戦術人形は電気イタチの夢を見るか   作:缶コーヒー

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ST AR-15の戸惑い

『はぁ……』

 

 

 溜め息の二重奏が、計らずも食堂で奏でられた。

 夕食時には少し遅めの午後8時30分。

 空席がそこかしこに見えるそこで、何故か対面に座る一〇〇式とM4A1が音源である。

 

 

『真似しないで下さ──む』

 

 

 再び声は重なり、睨み合う二人。

 が、緊迫した空気は一瞬で霧散し、「はぁ……」と、力無い溜め息がまた二つ。

 

 

「指揮官、いつ帰って来るんでしょうか」

 

「分かりませんよ、そんなの。ヘリアンさんからの呼び出しみたいですし」

 

 

 日頃から指揮官を巡って、恋の鞘当てらしきものを繰り広げている彼女達だが、そんな二人に覇気がないのは、やはり指揮官が原因だった。

 直属の上司──上級代行官である妙齢の美女、ヘリアントスから緊急の呼び出しを受け、彼は朝早くから司令部を離れており、帰ってくる時間も分からない。

 ようするに一〇〇式とM4A1は、指揮官と一緒に居られなくて寂しがっているのである。

 

 

「たった数時間会ってないだけなのに、どうしてこんなに胸がザワつくんでしょうか」

 

「……だから、分かりませんってば。私だって、こんなの初めてです」

 

 

 生まれて初めて感じる擬似感情モジュールの情動に、二人は肩を落としながら、定食をモソモソ食べている。一〇〇式はハンバーグ定食。M4A1はピラフセットだ。

 世界的にも物資不足が恒久化しつつある昨今、使われているのは合成食材がほとんどだが、一昔前のSF映画やドラマと違い、味は天然物と遜色がない。

 だというのに、いつも一緒に食べている相手が居ないというだけで、妙に味気なく感じてしまうのだ。

 毎日食事にありつけるだけでも恵まれているのだから、そんな風に感じるなんて贅沢なのに。

 

 

「私、指揮官がこの地区を任されたのと、ほぼ同じ時期に配属されて。それからずっと一緒に居ましたから。ひょっとしたら、そのせいかも」

 

「自慢ですか。自慢ですよね? けど私も、配属されてからの作戦行動は殆ど共にしてますからっ」

 

 

 一〇〇式は、自分なりにAIの反応の理由を分析するが、聞かされるM4A1は不機嫌そうにピラフを口に運ぶ。

 単に付き合いが長いというだけだが、時間の差ばかりは埋めようがない。それが悔しいのだろう。

 そのまま険悪なムード……というより、いつもの口喧嘩モードに移行するかと思われたけれど。

 

 

『はぁ……』

 

 

 三度目の溜め息の重奏が、食堂の空気をひたすら重くした。

 これでは誰も食堂に寄り付かない。むしろ二人のせいで、食堂から誰も居なくなったのかも知れない。それ程に空気はドンヨリしていた。

 しかし、気が重くとも食事自体は済んでしまい、トレイをカウンターへと戻した彼女達は、めいめいにその場を後にする。

 

 

「……なんで着いて来るですか?」

 

「一〇〇式さんが前を歩いているだけです」

 

 

 ところが、何故だか一〇〇式もM4A1も、同じ方向に向かって歩いていた。

 そうなると張り合いたくなるのがライバル同士の性らしく、早歩きでM4A1が一〇〇式を追い越し、かと思えば一〇〇式がまたM4A1を追い越して、競歩のようになっている。まるで子供の喧嘩だった。

 しばらくその競歩状態は続いたが、ふと、一〇〇式が速度を緩め、釣られてM4A1も。

 完全に立ち止まってしまったそこは、司令部内に用意された、指揮官の私室の前。

 

 

「ここ、指揮官の私室ですよね。一〇〇式さん、ここに用事でも?」

 

「いえ、そういう訳じゃ。ただなんとなく、脚が向いて」

 

 

 どうやら、本当に無意識の行動だったようで、一〇〇式は私室へ続く自動ドアを見つめ、立ち尽くしている。

 当たり前だが、無断で入る事は出来ない。

 ドアを開けるには認証コードが必要になる上、そもそも戦術人形は各施設への自由な出入りを制限されている。人を模してはいるが、あくまで彼女達は兵器だからである。

 勿論、ある程度の自由は保障されているけれど、少なくともこの場に居る二人は、指揮官の私室へと立ち入るための認証コードを持ち合わせていない。

 それが妙にまた寂しさを助長させ、一〇〇式は意味がないと理解しつつ、ドアに手を伸ばし──ウィン。

 

 

「え? ロックが外れてる……」

 

「今、指揮官は居ないはずなのに」

 

 

 決して開かないはずのドアが、開いていた。

 という事は、指揮官が外出した後に、ドアのコードを持つ人物が入室したということ。

 一度開けられたドアは、室内に動体反応がなくなれば一定時間で自動ロックされるはずなので、その人物は今も中に……。

 カリーナが指揮官の私物を漁っている? いや、いくら自由奔放な彼女でも、そこまで倫理観は欠如していまい。

 ならば、一体誰が?

 

 一〇〇式とM4A1は顔を見合わせ、AIを戦闘態勢に。

 スニーキングミッションよろしく足音を忍ばせて部屋へ侵入すると、やけに統一感のない内装が目に入った。

 個室にしては広いのだが、その壁際には小型のワインセラーがあったり、分厚い本の並ぶ棚があったり、蓄音機があったり、筋トレ器具があったり、ロックバンドや往年のアイドルのポスターが貼ってあったりと、何が趣味なのかいまいち伝わってこない。

 所々、明らかに女性向けのインテリア──可愛らしいクッションや小物なども置かれているようだ。

 

 気にはなったが、一〇〇式達はすぐ、それ以上におかしな点を発見し、注視する。

 少し大きめのシングルベッド。指揮官が使っているに違いないそれの上で、モゾモゾと動くシーツの塊があるのだ。

 大きさからして、女性。戦術人形か、人間か。

 逡巡する二人だったが、ここまで来て確かめない訳にもいかず、意を決してシーツを剥ぎ取る。

 すると、中からは。

 

 

「あ、貴方は……!」

 

「IDW?」

 

「んにゃ……? 気持ち良くねてたのに、なんだにゃあ……」

 

 

 猫耳と尻尾──毛色というか髪色は明るい茶色──を生やした、SMGの使用を得意とする戦術人形、IDWが現れた。

 普段はセミロングの髪を二つに括り、白いワイシャツと、サスペンダーベルトで釣ったショートパンツを合わせている彼女だが、今は髪を解いており、気怠げな雰囲気と相まって、ごく普通(?)の猫耳美少女に見えた。

 実際の言動は美少女のイメージとかけ離れていたりするのだが、ともあれ、指揮官のベッドから戦術人形が出てきた事で、一〇〇式とM4A1の瞳からハイライトが消える。

 

 

「どうして指揮官のベッドで寝ていたんですか」

 

「私も知りたいですね。ぜひ答えて下さい」

 

「な、なんか二人の顔が怖いにゃ……」

 

 

 ズモモモモ……という恐ろしい効果音が聞こえてきそうな、筆舌に尽くしがたい迫力で問い質す二人。

 思わず耳を折り畳んでしまうIDWだったが、なんら後ろめたい事はないと自負している彼女は、ベッドの上であぐらを掻いて答えた。

 

 

「どうしても何も、前からちょくちょく寝てたにゃ。指揮官のベッドって、何故かすんごく良い匂いがして、寝心地がいいんだにゃー」

 

「それは……なんとなく分かる気がしますけど」

 

「だからって、勝手に指揮官の部屋に入るだなんて、問題があります」

 

「勝手にじゃないにゃ! ちゃーんと指揮官に許可とドアのコードは貰ってるにゃ~。

 私物を決してイジらず、ただベッドを使うだけならいい、って言ってたにゃ。ちなみに録音してあるにゃ」

 

 

 どこからともなくICレコーダーを取り出し、再生を開始するIDW。

 すると確かに、IDWが言ったセリフを指揮官が言っていた。かなり呆れた声色で、ではあるが。

 しかし、それがまた絶妙に気の置けない関係性を醸し出しており、予想外なライバル出現に一〇〇式は顔を青ざめさせる。

 

 

「ま、まさか指揮官とIDWさんは……」

 

「待って下さい一〇〇式さん。多分違います。部屋の前で騒がれたりすると面倒だから、仕方なく渡したとかじゃないでしょうか。予想ですけど」

 

「むっ。そんな事はないにゃっ。確かに、一緒にお昼寝しようと指揮官を誘いまくった事はあるけど、快く譲ってもらったにゃ! 実際、一緒にお昼寝もしたにゃ!」

 

「なん……」

 

「ですって……」

 

「まぁ、指揮官がお昼寝してる所に乱入しただけにゃけど、指揮官の腕枕は快適だったにゃあぁ~。でも、起きたらすぐにメッチャ怒られたにゃあぁ……」

 

 

 M4A1の慰めも虚しく、更なる衝撃の事実が判明し、一〇〇式達の顔が劇画調に。

 最後の方は聞こえてすらいないのか、絶望しているように見える。

 けれども、はたと一〇〇式は表情を一変させ、IDWへと微笑みかけた。

 

 

「IDWさん。今からメンタルモデルをアップロードしに行きましょう」

 

「へ? な、なんでかにゃ? アレ、かなり長い間ジッとしてなきゃいけないから、苦手なんだにゃ……」

 

 

 メンタルモデルのアップロードとは、簡単に言うと戦術人形の記憶のバックアップを取る事である。

 グリフィン所有のサーバーに保管され、なんらかの理由で戦術人形が完全破壊されてしまった場合に、ロールバックを可能とする。

 人間では不可能な、機械生命であるが故の特権であるが、それにしても唐突過ぎる提案に、IDWだけでなくM4A1も首を捻っている。

 仕方なく、一〇〇式は秘匿回線をM4A1に繋ぎ、自身の考えを伝えた。

 

 

(いいですかM4さん。本来私達は、アップロードしたメンタルモデルに能動的にアクセス出来ません。でも、アップロード中なら裏技(スキミング)で覗き見が可能です)

 

(……! つまり、彼女のメンタルモデル──記憶から、指揮官とのお昼寝データだけを抜き出せば……)

 

 

 擬似的に、指揮官とお昼寝できる。

 ぶっちゃけ、限りなく黒に近いグレーな行為だが、M4A1も指揮官とのお昼寝体験という誘惑には勝てず、積極的に一〇〇式へ協力する姿勢を見せた。

 

 

「定期的なメンタルモデルのアップロードは、戦術人形にとって重要な事です。ぜひそうしましょう」

 

「ちょ、M4、なんで腕を掴むにゃ!? ……あ、よく考えたら、この前の作戦の時にアップロードしたばかりだから必要ないにゃ!」

 

「まぁまぁ、そう言わずに。すぐ済みますから」

 

「って一〇〇式もかにゃ!?」

 

 

 右腕をM4A1に。左腕を一〇〇式にガッチリ掴まれ、というか捕まえられ、IDWは引きずられて行く。

 例え犬猿の仲だったとしても、共通の利益を見つけた途端に手を組む。とても人間らしいAIを持つ戦術人形達であった。

 

 

「離すにゃ、離して欲しいにゃー! 私は無実だにゃあああっ!」

 

「大丈夫、大丈夫」

 

「天井のシミでも数えていればすぐですよ」

 

「それ乙女が言っちゃダメなセリフだにゃー!? だ、誰か助けてにゃー! 心の貞操が奪われるにゃあああああっ!」

 

「あれー? M4と一〇〇式がなんか楽しそうな事やってるー。わったしーも混ーぜてー!」

 

「ぎにゃー!? 一番来て欲しくないの(人形嗜虐性癖持ち)が来たにゃー!?

 しきかぁあああんっ、助けてにゃあああっ!

 いーじーめーらーれーるーに゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」

 

 

 オマケにM4 SOPMOD Ⅱまで加え、IDWは司令部全体に響くほどの、悲痛な叫びを上げる。

 しかし、聞きつけた戦術人形が何事かと振り向くも、引きずられているのが彼女だと分かると、「あの子なら大丈夫だよね」と見送っていた。

 悲しいかな、これがIDWの立ち位置であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時を遡り、一〇〇式達がIDWを発見する少し前。

 一体の戦術人形が、手持ち無沙汰に司令部の廊下を歩いていた。

 

 

(暇ね……。またVRトレーニングでもしようかしら)

 

 

 青いメッシュの入った、長く明るい茶髪を持つ彼女の名は、ST AR-15。

 M4A1、M4 SOPMODⅡ、M16A1、そしてST AR-15の四名からなる、グリフィンでもエリートとして扱われるAR小隊の一員である。

 髪の一房を右でサイドアップにし、白いワンピースの上から黒いジャケットを羽織っていた。

 ある作戦を境にして、M4A1も属する某地区の部隊に合流した彼女だが、エリートと言えど常に任務を与えられてはいない。戦術人形にも休息は必要なのだ。

 が、割と任務一辺倒な日々を過ごしていた彼女は、個人的な趣味嗜好を有していなかった。先ほど考えていたように、暇があればトレーニングしてしまうような、実利主義者的なAIで動いている。

 

 他に有意義な選択肢も見つけられず、AR-15はVRルーム……模擬訓練室へと足を向けた。

 しかしながら、途中で彼女は思わぬ男性と出くわした。

 この司令部に立ち入れる男性は限られているし、見間違えるはずもない。

 外出していた指揮官だ。

 

 

「指揮官? 帰っていたんですか」

 

「……ああ。スター、か」

 

「またその呼び方……。私はコルトAR-15だと──指揮官っ!?」

 

 

 AR-15にはちょっとしたこだわりがあり、指揮官からの呼ばれ方を訂正しようとしたが、出来なかった。

 彼が今にも倒れそうな、真っ青な顔で壁に倒れ込んだからだ。

 思わず駆け寄り、AR-15は指揮官を支える。

 

 

「どうしたんですかっ? まさか負傷して? 今すぐ救護室に!」

 

「いや……違う……ご……ご……」

 

「ご?」

 

 

 震える声で、指揮官は何かを伝えようと。

 肩を貸しながら耳を寄せ、次なる言葉を待つAR-15。

 やがて聞こえて来たそれは。

 

 

「合コン怖い」

 

「……は?」

 

 

 AR-15が耳を疑うのも、仕方のない内容だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、仕事かと思って長時間移動した後に出向いた先が、大合コン会場だった、と」

 

「その通り……」

 

 

 場所を移し、救護室。

 一つのベッドに隣り合って腰掛け、AR-15は呆れつつも指揮官の話を聞いていた。

 

 

「予想外だったのは理解できますけど、そこまで取り乱す事ですか?」

 

「あの場に居なかったからそんな風に言えるんだ……! ホントに怖かったんだからな……っ」

 

 

 水の入ったコップを手に、指揮官は涙目で訴える。

 どうやらグリフィン内部の、職員同士での大規模合同コンパニーだったらしい。

 それなりに長い期間、彼の指揮下で働いているが、こんなに弱々しいというか、情けない姿は初めてだ。

 

 

「とりあえず挨拶して、自分の担当してる地区を言ったら、その途端、女性陣の眼の色が変わって……。あれは、獣の眼光だった……!」

 

「獣……。まぁ、指揮官は色々と話題性のある方ですからね」

 

「勝手に隣の席を争奪戦してるし、座ったら座ったでやたら距離は近いし、香水とタバコの匂いが混じって臭かったし、終いには手を取られて無理やり触らせられそうになるし!」

 

「あ~……。それは、確かにどうかと思いますが、殿方にとっては嬉しい事でもあるのでは?」

 

「嬉しかないよ!? その日会ったばかりで、顔と名前しか知らない女性にお触りするとか、そういう店じゃないんだから!」

 

「行った事あるんですか」

 

「無いけども!」

 

 

 全力の否定。どうやら本当らしい。

 にしても、グリフィンの女性職員の間でも、指揮官はかなりの有望株のようだ。

 初任務で、誰もが手を焼いていた某地区奪還の足掛かりを作り、その後も重要な任務とエリート小隊を任され、かつ上級代行官のヘリアン、最高責任者であるクルーガーの覚えも良い。

 女性陣が躍起になるのも無理はないか。

 この反応を見るに、全くの逆効果でしかなかったと思われるけれど。

 

 

「今回は逃げて来られたけど、もう合コンなんて絶対行かない……。疲れた……。今度また騙し打ちしてきたら、セクハラとパワハラで訴えてやる……っ」

 

 

 空になったコップを握り締め、指揮官はまだ愚痴を零している。

 瞳孔の収縮、脈拍、呼吸の乱れから判断すると、彼の感じているストレスは相当な物だろう。

 

 

(これは、重症ね)

 

 

 戦闘指揮を行う者であれば、精神的なストレスへの耐性は必須。

 しかし、日常のストレスにまで耐える事を望むのは、流石に酷だ。

 このまま放っておいたら、女性への忌避感を抱くようになったり、その延長で、戦術人形への苦手意識まで芽生えかねない。

 AR-15の考え過ぎかも知れないが、万が一にもそんな事になるのは避けないと。

 

 

(こんな話は広められない。私が対処するしか、ない)

 

 

 指揮官の精神衛生のため。

 ひいては円滑な任務遂行のため。

 自分が一肌脱ぐべきだと考えたAR-15は、ベッドから腰を上げ、指揮官の真正面に立つ。

 

 

「す、スター? 何を──お」

 

 

 そして、困惑する彼の頭を、腕の中に収める。

 ようするに……抱きしめた。

 

 

「辛い事があったのは分かりました。

 ……でも、私以外の前で、そんな姿を見せないで下さいね。特にM4A1には。

 あの子、貴方に憧れてるんですから」

 

 

 指揮官は座ったままなので、ちょうど鳩尾の辺りにある頭を、AR-15が撫でる。

 こんな事をするのは初めてだし、ひどく不慣れな手付きだったが、とにかく優しく。

 子供をあやすように、それを続けた。

 

 

「……スター」

 

「すみません。お嫌でしたか」

 

「違うんだ。あの人達に触られるのは嫌だったけど、でも……」

 

 

 穏やかな時間が流れていた。

 落ち着きを取り戻した指揮官の呼吸と、AR-15の擬似心肺の鼓動。

 二つが重なり合い、ただそれだけで、救護室が満ちる。

 とても、静かだった。

 

 ──そう。静かだったのだ。その時までは。

 

 

『しきかぁあああんっ、助けてにゃあああっ! いーじーめーらーれーるーに゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!』

 

「うおっ」

 

「きゃっ」

 

 

 突如として、IDWの悲鳴が響き渡る。

 驚いた拍子に二人は離れ、「今のはなんだ?」と顔を見合わせた。

 

 

「IDWの……悲鳴です、よね?」

 

「……だな。また何かやったのか? 放っておく訳にもいかないし、ちょっと行ってくる」

 

「あ」

 

 

 勘弁してくれ、といった風に頭を掻き、指揮官が足早に救護室を出て行く。

 知らず、その背中に手を伸ばし……いや。伸ばすだけで、何も出来なかった。

 一人きり、救護室に取り残されたAR-15。

 何故だろう。

 急に部屋の温度が下がってしまったような、そんな錯覚を覚え──

 

 

「忘れてたっ」

 

「っ!? し、指揮官?」

 

 

 ──た次の瞬間、出て行ったはずの指揮官が、自動ドアから顔を出す。

 そして。

 

 

「ありがとう」

 

 

 たった一言。

 感謝の言葉を残し、また自動ドアの向こうへ消える。

 沈黙。

 AR-15はしばらく立ち竦んだ後、ベッドに腰掛け、そのまま枕へと顔を埋めてしまう。

 

 

(私、なんであんな事を? いきなり指揮官を抱き締めるなんてっ。

 慰めるにしても、もっと別の方法があったでしょう!?

 ……でも、嫌だとは言ってなかった……むしろ……違う、そういう問題じゃない!

 指揮官に好意を抱いてるのはM4A1で、私は……あああもう、訳が分からないっ!)

 

 

 あの時は適切だと思えた行動が、今になって恥ずかしくなった。

 相手の許可も待たずに抱きしめるなんて、指揮官が嫌だと言った合コン相手と同じだ。

 でも、当の本人が嫌だと言わず、逆にお礼を言ってくれて。

 擬似感情モジュールがAR-15の顔の表皮温度を上げ、脚をジタバタさせる。

 その行動が……人間でいう所の照れ臭さが収まるまで、彼女はたっぷり、15分近くもベッドで悶えていたという。




 本日のやらかし報告。
 グリフィンをグリフォンと素で勘違いしてました。もう修正しましたけど超恥ずかしい。恥ずかしくて死にたい。
 だって英語読みならグリフォンって読めちゃうじゃないっすか! 謝罪と賠償をSSで払うので許して頂きたい!

 という訳で、一〇〇式ちゃんとM4A1ちゃんのコンビはいつも通りの指揮官ラブスタイル。
 今回は被害担当のIDWちゃんと、本編で悲しい事になってしまうらしい?(まだそこまで行ってません)ST AR-15ちゃんも出させて貰いました。
 IDWちゃんはオチ要員なので良いとして(ヒドい)、ST AR-15ちゃんの誓約ボイスを聞く限り、乙女チックな部分もしっかり持っていそうなので、こんな風に悶えてくれたら可愛いなぁ、という気持ち悪い妄想を形にしました。

 それにしても夜戦マップがキツい……。どうにか自戦力だけで2-3nまではクリア出来るようになりましたが、2-4nとか無理っす。
 キューブ作戦は2-4nを自戦力でクリア出来るかがボーダーラインだとか聞いてるんですけど、まだM14ちゃんを四拡できたばかりだし、装備は絶望的に足りないし、他はLv50近辺だし。色んな意味で厳しいですわ。
 配信一ヶ月のイベントなんだから、難易度の緩和とかお願いできませんかねぇ~……?
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