METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

124 / 318
混沌へ向かう世界

 ユーゴ空軍の活躍により奪取した制空権、敵の無人航空機を彼らが引きつけているうちにエイハヴとWA2000はヘリで前線へと向かう…。

 地上より鉄血の攻撃を受けるが、援護機として攻撃ヘリの爆撃と機銃掃射を仕掛ける。

 最初こそそれで多くの鉄血兵を掃討で来たが、次第に鉄血の兵士たちはまともに攻撃ヘリを攻撃しようとするのではなく、身軽な歩兵部隊が大口径のライフルで狙撃しようとしたり、地対空ミサイルで狙う戦法へと切り替えようとしている。

 たった一度の戦闘で、戦術が進化していく鉄血の軍勢には、エイハヴも奇妙な違和感を感じていた。

 

「鉄血は、こうも適応能力が高いのか?」

 

「そんなことないわ、バカなハイエンドモデルに率いられる部隊はバカの集まりよ。だけどこいつら、まるで攻撃を受けるたびに成長している…こんな鉄血人形、今まで見たことがない」

 

「キッドたちが心配だ、着陸したら即座に動け」

 

「言われなくても分かってるわよ」

 

 

 いまや見える全ての大地を埋め尽くす鉄血の軍勢、その中で孤軍奮闘する前線のMG5率いる大隊が残る陣地だけは、いまだ鉄血の包囲を受けつつもその侵攻を押しとどめている。

 ただしほとんどの陣地が陥落し、司令部付近の陣地で抗戦をしているようだ。

 攻撃ヘリの援護を受けて強引に着陸したヘリから、エイハヴとWA2000が跳び出すと、手始めに目の前にいた鉄血人形を至近距離からの射撃で沈める。

 

 塹壕から這い出て来た敵に対し、WA2000はエイハヴの背をカバーするように立ちはだかると、一発の銃弾で二人の人形を仕留め、さらに物陰から狙撃する敵を逆に仕留めて倒す。

 

「見事だなワルサー、流石はオセロットの愛弟子だ」

 

「毎日鍛錬してるのよ、当然でしょ!」

 

 振り返ったWA2000が見たのは、エイハヴに狙いをつけて迫る敵の装甲人形Aegis。

 装甲を強化されているAegisの装甲をまともに貫くのはWa2000のライフルといえど容易ではない、アタッチメントにグレネードランチャーを装備しただけのエイハヴのアサルトライフルでは分が悪い。

 すかさず装甲人形を迎え撃とうとしたWA2000を、エイハヴは止める。

 次の瞬間、大胆にもAegisに真っ向から向かっていったエイハヴの正気をWA2000は疑う。

 

 走り寄って来たエイハヴに装甲人形はピタリと足を止めると、大きな盾を前面に出し、近接用の武器を振るう。

 それを難なく躱し、なおも迫るエイハヴに対し装甲人形は防御のために構えていた盾で殴打しようとしたが、素早くエイハヴは背後にまわり込むとがら空きの背に銃撃を与える。

 

「無理よ! 背面の装甲は薄いといっても、小口径の弾じゃ撃ち抜けない!」

 

「ああ、分かってるさ!」

 

 分かってるのなら何故、そう思ったWA2000であったが、エイハヴに気をとられ背部を見せた装甲人形を見てエイハヴの狙いを察すると、即座にライフルを構え比較的装甲の薄い背部を撃ち抜いた。

 弾丸は装甲人形の背中を撃ち抜いて大きくよろめかせ、その隙にエイハブは人形が落とした武器を拾い上げるとその切っ先を頭部の視覚センサーめがけ突き刺し破壊した…。

 

「エイハヴ、この私を使うなんてタダで済むと思わないことね。でも、咄嗟の思いつきにしては見事ね」

 

「お前がいたから頼っただけだ、一人なら別な方法を模索する」

 

「じゃあ、今度は一人でどう対処するか見せてもらおうじゃない」

 

 彼が本気で戦っている姿は見たことは無いが、ビッグボスやミラー、オセロットにも一目置かれる存在であることを知っているWA2000としては、是非とも戦っているところを見て見たいと思う。

 しかし今は仲間の救助が優先だ、個人的な興味は今は控えなければならない。

 塹壕を跳び越え、仲間たちが戦う陣地へ向かおうとすると、逆に向こうから穴倉の中から飛び出してきたではないか…。

 

「キッド…! あんた無事だったのね!?」

 

「なんとかな、だが他のみんなとは散り散りになっちまった…ネゲヴは無事だがよ…」

 

 遅れて塹壕から跳び出てきたネゲヴは、もはや自分か敵の血かも分からないほどに全身を赤く濡らしている。

 身体のいたるところに砲撃の破片を受けた怪我をしており、それはキッドも同じだ…傍までやってきたネゲヴは疲弊し、息も乱れている…これ以上戦える状態ではなかった。

 

「エイハヴ、悪いがオレたちはもう戦えない…弾ももう無い、後を頼んでいいか?」

 

「分かってる、他の仲間もすぐに救出する。それより、ネゲヴを守ってやれよ…女一人守れないお前じゃないだろう」

 

「あぁ? なんだそりゃ? まあいい…ネゲヴ、待ってろよ…すぐに温かいベッドの上で寝かせてやるからな…」

 

「あんた……それ、誘ってんの……? まあいいわ…どこでもいいから寝させて…」

 

 立っているのもやっとな状態のネゲヴを抱きかかえ、キッドは身をかがめながら救助のためのヘリに乗り込んでいった。

 一緒にやって来た他のヘリも同様に、あちこちで部隊を収容し救助を行っている。

 身近な仲間をヘリに収容しようとするWA2000であったが、エイハヴが無防備に立っているのをみて声をあげそうになったが、彼が見据える先……異様な雰囲気を纏った装甲人形に気を引かれる。

 その装甲人形は今まで相手にしてきたAegisと何ら変わらない見た目をしている…。

 だがそのAegisは真っ直ぐにエイハヴとWA2000を見つめ、ゆっくりとした足取りで近付いてくる。

 

 周辺の敵が他の者へ攻撃を仕掛ける中、エイハヴとWA2000の二人だけはまるで相手にせず通り抜けていく。

 そんな中で、そのAegisだけは二人を認識していた。

 異様な空気に飲まれかけたWA2000であったが、Aegisが踏み込んだと同時に我に返り、素早くライフルを構え引き金を引いた。

 Aegisの関節部を狙い放たれた弾丸は、分厚い盾に阻まれる。

 

 

「…速いっ!」

 

 

 踏み込んだと同時に、一気に接近するAegisの動きはそれまで相手取った装甲人形とは比べ物にならない機敏なもので、動揺から反応が遅れたWA2000は盾による打撃を受けて吹き飛ばされた。

 地面に叩き付けられたWA2000は転がりながらも体勢を整えるが、その額に赤い血がしたたり落ちる…。

 自身の流れた血を見たWA2000は鋭い目で、Aegisを睨みつける。

 

「上等よ…血には血を、何倍にも増して返してやるわ…!」

 

 負傷したことで闘争心に火がついた彼女は獰猛な笑みを浮かべる。

 MSF内で尊敬を集める立場として普段は冷静沈着なところがあるWA2000であるが、強敵に遭遇した時、それを打ち倒そうという闘争本能はスコーピオンやエグゼにもひけをとらない。

 むしろ、彼女の冴えわたる電脳は今、目の前の敵をいかにして仕留めるかでフルに稼働していた。

 

 彼女はスコープを覗くこともなく、引き金を引いた。

 常人なら反応できない速射を、Aegisは大きな盾で防ぐ……防御の際に生じる一瞬の隙、盾で視界を覆い隠されている隙にWA2000は駆ける。

 

 WA2000は、先ほどのエイハブがやったように真正面から仕掛ける。

 接近するWA2000を認識したAegisは盾を投げ捨てたかと思うと、銃を構え乱射した……それをスライディングで避けたWA2000、地面を滑りながら狙うのはAegisの視覚センサーだ。

 引き金を引き、放たれた弾丸はがら空きとなったAegisの頭部を撃ち抜く……頭部を撃ち抜かれぐらつくが、まだ機能停止には至らない。

 

「エイハヴッ!」

 

「分かってる!」

 

 とどめの一撃はエイハブのグレネードランチャーだ。

 視覚センサーを破壊されたAegisはグレネードを防ぐこともできず、グレネードの爆発により装甲を吹き飛ばされ崩れ落ちる。

 

「ナイスアシストよエイハヴ」

 

「一人で対処するところを見せられなかったのが残念だがな」

 

「それは今度…って、まだ動いてる! しぶといわね!」

 

 爆発で破壊されたはずのAegis、しかしもうまともに動くことはできないようで、引きちぎられた半身で地面を這う…Aegisは明滅する視覚センサーを二人にむける…。

 

「見事な戦技だ、素晴らしい…お前たちの戦闘データは――――」

 

 突如喋りだしたAegis、だがWA2000が咄嗟にとどめを刺したことでついにそのAegisは沈黙する。

 離し始めたAegisを問答無用で仕留めた彼女をエイハヴは咎めるような目で見つめるが、WA2000は肩をすくめてみせるだけだった。

 

 

「酷いな、人の話を最後まで聞かないのは礼儀に反すると思うのだが?」

 

 

 驚くことに、再び同じ声で話すのは戦場にいた別の装甲人形だ。

 相変わらず二人を無視して戦闘する人形の中で、話しだしたそのAegisだけが二人を認識しているようだった。

 

「何者だ、お前は?」

 

「自己紹介をさせて欲しい。我が名はシーカー(探究者)、新たなるハイエンドモデルとして開発された上級AIだ」

 

「何が上級AIよ。装甲人形を操って前線に出てこない腰抜けじゃない、さっさと正体を見せなさい」

 

「ふむ。いくつか誤解があるようだ…私にはまだ正規な義体が用意されてはいないのだ。故に仕方なく、この装甲人形を依代として君たちと対話をしている。だが君たちの戦い方はずっと見させてもらった…末端の戦場に至るまですべてな、とても興味深い経験だった。君たちとの戦闘で、通常数か月はかかる戦術データの収拾が一日で済ませられた」

 

「なるほど、分かったぞ。お前が、この鉄血の軍勢を指揮していたハイエンドモデルだな?」

 

「然り。同胞アルケミストが生み出した戦術、それをコントロールするために同胞ドリーマーがこの軍勢を繋ぐネットワークに私を宿した。末端の兵士をも細かく統率し、軍勢を手足のように動かせる精強な軍勢に仕立て上げた……だからこそ分かるのだ、MSFの英雄よ。君たちの苦境に立たされながらも決して諦めない強き精神は、他のどんなデータよりも、私の探求心を刺激した。君たちの健闘ぶりに、最大限の敬意を表したい…」

 

「敵のアンタにそんなことを言われてもたいして嬉しくないわね……アンタの存在、とても気味が悪いわ」

 

「同感だ。逆の立場に立たされたら、私もそう思うだろう。さてそろそろお別れだ…全力をもって君たちと戦えなかったことの非礼をここで詫びたい。この装甲人形(義体)では私が想定する能力の10%も引きだせなかった。いずれ、私専用の義体も生み出されるだろう…その時は是非ともまた手合せをしてほしい。さらばだ、また会おう――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦いは終わった。

 第三次大戦後、稀に見るほどの激戦となったこの戦争は、鉄血の軍勢がエリア全体をその支配下に置くことで幕を閉じた。

 それは、MSFがこの世界にやって来てから初めて経験する大敗だった。

 

 AR小隊救出のために駆けつけたグリフィンの応援部隊も同様に、大きな損害を受ける。

 だがより多くの兵力を戦地に投入していたMSFの連隊の損失に比べれば、それも小さく見えてしまう…。

 戦闘による戦死傷者の数は連隊の半数近くに迫り、うち戦車大隊と第二大隊は壊滅…戦闘能力は完全に喪失していた…。

 

 各部隊を指揮する隊長たちの負傷も目立つ。

 

 戦車大隊を率いていたFALはその後の戦闘で重傷を負う。

 

 連隊長、エグゼは敵の砲撃を受けて意識不明の重体……砲撃をまともに受けたエグゼは、それが彼女本人と判別するのも難しいほどの大けがを全身に負っていた。

 戦地で受けられる治療の枠を超えた負傷に、すぐさまマザーベース行きのヘリが手配される。

 

 エイハヴとWA2000、MSFの戦闘班の活躍によって多くの戦術人形が救出されたものの、全員ではなかった…。

 

 

 撤退のために、敵の足止めを名乗り出た第二大隊大隊長…MG5は帰ってくることは無かった。

 救援のためのヘリが基地に帰還した時、彼女の姿を真っ先に捜したのはキャリコだ……どれだけ捜しても、どれだけ名を呼んでも見つけられず、ヘリに乗っていなかったことを知るや戦地に戻ろうとするキャリコをみんなが止めた。

 

 泣き叫ぶキャリコ、彼女の悲痛な叫び声が、MSFのみんなに戦いに負けたことを痛感させる…。

 周囲の者はなんとか彼女を慰めようとするが、どんな言葉も彼女を落ち着かせることは出来なかった。

 

"MG5が死んだところは誰も見ていない、きっと彼女なら生きている、希望を持て"

 

 そんな無責任な言葉で取り繕うことしか、今はできなかった…。

 

 

 戦いは終わった。

 

 救えたものもあった、すべてが無駄というわけではない。

 

 だが、そんなものを全てのみ込む深い闇が、MSFに立ちこめるのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 旧アメリカ合衆国アラスカ アンカレッジ エルメンドルフ空軍基地内通信施設

 

 

 

「――――――そうか、分かった…」

 

 

 スネークは誰もいない、うち捨てられた古い空軍基地内の通信施設で仲間たちの結末を知る。

 エグゼたちのその後が気になり、マザーベースのミラーへ繋ぎ、彼から聞いたことだ……伝えるべきことを伝えた後、ミラーもスネークも長い間黙り込む。

 重苦しい沈黙が続く中、スネークが考えていたことはすぐにでも仲間たちのもとへ帰ることだった。

 それはミラーも分かっており、彼自身も望むことだ。

 

『ボス、アラスカでの任務は中止だ……なるべくすぐに帰って来てくれ。今みんなには、アンタの存在が必要だ…』

 

「あぁ、すぐに帰る……カズ、オレは…」

 

『止めてくれボス…誰かが悪いわけじゃない、今までにも同じことはあっただろう…。ボス、アンタは堂々と帰って来てくれればいい…それだけで十分だ』

 

「分かった…カズ、それまでみんなを頼んだぞ…」

 

『もちろんだ、スネーク』

 

 

 通信を切った後、スネークはしばらくの間立つことが出来ないでいた。

 ただ、誰もいない通信施設で佇む…取り出した葉巻も眺めるだけで、火をつけることなく懐にしまった…。

 

 

 そんな時だ、通信施設に連絡が入れられたのは。

 

 この通信施設は何度かマザーベースと連絡をとるために使用していたが、それはこちらからマザーベースにしかかけることは出来ず、マザーベース側からかかってくることは一度もなかった。

 鳴り止むことのないコールに、しばらくの間応答しなかったスネークだが、やがて重い腰をあげて通信を繋ぐのであった。

 

 

 通信回線は繋がったが、スネークからは話しかけず、通信をかけた相手側からも連絡はない。

 しばらくそのままの沈黙が続く……誤接続か、そう思った矢先…。

 

 

 

『誰だ……誰がそこにいる…?』

 

 

 スピーカーから聞こえてきたのは、男性のくぐもった声であった。

 時折小さな声で囁くような音も聞こえてくる。

 

 

「オレは…スネークだ、少し通信施設を借りている」

 

『所属を明らかにせよ』

 

「オレは……鳥類学者だ、アラスカの鳥類を探している」

 

『下手な嘘は止めろ……お前の素性よりも気になることがある……地上は、もう人が出歩ける環境になったのか…?』

 

 その問いかけに、スネークは妙な違和感を感じた。

 そもそもこの連絡の相手は何者なのだろうか?

 それに、彼は地上の様子を聞いてきた…そんな質問をする理由が思いつかない。

 

「アラスカは問題ないが、東海岸及び西海岸の主要都市のほとんどが放射能汚染が酷いと聞いている……それでも、いくつかは人が可住可能なレベルに落ち着いている」

 

『そうか……あれから20年近くが経つ……20年だ、20年も我々は待ち続けた、偉大なる国家を灰に燃やした奴らへ復讐を果たす時を……だがそれももう終わりだ。我々は、かつての栄光を取り戻す…』

 

「待て、お前は一体何者なんだ? まさか、お前たちは…」

 

 

『我々は一度目も、二度目の大戦も勝利した……今度の大戦も勝利するだろう………目覚める時が来たのだ…

 

 

偉大なる国家を再建する、星条旗の下にこの国は甦るのだ―――――』

 

 

 

 






はい、というわけで5章終了…次回から6章です、長かったよぉ…(涙)

色々謎を残す形で終わった5章ですが、6章もシリアスネタ満載、覚悟しろ!
まあ、ほのぼのネタも溜まってるけど…こんな状況でほのぼのとか期待できないよね(震え)


とりあえずまたコンセプト変わるかもしれないけど次章予告!

第6章"Civil War(シビル・ウォー)"

Civil Warとは内戦、またはアメリカ合衆国の南北戦争をさしますね(伏線)


エグゼの治療、アルケミストの命運とデストロイヤーの願い、新たなるハイエンドモデル"シーカー"の謎…。

他にも"蛇の王国"、"カルテルランド"、"新たな師弟関係"などイベント盛りだくさん!
これからもMETAL GEAR DOLLSをご愛顧願います…。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。