破壊の使者がやって来た。
それは山のように大きく、大地を力強く踏みしめてながら障害を障害と思わずすべてを踏み壊しながら突き進む。四肢に加え強靭な一対の翼脚によって歩き、歩を進めるたびにどろどろとしたどす黒い液体が怪物の身体から垂れ落ちる。
粘性を持つその液体は怪物の身体を覆い、眼下に散らばる障害として立ちはだかっていたモノの残骸を絡めとっていく。正規軍の装甲部隊を、ほとんど一方的に撃破した怪物はそれら残骸を粘性の液体で絡めとることで無意識に強固な装甲を獲得していく。
武器や兵器などの人工物がまとわりついたその外殻はまさに、堅牢な要塞と呼ぶにふさわしい。
この怪物が絡めとった人工物の中でひときわ目を引くのが、背に絡めとられた一本の巨大な槍だった。
かの者の名は【巨戟龍ゴグマジオス】、すべてが謎に包まれ、未知なる力を秘めた古龍の一体だ。
「――――あれがゴグマジオスか」
超大型モンスター発見の報告を聞き、現場に駆けつけたスネークたち。
ヘリに乗るスネークたちが上空から見たのは、脱線して滅茶苦茶になった大陸横断鉄道の列車に覆いかぶさり、貨物類に喰らい付く巨大な龍の姿であった。
ゴグマジオスを追跡していた偵察隊の話によれば、ゴグマジオスは大陸横断鉄道を逆行する形で進み、向かってきた列車を強引に受け止めたのだという。列車の衝突を受けてもびくともしないゴグマジオスであったが、衝突した列車は大破し、後続の車両は次々に脱線した。
「それで、奴はあそこで一体何をしてるんだ?」
脱線した車両の貨物類をコンテナごと噛み砕くゴグマジオスの不可解な行動にエグゼは疑問を投げかける。
情報によればあの列車は採掘用の爆薬を大量に積載していたという情報があった…もしや爆薬を食べているというのか? 彼らの疑問は、どこからともなくやって来たトレニャーの証言によって裏付けられる。
「(あのデカいモンスターは火薬を好むにゃ! この大陸じゃあちこちに火薬がたくさん、あのモンスターさんにとっては絶好の餌場に違いないにゃ!)」
「火薬を食べるか……奴が向かっている都市は重工業地帯だ。火薬工場はもちろん、石油コンビナート、ガスパイプ…それに崩壊液の貯蔵施設もある。そこに到達されたら大混乱が起きる」
「崩壊液が漏れ出たら、今度こそ世界は終わるかもな…どうすんだスネーク?」
「カズが既に手を打っている。スコーピオンに防衛線の構築を指示したらしい」
「今から防衛線って、間に合うのかよ?」
エグゼの疑問はもっともであったが、既に副司令のミラーが各国の要人と秘密裏に協議した末に、あのモンスターを迎え撃つ場所として旧セヴァストポリ要塞跡地を借り入れたらしい。トレニャーよりゴグマジオスは火薬を好むという情報を聞き、大量の火薬を集めてゴグマジオスを防衛線に誘い込む策を取っていた。
「生物を相手にしている以上、どのような行動をするか分からないが…カズの決断を信じよう」
「スネーク、アンタが言うならオレは何も言わないよ。行こうぜ、スコーピオン達が待ってる」
ヘリは進路を旧セヴァストポリ市へと向ける。
そこは歴史上幾度も戦乱に見舞われた土地…第三次世界大戦でも主戦場の一つとなったこの場所は、かつてドイツ第三帝国とソビエト連邦が激突した土地であり、クリミア戦争の舞台にもなった戦争と因縁のある土地だ。
この場所に再び戦火が降りかかる。
列車の爆薬を全て平らげたゴグマジオスは、空気に混じる微かな火薬の匂いを嗅ぎ取り再び移動を開始した。
過去二度の大戦を経験した土地セヴァストポリ、此処は最後の大戦で極端に人口が減り、以後過去の栄華を取り戻すことは今日に至るまでなかった。ここに住むわずかな住民はかつての繁栄を夢見ていたが、皮肉なことに再び迫る戦乱によって大勢の兵士でにぎわうこととなる。
住民たちには疎開が進められるが、疎開を決断したのはわずかな者たち…多くの住人、主に年老いた者や身寄りのない者たちは、危機が迫っていると知りながらも逃げることは出来なかった。
より多くを救うためには犠牲もやむなし、そう判断せざるを得なかったが、現場の者は可能な限り住民たちの退避を進めていた。
スネークが防衛線が構築されるセヴァストポリに到着すると、ちょうどそこには要塞建設を指揮するスコーピオンと、何故か運び屋が一緒にいたりする。曰く、運び屋の巧みな話術なら頑固な年寄り共も言いくるめられるでしょうとの事で、追加報酬を払って住民たちの立ち退きを依頼したのだとか。
"殺したり痛めつけなきゃなにしたっていいから"、そんなスコーピオンの依頼文句をしっかりと聞き入れ、運び屋は【脅迫】によって住民たちを立ち退かせていた…あまりいい気分ではないが、仕方のないことだとして今回に限ってスコーピオンを見逃した。
「集められるだけの大砲と多連装ロケット砲、FALの尻を叩いて戦車をたくさん集めたよ。800メートル間隔に大砲を設置して、この戦線に限っては高い火力を発揮できるはずだよ。ただ砲弾の数が間に合ってないんだ……大嵐が近付いてて、空輸できないんだよ」
「大嵐だって?」
「うん、そうなんだよね…ヘリなんか飛ばせないほどのデカい嵐が真っ直ぐこっちに向かって来てて、予想じゃちょうどあのデカいモンスターが来るタイミングとかぶると思う」
「なんだ、それじゃあのデカブツとやり合うのにオレたちは航空支援を期待できないのか? 神さまに感謝だな!」
この時期としては異常ともいえる巨大な嵐が近付きつつある…。
突然のこの嵐の発生にMSFの気象予報士も困惑していて、調査によれば風速15~30mにもなろうという大嵐だ。風速30メートルと言えば人間が立っていられないほどの強風であり、それに加えて雷雨と突風によりヘリはおろかあらゆる航空機は飛行できない。
協力を要請したグリフィンの部隊にも既にこの情報を伝達、陸路によってこの要塞に来てもらうこととなる…。
「だけど嵐が来る前に運べるものは空路で運ばせようぜ! 弾がなきゃあんな奴と戦えねえよ!」
「そんなにヤバそうなやつなの?」
「スコーピオンお前あいつを見てないのか? くそみたいにデカかったぜ!」
エグゼが両手をめいいっぱい広げてゴグマジオスの大きさと脅威を表現しようとするも、スコーピオンはいまいちイメージできないのかアホっぽい表情のままポカーンとしていた。
それはさておき、どうやら順次応援を要請していた部隊がこの要塞に到着して来たようだ…。
スネークはミラーと作戦会議をするために通信室に向かっていってしまったので、この場で自分が一番偉いに違いないと自己判断するエグゼとスコーピオンが来訪者を迎え入れる…。
各、代表者を1名呼んでお互いの自己紹介を進めようとするのだが…。
「誰だお前?」
開口一番、初対面の相手にそんなことを言ってのけるエグゼに、ビールを飲んでいたスコーピオンは驚きのあまり吹きだした。
「あんた初対面の相手にそれはないっしょ……気を取り直して、あたしはスコーピオン! MSFで最強の戦術人形だよ、よろしくね~!」
「私はM61A2バルカンだ、よろしくなスコーピオン、それにえっと…?」
「オレ様はMSFはおろか世界最強の戦術人形のエグゼだ。それよりお前なんだその武器、でけぇな少し試し撃ちさせてくれよ、なあ!」
「いいよ、その代わりアンタのそのブレードで試し切りさせてくれるか?」
「お、いいノリだね、気に入ったぜ。オレはエグゼってんだ、元鉄血現MSF所属、組織を鞍替えしたいと思ったらオレ様に相談しな。能力次第じゃ大隊長待遇で雇ってやるぜ?」
「おっと、引き抜きはごめんだよ?」
S13地区グリフィン基地よりやって来てくれたM61A2バルカン、最初の依頼ではティガレックス亜種を見事捕獲して見せた実力者だ。ちなみに、MSFではもし可能ならば捕獲を…というお願いをしており、捕獲成功した組織には追加で報酬を払うつもりだった。
代わりにモンスターはMSFで引き取り、それを怪物の島に帰すというものだった。
これは、怪物の島の生物を可能な限り故郷に戻してやりたちという思いからだ。
「バルカン、変な言い方になるがオレはお前に期待はしない。お互いをよく知らないからな……能書きは必要ない、実戦で実力を見せてくれよな」
「あんた分かりやすくて結構好きだよ。任せな、あっと驚かせてやるからさ」
「上等だぜこのやろう」
バルカンとは一旦そこで別れ、部下のヘイブン・トルーパー兵士が彼女を要塞の宿舎にまで案内をする。
多くの協力者がモンスターの狩猟に成功し、この要塞に駆けつけてくれているが、やはり大嵐の影響からか到着が遅れている…そんな中、バルカンたちの到着から少し遅れてやって来たのは、かねてからちょくちょく接触のあるS09地区P基地よりノア率いるランページゴースト隊の到着だ。
「誰だテメェは?」
やはりというか、なんというか…エグゼはあいさつに来たノアに先ほどと同様、というかそれ以上のケンカ口調で声をかけたではないか。相手の素性を尋ねたが、実はこの二人以前会っている、それもMSF主催の平和の日のお祭りの中でだ。
どう考えてもケンカを売りに行っているエグゼにスコーピオンは何とも言えない表情を浮かべていた。
対するノアも、止めておけばいいのにエグゼに張り合ってしまう…。
「テメェってなんだよばかやろう、自分から先に名乗れ」
「礼儀知らねえチビ助だな、ええ? まあいいさ、オレ様は大人だからよ…エグゼだ、よろしくな?」
「ノアだ、よろしく」
互いに一歩譲り合って握手…とはいかず、お互い相手の手を握り潰そうと力を込めているではないか。
いつかのエグゼとM4の仁義なき戦いでも目撃したが、プライドの高い者同士は相性が悪いのだろうか?
いつまでも潰しあいを続けそうなのでスコーピオンが割って入って仲裁に入る。
「それで、どこまで準備進めてるんだ?」
「超デカいモンスターの名前はゴグマジオス、火薬を好んで食べるって情報だから、今火薬を餌にこの要塞におびき寄せてるんだ。モンスターを要塞に招き入れて一網打尽、それが狙いだね」
「そんなんで上手くいくのか?」
「なんだよ、文句あるなら代わりに案だせよ」
「いちいちうるせえな! 少し黙ってろメスゴリラ!」
「あ?」
ノアの暴言に、エグゼがカチンとキレる。
慌ててスコーピオンは取っ組み合いのケンカになりそうになる二人を再び引き剥がす…エグゼにはスネークに言いつける、ノアにはユノちゃんに言いつけるぞと忠告し、二人は渋々引き下がる。
その時、要塞に警報音が響き渡る。
ついにモンスターが襲来してきたのだと察し、彼女たちは監視塔まで一気に駆け上がる。
そこから双眼鏡でモンスターを観察、双眼鏡がないノアはエグゼからひったくった。
「まだここからじゃ見えないけど、なんかちっこいモンスターがたくさんいないか?」
「トレニャーの話じゃ、ゴグマジオスが通過した後のおこぼれを狙って【イーオス】と【ガブラス】の群れがついてきてるみたいだよ。どっちも強力な猛毒を持ってるらしい…あたしたち人形が毒を浴びても死ぬことは無いけど、生体組織が炎症を起こして動けなくなるらしいから注意してね」
「ちくしょう、めんどくせえな。つーかオレの双眼鏡返せ!」
「百年後に返してやるよ……おい、モンスターが来たんじゃないか?」
ノアの言葉に、スコーピオンは双眼鏡を覗く。
山を越えた先からぬっと姿を見せた一体の超大型モンスター、背に巨大な槍を背負う姿は肉眼でも視認できる。
初めてゴグマジオスを見たスコーピオンは言葉を失った…。
「なんだ、言うほど大きくないじゃんか」
「あれが大きくないって、ノアちゃん感性ずれてるんじゃないの!?」
「いやだって……って、デカ!? なんだアイツ!? あれがゴグマジオスか!?」
「そうだよ、あれ以外に何がいるのさ!」
「いや、他にもあれ…あそこ見てみろよ」
「貸せこのやろう!」
ノアから双眼鏡を奪い返したエグゼは、彼女が指さす方向に双眼鏡を向け…絶句する。
見えたのは、激闘の末、地下に埋没して倒したはずの【恐暴竜イビルジョー】であった。
難易度上げていくスタイル(邪悪な笑み)
さあ、いよいよ決戦だ、みんな大砲とか使っちゃっていいから頑張ろうぜ!
ゴグマジオス、イビルジョー、イーオス&ガブラスの群れとの大乱戦だ!
にしても航空機が飛べないほどの大嵐か…
クシャルダオラ「はて?いったい?」
アマツマガツチ「誰がそんなことを?」
※こいつら参戦はしないです、ただ上空を"たまたま"通過していく模様
※空爆すればいいじゃん論への対抗措置