METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

129 / 317
ジョニー一族だと思ったか!?
残念だったな、トリックだよ…。


マザーベース:その名はジョニー

 UMP45は今、甲板上に仁王立ちしながら空を睨みつけるように見上げていた。

 洋上を吹き抜ける強い風を受けて、UMP45のスカートがひらひらとめくりあがるがそこに色気やチラリズムを一切感じることは無い……何故か、それは今スカートの下にはいたジャージのズボンのせいだろう。

 男たちの欲望を真っ向から打ち砕くいでたちでいながら、UMP45はいかにして男どもに夢を見させつつ奴隷化させる方法がないかを考えていた。

 

 MSFにやって来てからのパンツを喪失した数は今や両手で数えきれないほどになってしまった…兵器を開発する技術がありながら、下着を製造する能力の無い研究開発班のせいで、MSFで時折開催されるパンツ即売会は一瞬で終わるのだ。

 数に限りがある下着、好みのデザインや色……お好みの下着を手に入れるためには常に即売会の情報に気を遣わなければならず、出遅れたものは好きなデザインの下着を手に入れられず、最悪売り切れとなるのだ。

 

 さてUMP45だが……毎回即売会の情報を握り損ねて、即売会の情報を遅れて知っていつも下着を買い損ねるのだ…。

 ちなみに、この即売会を企画している…というか研究開発班に下着製造に力を回さないのは副司令ミラーの一存である。

 何度要望を伝えても、何度抗議しても、何度暴力的手段に訴えても引かないミラーである…彼曰く、下着がそんなにいるか? などと意味不明な供述を残し、怒り狂う女性陣にボコボコにされるのであった…。

 

「まずいわね……このままパンツがないままでいたら私が露出狂扱いされてしまう……」

 

 好きでノーパンでいるわけではない。

 最初にパンツを喪失したのは、例の怪物の島での出来事…黒い猫にもみくちゃにされて盗まれた一件、怒り狂うヴェルに416と共にはぎとられたり、月光とケンカになって盗られたり、干してたら海鳥に持って行かれたり、風に流されたり…。

 もう無くす理由の全ては達成してしまったUMP45、下着を喪失した回数もMSFナンバーワンだ。

 

「はぁ……どうしようかな? 下着、下着……水着でもいいかな? すぐに水に入れるしべん…り…」

 

 その時、UMP45に閃きが訪れた。

 それは以前日本出身だというカズヒラ・ミラーが酔っぱらって祖国のプール事情を語っていた時の記憶だ。

 確か面白がってスコーピオンが話を元に再現した特殊な水着……確かそれは結局使われず倉庫の奥に放り投げられていた。

 早速、UMP45は倉庫に向けて走りだす。

 使われない倉庫は色々なガラクタが放り込まれており、物探しも容易ではない……ほこりまみれになってガラクタを漁っていくと、奥の方にダンボールを見つける。

 

「まさか…スネークいないわよね?」

 

 まあ、いるわけはないのだが、ダンボールを見かけると妙な勘繰りをしてしまう。

 早速ダンボールを開けてみると、そこにはUMP45が望んでいた代物がきれいに折り畳まれていた。

 

「フフフ、これでノーパンとは一生おさらばね…! 盗られないように名前を書いて…と。早速着てみよ」

 

 倉庫の扉を閉めて、衣服を脱いで早速見つけたそれを身に付ける…。

 独特な肌触りの生地が肌に密着する感覚は妙に心地よく、まるでUMP45のために作られたと思えるほどサイズもぴったりだ……胸囲のサイズもぴったりだ…UMP45は無意識に壁を殴っていた。

 下着がわりのそれの上に、衣服を着用すればもう完璧だ。

 

 上機嫌で倉庫を出ていくと、同様の被害に度々見舞われる416がつまらなそうに甲板を歩いているのを見つけた。

 

「やぁ416、ひまそうだね…何か仕事してるの?」

 

「休憩を48時間とってるところよ、ひまじゃないわ」

 

「それじゃあ仕方がないわね。ねえねえ416、実はノーパン問題解決できたんだよね」

 

「それは良かったわね。開き直ってノーパンでいることにしたの?」

 

「面白いわね。じゃあタネ明かしをしましょう」

 

 そう言って、UMP45はおもむろにストッキングを下ろしてスカートをめくる。

 唐突なUMP45の行動に416は大いに怯むが、416が危惧した彼女の大事な部分はちゃんと衣服で隠されているようだった…ただし、下着というより水着に近いそれは一体何なのだろうか?

 その疑問に待ってましたと言わんばかりに、無い胸を張って解説しようとした瞬間のことだった。

 

 

「主よ、我が言葉に耳を傾けつぶやきを聞き分けたまえ! 我が王、我が神よ、救いを求め叫ぶ声を聞きたまえ! 我はあなたに向けて祈る…主よ、朝ごとに我が声を聞きたまえ! 朝ごとに、我は御前に訴え出てあなたを仰ぎ望みます……45姉のスク水ッッ! ああ、楽園はここにあったのか…!」

 

 聖書の詩編を読みあげながら現われた変態……その正体はUMP45の妄信者でありUMP姉妹を神と崇めるU.S.A分隊……の一人だった、他のメンバーはいない。

 UMP45が下着がわりに身に付けている"スクール水着"を見て狂乱しているようだ…。

 

「うわ、面倒な奴が復活したわね…」

 

「黙れ邪神416、45姉に付きまとう寄生虫め」

 

「何が邪神よ……ったく、みんなの無事は祈ってたけど、こいつの無事までは祈ってなかったわ」

 

「我が命を奪おうとする者は恥に落とされ嘲りを受けるだろう…我らの信仰心は業火の焔でも焼き尽くせぬのだ!!」

 

 一人で勝手に騒いでいるU.S.A分隊の装甲人形に対し、416は舌打ちをし、UMP45はほんとうに嫌悪感を滲ませた表情を浮かべている…。

 

 さて一体だけのU.S.A分隊、他に似たようなのが6体ほどいたわけだが一体どこに行ったのだろうか?

 実は全てここにいる…全ての個体が合体し、一つの個体となっているのだ。

 なぜそのようなことになっているかというと、先日の鉄血との大規模な戦闘による結果のせいであった。

 部隊のしんがりを引き受けたU.S.A分隊は、アメリカ第1機甲師団所属の軍用人形の名に恥じぬ獅子奮迅の戦いぶりを見せるに至った。

 敵の装甲人形以上のタフネスで味方の盾となり、強力な火器で敵を粉砕する……しかしそれでも、大規模な軍勢の前に損耗していったU.S.A分隊…。

 

 最終的には戦闘不能に追い込まれたわけだが、彼らは回収されて、研究開発班に送られた…。

 そこで6体のパーツを補い合い、そこへMSFがかねてから構想していた装甲人形計画のプランも盛り込まれることで大幅な強化を経て復活したのだった。

 

「45姉、お伺いしますが我ら一人一人の名前を覚えていられますか?」

 

「知らないわよ。というかあんたに姉呼ばわりされる筋合いないんだけど…」

 

「Js0089、Os2105、Hs0004、Ns0901、Ns0902、Ys4213……皆貴女を崇める立派な殉教者です。今は一つの身体を得て、J・O・H・N・N・Y(ジョニー)として生まれ変わったのです!」

 

 Js0089、Os2105、Hs0004、Ns0901、Ns0902、Ys4213。

 U.S.A分隊メンバーの頭文字をとってジョニーと名乗っているようだ。

 単純に気持ち悪いが、一応役に立ったU.S.A分隊…いや、ジョニーには一応感謝をしなければならない、恩義を受けて礼を言わないような人がらでもない。

 仕方なく、彼らにねぎらいの言葉をかけようとしたUMP45であったのだが、ジョニーが懐からとりだしたものを見て凍りつく…。

 

「実はこれ、お守りがわりに我々全員が一枚ずつ預かっておりました。我らが貴女様に再びお会いできたのは、きっとこのご利益があったからでしょう…」

 

 ジョニーが取り出したもの……それは女性もののパンツ、いずれもUMP45が紛失したものばかりだ。

 聖遺物を扱うように大事そうにそれを掲げるジョニーに対し、これはもう手に負えないと戦慄する416…だがちらっと隣を見た416が見たのは、それよりも遥かに恐ろしいUMP45の形相だった。

 絶対零度の冷めきった眼でじっとジョニーを見据え、能面のように微動だにしない表情…瞳の奥に渦巻く禍々しい闇…。

 

 

「我らはこれをもって常に45姉をおそばに感じていた…45姉の誇り高き壁を思い描いてッ! ちなみに45姉、なぜパンツがお守り代わりかというと、男性と違って女性は玉なs-―――グフッ…!?」

 

 

 目にもとまらぬ速さでUMP45の蹴りがジョニーの腹部を撃ち抜いた。

 装甲が自慢のはずのジョニー、しかしその耐久性を一撃で粉砕されて轟沈した…。

 

 

「416、このゴミどう始末しようか?」

 

「わたしを巻きこまないでよ…」

 

「そ、そうだ…我らはそこの巨乳より45姉の貧ny――――ごふっ………ま、待って45姉…腹を蹴らないで、腹の調子が……!」

 

「さっさと死ね!この変態ッ!」

 

「ゴファッ!? スク水は……いいものだ…!」

 

 腹部の同じ個所を3発も蹴られたジョニーは対に力尽き、その場に崩れ落ちる…。

 一部始終を見ていた416は改めてUMP45の恐ろしさを痛感する……まあ、このような変態に付きまとわれたら誰でも嫌に決まっている。

 さすがに今回の件は行き過ぎたため、ジョニーの義体は研究開発班に運ばれ、AIの再調整を受けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日...。

 

「散々だったわね、45」

 

「ほんとよまったく…まあ、大人しくなったからいいけどさ……ジョニー、アンタが改心するって言うから連れて着てあげたんだからね?」

 

「感謝します45姉」

 

 そこには落ち着きを手に入れたジョニーの姿がある。

 AIの調整意外に、追加武装を施されたジョニーは一応MSF製装甲人形のプロトタイプという意味合いもあり、研究開発班のお願いで404小隊に引き取られるのだった。

 

「今日は良い天気ですね、絶好の散歩日和です」

 

「なんか紳士的すぎて逆に怖いんだけど…」

 

「まあ、研究開発班のお願いだし引き受けてあげようじゃない……」

 

 珍しく働き者な発言だが、真意はほっとけばいいだけのジョニーの性能評価、野放しにしているだけで賃金と働いている事実を得られるため引き受けたのだった。

 おかげでニートと追及されても、堂々と働いているといえるのだ。

 

 そんな風に、ジョニーを引き連れて散歩をしていたところ、研究開発班の棟の前でスネークとストレンジラブ、それとスコーピオンとハンターの姿を見つけ近寄っていった。

 何やら深刻そうな表情で話している彼らの表情に、ただならぬ予感をUMP45は感じ取る。

 

「どうしたの、何かあったの?」

 

 スコーピオンは動揺し、ハンターは目を閉じて口を堅く閉ざす。

 無言の二人からストレンジラブへと視線を移すが、彼女は思い悩むような表情で押し黙っていた…。

 沈黙する彼女たちに代わって質問に答えたのはスネークだった。

 

 

「エグゼの容態が悪化している……生命力が急激に低下しているんだ」

 

「エグゼが…そんな…! ストレンジラブ、あなたエグゼは助けるって言ったじゃない! あんた私に嘘ついたの!?」

 

「落ち着け45、ストレンジラブは最善を尽くしている…」

 

「だったらなんで!」

 

 

 エグゼの危機に、いつもの冷静さを欠いたUMP45は感情的になってスネークに掴みかかる。

 それを416がなんとか引き離すが、納得がいっていないのは彼女も一緒だった。

 咎めるような二人の目に晒されたストレンジラブはサングラスを外し、重い表情で口を開く…。

 

 

「戦闘で失った体組織の修復に手を尽くしたが、鉄血のハイエンドモデルであるエグゼの修復には高度な技術力がいる。私も研究を重ねてきたつもりだったが、鉄血の高度な技術にはまだ及ばない……義手の一つくらいなら開発出来たが、ここまでの損傷を回復させるにはな……手に負えないのは、損傷したコアの問題だ」

 

「じゃあなに、このままエグゼが衰弱していくのを黙って見てろって言うの!?」

 

「このままではな……せめてエグゼが造られた時のデータ、設計図のようなものがあれば解析できるかもしれない。だがそれは…」

 

「鉄血の領域の中……簡単じゃない、私が取りに行くわ」

 

「45、お前正気なのか?」

 

「正気に決まってる! エグゼがあんなになっちゃった責任はわたしにもある……それに鉄血の支配地域に入ったのも一度や二度じゃない、簡単よ!」

 

「待て45……今のお前は冷静さを欠いている、エグゼの身を案じる気持ちはわかるがこのまま不用意に行けばお前が同じ目に合うかもしれない。鉄血の領域には、オレとハンターが向かう」

 

 UMP45はそれでも不満を露わにする…家族として受け入れてくれたエグゼに恩を感じているUMP45は自分の手で、仲間を救いたいという想いがあった。

 だが、誰もが認める存在であるスネークと、鉄血のハイエンドモデルハンターの二人が向かった方がいいという認識もある……。

 

「検討はついてるの…?」

 

 うなだれるUMP45の問いかけに、ハンターがこたえる…。

 

「エグゼが生まれた場所……鉄血の工廠へと向かう。場所は以前エグゼに教えてもらったんだ…」

 

「そう……私が行くより、あなたたちがいく方が確実なのね…。いいわ、私はここで待ってる……だから、どうかお願いスネーク……エグゼを助けて…」

 

 いつもの取り繕ったような姿はそこになく、心の底からエグゼの身を案じている…滅多に見ることのないUMP45の本心に応え、スネークは彼女の肩を軽く叩いた。

 

「大丈夫だよ45、スネークならきっとやってくれるよ」

 

「スコーピオンの言う通りね。これ以上頼りになる人はいないわ……スネーク、わたしからもお願い、あいつをどうか助けてあげて」

 

「分かってる……エグゼは何としてでも救う、それがあいつをMSFに引き入れたオレの責務でもあるからな。ストレンジラブ、期限はいつまでだ?」

 

「なるべく早く頼む。あとどれくらいの時間が残されているのかも予測がつかん…」

 

 一刻の猶予もないのは確かだ…。

 一度ハンターと目を合わせたスネークは彼女を促し、ヘリポートへと向かう…。

 

 目指すはエグゼ誕生の地……全てが始まりを告げた場所であり、終わりが始まった場所…。

 

 




生放送聴きながら描いてたら構成がおかしくなった(錯乱)

ジョニーは404小隊のメインタンク&小隊支援兵器として活躍するよ!


さて、ほのぼのを書こうにも何かが足りない気がする…それはエグゼの存在なんだ!
ワイは処刑人が好きだ、大好きなんや!
というわけでもうちょっと引き延ばそうと思ったけど、復活イベントです…。


目指すは始まりの場所……エグゼやハンター、そしてアルケミストたちが生まれた場所…。

アルケミストが愛を知り、世界を憎むようになってしまった場所…。

次回、お楽しみに




※活動報告で人気調査みたいなのやってます、2回目です、良かったら協力しておくれ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。