METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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常夏の島のハネムーン:Amazing Grace

 昼間から繰り広げられるMSFスタッフ、そしてMSF所属の戦術人形たちによる常夏の島でのお祭り騒ぎは、日が沈み辺りが暗くなっても続いていた。

 空にまだ明るさが残る時間帯、M4たちAR小隊も一旦海の家を畳みそれに代わってMSF主催のバーベキューが始まろうとしていた。

 

「はいはい、皆さん協力して鉄板を用意しましょうね!」

 

 バーベキューの準備をスプリングフィールドが取り仕切り、鉄板やガスコンロなどの他、用意された肉や野菜をみんなが協力して運んでいく。

 今やMSFと堂々と取引をしている銜尾蛇牧场(ウロボロスファーム)産の新鮮な肉と野菜……どうも上手く隠せているのかスネークやミラーなどには、ウロボロスが絡んでいることを知られていないようだったが、一応鉄血組は全員知っている。

 

 鉄板やコンロが用意され、食材がいき渡れば後はおもいおもいのタイミングでバーベキューが始まる。

 当初の名目はエグゼのハネムーンであったため、スネークがわざわざみんなの前で乾杯の音頭をとることもない……和気藹々、無礼講、日頃の任務や訓練の事は忘れて全員がこの楽しい一時を過ごすのであった。

 

「ほらスネーク、あんたのビールだぞ」

 

「お、悪いな」

 

 隣に座るエグゼからビールを受け取るスネーク。

 昼間はスコーピオンとその他のせいで二人きりになることは出来なかったが、バーベキューが始まるとエグゼはスネークを誘いヴェルと一緒に一つの鉄板を囲む。

 やはりスコーピオンとUMP45が阻止しようと仕掛けてきたのだが、そこはアルケミストとハンターの気遣いによって阻止された。

 昼間出来なかった大好きなスネークとの時間を取り戻すように、エグゼはヴェルを間に挟みぴったりとスネークによりそう。

 

「スネーク、それまだ焼けてないぞ!?」

 

「んん? あまり焼かない方が素材の味が感じられる」

 

「そ、そうなのか?」

 

「ヴェルもなまにくたべるー!」

 

「ダメだヴェル! お前はちゃんと焼けたの食えよ、ほらぺってしなさい!」

 

 スネークの真似をして生肉を食べようとするヴェルに、エグゼは大慌てだ。

 まあ戦術人形はよほどのことじゃない限りお腹を壊さないので大丈夫だろうが、娘の教育的にまずいと考える……ましてやヴェルはなんでも口に入れたがる年頃、スネークの事は好きだが何でも食べようとするのは真似して欲しくないと思うエグゼであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スコーピオンとUMP45、二人はエグゼとスネークの一時を邪魔しようとした罪でアルケミストに返り討ちにあうも、不屈の精神で復活…まあ今回ばかりはエグゼにこの時間は譲ろうと考え、二人は大人しく身を引くのであった。

 二人は仕方なくやけ酒に走り、ちょうど空いていた79式とリベルタドール、そして遅れてやって来たカラビーナの席に混ぜてもらうのであった。

 

「ヴェルちゃんの存在はずるいよ! あたしにもちびスコーピオンがいれば……!」

 

「どうにかしてエグゼを私に振り向かせないと…!」

 

 酔って本音を暴露する二人には、さすがの79式も対応に困り愛想笑いを浮かべる。

 まあ、UMP45はともかくスコーピオンもエグゼ同様いつまでもぐずぐずいうような人形ではないので酒が進むにつれていつもの調子に戻っていく。

 

「ところでわーちゃんは?」

 

「あ、そう言えば私もそれ聞きたかったんです」

 

「我が主はマザーベースの警備任務があるからと、今回の参加は見送ったようですよ」

 

「そうなの? 別に大丈夫なのに…」

 

「そうでもありませんよ……なにせ、オセロット様も一緒ですから」

 

「へぇ、あれ? ということは…」

 

「ええ、主とオセロット様は今マザーベースで二人きりなのですよ」

 

 マザーベースには防衛と警備のための最低限の人員と、無人機及びヘイブン・トルーパー隊が残されているのみだ……冷やかしを入れたり邪魔をする者もおらず、WA2000とオセロットは二人だけの一時を過ごしているに違いない。

 カラビーナからそう聞いたスコーピオンはまるで自分のことのように喜んだ。

 以前から二人の仲を応援し、この間も二人の進展を見届けただけにスコーピオンにとって、WA2000が胸を張ってオセロットと付き合えるようになったことはとても嬉しかった。

 

「うんうん、わーちゃんも大したもんだね。リベルタは誰か好きな人とかいないの?」

 

友だちはみんな大好きだ

 

「あーそうじゃなくて…まあいいや、リベルタはまだこれからだもんね。79式は? 誰か好きな人いる?」

 

「私もセンパイや、みんなが大好きですよ」

 

「79式、そうじゃないわよ……誰かに恋してたりしない? オセロット様がいるとはいえ、主に恋をしてもいいのですよ?」

 

「あはは、センパイの事は好きですが恋じゃありませんよ。それに私……もう恋はしないって、決めてますから」

 

「あら……」

 

 目を伏せて、小声でつぶやいた79式……彼女の凄絶な過去を知るカラビーナは自分の失言を後悔する。

 79式は気にしないでと笑顔を見せ、少し暗くなった雰囲気を払しょくするように明るく振る舞う。

 しかし、そこへ一人の女性が近付いてくると、そんな79式の表情も変化する…。

 

「よっ、スコーピオン。久しぶりだな」

 

「お! イリーナじゃん、ほら座って座って!」

 

「それじゃあ遠慮なく…79式も久しぶりだな」

 

「えぇ…お久しぶりです」

 

 79式の微妙な変化に気付いたのだろう、イリーナは一瞬真顔になるがすぐに愛想のいい笑顔を浮かべる。

 イリーナは少しぎこちなく、砂浜に敷いたシートの上に座る。

 彼女は内戦によって受けたケガによる後遺症で、片足は思うように動かせず杖を手放せない状態であった。

 今は医療技術の進歩で高度な義足も開発できるのだが、イリーナは内戦によって引き起こされた悲劇と痛みを忘れないようにと、不自由な足を治さずにいる…パートナーであるスオミもそれを理解し、イリーナに無理に治療をすすめることは無かった。

 

「そういえばイリーナってば、スネークに相談があるって言ってたよね? お見合いのお知らせ?」

 

「ハハハ、私はしばらく独身で構わん。私が政治から身を引いたのは知ってるな、今は連邦の大学に通ってコーラップス液の研究をしてるんだ」

 

「あらま、なんだってそんなこと…」

 

「革命は成し遂げたが、私に政治は向いていないと感じたからな。相談というのは、MSFがアメリカから入手した情報を少し見せてもらえないかとお願いしようとしたんだ。あの国の研究データに一つ気になるものがあってな」

 

「なんか企んでないでしょうね? イリーナってば、抜け目ないところがあるから…」

 

「そんな大層なものじゃない。私が知りたいのは、アメリカが研究していたコーラップス液の汚染を浄化する技術だ」

 

 イリーナの突拍子もない言葉に、スコーピオンはおもわず言葉が出なかった。

 コーラップス液、E.L.I.Dによる汚染は全世界に広がっている……汚染された地域は人や生物が生存するには困難で、感染者と呼ばれる恐ろしい存在が徘徊する。

 いくつもの国や研究機関がE.L.I.Dによる汚染を消す研究をしていたが、そのどれもがとん挫した。

 しかし唯一、その研究に成功した国家があるとイリーナは言う……それが、アメリカ合衆国なのだと。

 

「今はおそらく誰の記憶にもないと思う。なぜならアメリカがその研究の成功を表明したのが、最初の核弾頭が着弾する3時間前だったからな。たまたま私はラジオでそれを聞いたんだよ……まやかしかもしれないが本当かもしれない。もしも人類が核のボタンを押すのをもう少し躊躇していたら、世界は変わっていたかもしれない」

 

「そうなんだ……でもあのデータはあたしも見たけど、ほとんど軍事技術ばかりだったよ。それも暗号化されて解読も難しいし」

 

「いや、無理ならいいんだ。何か解決の糸口があればと思っただけだからな」

 

 MSFがあのデータから入手できたのはほんの一握りの情報に過ぎない。

 仮に情報を得たとしても、実現しきれないほどの技術だったり理解できなかったりと、入手できた情報の全てが役立つとは限らない……その中で解読、技術を理解できたものだけをMSFの軍事に適応させているのだ。

 話が落ち着いて、一息ついたところでイリーナは79式に目を向ける……79式もイリーナが何を思っているのか理解しているようで、真っ直ぐに見つめ返す。

 

「79式…私を恨んでいるか?」

 

「恨まなかった……と言えばウソになるかもしれません。でも今は、それで良かったんだと思えています。センパイ……ワルサーさんのおかげで、私はまた生きてみようと思えたんですから」

 

「そうか……正直、君と会った時何を言われるか不安で怖かったよ。君を助けようとしたのは私の偽善だった」

 

「いいんですよ、イリーナさん。大切なのはこれからどう生きるか……そう教えてくれたのはイリーナさん、あなたじゃないですか」

 

「強くなったな79式、やはり君をMSFに任せたのは間違いじゃなかったようだ。スコーピオン、礼を言わせてくれ」

 

「もうあたしは何もしてないってば、わーちゃんのおかげだよ! というか、なんかせっかく楽しい空気がちょっとしんみりしちゃったじゃん! 盛り上げていこうよ! イリーナも飲める口だったよね!?」

 

 少ししんみりした空気をスコーピオンが持ち前の明るさで強引に持ち直し、過去の出来事は記憶の隅に追いやる。

 お酒に弱い79式も、軽めの飲み物でみんなと一緒にこの楽しい時間を過ごす……。

 空は日が沈み、すっかり暗くなる、まだまだ夜の部はこれからだ!

 

 

 

 

 

 

 食の手が止まり、ほとんど全員がお酒に手を出した頃あい……誰が用意したのか、砂浜にいつの間にか用意されたキャンプファイヤー。

 規則正しく組まれた丸太の中におがくずを入れたもの、酔ったスコーピオンがそこに焼夷グレネードを放り込んで着火させると炎は勢いよく燃え上がり大きな火柱をあげた。

 酔っぱらったMSFのスタッフがキャンプファイヤーを取り囲んで千鳥足で踊り、いつの間にか参加していたミラーがギターの音色を奏でる。

 

 

「おらー! みんな飲んでるか!? オレとスネークのハネムーンを邪魔しやがってこのやろー! お前らしけた面で飲んでやがったらぶちのめすからな!」

 

 

 良いい具合に酔っぱらったエグゼが酒瓶を片手にみんなを煽れば、スペツナズの面子やスコーピオンがほいほいつられてやってくる。

 エグゼにどうにかして振り向いてほしいUMP45もお酒をもって突撃するが、哀れにも相手が悪すぎる……ウォッカの一撃で返り討ちにされたUMP45は苦しそうに呻きながら、妹のUMP9に介抱されていた。

 

 酔っぱらうといつもケンカや騒動が起こるが、この日ばかりは諍いの一つ起こらない。

 酔っぱらって何もかもが楽しくなっている状態のエグゼが、毛嫌いしているはずのM4と肩を組んでよく分からない歌を歌っているくらいだ…。

 

 

 歓声、雄叫び、大合唱。

 無人島に響き渡るMSFの歓喜の声は、島の反対側にも聞こえるくらいだろう…。

 だが楽しい時間もそろそろ終わりが近付く、酒に酔ったものが一人、また一人と退場し島に建てられた宿舎へと向かっていく…。

 キャンプファイヤーの火も弱まり、そこに集う者たちも少なくなる。

 

 程よく酔いが覚めて、ゆったりとした雰囲気が流れる…。

 

 

「なあ、誰か歌えよ……ちょっと落ち着いた感じの歌をさ…」

 

「落ち着いた歌って言ってもね…?」

 

 

 ここでそのリクエストは無茶だろうとスコーピオンは笑った。

 ただこうしてキャンプファイヤーの残り火を眺めつづけているだけでもいいかな、そう思った時のこと…。

 

 

"Amazing grace(アメイジング・グレイス)how sweet the sound(何と美しい響きであろうか)That saved a wretch……like me(私のような者までも救ってくださる)――"

 

 

 夜のビーチに響く、ささやかな歌声……。

 美しいその音色を奏でるのは、キャリコの肩を抱きキャンプファイヤーを見つめるMG5であった……恋人の美しい歌声にキャリコは酔いしれ、彼女の腕に頬を寄せていた…。

 

 MG5の歌声にミラーがギターを合わせると、一人…また一人と、MG5と一緒にその歌を歌う。

 甘美で、美しく、そして哀愁を秘めた讃美歌……。

 その歌詞から連想するのは何か…?

 

 感謝、祝福、懺悔、後悔……。

 きっとこの歌は、一人一人によって意味合いが変わってくるだろう…。

 

 讃美歌を歌い終えた時、ささやかな拍手がおこる…。

 歌い終えた者たちは、笑っていたり、泣いていたり、何かを思いつめていたり……色々な感情を表情に現していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姉貴、なにやってんだよ?」

 

 キャンプファイヤーの火が消えて、宿舎へとみんな戻っていくなか、エグゼは一人海を見つめるアルケミストに会いに行っていた。

 波打ち際にしゃがみ込むアルケミストの手には透明なガラスのボトルが一つ、中に丸め込まれた紙が入れられている。

 エグゼと一緒にやって来たデストロイヤー、ヴェル、ハンターもそこに加わる……アルケミストの微妙な感情の変化に気付いたデストロイヤーが寄り添い、その肩に手を振れる。

 

「マスターの事を思い出していたんだ。あの人は海が好きだった……海を見たこともない癖にな。いつかみんなで一緒に海に行こう、マスターが言ったのをみんな覚えているか?」

 

「ああ、覚えてるぜ……何もかもうまく行ってた時だった」

 

「マスターってば紫外線に弱いし泳げないのにね。ハンターは…覚えてないんだよね?」

 

「そうだ……だがエグゼから、その人の事は教えてもらった。素晴らしい人だったとな」

 

「ママー、マスターってだれー?」

 

「サクヤさんはオレたちにとっての母親みたいな人だ、ヴェルにも逢わせてあげたいな」

 

「ママのママってこと? じゃあ…そのひとはヴェルのおばーちゃんだね!」

 

 ヴェルがまさかそんなことを言うとは思っておらず、アルケミストを含めてみんなが面白そうに笑った。

 確かに、ヴェルからしたらサクヤはおばあちゃんになるかもしれない。

 これを聞いたらあの人は喜ぶか、それともそんなに老けてないと怒るだろうか……今は想像するしかないのがもどかしい。

 

 

「マスターは死んじゃいない。きっとどこかで生きてるんだよ……あの人は寂しがり屋だ、だからどこに行っても友だちや仲間を大切にする、あの人はそんな人だ。きっと、今もあの人の周りには素晴らしい仲間がたくさんいるんだろうな…」

 

「そうだな…誰よりも優しくて、家族を大切にする。オレたちにもそう教えようとしてくれた」

 

「マスターと一緒の道を歩く夢は叶わなかった。だがせめて、今のあたしらの姿を見せてあげたい……お前も、デストロイヤーも、ハンターも、ヴェルのこともな。このボトルに写真のデータを入れてある……それともう一つ」

 

 アルケミストが取り出したのは、小さなボイスレコーダーだ。

 それを操作すると、録音が始まった…。

 

 

「やあマスター、あたしだよ…アルケミストだ。この声とメッセージがちゃんとあなたに届いているのを願うよ、もしそうじゃない奴が聞いているならとっとと聞くのを止めな。

さて、なにから話せばいいかな……あたしの成長の記録か、それとも人に言えない復讐の話か……マスターには知って貰いたいかな? あたしは、マスターを失くしてから罪を重ね続けた……あたしからマスターを奪った世界を憎んで、恨んで、復讐の道を歩いたんだ。

謝らなくちゃいけない……あたしは、マスターと約束したことを破ってしまった。

家族を傷つけて、憎しみで何も見えなくなってしまったんだ……でも今は、なんとかなってるよ。覚えてるか、あのバカで喧嘩っ早いエグゼ…処刑人があたしを助けてくれたんだ。

忘れかけていたマスターの温もりも思いだせたんだ……あいつには感謝してもしきれないよ。

ところでマスター、アンタにメッセージを送りたいという奴が他にもいるんだよ、聞いてやってくれないか?」

 

 

 そう言うと、アルケミストはボイスレコーダーをみんなに向ける。

 意図を理解し、真っ先にデストロイヤーが声を発する。

 

 

「やっほマスター! デストロイヤーだよ、久しぶりだね! なんか最近不幸体質なのか色々厄介ごとに巻き込まれてる気がするんだけど、なんとか頑張ってます! 今はね、鉄血を離れてMSFっていうPMCにお世話になってるんだ! 代理人がいないのがちょっと寂しいけど…アルケミストも処刑人も、ハンターもいるから楽しいよ! それからヴェルちゃんもね! えーとなんか他にも色々話したいことあるんだけど…とにかく、私元気でやってるから!」

 

 次いで、ボイスレコーダーを向けられたのはハンターだ。

 記憶を失くしたせいでサクヤの事を知らないハンターは何を話していいか分からず軽いパニックを起こすが、ひとまず声を発する。

 

「ハンターだ……はじめまし……ん? こんにちは? サクヤさん、いや、マスター? すまない、実はウロボロスのせいで記憶を……コホン、実は階段から落ちたショックで記憶が飛んでしまってマスターの事を忘れてしまったんだ。でもみんなからあなたの事は聞いている、母親のような存在だったと……あなたのことを知らない自分が恥ずかしい。だがこれだけは分かる、あなたが育てた人形たちはみんないい奴だ……きっと育てたあなたも同じかそれ以上に素晴らしい人なのだろう。こんな素晴らしい仲間たちと一緒にいられるのは、一重にマスターのおかげだ、ありがとう」

 

 最初こそしどろもどろだったハンターであるが、最後は上手くしめてみせた。

 次はエグゼとヴェルの番だ。

 ボイスレコーダーを向けられると、エグゼが話すよりも先にヴェルが声を出す。

 

「おばーちゃん! ヴェルだよ!はじめまして!」

 

「こらヴェル! わるいわるい、うちの娘はせっかちでな……おっと、オレの事はわかるよな? 処刑人だよ、かっこよくて最強で最高に美人な処刑人さまだ! えっと、今のヴェルってのはオレの娘で……いや、正確にはオレのダミーなんだけどなんか自立しちゃってんだよ。見た目はおれそっくりだから写真見れば一発で分かると思うけどな。実はオレさ、好きな人ができたんだよ! スネークって言うんだけど、強くてかっこよくて渋くてさ…! マジ惚れてんだよね! マスターも応援してくれよな、ライバル多いから大変なんだよ! マスターもそっち方面頑張ってな!」

 

 二人が話し終えると、ボイスレコーダーは再びアルケミストに戻る。

 

「マスター、これを聞いてあなたは何を思うだろうな……別れのメッセージだと思うだろうな、きっと。マスターを悲しませたくはないが、実際これは別れのメッセージになると思うんだ……だけど、子はいつか親の手を離れるものだ。いつまでも親に甘えていたいのが子だが、いつかは独立しなきゃならない。だからなマスター……あなたと別れて違う道を歩き始めるあたしらを、どうかあたたかく見送って欲しいんだ。

 

直接お別れを言えないのだ心残りだが、これで勘弁してほしい。

 

いつかお互いの歩く道が交わるといいな……それじゃあマスター、いつかまた……いつまでも愛しているよ、マスター」

 

 

 会話を録音したボイスレコーダーをボトルの中にいれて、固く封をする。

 それが届くかどうかは重要ではない、こうすることが彼女には必要だった…。

 

 ボトルを海に流した後、彼女たちはしばし夜の海をぼんやりと眺めていた…。

 アルケミストは一人、密かに涙を浮かべる……誰かのために涙を流すのは今日が最後になるように、そう願いながら…。




アメイジング・グレイス…。

たぶんこの歌は、聞く人によって意味合いが大きく変わってくると思いますね。

スコーピオンやスプリングフィールドらにとっては明るい未来…
アルケミストや79式にとっては犯した罪の懺悔…


最後のボトルメールは…コラボ案件だったり?
届くといいなぁ
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