METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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コラボの続きやゾ


緊急合作案件!! 人外VS人外

「あーもう頭に来るわ!!」

 

 いまだ閃光の後遺症に苛まれながら、WA2000は停止する戦車内で仲良く寝ているFALとVectorの救助を行う。ご丁寧に二人は縛り上げられ、ちょうど二人が密着する箇所に手榴弾が仕掛けられていたが、WA2000は慣れた手つきで爆発しないよう抜き取ると、戦車の正面に放り投げて爆破処理を行った。

 閃光手榴弾をを浴びて気持ちよさそうに寝ている二人を戦車に捨て置き、彼女は砲塔の上に腰掛け苛立たし気に遥か彼方を睨みつける。

 

「ご機嫌ね、ワルサー」

 

「グローザ、あんた一体何してたのよ!」

 

「運び屋さんがプレゼントにお酒を置いててね? なんか毒物が入ってるみたいだけど…まあいいでしょう」

 

「毒物入ってるの分かってて飲むな」

 

 クスリとグローザは笑い、運び屋が仕掛けた毒入りアルコールをちびちび飲んでいる。

 まあ普段からメチルアルコールだの塗装用アルコールだの、身体に極めて有害なアルコールを摂取しているため、グローザの鍛え上げられた鋼の胃袋は毒物も単なるスパイスとしかなりえない。下や内臓にピリピリくる間隔を楽しみつつ、グローザは先の戦闘を振りかえる。

 

「それにしても見事な戦いっぷりね、モハビ・エクスプレスの運び屋さん」

 

「完全に油断してたわ…」

 

「精鋭FOXHOUNDにあるまじき発言ね。戦場で、油断していい瞬間なんて一瞬たりともないわ。最悪を予期して手順を変えること…型にはまって罠に嵌まるのは自分よ、狙撃手さん?」

 

「覚えておくわ……9A91だったらもっと上手くやったかしら?」

 

「さあね? うちの隊長さんは感情任せに動く人じゃないもの」

 

 グローザの言葉にWA2000は鋭い視線を向けるが、睨まれた彼女は少しも表情を変えることは無かった。

 MSFでは最強の戦術人形は誰かという議論が良く起こり、その度にWA2000の名があがる。だがグローザは自らも所属するスペツナズの部隊長である9A91こそが、最も優秀な兵士であると思っているのだった。

 

「まあ、気負う必要はないわ。あなたが持っていないものを隊長さんは持っているけど、隊長さんが持っていないものをあなたが持っているのも事実だし」

 

「面白くないわね」

 

「リベンジするつもり?」

 

「まずは見極めてみるわ……うちの部下をぶつけてみることにするわ」

 

「カラビーナを?」

 

「リベルタドールよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 珍妙な追手を撃退した運び屋は近くにあった町に入ると、オープンテラスのカフェに座り一休みをしていた。

 あちこち銃撃を受けて痛んだアーマーの修理もそこで行いながら、出されたコーヒーに手をつける。

 砂で汚れたコートにヘルメット&ガスマスクという、見るからにただものではない雰囲気を醸し出す運び屋に近寄ろうとする者はない。せいぜい注文を取りにきたウェイターくらいだが、そのウェイターもコーヒーを運ぶとさっさと離れていってしまった。

 

「ここにいたのか運び屋! 散々探したんだぞ!」

 

 そんな中やって来たのが、運び屋の管理下?にある戦術人形CZ75。

 彼女は運び屋が飲もうとしたコーヒーをひったくって一口で飲み干すと、イライラした様子で怒鳴りかける。

 

「あのいかれたロボットども、延々反共プロパガンダ演説を垂れ流してるぞ! それも最大音量で! うるさいったらありゃしないって、なんかしな! って、なんだよその荷物は…?」

 

 ふとCZ75は運び屋一人が持つには大きすぎる箱に気付く。

 なんとも頑丈に梱包されているようで、なおかつ運び屋のアーマーが銃撃された痕があるのに気付きまた厄介ごとかと勘ぐる。

 

「あんたがどこで何してようが知ったことじゃないけどさ…なんかお前のこと捜してる奴いたけど、もしかしてそいつに追いかけられてるのか? え? どんな奴かって……なんか背が高くて髪を三つ編みにした奴で…あ、あれだ」

 

 CZ75は人混みの中にその運び屋について聞き込みしているという人物をすぐに発見した。

 高めの身長に髪を一本の三つ編みにした戦術人形…CZ75の後ろから運び屋も覗いてみると、ちょうど向こうは住人の一人に写真を見せて聞き込みをしている様子だった。聞き込みを受けている住人はカフェでくつろぐ運び屋を指差すと、彼女は視線を運び屋に固定しまっすぐに向かってくる。

 

「うわ、なんかこっち来るぞ! 知り合いか運び屋?」

 

 もちろん知るはずがない。

 この場合、新たなMSFの追手に違いないと判断した運び屋は情報を求めてこの任務の依頼者であるスコーピオンに無線を入れた。

 

『そいつはリベルタドールで間違いないね。まあわーちゃんをやっつけた運び屋さんならなんとかできると思うよ。それに、リベルタちゃんは無口だけど根はいい子だから、運び屋さんの話術なら穏便に済ませられるんじゃないかな?』

 

 なるほど、と運び屋は通信を終えて椅子から立ち上がる。

 相変わらずリベルタドールは視線を運び屋から一切外さず、まばたきもせずに向かってくる。道を遮る通行人を押しのけて向かってくる彼女の威圧感に、先ほどの無線を聞いて油断していたCZ75も焦りだす。

 

「あれ、どう見ても話が通じる相手じゃないよな!? どうすんだ運び屋!?」

 

 話が通じない相手にすることは一つしかないだろう…。

 

 人混みをかきわけやって来たリベルタドールは既に銃を構えていたが、運び屋は素早くホルスターからリボルバーを抜き先制攻撃に打って出た。強力な45-70ガバメント弾を受けたリベルタドールは一瞬怯んだように見えたが、わずかに動きを止めたのみで、すぐさま引き金を引いて反撃に移る。

 リベルタドールの愛銃H&K CAWSは12ゲージタングステン製バックショットを250発/分で撃ちだす凶悪な兵器、即座に物陰に隠れた運び屋を、遮蔽物ごと吹き飛ばそうと撃ちまくる。

 

「だーー!! このバカ野郎、あたしを巻き込むなー!」

 

 ついつい運び屋と一緒に物陰に隠れてしまったがためにCZ75もこの銃撃戦に巻き込まれることとなる。

 街中で突然勃発した銃撃戦で住民はパニックを起こし逃げまどう……住人がいる間リベルタドールは積極的に銃撃をくわえはしなかったが、住民たちがいなくなると、ロケットランチャーを担ぎだしたではないか。

 ロケットが撃ちだされる前に運び屋はCZ75を肩に担いで遮蔽物を飛び出し、僅差でロケットが隠れていた遮蔽物を粉々に吹き飛ばした。

 

「なんなんだよあいつ! ちょっと、タクシー!」

 

 たまたま通りかかったタクシーを強引に停車させたCZ75は、運転手が抗議するのも聞かずに後部座席へと乗り込み、運び屋もそれに続く。砂煙の向こうからリベルタが向かってくるのを見て彼女はさっさと走らせるよう言うが、運転手は言うことを聞かない。

 リベルタの銃弾がタクシーの車体を貫くと、ようやく運転手が車を走らせた。

 

「トラブルごとはごめんだぞ!? 一体何なんだ!?」

 

「第4次世界大戦だよ! あたしが知るか! お、おい…あいつ追てきやがるぞ!?」

 

 走りだしたタクシーに対し、リベルタは生身のまま追いかけてくる。タクシーの方もそれなりにスピードを出しているはずだが、それに追いつく勢いの速さで追いかけてくる姿に恐怖を覚えた。

 

「もっとスピード出せ!」

 

「無理だ、他の車もあるってのに!」

 

「使えねえ! 運び屋、なんとかしろよ!」

 

 言われるまでもなく、運び屋はリアガラスを叩き割ってそこからリボルバーを突きだして銃撃する。そのままの流れでCZ75も拳銃でリベルタを狙い撃つ……すると、それまで運び屋だけを見据えていたリベルタの目がCZ75を向いた。

 勘違いしていたことだが、実はそのまま逃げ切っていればCZ75が彼女に狙われることは無かった。 

 それが自らも狙われていると勘違いして撃った結果、リベルタはCZ75も抹殺するべき対象として認識してしまったのである。

 

 他の通行車を躱しながら走るタクシーに対し、リベルタは車の屋根を踏み越えて追跡する。

 しかし、走ることに特化する車のスピードに徐々に引き離されていく……少しずつ小さくなっていくリベルタの姿にようやく一息つこうとしたところ、突如タクシーが急ブレーキを踏んで停車する。

 

「なんだよ!」

 

「渋滞だ!」

 

「いいから行けよ!」

 

「無理に決まってるだろう、これ以上はもうごめんだ!」

 

 タクシードライバーはそう言って、車を乗り捨てて逃げていってしまった。

 背後を見ればリベルタが凄まじい勢いで向かってくる…CZ75は一度車を出て運転席に座ると、エンジンを唸らせて猛スピードでバックする。そして向かってくるリベルタに狙いをつけて、アクセルをめいいっぱい踏み込んだ。

 

「これでもくらえ!」

 

 タクシーをぶち当てられたリベルタは車の上を転がっていき車体前方に転がり落ちた……かに見えたが、リベルタはフロントにしがみつきボンネットの上に乗る。

 額から真っ赤な血を流し、血まみれの顔からギラギラした眼光が覗く。

 フロントガラスを叩き割った彼女はタクシーのハンドルを掴み、建物の壁へと激突させた…そのままCZ75をフロントから引きずり出し、道路に投げ飛ばす。

 

「いってぇ……このやろう、やってやろうじゃないか!」

 

 放り投げられたCZ75は愛用のトマホークを構える…それを見たリベルタはというと、道路標識の金属ポールを力任せに引き抜き構えて見せる。アホみたいな怪力を目の当たりにして青ざめるCZ75であったが、彼女はこっそり背後から近付く運び屋に気付く。

 彼の手にはどこから持ってきたのかスレッジハンマーが握られており、気付かないリベルタに向かって背後からおもいきり殴りつけた。

 

 鈍い金属音が辺りに響く。

 頭部を殴打された彼女は勢いよく倒れ込む…それに対し追撃を仕掛けようと運び屋がスレッジハンマーを振り上げると、なんとリベルタはむくりと起き上がってハンマーの柄を掴み受け止める。そのまま凄まじい握力でハンマーの柄を握り潰すと、運び屋のコートを掴んで勢いよく車に叩きつける。

 車体がへこむほどの強さで叩きつけた上で、彼女は運び屋の顔面めがけ拳を振り下ろす。

 間一髪避けたために、リベルタの拳は勢い余って車の窓ガラスを叩き割る…運び屋はすかさず機転を利かし、窓ガラスに突っ込んだリベルタの腕をロープであっという間に縛りつける。身動きの取れなくなったリベルタに対し、運び屋は至近距離から散弾銃を浴びせかけた。

 

 

【何度も言うけど殺しちゃダメだからね!?】

 

 

 今回の依頼を請けるにあたって依頼人であるスコーピオンからそう忠告されていたがもちろん忘れていない……ただしショットガンを至近距離でぶっ放そうが、車で猛スピードで轢こうが、リベルタは死なないし諦めてもくれないと運び屋には分かっていた。

 そしてそれを証明するように、ロープで縛られた車のドアごと引きちぎり、力任せに目の前の運び屋を殴りつける。

 

 強力な油圧ユニットが生み出すパワーで殴られ、運び屋の身体が数メートル吹き飛ばされる。

 だが運び屋もタフネスでは負けていないが、起き上がった彼は懐から注射器のようなものを一つ取りだした。医療器具スティムパックだ。どんなケガもこれ一本、などという説明を、胡散臭いイエスマンから説明されていたためCZ75はそれが何なのか理解していた。

 一方のリベルタのダメージも相当だ。

 至近距離から受けたショットガンの連撃で胴体がぐちゃぐちゃで真っ赤に染まっていた。ドアを強引に引き剥がしたものの、ロープで括りつけられたままだ。

 

「おいお前! 何だかよく分からねえが、ここらで手打ちにしねえか!?」

 

 CZ75からしたら、よく分からないうちに争いごとに巻き込まれてしまった状況だ。

 お互いダメージを負ったということで、遺恨を洗い流そうと提案する……それに対しリベルタは何も言わず小首をかしげ、それからドアが縛りつけられた腕を見下ろした。

 

「お前も大けがして激痛だろうしこの辺で……って、なにやってんのお前!?」

 

 交渉しようとするCZ75の前で、リベルタはきつくロープが結ばれた腕にナイフで斬り込みを入れ始める。目の前で進められる意味不明な自傷行為にもう彼女はパニック寸前、それに対しリベルタは淡々と自らの腕を斬り裂き、最後には生体パーツを引き剥がす。

 疑似性体組織の下に隠された銀色の金属骨格が晒される……表面を覆う生体パーツを斬り裂いてロープの結び目を緩める強引すぎるやり方だった。しかしリベルタにとって生体パーツは人間社会に溶け込むだけの意味合いでしかなく、活動にはなんら影響はない。

 

 ついでに胴体の生体パーツも引き剥がされる…露わになった金属骨格は多少の損傷はあれ、致命傷は一切無い。

 

「運び屋、あれなんとかして?」

 

 もはや笑うしかなかった。

 まだまだやる気満々の二人について行けず、適当な車に乗ってここから立ち去ろうとした時、車のドアに手をかけた彼女に銃口がつきつけられる。おそるおそる顔をあげた彼女が見たのは、周囲を取り囲む武装した兵士たち、そして二本の脚で立つ巨大な無人機たちの姿だ。

 

「おーい、そこらにしときなよお前ら。これ以上暴れられると街を封鎖しなきゃならねえんだよ」

 

 気だるそうな様子でやって来たのは、この町を管轄下に置いているエグゼであった。

 なにもかも事情を知るエグゼとしては、このようなしょうもない理由で始まった抗争に手を出したくはなかったが、自分の町で暴れらるとなると話は別だ。

 

「えっと、お前が運び屋? スコーピオンのアホのせいで変な仕事任せて悪かったな……その荷物はうちで引き受けるからよ。あのアホが約束した報酬も、ここで払ってやるから」

 

 この場を丸く収めようとするエグゼだが、ここまで痛めつけられたリベルタは納得がいかない様子。

 だがオセロットに言うぞと脅された瞬間、すぐさま身を引いた。

 次は運び屋だ……一応スコーピオンが約束した報酬額を手渡すが、さりげなく彼は報酬のつり上げを要求するが…。

 

「ハハハ、オレに交渉しようとしても無駄だぜ。オレはだーれの言うことも聞かねえからな。まあ、あんたみたいな奴を知れただけでも今回は良かったとしようか。今度暇な時また基地に来いよ、仕事を用意できるかもな」

 

 基本的に他人の話は聞くつもりがないエグゼには、運び屋の優れた交渉術も通用しないのかもしれない。だからこそ、対等な話ができるかもしれないのだが…。

 運び屋から受け取った荷物については、後に遺恨が発生するのを避けるため、その場で焼却処分。現金の入ったケースを運び屋に渡し、街を滅茶苦茶にしたリベルタには制裁を約束しエグゼはこの場を丸く収めるのであった。




運び屋「………?」
リベルタ「………?」
CZ75「お前ら会話しろッ!」

途中まで無言バトルやろうとしたが無理だったから、無許可でCZ75ネキを引っ張って来てもうた…スマンカッタ

エグゼ「まったくトラブル起こしやがって」
リベルタ「…じーー」
WA2000「そんな目で見ないでリベルタ!」

こうですねw


というわけでコラボお疲れさまでした。
リベルタ頑丈過ぎん?と思った方…元々こんな感じです。
リベルタを本気でぶつけても運び屋さんなら壊れないと思ったのだ…。
こんな姿、お友だちのユノっちには見せられませんなw


エグゼが最後まとめたけど、こいつはこいつでトラブル起こすのよなぁ…。

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