浮かべる。
その頭部にはティスが言った通り、黒い猫耳があった。
G41とは違ってメカメカしく、どちらかと言えばアクセサリーに見えるデザインである。一方で尻尾は普通の、黒い猫の尻尾に見え、少々チグハグな印象が否めない。
それを自覚しているからなのか、ティスの力にはなれそうにないと、TMPが申し訳なさそうに答える。
「残念ですけど、私は本物の猫ちゃんじゃないので、気持ちまでは流石に……」
「そうなんですか? 喉をくすぐられたり、尻尾を撫でられたりする感じも分からない?」
「それは……」
縋るような目で見つめられ、思わず考え始めるTMP。
くすぐられたり、撫でられたりと言うからには、誰かからそうされるという事。
真っ先に思い浮かんだその相手は……指揮官だった。
『TMPは可愛いな』
『へっ!? い、いきなり何を言うんですか、指揮官……』
『すまない。驚かせただろうけど、もう我慢できないんだ』
『が、ががが我慢? あああの、私、あの……っ』
『いいから。さぁ、たっぷり可愛がってあげよう』
妙に煌びやかな飾り付けの、中央に回転するベッドがある謎の部屋で、二人は向かい合っていた。
指揮官が笑みを浮かべてTMPへと近づき、両肩に手を置いて後ろへ追いやる。
TMPはベッドに押し倒され、怯えた瞳で彼を見つめるが、止めてくれる気配は無い。
そして、無骨な手をコートの中に進入させようと、太ももに指が……。
「だめ……あ……そんなとこ、触っちゃ……にゅふ……」
「……TMPさーん。どこ見てるのー?」
「ふぇ? ……あ゛っ、ごめんなさいなんでもないですっ!」
よだれを垂らし、緩んだ顔で妄想に身悶えするTMPを、ティスのジト目が現実へ引き戻す。
とある一件から指揮官への好感度が振り切れ、事ある毎に妄想に浸ってしまう。これがTMPの欠点であった。
仲間内では有名な事であり、今更ティスも指摘はしないで話を戻した。
「とにかく、少しでも猫の気持ちが分かるんだったら、どんな風にしてあげれば喜ばせられるのか、タツノコを寝取り返せるのか、教えて欲しいの。お願いしますっ」
「寝取……え、えっと、私が教えられるのなんて、私がどうされたら嬉しいかくらいなんですけど……」
「それでもいいから!」
「そうですか……」
寝取り返す、という発言に不安を覚えるけれども、ティスは真剣そのものであり、切実だった。
こうまで頼られて突き放す事は出来ず、TMPも質問の答えを考える。
「私だったら、優しく触られたら嬉しい、ですね。腕の中に抱きしめられて、甘い言葉を囁かれながら、耳をコショコショされたり、尻尾をスリスリされたり……ぬふふ……」
「ほほう、なるほど」
猫の喜ぶ事というより、自分自身が喜ぶ事……つまりは、いつもしている妄想の内容を語るTMPだが、ティスは真面目にメモっている。
そんな事をせずとも記録領域に刻めるのだろうけれど、様式美という物である。
方や、TMPの妄想ボルテージは上り続け、語り口にも熱が入っていた。
「やがて、お互いの気持ちは高まり、自然と顔が近づいて、ついに……!」
「ほうほう、鼻ツンツンですね、分かります! やって貰えると嬉しいですね!
ところで撫でる時は、やっぱり毛並みに沿って、上から撫でた方が気持ちいい?
下の方からこう、グワッとやっちゃっても大丈夫?」
「し、下からグワッ!? そそ、そんなことされたら私……立ってられない……っ」
「そうですか……。難しいところね……」
猫とイチャイチャする光景を想像するティスと、指揮官とイチャイチャする光景を想像するTMP。
微妙にすれ違いつつ会話は成立してしまい、TMPの妄想は更に加速。擬似感情モジュールがスパークし始めていた。
そして……。
「他に触られて気持ちいい所は? お腹とか、太ももとか、首筋とか頬っぺたとか背中とか」
「……お腹……太もも……首筋、頬っぺた、背中……はうっ……」
「あっ、ちょっと!?」
ついに限界点に到達してしまったらしいTMPは、頭から湯気を立ててベンチに倒れこんだ。
慌ててティスが様子を伺うも、単に熱暴走しただけらしく、放っておいても意識を取り戻す──再起動するだろう。
問題なのは、まだティスの悩みが解決いていないという事だった。
「どうしよう。けも耳系戦術人形、他に頼れる子は……」
TMPの頭の下へ、枕代わりに自分の帽子を入れつつ、ティスが途方に暮れる。
できれば秘密にしたい悩みだけれど、背に腹は代えられない。
幸い、この基地にはTMPの他にも、動物系の要素を持つ戦術人形が在籍しているが、その中で頼りに出来る子はだれだろう?
ティスは一人悩み続けていたが、そんな時、ふと休憩所に影が差し。
「話は!」「聞かせて!」「貰ったにゃー!」
「はっ。そ、その声はっ」
ベンダーの発する光を背後に、三つの人影が扇型を描いて現れた。
それぞれに猫耳を持つ彼女達の名は、左からMk23、P7、IDWである。
心強い味方の登場……なのだが、どうしてもティスは問わずにいられなかった。
「なんで組体操してるの?」
「いえ、なんとなく?」
「こういうのはノリと勢いが大事なんだにゃ! 細かい事は気にしちゃダメにゃ!」
「っていうかっ、どうして一番小さいあたしが真ん中なのよ! 腕がモゲるー!」
小首を傾げるティスに、同じく疑問符を浮かべるMk23。
その反対側ではIDWが楽しげに笑い、中央のP7だけが歯を食いしばって二人の重さに耐えていた。
特に意味も無かったらしく、P7は程なく愛の感じられない大岡裁きから解放される。心なしか、いつもの修道服がくたびれて見えた。
ちなみに、IDWの服装も、普段通りのスポーティーな短パンに袖捲りしたワイシャツ姿である。
一方でMk23は、胸元が大きく開いた、星条旗柄のタイトなノースリーブ・ワンピースを着ている。
スカート部分にはフリルが付き、白いオーバーニーソックスはハート型にくり抜かれていたりと、可愛らしさに特化した衣装だった。
髪は茶色のロングヘアで、前髪の一房に赤いメッシュ。二人と違う点として、Mk23には猫耳は無く、頭には黒い猫耳型の髪飾りが。
鈴の付いた黒猫の尻尾は持っているけれど、それがアクセサリーなのか生えている物なのかは、本人だけの秘密である。
そんなMk23は、P7の「重い」発言が気に障ったようで、プンスカと腕を組んだ。
「全く、失礼しちゃうわ、P7ったら。わたくし、こう見えても体重は軽い方なんだから」
「嘘言わないでよ、使ってるのもやたらデカくて重いHGじゃん」
「銃は関係ないでしょう! それに、貧弱なボディよりもボリュームがあった方が、ダーリンだって満足してくれるはずだもの! 大口径主義だって聞いたし!」
「あーはいはいそーですかー。色んな意味で小さくて悪かったですねー」
「まぁまぁ二人共、ケンカしちゃいけないにゃ~。アニマル系戦術人形同士、仲良くしていこうにゃ~」
Mk23が自慢気に胸を張り、プルンと弾む柔らかさで、P7の目付きを悪くさせる。
外見設定からすれば平均値だし、別にコンプレックスがある訳ではないが、ああも見せつけられると少しばかり腹立たしいのだ。
そういった機微を全く意に介さないIDWが間に入ったため、怒る気力も失せてしまい、P7はさっさと本題に入る事にした。
「とにかく、話はだいたい分かってるわ。
「愛を取り戻すために奮闘する乙女……。こんなの、応援せずにはいられませんものっ」
「大船に乗ったつもりで任せるにゃー!」
「おおお……! なんて頼もしい、ありがとう、ありがとうございます!」
思わぬ形で心強い味方が現れ、ティスは感動のあまり涙ぐむ。
大げさかも知れないが、彼女にとってはそれだけ大事な話なのである。
それを察しているからか、三名のアニマル系戦術人形達はティスと車座になって作戦会議を始めた。
「でも、具体的にどうするにゃ? ハッキングして感情値をイジるのは論外として、正攻法で攻略するのかにゃ?」
「それが一番確実だと思うわ。ズバリ、自分を磨くのよ!」
「自分を磨く、ですか……」
真っ先に案を出したのはMk23。
夢見る乙女のように、熱に浮かされた表情で、身をくねらせながら彼女は語る。
「相手の好きな香水をつけて、好みの格好をして、決して自分の都合だけを押し付けない。
これを徹底するだけでも、好感度はグングン高まっていくはずですわ!
そしていつしか、わたくしとダーリンも……きゃー!」
「ふむぅ……。つまり、魚介系の香水をつけて、魚の着ぐるみを着て、空腹時に攻めろ、と。nozamAで売ってればなんとか……」
「え? 魚介系?」
「なんか致命的に勘違いしてるっぽいにゃ」
「魚介系の香水って新発想だわ……。後でイタズラに使お」
……しかし、残念ながら肝心のティスには伝わらず、トンチンカンな返答に目を丸くしてしまう。
Mk23の言い方が、人間を相手にした正攻法の紹介だったせいもあるだろうが、なんとも個性的な感性である。
ひとまず、Mk23の案は保留しておく事にして、次に手を挙げたのはP7だ。
「じゃ、次はあたしね。正攻法もいいけど、時には邪道も必要! あの新入りに、猫に嫌われる要素を無理やり与えちゃえば良くない?」
「ええっと……要するに、ライバルへの好感度を下げる作戦ね。ちょっと罪悪感があるけど、恋は戦争、割り切らなきゃ」
「うにゃあ……。エグいこと考えるにゃ、P7。で、そう言うからには何か案があるにゃ?」
「当ったり前よ! にひひひ」
これこそあたしの本分よ! とでも言いたげな不敵な笑みで、P7は更に続ける。
「猫が嫌うものと言えば、水気と騒音。
あいつと猫が一緒に居る時に、びしょ濡れ系のイタズラを仕掛けたり、スオミを乱入させちゃうの。
どうよこの案! 絶対イケるわ!」
「一緒に居ると嫌な事が起きるって印象付ける、ですか。確かに悪どいけど、有効かも……」
自信満々なP7に引っ張られて、ティスも邪道に染まりつつあった。
戦争では騙し討ちも、不意打ちも正当化される。勝った者が正義となり、敗北こそが許されざる悪。
恋愛においてもこれは同じであり、最後にハートを射抜くためなら、手段を選んでいては駄目、という事だろう。
補足になるが、スオミというのは「フィンランド」をいう意味を持つフィンランド語であり、かの国で開発されたSMG、KP-31と同期した戦術人形の名前でもある。
彼女はメタル……いわゆるハードな音楽の愛好家でありつつ、本人は至って清楚で可憐、しかし敵には苛烈極まりないという、相反する側面を合わせ持つ戦術人形だった。詳しくは後日、語る機会もあるだろう。
「問題は、その子がイタズラに引っ掛かるか。それと、スオミが協力してくれるかよねぇ」
「大丈夫っ。なんてったって、あたしが居るんだから! 絶対に引っ掛かる罠を作るし、スオミなら『メタルに興味あるかもよ』って吹き込めば勝手にやってくれそうじゃない?」
「あー、分かるにゃー。スオミのメタル布教はガチめだからにゃー」
アニマル系の三名が顔を突き合わせ、更なる細かい話を詰めていく。
特に、被害に遭ったのだろうIDWの呟きは、重い説得力が感じられた。
このまま行けば、ティスの想い猫・タツノコと416はハートブレイク間違いなしか。
……と、思われたのだが。
不意にティスは首を振り、皆の意見に反対する。
「……ううん、やっぱり駄目。罠とか無理やり嫌わせるとかは、したくない」
「ええー!? なんでよー!? 心配しなくても、バレるようなヘマはしないって!(……多分、きっと、おそらく……)」
「そうじゃなくて。もしも自分が……私自身がそんな風にされて嫌われたら、凄く悲しいから。あの子はライバルだけど、憎い訳じゃないし」
実はあんまり自信のなかったP7に対し、ティスは穏やかに告げる。
恋は戦争。戦争に綺麗も汚いもない。勝てば官軍、負ければ逆賊。
それを理解した上で、卑怯な真似はしたくないと。
まぁ、そもそもこれが恋なのかという疑問は残るけれど、そんな事を抜きにしても清廉な、清らかな宣誓であった。
思わず誰もが口をつぐみ、やがて、Mk23の微笑みが沈黙を破る。
「ティスは真面目なのね……。良いわ、それなら正々堂々、真っ向勝負で愛を勝ち取りましょう!」
「うん! 頑張る!」
「いい話だにゃ~。青春だにゃ~」
「ちぇー。つまんなーい。……ま、本人がそれで良いなら構わないけどー」
むんす、と鼻息荒くティスはガッツポーズをし、胸を打たれたIDWがハンカチで涙を拭っていた。
唯一、P7はつまらなそうにボヤいているけれど、無理に話を進めようとしない辺り、少し前の一件が効いているらしい。
このままイタズラ癖が治ってくれれば、基地内も一段と平穏になるのだが、転ぶ時はついでに誰かのスカートを掴んでズリ下ろすのが彼女。きっとそうはならないのだろう。
「というかだにゃ。そもそもティスは嫌われてないんじゃないかにゃ?」
「はい? どういうこと?」
「話を聞いててそう思っただけにゃ。今は単に新しい遊び相手に夢中なだけで、しばらくしたら戻ってくる気がするにゃ~。ほら、猫はツンデレってよく言うにゃ」
「そう、かな……」
「きっとそうにゃ! もっと自信持つにゃ!」
何はともあれ、IDWが最後を美味しくまとめて、作戦会議はつつがなく終了した。
方向性が決まって落ち着いたのか、ティスは晴れやかな顔付きで皆に頭を下げる。
「みんな、話を聞いてくれてありがとう。お礼と言ってはアレだけど、今日のご飯は奢るです」
「ホントかにゃっ? やったにゃー! 節約は大事にゃ、勿論ご馳走になるにゃー!」
「あら、この位別にいいのに。……でも、わたくしも一緒しますわ。折角ですし、もっとお話しましょうか」
「あたしは、タダでご飯食べられるなら着いて行くよー。ティスの発想は侮れないから、いいネタ仕入れられそうだし」
気前の良いティスの提案に、三名はそれぞれに理由をつけて飛びつく。
誰も彼もが笑顔を見せながら、上機嫌な足取りで休憩所を後にする。
賑やかな話し声が遠ざかり、やがて、休憩所からは人気がなくなった。
だがしかし、ここで思い出して欲しい。
この場にはまだ、戦術人形が居なかっただろうか。
そう、ベンチに寝かされ、そのまま忘れられてしまったTMPである。
戦術人形の休眠状態は、あらゆる駆動が静音モードで行われ、様々な観点での存在感を薄れさせるため、仕方のない事でもあった。
直後に濃い面々も現れたし、決してティスのせいではなく、かといってIDW達のせいでもなく、本当に巡り合わせが悪かっただけなのだ。
そして、この悪い巡り合わせが、TMPに本日最大の幸運を引き寄せる事となる。
偶然にも、TMPが寝かされている休憩所に、二人の人影が立ち寄ったのだ。
「……およ? ねぇねぇ指揮官、こんなとこでTMPが寝てるよ」
「うん? ……本当だ。なんでこんな所で」
一人は、相変わらずグリフィンの制服を着込む指揮官。
もう一人は、彼の本日の副官を務めるAR同期型戦術人形、ART556だった。
奇しくも、556はIDW達と同じく動物の要素を持っており、狐のような耳と短い尻尾が特徴的だ。髪はライトグリーンで、同系色の大きなリボンでツーサイドに結んでいる。
更に付け加えるならば、彼女もG41と同じような、無駄に肌色が多い衣装を着ていたりする。
ワイシャツはノースリーブになっているだけでなく、胸の辺りから下がバッサリとカットされ、下腹部までが丸見え。
サスペンダーで釣られたスカートの丈を膝上で測ろうとすると、スカート本体の長さを超えてしまう。
当然、中身が隠れるはずもないのだが、レザー的な質感から、「あーあれは見えても良いタイプのなんだろうなーもう気にするだけ無駄かー」と指揮官は諦めていた。
閑話休題。
TMPの寝息が整っている事を確認、ただ眠っているだけだと判断した二人は、どうしたものかと顔を見合わせる。
「理由はよく分かんないけど、このままじゃ体痛くなっちゃうね。ちゃんとしたベッドに運んであげようよ」
「……そうだな。しかし……勝手にそういう事をして、嫌がられないだろうか」
「嫌がる? なんで?」
「この子には露骨に避けられているし、触れられるのを恥ずかしがっているように見えるんだ。知らない内に触られていたと知ったら、気にするんじゃないかと」
「あ~……。TMPは恥ずかしがり屋だからね~……」
困った顔をする指揮官に、556も苦笑いで自分の髪をいじる。
本当の感情はさて置いて、普段のTMPは常に指揮官と一定の距離を取り、可能な限り物理的接触を避けていた。
理由はどうあれ、本人が避けている事を意識のない間にしてしまうのは憚られる。
指揮官が躊躇うのも仕方ないけれど、556は逆にTMPの本心をバッチリ理解しており、「ここは応援してあげよう」と説得を試みる。
「でもでも、それはバレたらの話でしょ? こんな所で起きた時に一人ぼっちより、キチンとしたベッドで目を覚ました方が、きっとTMPは喜ぶと思うなぁ」
「……確かに」
556の言葉を聞き、指揮官は顎に手を当て、重々しく頷いていた。何かしら身に覚えがあるようだ。
一般論的に考えても、硬く冷たいベンチで目を覚ますより、暖かくて柔らかいベッドの上で目を覚ました方が、気分が良いに決まっている。
そうと決まれば話は早いし、善は急げとも言う。
TMPの膝裏と肩の下に手を入れ、いわゆるお姫様抱っこをした指揮官は、556に向けて小さく笑った。
「そう言ったからには、秘密にしておいてくれよ、556」
「りょーかい! 部屋は分かる? アタシ、案内するよ」
「ああ、頼む」
556はおどけた敬礼を返した後、指揮官を先導して、跳ねるように歩き出す。
そのおかげで……もとい。そのせいで短過ぎるスカートは捲れてしまい、指揮官は視線を若干上に固定して歩く事を余儀なくされるのだった。
だからこそ、腕の中で微かに身じろぎするTMPにも、気付かなかった。
(あれ……? 指揮官……? 私、指揮官にだっこ、されてる……?
そっか、これ妄想だ。こんな事、現実に起きるはずないもんね。
だったら、せめて妄想の中だけでも、一杯甘えちゃおう。
頭の中の出来事なんだから、いいよね? えへへ……指揮官……)
まだ
やけにリアルな感触を不思議に思いつつ、指揮官の胸に額を擦り付け、胸一杯に彼の匂いを吸い込む。
数分後、自室のベッドに寝かされ、頭を撫でられながら「おやすみ、TMP」と囁かれても誤認は続いた。
やがて一時間が経ち、二時間が経ち、もしかして妄想じゃなかった……? と気付いた彼女は、とても幸せそうに再び熱暴走したという。
おまけ。
ツンデレ云々のくだりを感じ取った、某戦術人形の反応。
「ん? 誰かが私の事を話してる気がする……。
まさかアイツが……いや、そんなはずない、か。それより、もっと自然に話せるように練習しなきゃ。
べ、別に、長く話をしていられるようにじゃなくて、さっさと伝えたい事だけ伝えて、早く話を切り上げるためにだけどっ。ええ、それだけなんだからっ。
………………誰に言い訳してるんだろ、私」
新年早々、製造確率アップイベントで御神籤ひいた(200~300回?)結果、作者は累計33体の☆5人形をお迎えしました。
その中で新規にお呼び出来たのは……出来たのは………………カルカノM91/38、PKP、RFB、97式の4名! やったぜ力技の大吉!
いやー、WA2000ちゃんが7人来ても、NTW-20ちゃんが4人来ても、M99ちゃんが3人来ても、カルカノ姉さんリー先生が2人ずつ来ても、諦めずに回すのは心が辛かったっすわ。
途中で嫌になってMGレシピ回したら97式ちゃんとRFBちゃん、PKPちゃんが来てくれたのもあって、やめようとも思ったんですよ。2人目の一〇〇式ちゃんとか、六四式自ちゃんまで追加で2人来てたし。
けど結果的に回して良かった。おかげで資源も契約も大惨事ですが、くじけぬ心と事前の備蓄って大事。っていうか、こんだけ☆5ライフル引いても出ないKarちゃんってどんだけ~(古い)。
事前の準備と言えば、次の大型イベントが発表されましたけど……。ランキングとかマジなんですかね?
ぶっちゃけ作者は「興味がないので勝手にどうぞ」的なスタンスですが、アクティブなフレンド指揮官が減りそうでそっちの方が怖いっす。人が減ったソシャゲの末路は悲惨やで……。
次回は、おまけにも出た某ツンデレ戦術人形がメインのお話。テンプレな話になりそうですけど、とりあえずお楽しみに。