戦術人形は電気イタチの夢を見るか   作:缶コーヒー

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ちょっぴりシリアス回、開幕。

木を隠すなら森の中に。
過ちを隠すなら罪の中に。

時系列的にはキューブ作戦の前。
この作品世界では事前に出会っていたという設定です。
ところで、この話を描き始めた途端にG11ちゃんと45姉が来てくれました。
描くと出るってマジっすな。404小隊完成だぜヒャッハー!


First step For the Failed Chapter1

「くぅ……すぅ……。くぅ……すかぁ……」

 

 

 とあるグリフィンの管轄地域にある、小さなセーフハウスには、穏やかな昼下がりに相応しい、穏やかな寝息が響いていた。

 二十世紀後半の寂れたアパート、といった内装の中、穴の空いた革張りのソファで寝そべる、幼い外見の戦術人形。ボサボサな灰色の長髪を持つ彼女が発生源である。

 そして、それを見つめる二対の瞳の持ち主も、同じように戦術人形だった。

 

 

「G11ってば、また寝てる。さっきお昼を食べに起きたばっかりなのに」

 

「本当に、よくあれだけ眠れるわ。あんなに眠り続けたら、逆に調子を崩しそうだけど」

 

 

 一方は明るい茶髪をツインテールにし、残る一方は、人間にはあり得ないほど白く長い髪をストレートにしている。

 名をそれぞれ、UMP9、HK416と言う。

 UMP9──ナインは白いシャツに黒いプリーツスカート、黒いストッキングという女子学生風の格好で、HK416──416は、プリーツスカートは同じであるものの、上着に書かれた「Kommando Spezialkräfte」という文字とベレー帽のせいか、軍人めいた風体だ。ちなみに、脚を包むのは黒いオーバーニーソックスである。

 

 大きめのテーブルに頬杖をつき、G11を眺めるナインは、面白い動物でも観察するようであり、代用コーヒーを飲む416は純粋に呆れていた。

 よく眠るのが彼女、G11の特徴ではあるが、仕事中以外は食べて寝て、時々トイレとシャワーを済ませてまた眠るという、とても真似したくない──ある意味では羨ましい限りな──生活サイクルを送っている。

 戦術人形にだって睡眠は不可欠だと分かっていても、ここ最近の自堕落っぷりは、見ているだけで辟易するほど凄まじかった。

 

 

「でもまぁ、こんな風に何日も続けて休めるなんて滅多にないし、好きにさせてあげようよ。休める内に休むのも……」

 

「仕事の内、でしょ。別に構わないわよ、いくら寝ていても。仕事になっても起きないようなら、耳元で目覚ましを鳴らすだけだし。マガジンが空になるまで」

 

「弾の無駄撃ちは止めようよ、私達は確実な補給線がある訳じゃないんだから。まだストックのある閃光手榴弾で起こせばいいじゃない」

 

「どっちも人を起こす方法じゃないよ……」

 

「あ、起きた」

 

 

 和やかに、しかし物騒な目覚まし方法を語り合う二人に、G11はノソノソと起き出す。

 髪と同じ色のノースリーブシャツで顔を拭き、短パンから伸びる細い脚をボリボリ搔きむしる姿は、彼女の顔立ちが整っていなければ、間違いなくオヤジ臭いと言われるであろう。

 

 

「喉乾いた……。416、あたしもコーヒー欲しい」

 

「そのくらい自分でしなさいよ。全く、だらしない」

 

「んん……ケチ」

 

「何か言った?」

 

「別にぃ」

 

「まぁまぁ、コーヒーなら私が淹れるから。喧嘩しないで、ね?」

 

 

 寝ぼけ眼のまま椅子に着くG11を、416が手厳しく、ナインは優しく迎える。

 あまり似ている所のない、共通点の見つけ辛い戦術人形達だったが、そのやり取りには確かに、気の置けない間柄である事を示す空気感があった。

 静かにコーヒーカップを傾ける416。テーブルへとうつ伏せになるG11。簡易キッチンで、鼻歌混じりに新しいカップを用意するナイン。

 彼女達にとっては珍しい、本当の休日だ。

 

 と、そんな時。セーフルームの扉が、ロックの外れる電子音に続いて開いた。

 

 

「ただいまぁー」

 

 

 入って来たのは、キャリーバッグを肩に掛ける戦術人形だった。

 暗い色合いの茶髪を左でサイドアップにし、黒いフード付きジャンパーを羽織る彼女の名は、UMP45。

 上記三名を含めた、四名の戦術人形からなる404小隊のリーダーである。

 同系列の銃を使うためか、ナインとは姉妹のようによく似ている。違うのは髪の色と髪型に、もう一つ。

 ナインは右眼、45は左眼の上を縦に走る傷があった。

 

 

「45姉、おかえりなさい! あれ、そのバッグは? お土産?」

 

「うん。似たような物。ちょっと寄り道しちゃって、ついでに仕事を押し付けられちゃった」

 

「ええ……もうお休み終わり……? まだ寝てたい……」

 

「ついさっきまで寝てたでしょう。それで、どんな内容の仕事なの」

 

 

 早速、ナインは姉と慕う45に駆け寄り、45もホッと一息つく。

 そのまま、グデるG11と澄まし顔の416が居るテーブルへ向かい、出かける前は持っていなかったはずのバッグを、妙に静かに置いた。

 

 

「それは、本人の口から聞かせてもらいましょうか。……はい」

 

 

 416からの問いかけに、45はバッグのジッパーを開ける事で答える。

 やや小振りなそれの中からは、少しの間を置いて、小さな動物が顔を出す。

 ……三毛猫だ。

 尻尾は鈎尻尾になっていて、真っ赤な首輪を着けていた。

 

 

「わ、猫ちゃんだ! 可愛い!」

 

「猫?」

 

「にゃんこ……」

 

 

 追加で淹れた二人分のコーヒーを運びながら、目を輝かせるナイン。

 416は懐疑的な顔付きだが、G11も寝ぼけ眼を少しパッチリさせている。

 世の乙女達の類に漏れず、戦術人形である彼女達も可愛らしいものが好きなようだった。

 だが、45の口振りからすると、仕事の依頼主はこの猫だという事になる。

 冗談にしては出来が悪い。416が眉を寄せた。

 

 

「ふざけてるの、45。猫がクライアントだなんて。とうとうAIがバグった?」

 

「残念ながら大真面目よ。ほら、よく見て?」

 

 

 つい、並の人間なら萎縮しかねない、キツい口調になってしまう416だったけれども、45は全く意に介さず、猫を手で抱き上げ彼女の眼前に。

 言われるがまま観察してみれば、猫の瞳にある特徴を見つける。

 縦に細長い瞳孔の奥で、小刻みに収縮する──レンズ。

 この猫は、機械仕掛けなのだ。

 

 

「この子……。もしかして、ペットロボット?」

 

「そう。しかも、戦術動物(Tactical - Pet)として利用可能な、高機能で多機能なタイプよ」

 

「本物のにゃんこじゃないんだ……」

 

『期待させたなら申し訳ない』

 

「うわ! 喋った!?」

 

 

 猫の正体を知り、G11は露骨にガッカリし、ナインが目を丸くする。

 ペットロボットとは読んで字の如くだが、戦術動物とは、より高度なAIと補助機能を有し、戦術的な行動を可能とした動物型ロボットである。

 戦術人形と違い、生体部品の割合は限りなく小さい。せいぜい人工皮膚や体毛程度だ。

 45によってテーブルの上に降ろされた彼(?)は、全員の顔を見回せる位置で、お座りの体勢を取る。

 

 

『お初にお目に掛かる。今回、君達に仕事を依頼した、グリフィンの──』

 

「しゃ、喋った! 45姉、この子喋ったよ!? しかも無駄に良い声で!」

 

「やっぱり本物じゃない……」

 

「あり得ないわ。信じられないって意味じゃなく、似合わないっていう意味で」

 

『……自己紹介くらいさせて欲しいんだが』

 

 

 が、よほど本物の動物というものに興味があったのか、三名はそれこそ三者三様の反応を示す。

 流石に埒が明かないと思ったらしく、45が手を叩いて注目を集める。

 

 

「はいはい、騒がない。話が進まないでしょ。どうぞ続けて下さい、クライアントさん?」

 

『……助かる。では、手短に説明しよう。頼みたいのは、ある物の座標の特定だ』

 

「座標の特定?」

 

 

 猫の言葉に、ナインが首を傾げた。

 彼は短い尻尾をヒョコヒョコ動かすと、緑色の眼から光を発し、テーブルにとある映像をプロジェクションする。

 小型のヘリが鮮明に描画されていた。

 

 

『数日前、鉄血支配地域の末端付近に、ある輸送ヘリが墜落した。

 特定して貰いたいのは、そのヘリが運んでいた物の、詳細な座標だ』

 

「ヘリが墜落……。鉄血に攻撃されたの?」

 

『原因の一つではあるようだ』

 

「依頼内容が座標の特定という事は、回収は考えなくて良いのね」

 

『その通りだ。回収班はこちらで用意する手筈になっている』

 

 

 ようやく仕事モードに入ったG11も話に加わり、416が詳細を確認、補足させる。

 投影画像が航空地図へと変化し、とある森林地帯を映す。

 グリフィンの管轄地域からは程遠く、しかし鉄血勢力の版図とも言い難い、なんとも微妙な場所だった。

 

 

「末端とは言っても、鉄血の支配下にある地域なんでしょう? 戦闘の可能性は?」

 

『ある。君達は歴戦の戦術人形と聞いている。該当地域に鉄血が現れるとしても、戦力は然程でもないと予測される。問題なく対処できると考えているが』

 

「状況によるわ。必要な物資は用意して貰えるんでしょうね」

 

『もちろん。弾薬、食料、グレネード。現地への送り迎えも、運転手付きで準備してある』

 

「なら、移動はラクチンだね」

 

 

 戦闘の可能性をナインが示唆すると、猫は然も当然と頷き、416が目を細める。

 それに対して相応の準備があると告げれば、ホッとしたG11が溜め息をついた。歩きたくないのだろう。

 主目標は座標の特定。

 交戦する可能性はあるものの、物資は潤沢に用意され、送迎も完備とくれば中々の好印象だったが、続く猫の一言で、歓迎ムードは一変する。

 

 

『それともう一つ。今回の依頼は秘匿性が高く設定されているため、君達の行動を常に把握したい。よって、このT-Petを同行させて欲しい』

 

「……何よそれ。わたし達が信用できないということ?」

 

『信用するしないではなく、そうしなければならない、というだけだ。理解して欲しい』

 

 

 人間が操作するT-Petの同行。即ち、行動を監視させろ、と言っているのだ。

 今までの仕事に、それなりの誇りを持っていた416にとって、これは侮辱に近い申し出だった。

 彼女と同じ感想を抱いたのか、ナインも45へと意見する。

 

 

「45姉。本当に受けるの? この仕事」

 

「あら、ナインは嫌なの」

 

「嫌っていうか……。なんか、胡散臭くない? 色々と」

 

「同感ね。詳細を隠された挙句、最後は敵のど真ん中、なんて可能性もあるわ」

 

「G11は?」

 

「んん……? 別に受けても良いけど……どっちかって言えば、ここでジッとしてたいなぁ」

 

「で、また寝るのね」

 

「うん」

 

 

 45が順繰りに話を聞いた結果、三名は否定的な意見に傾いているようだった。

 表向きは存在しない404小隊に与えられる仕事は、それこそ胡散臭いものばかりだったが、今回は特に酷い。

 T-Petの依頼人もそうだけれど、依頼内容に対するサポートが万全過ぎるのも不安を煽る。

 何か裏があるのでは? と。

 

 

「だって、クライアントさん。少しは事情を話した方が良いんじゃない?」

 

『……そのようだ』

 

 

 404小隊のリーダーだからか、事前に深い説明を受けていたらしい45が、猫に説明を促す。

 こうなっては仕方ないと、猫もやや項垂れながら納得。実情を語り始める。

 

 

『本当の依頼主は、軍だ。より正確に言うなら、軍部に属する一個人、となる』

 

「……ちょ、それホント!?」

 

「やっぱり面倒事なのね」

 

「あ~……」

 

 

 驚愕。嘆息。それと落胆。

 ネガティヴな反応は、やはり軍が絡んでいる事への懸念から発している。

 グリフィンを始めとする民間軍事企業と、世界の危機を瀬戸際で食い止めようとしている正規軍。その関係性は複雑なのだ。

 依頼人──仲介人だった人間の操作するT-Petまでもが、もはや隠す気のない面倒臭さを言葉に乗せた。

 

 

『こちらとしても、厄介な案件を押し付けられて難儀しているんだ……。幸い、報酬やら必要経費やらは請求できるし、可能な限り搾っているが』

 

「ちなみに、これが報酬額よ。しかも前金五割」

 

「うわ、多い」

 

「前金だけで半年は遊んで暮らせそうだね……」

 

「よほど大事な物を運んでいたのかしら」

 

 

 45がPDAに示す金額は、半分の前金だけで考えても多過ぎる額だった。

 それだけのクレジットと、潤沢な物資を用意できる地位の軍人が、秘密裏に依頼する仕事。

 胡散臭さだけでなく、きな臭さまで漂ってくる。

 

 

『恐らく、あちらとしては墜落の一件を揉み消したい、というのが本音だろう。

 積荷がダメになっていたとしても、報酬は支払われる。引き受けて貰えないだろうか』

 

 

 それでも、仲介人としては頼まざるを得ないのだろう。

 猫が頭を垂れ、全員の顔を見回す。

 逡巡するような間があり、最初に答えたのは416だった。

 

 

「わたしは反対。軍なんかと安易に関われば、わたし達の身が危険に晒されるわ」

 

「そういうもの……?」

 

「そういうものよ」

 

 

 断言する416にG11が問うも、やはり416は断言する。

 経験から来る発言なのか、情報からの推測なのかは分からないが、とにかく反対なのは変わらないようだ。

 次に、ナインが45へと向き直る。

 

 

「45姉は、なんで引き受けようと思ったの?」

 

「私? そうね……。払いが良かったから」

 

「嘘。何か隠してる。でも、良いよ。45姉が受けるって決めてるなら、私はそれに従うから」

 

 

 意外にも……いや、彼女の性格を考えれば当然かも知れない。ナインは45の持ち込んだ依頼を受けると答えた。

 全幅の信頼。

 盲信とも取られかねない姿勢だが、裏付けがあっての物だと、真摯な眼差しが語っている。

 45が柔らかく微笑んだ。

 

 

「今の所、二対一ね。G11はどうする?」

 

「え……あたしが決めるの……?」

 

「意見を聞きたいのよ。できる限り尊重するわ。今までもそうして来たじゃない」

 

「うわぁ……。白々しいって、こういう時に使う言葉だって実感した……」

 

 

 話を向けられたG11が、再びテーブルにグデーっとなりつつ半目で返す。

 45は「G11ひどーい」と傷付いた素振りだけれど、本気かどうかは疑わしい。

 

 

「いいよ。受ける。受けるから、移動の間は寝てていい?」

 

「いいわよ。着いたらたっぷり働いて貰うから」

 

「いつもの事だね……」

 

「そう。いつもの事よ。ね? 416」

 

「はぁ……。結局こうなるのよね、いつも」

 

 

 にこやかな45に対し、肩をすくめる416。一応は予定調和らしい。

 集団の中には必ず反対意見を述べる人物が必要だと言われるが、彼女がその役割を買って出ているのだろう。

 行動力と決断力のあるリーダー。

 どこまでもリーダーを信じる隊員。

 ちょっとばかりやる気の足りないサボり屋。

 シニカルな言動で空気を引き締める参謀役。

 誰一人欠けても成立しない、絶妙なバランスで成り立っているチームという印象だった。

 

 

「といい訳で、満場一致で引き受ける事に決まったわ。クライアントさん。よかったわね?」

 

「多数決の結果でしょう。わたしが反対したのを無かった事にしないで」

 

『……彼女はああ言ってるが?』

 

「大丈夫。416はツンデレなだけだから、そのうちデレてくれるわ」

 

「ちょっと!? 誰がツンデレよ、本気で怒るわよ!」

 

 

 最後に416のツンデレ否定が入り、和やかな内に(?)話し合いは終了した。

 “彼”と彼女達の、最初のミッションが始まろうとしている……。




 トンプソン姉さん……。貴方マジでHGレシピ(130/130/130/30)で来るのね……。いや一人目だし嬉しいんですけど、ぶっちゃけその後に来てくれたウェルロッドちゃんの方が嬉しくて霞んだのは秘密。
 あ、ピックアップは適当に闇鍋してたらRF祭りになりました。
 ドラグノフちゃんx2、ダネルNTW-20ちゃん、そして、スキンで幼児退行していく胸がナインナインちゃんを新たに迎えられてホクホクでs(頭パァーン)。
 WAちゃんがまだ居ないので、貴重な射速スキル持ちのドラグノフちゃんは二人とも育てていこうかなと考えております。
 ダネルちゃんとM99ちゃんは残念ながら宿舎の賑やかし要員化。
 どうせテーゼでコア消費任務来るでしょうけど、ウェルロッドちゃんとか拡大したいし、うち将来を見越して四拡済みの下乳さんも居るんすわ。スキルもかなり上げちゃってるんすわー。なんか遣る瀬無いわぁ……。

 次回更新もFFF。Chapter2を予定しています。
 ちょい役ですが某秘密兵器ちゃんが出ますので、お楽しみに。
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