戦術人形は電気イタチの夢を見るか 作:缶コーヒー
「指揮官様……。こちら、先日の任務の、報告書になりますぅ……」
「ああ。ありがとうカリーナ。じゃあ次はこっちを頼む」
「そんなぁ!? この前、結果的にサボる形になっちゃったのは謝りますからぁ! もう堪忍して下さいましぃいぃぃ……」
今日も今日とて、某地区地下の司令部に、カリーナの悲痛な叫びが響き渡った。
別段、珍しい事でもなかったりする。
指揮官付きの補佐役にして、補給係も兼任している彼女には、仕事が多い。
機械任せに出来る所も多く、そう聞くと案外楽そうにも思えるが、グリフィンで働く者にとって最大の苦難はそこにない。
一番に時間が必要とされるのは、報告書の作成なのだ。
グリフィン社内で報告書が作成される場合、情報の保護や偽造防止のため、必ず人間の手書き部分が必要……という規則がある。
それが機密性の高い戦闘報告のみならず、物資の購入や搬入記録、外出届けに休暇届け。果てはボールペン一本の紛失届けにまで適応されるため、ひっじょーに面倒臭い。
しかも、それを画像としても保存したり、会社指定の暗号化ソフトでエンコードしたりと、二度手間三度手間が掛かる。
つい先日。諸用で仕方なく司令部を離れた(本人談)カリーナは、その間に溜まった書類仕事のツケを払わされている、という訳である。
ある意味では自業自得なのだが、流石に可哀想でもあり、いつものように指揮官の側に控えていた一〇〇式は、助け舟を出す事にした。
「あの、指揮官。私、カリーナさんを手伝ってもいいですか?」
「えっ! いいのですか一〇〇式さん?」
「駄目とは言わないが……」
「お願いします。少し、可哀想で」
一〇〇式が申し出た瞬間、カリーナの顔は「地獄に仏、いやセーラー服の女神様!」と言わんばかりに輝く。
反対に指揮官は苦い顔だが、食い下がる一〇〇式の親切心を無駄にはしたくないようで、やがて溜め息と共に頷いた。
「分かった。手伝ってあげてくれ。優しいな、一〇〇式は」
「いえ、そんな……」
率直に褒められ、一〇〇式は俯き加減に頬を染める。
嬉しい反面、ちょっとだけ心苦しい。
カリーナが可哀想だったのは本当だけれど、ほんの少しだけ、指揮官が褒めてくれるのでは? という打算があったから。
期待した通りの言葉を受け取ってしまい、自分の打算的なAIを恥ずかしく思うほど、一〇〇式は生真面目だった。
ところがどっこい。
指揮官の側には、やはりもう一人の戦術人形が居る訳で。
「そういう事でしたら、私もお手伝いします」
「M4さんまで? あああ、なんという労わりの心! 優しい戦術人形のみんなに囲まれて、カリーナは幸せ者ですぅ……」
「一人より二人。二人より三人、ですから」
貴方だけに点数は稼がせませんよ。
優しく微笑むM4A1の顔に、一〇〇式だけに見える本心が描き出されていた。
笑顔のまま視線で火花を散らす二人。
仕事量が減る事に喜んでいるカリーナはさて置き、そんな彼女達を指揮官も訝しげに見ている。
「M4と一〇〇式は、仲が良いんだな」
「は?」
「え?」
唐突に一括りとされて、一〇〇式とM4A1、二人は揃って目を丸くした。
表立って反目し合う事は確かに無かったものの、まさか真逆の関係だと思われているなんて、予想だにしていなかった。
一方で指揮官は、似通った反応に確信を深めたらしく、鷹揚に頷いている。
「最近、何かにつけて一緒に居るし、同じ作業をしている事も多いし。そうなんだよな?」
「え、え、いえ、それは、そうじゃない、ような気が……」
「違うようで、違わないような、でもやっぱり違う……」
肯定したくないけれど、しかし面と向かって「仲が悪いです」宣言もできるはずがない。
戦術人形にしては珍しく冷や汗をかきながら、一〇〇式とM4A1は秘匿通信で緊急作戦会議を開く。
(どうするんですかM4さん! 貴方が張り合うから、変な誤解されちゃってるじゃないですか!)
(私のせいにしないで! というか、ここで指揮官の考えを否定すると、逆に心配されてしまうのでは?)
(うっ。……仕方ありません。一時休戦です。指揮官の前での私達は仲良し、という事で)
(そうしましょう。あくまで形だけですけど)
まだ明言した事はないが、同じ人物に対して、一方ならぬ想いを抱く戦術人形同士。
非常事態においては協定を結ぶ事も止むなしである。
方向性が定まったからにはそれに従おうと、二人は仲良しを演じるべく、不本意ながら互いを褒め合う。
「え、M4さんは、AR部隊のリーダーですから。観察眼とか、的確な指示出しとか、学べる事も多いので。一緒に居る機会が多くなっているんだと、思います」
「わ、私も、一〇〇式さんに色々と手伝って貰えるので、助かっているんですよ。私では気付かない、細かい所に気をつけてくれて」
「そうか。良い事だと思うぞ? そうやって日頃から親交を深めておけば、いざという時に生きてくるはずだ。しっかりな」
「は、はい……」
「勿論です……」
「仲良きことは美しきかな、ですわね! さぁお二人共、データルームへ参りましょー!」
指揮官に背中を見送られ、釈然としない何かを感じつつ、すっかり元気になったカリーナと司令部を後にする二人。
一人で司令部に残った指揮官は、受け取ったフロッピーディスク型の報告書を整理しようとデスクへ向かい。
「食えない男だねぇ、
いきなり出現した気配に、思わず肩をビクリと震わせる。
が、その気配が覚えのある物だと気付き、胸を撫で下ろしつつ振り返る。
そこには、オレンジのメッシュが入った長い黒髪を一本に編む、眼帯の少女が立っていた。
「M16か。いつからそこに?」
「新しい報告書を押し付けてる辺りからさ」
M16……。正式名称、M16A1と呼ばれる戦術人形は、着崩した黒いジャケットの裾を翻し、指揮官のデスクへ寄り掛かる。
ジャケットのデザインはM4A1やSOP Ⅱの着ている物とほぼ同じだが、腕章と裾のラインは、髪のメッシュと同じ色──パーソナルカラーのオレンジで個別化されている。ちなみに、M4A1のパーソナルカラーは緑であり、SOP Ⅱは赤である。
だらしなくも見えそうなそれは、どこか歴戦の勇士めいた雰囲気を纏う彼女がすると、様になっていた。
「本当は全部分かってて、その上でトボけてるんじゃないのか?」
「なんの事だ? 主語が抜けていて分からない」
「はは。ま、アンタがそう言うならそれで良いさ。だがな……」
肩をすくめる指揮官にM16は笑い、不意を突いて顔を寄せた。
あと少し近づけば唇が重なる距離で、しかし彼女は左眼を鋭く光らせる。
「M4を泣かせるような真似はするなよ。妹を悲しませるなら、その時は……」
指揮官の胸に指で作った銃を押し当て、「BANG」と引き金を弾く真似を。
距離を戻し、ありもしない硝煙を息で吹き消す姿は、さながら西部劇でも演じているようだった。
どこまでが冗談で、どこまでが本気なのか。
指揮官は大きく深呼吸し、ややあってから、M16を真っ直ぐに見据える。
「忠告として受け取っておく。だが、その言い方は感心しないな」
「おや。気に障ったかい?」
「それだと、いざという時、自分はどうなったって良いとも聞こえる。M4に聞かれたら、今度は本気で怒られるぞ」
M16がキョトンとする。
こういう返しをされるとは予想していなかったらしく、「一本取られた」とばかりに破顔した。
「参ったね、痛い所を突かれた」
「弱点は的確に、徹底的に叩くのが、勝利への近道だからな」
「違いない」
デスクから離れ、M16は大きく背伸び。
お下げ髪が尻尾のように揺れ、また指揮官を振り返るその左眼は、楽しげに細められて。
「さぁて、指揮官。報告書は押し付けたんだし、暇なんだろ。一杯付き合え」
「……またジャックダニエルか。ウィスキーは苦手なんだけどな……」
「相変わらず、お子ちゃまな舌だなぁ。仕方ない、またハイボールにしてやるよ。肴はチョコレートでどうだ」
挑発するように顔を覗き込まれ、指揮官はムッとする。
が、すぐに席を立ち、M16と連れ立って司令部の出口へ。ここで逃げては男がすたる、といった所か。
そして、彼の少し前で刻まれる足音は、スキップにも似た上機嫌なリズムを、無機質な廊下に響かせていた。
祭太鼓をドンドコして(>∇<)ってなってる一〇〇式ちゃん可愛い。
ついでに、M16姉さんを最初に見た時、思わず「ノースアップさんグレた?」と言ってしまったのは秘密。
さてさて、ようやっとレベリングの聖地、4-3Eまで到達しました。
キューブ作戦に向けて夜戦要員の育成をしてますが、全然間に合う気がしません。
とりあえず手持ちの9A-91、AS Val、M14、モシンナガン、M2HB、MG42、グリズリーとM1895を重点的に育てる予定ですけど、星3徹甲弾も代用コアも足りない……。
うぁぁ五〇〇式ちゃんが遠のいて行くぅぅ……。