METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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愉快なタイトルからのオチ


借金返済AR小隊

 イギリス陥落、米軍戦力のグレートブリテン島強襲によって情報の錯綜があったがドーバー海峡を渡ってきた英国本土の難民たちの多数の証言により、あのイギリスが米軍の手に落ちたのだと今だ米帝復活を疑問視する各国首脳たちも理解し始めた。ドーバー海峡を渡ってくる難民たちを受け入れるのは必然的にフランス政府となる…国連はフランスの難民受け入れの支援を表明するものの、食糧難に加え今だ残る第三次世界大戦の禍根により各国の支援は積極的とは言えなかった。

 コーラップス液に国土の半分近くを汚染されているフランスが一国で多数の難民を受け入れ、なおかつ米軍の侵攻に備えられるはずもなく、フランス政府は難民支援をPMCに依託…フランス軍はドーバー海峡を睨む沿岸沿いに多数配備され、米軍が海峡を渡り上陸するのを阻止する任務を負った。

 

 この難民支援の仕事はMSFとしても積極的に受け入れ、普段は協定だのなんだのとうるさい政府もMSFの難民支援を静観することとなった…食糧支援、医療支援、そして汚染地域の感染者対処。汚染と感染者の脅威が難民支援を妨げる、難民の中には広域性低放射感染症(E.L.I.D)の初期症状を訴える者もいた。

 実際、ある一つの難民キャンプがE.L.I.D感染にともなう混乱で消滅した。

 危険な任務、決して高額とは言えない報酬に多数のPMCが離反していくなか、MSFは人道そして難民支援に尽力……このようなMSFの自己犠牲と言ってもいい活動がメディアやジャーナリストの目にも止まり、かつて戦争屋と忌み嫌われていたMSFの評判は、少しずつ市民たちによって評価されていった…。

 

 

 そんなわけで、最近は何かと忙しいMSFの前哨基地。

 フランス方面への人道支援活動のためにいくつかの部隊が割かれ、一時期ごった返していた前哨基地も比較的落ち着いていた。エグゼ率いる連隊隷下の部隊としては、MG5が指揮する大隊がフランス方面の難民支援活動を行っていた。

 それ以外の大隊はというと、来るべき戦争に備えて大隊ごとに訓練を行うか戦力増強のために基地指揮官のエイハヴにかけあって新型無人機を貰おうとするのだが……生産数が少ない中で需要が多いものだから数が足りず、こう言った場面で大人になり切れない連中が多いせいもあって今日も前哨基地では不毛な争いが起きていた。

 

 

「これだけは絶対に譲らねえぞハンター! フェンリル30機はうちの連隊で貰いうけるからな!」

 

「ふざけるな! 残り4機程度でどうやって私の大隊が増強できると思ってるんだ! だいたいお前らの任務内容を考えたら、フェンリルよりも月光やグラートを配備した方がいいだろうが!」

 

「バカ野郎! かっこいいからたくさん配備するに決まってんだろ!」

 

「まあかっこいいのは分かるが……それとこれとは別だ、うちの猟兵大隊はフェンリルのような無人機を前々から望んでいたんだ! それをお前、後から騒いでごり押しして盗っていくような奴があるか!」

 

「盗ってくだなんて人聞きが悪いぞお前! お前の場合ただ猟犬っぽい無人機が欲しかっただけだろが!」

 

「うるさいメスゴリラ! お前の脳筋ぶりにはうんざりだ!」

 

「なにこの!」

 

 

 アルケミストやデストロイヤーなどが呆れて眺めている中、先にエグゼがビンタしたことで始まった二人の大喧嘩。普段はとても仲が良く、お互い親友だと認めているはずなのに…お互い欲しい物を巡って争い合う姿はとても情けない、母親とその親友の情けない姿は教育上まずいとしてヴェルの事はその場から遠ざけていた。

 

「まったく、ハンターに限っては冷静になれる方だと思ってたんだけどね」

 

「どうしようもない奴らだなこいつら…」

 

「バカみたいだよね」

 

 互いに頬をつねり合い、ぽかぽか叩き合う二人をそこまで深刻に見ていないのは、ケンカするほど仲が良いからと分かっているからこそ。

 

「というかさ、エグゼの連隊とハンターの大隊って別系統だったんだね」

 

「うん、そうだよ。ハンターの降下猟兵大隊は連隊とは独立した指揮系統だからね、空挺降下とか山岳任務とか特殊な環境で投入されるからね。部隊の規模は違うけど、序列的には同等なんだよ」

 

「なるほどなるほど…スコーピオンはエグゼの副官だけど、自分の部隊を持ちたいとか思ったことは無いの? 9A91とかWA2000だって、自分の部隊を持ってるのに…」

 

「いいのいいの、あたし突撃要員だから? それに、身軽な方がスネークにいつでも会いに行けるからいいんだよね!」

 

「えぇ……」

 

 最古参人形の言うことはやはり違う、ここ最近はアーキテクトとかポンコツ化したFALなどのせいで目だたなくなって来ているが、ぶっ飛んだ思考で周囲を困らせる才能にかけてはスコーピオンに敵わないだろう。まあ、一対一ならWA2000とも張り合えるほどの戦闘能力を持っているので力量においては申し分ないのだが…。

 さて、いい加減二人の不毛なケンカをやめさせることにしよう、ということで姉貴分のアルケミストが介入するが…しばらく放置している間に頭に血が上った二人は止まらない、仕方なくスタンガンで無理矢理鎮圧して黙らせる。

 

「ここまでケンカした後で言うのも悪いんだけどさ、最終的に無人機の配備を決めるのはエイハヴだから二人が言い合っても無意味なんだよね」

 

「そ、それを…早く言いやがれスコーピオン…!」

 

 ふらふらと起き上がったエグゼは、何故かスタンガンをくらっていないハンターを忌々しく睨む。こう言ったケンカが起きて成敗されるのはいつも自分だ、とエグゼは猛抗議するがアルケミストは素知らぬ顔…"お前は復活が早いからな"と褒められているのかバカにされているのかよく分からない言葉に、エグゼは言い返すのを諦めるのであった。

 しかし腹のおさまらないエグゼは、たまたまそばを通りがかったAR小隊に絡み始める…。

 

 

「おう居候小隊、今日も呑気に散歩ですかい? 良い身分だな」

 

 

 挑発的な態度でAR小隊、特にM4に対して絡んでいくが、いつもならムキになって言い返してくるM4は今日に限って冷静であった。そればかりか不敵に微笑み返すのだった。

 

「残念ですね処刑人、もうこれ以上あなたに構う必要はなくなりましたので。姉さん、見せてやってください」

 

「その通り、見ろ処刑人! 私たちはついに借金を全て返済したのだ!」

 

 M16が突き付けてきた証明書をひったくり見るが、確かに借金返済を示す文書と共に副司令ミラーのサインが書き込んである。長かったニーt…借金生活もようやく終わる、思えばSOPⅡが健気に働く姿に感化されて遅れを取り戻そうと偉く躍起になったものだと二人は感慨深そうに振り返る。

 事あるごとに絡んでくるエグゼにブチギレたりもしたがそれも今では良い思い出だ。

 

「フ、フン……お、お前らみたいな腐れニートがいなくなって、清々するぜ…!」

 

「あらら? 負け惜しみですか? 情けないですね処刑人、いつもみたいな憎まれ口を叩かないんですか? 今の私なら何を言われても頭に来ませんよ?」

 

「M4……お前ちょっと、性格悪くなってるぞ…」

 

「いつものお返しですよ姉さん」

 

「あーその辺にしといた方が良いよM4、エグゼ泣くから」

 

「はい? なんで泣くんですか?」

 

「ほら、こいつ人情深いじゃん? M4みたいな仲が悪い奴でも、いざいなくなるって考えたら絶対落ち込むから…ほら、言ったそばからあれだ」

 

 スコーピオンに言われて見て見ると、先ほどのやかましさから一転し落ち込んだ様子のエグゼがとぼとぼとどこかに歩き去ってしまった。本当に悲しんでいるのかどうかは知らないが、いつも元気いっぱいでやかましいエグゼのそんな姿を見たM4はつい罪悪感を感じてしまった。

 

「良いも悪いも、清濁併せ呑む器量が大事なんだよね。今まで楽しかったよAR小隊のみんな、そのうちまた会えるだろうし

その時はお互い仲間だといいよね」

 

「ええ、なんだかんだMSFの暮らしも悪くはなかったですね」

 

「酒に困ることは無かったね。君の密造酒は少しヤバかったけど…」

 

「MSFのラーメンとっても美味しかったな! どうせなら作り方教えてもらえば良かったよ、そうすればグリフィンに帰っても毎日食べられるし!」

 

 借金を見事返済したAR小隊、実は今日グリフィンの迎えのヘリがやってくることになっているのだが一応非公式…だが非公式とはいえ敵対関係にある鉄血人形がこの場にいてよいのかということで、アルケミストとデストロイヤーなどのハイエンドモデルは即座に前哨基地から逃げ去っていった。

 数時間後に控えた別れの時まで、AR小隊は最後となるMSFでの暮らしを味わうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 前哨基地ヘリポートに一機のヘリコプターが着陸する。

 ヘリポートのすぐそばではAR小隊が並び、ヘリを出迎える…ヘリのドアが開いて現われたのはグリフィンの制服に身を包んだヘリアントス上級代行官と同じくグリフィンの制服を着ている一人の女性だ。ヘリアントスを前にしたAR小隊の面々は敬礼を向け、彼女も敬礼を返す。一方でヘリアントスに追従してきた女性は小さく手を振り、それを見たM4は小さく微笑み返す。

 

 

 

「久しぶりだな、ヘリアントス上級代行官」

 

「うちの部隊が世話になったみたいだなスネーク。お互い気軽に接触できない環境の中で、内密に会える機会を設けてくれたことに感謝する」

 

 いろいろあったとはいえ、AR小隊を今日まで面倒を見てくれたことの感謝を示す…ずっと前になるが、MSFが今より規模も小さくグリフィン側とそこまで緊張した関係になる前の頃、モニター越しに会っていたことがあった。一応、今回が初めての直接的接触となる。世間一般の常識ではMSFとグリフィンは相容れない存在と認識されているようだが、非公式にとあるグリフィン司令部を訪れたりこうして会うこともあった。

 協定や他勢力とのしがらみを除けば、グリフィンもMSFも組織としてはそこまで仲が悪くなる理由もないのだ。

 

 軽い握手を交わしたところで、スネークが後ろに控える女性の紹介を求めるように視線を動かす。それで待ってましたとばかりに、彼女は前に歩み出る。

 

 

「始めましてMSFの司令官さん、私はグリフィンで指揮官を務めてる【ソニア】と言います。どうもうちの子たちがお世話になりました」

 

「スネークだ。君が…彼女たちの指揮官?ずいぶん若そうだが…」

 

 

 率直な感想を述べたスネークであるが、人手の足りないグリフィンでは若くても能力さえあれば上に上がることが出来る。見た目は20代前半か、10代と言われてもおかしくないほどの少女に見える。

 

「ソニア指揮官はヘリアンさんの姪にあたるんですよ。と言っても、ヘリアンさんのコネでのし上がったとかじゃないですからね?」

 

「そんなことはしませんよ。自分の能力で這い上がってこそですよね、ヘリアンおば(・・)さん」

 

「コホン…ソニア、人前でおばさんと言うなとあれほど…!」

 

「え? だって伯母と姪なんですから普通ですよね? とにかくうちの子がお世話になりました、これからもヘリアンおばさん共々よろしくお願いしますね?」

 

「あ、あぁ…」

 

 姪のソニアに何度もおばさん呼ばわりされてへこんでいるヘリアンに同情しつつ、スネークはソニアと握手を交わす。元グリフィンの戦術人形がたまにヘリアンの合コン連敗ネタを口にすることがあるが、こういった部分でもネタにされているのだろうか?

 今回の接触は内密であり、あまり長居することもできない。

 名残惜しく別れを告げたAR小隊の面々はヘリに乗り込んでいく…あれほど躍起になって出ていこうとしたMSFも、いざこうなればもの哀しいものだ。

 ふと、M4は前哨基地の格納庫からこちらをじっと見ているエグゼの姿を見た。

 何も言わずじっと見続けるだけのエグゼに軽く手を挙げると、彼女は中指を立てて返す……最後までエグゼはエグゼであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、なんかこうして帰るってなるとちょっと寂しいよね」

 

「みんなMSFの暮らしがよっぽど良かったみたいだね。私ちょっと嫉妬しちゃうな」

 

「まあまた会えて良かったよ指揮官」

 

 帰り道の機内、久しぶりに会った指揮官とMSFでの出来事や反対にグリフィンでの出来事などを話しあう。M4も色々と思い出話を指揮官に話すのだが、ふとヘリアンが神妙な面持ちで窓の外を見ているのに気付く。おばさん呼ばわりされてショックを受けているのかもと思ったが、今までに何度か深刻な事態において同じ表情を見てきた。ソニア指揮官も彼女のそんな表情に気付いていた…。

 ヘリアンはポケットから端末をとりだすとしばらくじっと見つめ、わずかに目を見開く…機内にいる全員が何かあったのだと感付き、会話を止めた。

 

「おばさん、何かあったんですか?」

 

「帰ってから話そうと思っていたことなんだがな……まず一つ、16LABのペルシカリアが何者かに誘拐された」

 

「はい…?」

 

 全く予想もしていなかった言葉にM4は言葉を失う。このことは指揮官も聞いていなかったのか驚きに満ちた表情をヘリアンに向けていた。

 

「MSFの前哨基地に向かう最中に知ったことだった。緊急任務だ、お前たちには帰ったらすぐにペルシカリア捜索の任務についてもらう」

 

「わ、分かりました…ペルシカさん無事だといいのだけど…」

 

「もう一つ、最悪のニュースがある」

 

「また悪い知らせですか? 今度は何です?」

 

 ペルシカ失踪だけで最悪のニュースだというのにこれ以上何があるというのか…全員の視線がヘリアンに集まるなか、彼女は重い口調で話しだす。

 

 

「所属不明の艦隊がイベリア半島のジブラルタル海峡を突破したらしい」

 

「所属不明の艦隊って、まさか……アメリカ? だとしたら奴らの狙いはドーバー海峡じゃなくて……でもそんなことになったら!」

 

「地中海から米軍がどこに上陸してくるか分かったものじゃない。軍は戦力の分散を迫られるだろう……なんにせよ、クルーガーさんの指示をあおがなければならない」

 

 

 地中海に入り込まれたということは、欧州の大部分が上陸の脅威をつきつけられたといってもいい。

 さらにそこから続く、ダーダネルス海峡とボスポラス海峡を抜ければ黒海に繋がる……そうなれば正規軍は喉元にナイフを突きつけられたことにもなる。

 欧州に、再び大戦の炎が急速に近付こうとしていた…。




憎らしいM4だけど、別れ間際にはちょっぴり寂しくなっちゃうエグゼの図…


シーカーさん、次の一手は米海軍の復活とジブラルタル海峡突破…目的は正規軍の鉄血包囲解除やな。
でも米海軍は全盛期の三分の一以下に弱体化してるよ、やったね!(戦闘力32470/99999)
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