折り畳まれていた翼を広げ空に舞うゴグマジオス。
固形化した龍骨油を強引に砕き広げられた翼を大きく広げ飛ぶゴグマジオスは、地上にいた時よりも何倍も大きく感じられた。航空機やヘリですら飛行を躊躇する暴風の中で、ゴグマジオスはバランスを崩すことなく風を捉え、力強く羽ばたいてみせる。
背中からは黒煙が吹きあがり、それまで滴り落ちるだけだった重油は高熱を帯び、地面に落ちた途端に着火し爆発する危険な存在へと変貌する。
翼を羽ばたかせることで今まで以上に広範囲に、それも上空からまき散らされる重油があちこちで爆発していく様はさながら絨毯爆撃のようだ。
激情を宿したゴグマジオスの攻撃はこれだけに留まらない。
上空より、あの爆発的な威力を誇る熱線を地上に向けて見境なく放つ。
薙ぎ払われるように放つ熱線で要塞周囲一帯を、あっという間に焦土と化していく…着弾し一気に爆破炎上する龍骨油はその燃焼のために大気から酸素を奪い、地上にいる兵士たちを酸欠や一酸化炭素中毒に犯される。
縦横無尽に熱線を放ち、辺り一面を火の海に変えたゴグマジオス……ようやく地上に降りた時、MSFが築き上げた防衛線は壊滅していた。
障害を取り除いたと判断したゴグマジオスは、いまだ残る些細な抵抗を無視し、要塞の奥地へと歩みを進めていく。
要塞の奥にまで退却をした兵士たちは混乱に見舞われながらも、急ぎ第2の防衛線を構築するために急ぎ兵器の準備に取り掛かる。
「あぁ、ちくしょう!オレ様の部下をたくさん殺しやがって! あの野郎、絶対にぶっ殺してやる!」
目の前で大勢の部下を焼き殺されたエグゼは、頭に血が上りゴグマジオス以上の怒りを抱え込んでいた。
その勢いたるや、ブレード片手にゴグマジオスに特攻していきそうな勢いであったため、エグゼ直属の部下たちは無礼を承知で彼女を要塞の後方に引き下がらせたのだ。
「後退したところで激突するのは時間の問題だ! 攻撃だ、攻撃を仕掛けるんだよ!」
エグゼの気迫に圧倒され、部下たちは急ぎゴグマジオスの迎撃に取り掛かる。
使えるものは何だって使う、新式だろうが旧式だろうが何だって構わなかった…あの黙示録の怪物の如き龍を、撃退するために。
声を荒げ怒鳴り散らすように指示を飛ばすエグゼだが、その指示は的確だった。
部隊の一部を消火活動に専念させるよう新たに編成し、後方の部隊には消火のための道具を早急に寄越すよう伝え、各員にはガスマスクの装着を厳命した。
「エグゼ、助っ人を連れてきたぞ!」
「あぁん?」
背後から声をかけてきたハンターにエグゼが振り返る…ゴグマジオスとの戦闘であちこちダメージを負うハンターの隣には、血で全身が汚れた暗い色合いの装束を纏った男性がいた。生温かい血を袖から滴らせる彼の腰には、狩りの戦利品であろうか、モンスターの身体の一部がいくつか括りつけらえている。
「こいつは?」
「彼は【ローウェン】、獲物を追ってここまでたどり着いたらしい」
「そうかよ。喜びな狩人の旦那、あそこにデカい化物がいるだろ? 好きなだけ斬り刻みな」
ローウェンはエグゼを一瞥し、それから要塞に迫るゴグマジオスをまじまじと見つめる…。
表情はよく見えないが、強大な獲物を前にどこか興奮している様子。
ふと、それまでこの場所に吹き荒れていた嵐が突然止まった……この異変に他の者も気付き空を見上げれば、さっきまで分厚い雲に覆われていた空にぽっかりと穴が空き、赤みを帯びた満月が星と共に浮かんでいた。
嵐が完全に過ぎ去ったわけではない…嵐の渦の中心、台風の目が要塞の真上にまで到達したのだ。
そんな中、ローウェンは一人、雲の中をじっと見つめている…まるでそこに何かが潜んでいることを察知したかのように。だがゴグマジオスの大きな咆哮が聞こえてくると、彼はその視線をゴグマジオスに向ける。
「隊長! イーオスとガブラスの群れが要塞内に侵入して来ています!」
「くそ、ウザったいったらありゃしないぜ!」
「困っているようだな……露払いは引き受けよう、良き狩りを」
滑空してきたガブラスを、重厚なのこぎり鉈で叩き落とし、ローウェンは迫りくるゴグマジオスを眺めながらセヴァストポリ市内へと姿を消していく。
一方その頃、要塞を目指し進むゴグマジオスを食い止めるべくランページゴースト隊の【アナ】は飛行ユニットを駆使し戦闘を続けていた。先ほどのゴグマジオスの熱線の薙ぎ払いによってランページゴースト隊は散り散りになってしまい、なおかつ超高温の熱波を至近距離で受けたためかアナの飛行ユニットはいつもの調子とはいかず、機動力を得られない。
ようやく嵐が止み、得意の戦術を発揮できると思った先でこれだ…アナは悠然と進むゴグマジオスを忌々しく睨む。
「ギャオッ!」
イーオスの群れが数体、穴に向けて向かってくる。
一体一体はそれほど強くはないが、群れるイーオスは連携して狙った相手を追い詰める。
「邪魔だ!」
跳びかかるイーオスをアナはブレードの一撃で斬り裂く、続けて2匹目を倒そうとするがその個体は軽快なステップで斬撃を躱していった。相手の注意を引きつけ、別な個体が攻撃を仕掛ける…が、イーオスの連携は彼女には通用しなかった。
背後から襲い掛かってくる気配を察し、彼女は横薙ぎにブレードを振るいイーオスの首を跳ね飛ばした。
そこで誤算だったのは、致命傷を負わせた箇所にイーオスの猛毒を生成する器官があったことで、血飛沫と共にイーオスの猛毒がアナの身体に飛び散った。
「うっ…!?」
イーオスの毒液が当たった肌に火傷を受けたような痛みを感じ、アナは呻き声をあげた。
残りのイーオスをなんとか倒すも、いつの間にかゴグマジオスに狙われていることに気付く…回避しようとしたその瞬間、激流のように放たれた重油ブレスの直撃を受けて勢いよく壁に叩き付けられた。凄まじい衝撃に、一瞬アナの意識がとびかける。
全身に重油を浴びてしまった状態で次の攻撃を受けてしまえば致命傷になってしまう、そうなる前に何とか起き上がろうとするが、直撃を受けたダメージは大きかった。
痛みに呻きながら、自分を狙っているであろうゴグマジオスに目を向けると…。
「こんのクソトカゲ! アタシの部下に何やってんだー!」
「え? 隊長?」
そこで見たのは、どこからかっぱらってきたのか、単発式のロケット砲を両肩に抱えては撃っては放り捨て、また新しいロケット砲を抱えてゴグマジオスに向けて撃ちまくる【ノア】がいた。
そしてそのノアと並び、部下を大勢殺されて怒り狂うエグゼが重機関銃を派手に乱射している。
「おい! 弾持ってこいノア!」
「うるせえ! 自分で持ってこい!」
こんな大事な場面であの二人は何をしているのだろうか?
そんな風に思っていると、アナの周りにアイルーたちが群がってきたではないか。にゃーにゃー何を言ってるか分からなかったが、イーオスの毒液を浴びた肌に青い液体を振りかけ、瓶に入った液体を飲めと言わんばかりに薦めてくる。言われるがままに、アイルーたちから貰った液体を一気に飲み干す…するとどうだ、先ほどまでの身体の痛みが和らいでいくではないか。
「回復薬……なのか? ありがとう」
アナが礼を言うと、アイルーたちは嬉しそうにピョンピョン跳ねて、次の負傷兵の元まで走って行った。
アイルーたちは建物の上で多種多様な音色の角笛を吹きまくり、その音色聴くと何故だか痛みが引いて行ったり、力がみなぎってきたりやる気に満ちていく。アイルーの軍楽隊による演奏はゴグマジオスに対し威力を見せるものではなかったが、モンスターと戦う兵士たちの士気を奮い立たせていく……そしてそれは反撃のための力となる。
「やれる、まだやれる!」
己にそう言い聞かせるようにアナは呟き、ブレードを手に走る。
ゴグマジオスの翼脚にブレードを振るうが、強固な装甲に弾かれて火花が散った。一撃でダメなら2撃、3撃と斬撃を与えるが、ゴグマジオスの堅牢な城殻はびくともしない。
その時、アナの前にフランク・イェーガーが躍り出ると同時に一閃…アナの斬撃を阻んでいた城殻ごとゴグマジオスの肉を断ち切る。
「武器の性能に頼り過ぎるな。意識を集中しろ、雑念は刃を鈍らせる……精神を研ぎませるんだ、そうすればおのずと見えてくるはずだ」
振り返ることなく言った彼の言葉を聞き、アナは両手にブレードを持つ。
自分に傷をつけたフランク・イェーガーを狙って攻撃を仕掛けるゴグマジオスの後ろ脚がアナの目の前に迫った時、彼女は先ほど見たフランク・イェーガーの斬撃をイメージした。そして軽く息を吸い込み、地面を一気に蹴りつけて刃を振るう……今度は城殻に弾かれる音はせず、鋭利な斬撃によってゴグマジオスの血が辺りに飛び散った。
自信をつけたアナはそのまま走り、ゴグマジオスの胴体の突起を掴んで駆け上がりそのまま胸部に鋭い一太刀を叩き込む。攻撃を受けてゴグマジオスが怯み、アナは支えを失って落下するが、墜落ぎりぎりでフランク・イェーガーに受け止められた。
「いいセンスだ。今の感覚を忘れず鍛錬するんだ、そうすればもっと強くなれるだろう」
「いい教訓になりました、ありがとう」
「礼はいい」
怒れるゴグマジオスは上体を起こし、あの凶悪な熱線を再び撃ちこもうとする。
急ぎ二人はその場を離脱、直後に放たれた熱線と大爆発から辛くも逃れることが出来た。熱線を放った直後、ゴグマジオスは息を荒げその動きを止めた……ここに来てこの強大な龍にも疲れが来ていた。
絶えず巨体に撃ちこまれていた砲弾も、意味がなかったわけではなく、確実に体力を奪っていた。
この好機に、MSF及び協力者たちが勢いづく。
トラックの荷台に40ミリ対空機関砲を無理矢理積載して駆けつけたスコーピオンは、早速銃座につくとヘイブン・トルーパー兵に装填役を命じ、声高々と叫ぶ。
「今が攻め時だ! 今を逃したら後はとはないぞ、みんなありったけの力をあいつに叩き込めー!」
トラック荷台に積載したボフォース対空機関砲がスコーピオンの声と共に射撃を開始、連射速度こそガトリングなどには及ばないが、40ミリ砲弾の連撃はゴグマジオスの装甲を徐々に削り弾き飛ばしていく。
「ちょっと! そういう役目は私の役目でしょ!?」
対空機関砲をゴグマジオスめがけ撃ちまくるスコーピオンの活躍に嫉妬したバルカンは、負けじとフル装填したバルカン砲をスコーピオンのすぐそばで乱射した。二人の圧倒的火力を応援するようにアイルーたちが笛を吹き鳴らし、何故だか心なしか射撃の威力も上がっていくような気分になる。
それが効果があるのかは定かではないが、猛烈な弾幕を受けてゴグマジオスは後ずさっていく。
たまらず後退するゴグマジオスであったが、ふと自分に向かって走ってくる一人の人間を目にすると、大きな唸り声をあげて翼脚を叩きつけた。だがその人物は翼脚をすり抜け、腹下をくぐり背後にまわった。
「エグゼ!」
「あぁ、分かってるぜスネーク!」
スネークが向かう先にはまだ破損していない自走砲が一台残されている…スネークがそれに乗り込み、照準を合わせる時間を稼ぐためエグゼは真っ向からゴグマジオスへと向かっていった。
エグゼもまたフランク・イェーガーと同じ高周波ブレードを用いるが、彼女の場合は力任せに強引に断ち切る剣技だ。身をかがめ、猛獣のように相手を見据え、強靭な脚力で大地を抉るほどの強い踏み込み…一撃に重きを置いた斬撃をゴグマジオスの胸部へと叩き込んだ。
離脱することなど度外視した一撃によりゴグマジオスは大きくのけぞった。
「スネーク!!」
「待たせたな!」
自走砲の砲口をゴグマジオスに合わせたスネークは、即座に強力な砲撃をその大きな背中に直撃させた。
それまで砲撃を受けていない角度からの砲撃により、ゴグマジオスの強固な城殻が吹き飛ばされると同時に、その象徴なっていた一本の巨大な槍がはじき飛ばされて地面に突き刺さる。
ノアは突然目の前に巨大な槍が落ちてきたため、思わず跳びあがる。
「にゃーにゃー!」
「にゃーお!」
「うにゃー!」
そこへアイルーたちが群がり、なにかを伝えようとしている。
小さなピッケルで巨大な槍【撃龍槍】をこつこつ叩くジェスチャーを何度も繰り返す。
「こいつをぶっ叩けばいいのか!? そうするとどうなるんだ!?」
ネコ語がいまいち分からないためどうしてもアイルーの伝えたいことが分からない。
そうしている間に、ゴグマジオスは再び翼脚を広げ空に羽ばたこうとしている…もう一度あの熱線の乱射をされれば要塞は壊滅してしまう。
「ノアッ! さっさとやれこのやろう!」
「あーもう! どいつもこいつも好き放題言いやがって……! こうなりゃやけくそだ!」
エグゼの怒鳴り声にカチンと来たノアは言われるがまま、ハンマーで巨大な撃龍槍を思い切り叩く。
油にまみれ錆びつきながらもその機能を保持していた撃龍槍は、勢いよく回転しながら今まさに空へ向けて飛び立とうとするゴグマジオスの肉体を刺し貫いた。
やったぜノアちゃんw(撃龍槍ぶっ放す活躍!)
次回、決戦!
これは一気にBGMが変わるポイントやな!
推奨BGMとしては定番の【英雄の証】があるが…。
ワイはこっちをお薦めしたいぜ!
https://www.youtube.com/watch?v=62EvLniRCTU