戦術人形は電気イタチの夢を見るか   作:缶コーヒー

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M4A1のライバル

「あ、あのっ、指揮官っ」

 

 

 危なげなくPMCとしての服務を終え、後は業務内容を報告書にまとめて提出すれば、その日の仕事は終わりといった頃合い。つまりは夜。

 カリーナが雲隠れしたため、珍しくデータルームに籠るハメとなった指揮官へと、声を掛ける者が居た。

 M4A1。

 いつの間にやって来たのだろうか。戦闘中とは違って脚部プロテクターを外し、グリフィンの社章が縫い付けられた白いジャケットを羽織っている。

 

 

「どうした、M4。やけに気合いが入ってるみたいだけど」

 

「え、と、その……。お仕事、お疲れ様です。か、肩をお揉みしましょうかっ?」

 

「いや、特に肩は凝ってないが」

 

「そうですか……」

 

 

 万年筆を置きつつ、唐突な申し出を遠慮する指揮官だったが、途端、M4A1は見るからに肩を落とし、落ち込んでしまう。

 その落ち込み様は酷く、見ている側が居たたまれなく感じたり、何か悪いことをしてしまったのでは? と罪悪感を覚える程だった。

 まぁ実際、ほんの少しでも良いから指揮官によく思われたいという健気な行動を、何の気なしにバッサリ切り捨てたのだから、ある意味極悪人だが。

 

 

「やっぱり、頼もうかな」

 

「は、はい! 誠心誠意、揉ませて頂きます!」

 

「………………」

 

 

 流石に自らの部下──正確には備品なのだが──がそんな表情をしているのは忍びなかったのか、指揮官は考え直し、マッサージを受ける事にした。

 早速、M4A1は彼の座る椅子を回り込み、グローブを外して両肩へ手を添える。

 そして、その細い指に力を込め始めた。

 

 

「い゛っ⁉ え、M4! 強過ぎるっ、もっと弱くっ」

 

「えっ、あ、ごごご、ごめんなさいっ!」

 

 

 ……が、戦術人形の握力は、普通の人間には強過ぎたらしく、指揮官は悶絶する。

 慌ててM4A1が手を離すと、彼は息も絶え絶えに天井を仰いだ。

 

 

「か、肩を砕かれるかと思った……」

 

「本当に、ごめんなさい……。男の人だから、強めの方が良いかと……」

 

 

 気遣いが仇となってしまい、またもM4A1は落ち込む。

 虫も殺せないようなか弱い少女に見えるけれど、彼女も戦術人形。

 その気になれば素手で鉄パイプを握り潰し、数百kgはあろう大岩すら持ち上げられる。

 むしろ、一瞬で砕かれなかっただけ良かったのかも知れない。

 

 

「とにかく、続けてくれるんなら、もう少し弱めで頼む」

 

「はい。今度こそ、ちゃんと……!」

 

「ホントに弱めでね」

 

 

 相当痛かったのか、続きを促す指揮官の声は弱々しい。

 改めて添えられるM4A1の手にもビクッとしてしまうが、適切な力加減でのマッサージが始まると、瞬く間に緊張は解された。

 

 

 

「どう、ですか?」

 

「ああ、気持ちいい……。意外と凝ってたのかも知れないな……。あ゛~……」

 

「良かった」

 

 

 目を閉じ、完全にリラックスしている指揮官を見て、ようやくM4A1にも笑顔が戻る。

 空調の音と、微かな衣擦れの音と、ゆったりとした息遣い。

 しばらくの間、それらだけがデータルームを支配した。

 やがて、指揮官の呼吸は更に深くなり、頭が船を漕ぎ出す。

 

 

「指揮官……? 眠いなら、そのまま眠ってしまっても……?」

 

「ん……いや……報告書が……あるし……」

 

「ちょっとくらい、大丈夫ですよ。誰も見てません」

 

 

 優しく囁かれ、抵抗も虚しく、指揮官は眠りに落ちた様だった。

 体を弛緩させて、M4A1の手に頭を預け、穏やかな寝息を立てている。

 

 

(髭がチクチクする。男の人、だものね)

 

 

 処理が甘かったのか、時間が経ってまた生えてきたのか。

 指揮官の頬に触れる手に、ザラザラ、チクチクとした感触があった。

 あまり心地好い感触でもないはずが、何故だかM4A1は、全く不快に感じなかった。

 それどころか、彼女はこう思ってしまうのだ。

 

 ああ。この時間が、永遠に続けばいいのに。

 そうしたら、指揮官と、彼とずっと……。

 

 

「失礼します。指揮官、コーヒーを持って──あ」

 

「あ」

 

「んぁ?」

 

 

 ウィン、と自動ドアの開く音。

 二人だけの世界を壊したのは、マグカップを小さなトレイに乗せて運ぶ、一〇〇式機関短銃であった。

 互いに存在を予想していなかったのか、M4A1と一〇〇式は見つめ合って硬直し、指揮官は指揮官で間抜けな声を出しつつ、意識を覚醒させる。

 

 

「一〇〇式か……。どうした?」

 

「あ、えっと、コーヒーを淹れて来ました」

 

「おお、助かる。本格的に居眠りする所だった」

 

「いえ。そろそろ一息入れた方が、お仕事も捗るかと思って」

 

 

 一人が動いた事で、残る二人も硬直が解け、M4A1はササッと指揮官の隣へ。

 一〇〇式はその反対側から、テーブルの上にマグカップを置き、なんとなく、M4A1と距離を取って並ぶ。

 

 

「M4A1さんは、どうして……」

 

「ああ、肩を揉んでくれてたんだ。コツも掴んだみたいだし、これからは専属のマッサージ師になってもらうか」

「……もう。指揮官? 私は戦術人形なんですよ」

 

 

 まだ夢見心地らしく、マグカップを取りながら冗談を言う指揮官。

 M4A1がそれに苦笑いで、けれど満更でもなさそうに答え、親密な空気感が漂う。

 一〇〇式の思考にノイズが走った。

 ……面白くない。胸の辺りが、ムカムカする。

 

 

「随分と、仲がいいんですね」

 

「それはそうだろう。

 これまで一緒に修羅場を切り抜けてきたんだし、これからもそうだ。

 信頼関係が無ければ、戦場で連携も取れない」

 

「そういう意味じゃ………………鈍感」

 

「何か言ったか?」

 

「いえ何も」

 

 

 一〇〇式の遠回しな嫌味……というか、拗ねた発言に、彼はグリフィンの指揮官としての正論で、しかし男としては大幅にズレた答えを返す。

 わざと? それとも天然? どちらにせよ性質が悪い。

 そんな一〇〇式の胸の内を知る由もない指揮官は、コーヒーを含んで満足そうに吐息を漏らして。

 

 

「ん、美味い。好みを覚えてくれてたんだな」

 

「はい。お砂糖は2つ、ミルクはティースプーンに一杯だけ、ですよね。指揮官の事なら、なんでも覚えてます」

 

「そうか。ありがとう」

 

 

 今度はM4A1を差し置き、指揮官と一〇〇式が、長年連れ添った間柄感を醸し出す。

 一〇〇式の澄ました顔が、「私は貴方が知らない事も知ってるんですから」と、M4A1にはドヤっているように見えてしまう。

 当然、面白くない。カチンと来た。

 

 

(いい情報を聞きました。これで私も、指揮官好みのコーヒーを淹れてあげられます)

 

(そうですか。なら私も、肩揉みの練習をしておきます。指揮官に満足してもらうために)

 

(………………)

 

(………………)

 

 

 戦術人形同士にしか聞こえない短距離秘匿通信を使い、指揮官に知られる事なく火花を散らす、M4A1と一〇〇式機関短銃。

 果たして、彼女達の想いが報われるのは、いつの日になるのだろうか。

 事の元凶である指揮官が、なんにも気付かず幸せそうにコーヒーを飲んでいる辺り、遠い未来になりそうである。




 新規実装キャラはスオミちゃんしかお迎え出来ませんでした……。
 本当はロリ痴女さんが欲しかったんですが、お尻がえっちぃのでこれはこれで。スキル微妙らしい? 可愛いは大正義っすよ。
 ガチャはまだ引けてません。スキン当たったら浮気するかも。

 最終的に100回くらい製造回したので、副産物として416ちゃん×2、モシンナガンちゃん、みんな家族だちゃん×3を呼べましたが、どうせならUMP45ちゃん欲しかったなー。
 まぁ、あんまり多く来られても収容人数が足りなくなるから考えものですけど。微課金指揮官には辛いところ。
 ところで、9A-91さんも引いたんですが、彼女は何故あんなにシースルー仕様なんですかね? チャックの閉め忘れっすか? よーしオジさんがチャックを下ろしt(プシュン プシュン プシュン
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